総乗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/26 22:45 UTC 版)
総乗(そうじょう)とは、積の定義される集合における多項演算の一つで、元の列の全ての積のことである。
定義
結合律を満たす積 × の定義される集合 M の元の列 a1, a2, …, an の総乗を
などと表す。記号 ∏ はギリシャ文字のパイ (Pi) であり、これは積 (Product、ギリシャ語でΠροϊόν) の頭文字 P に相当する文字である。
有限集合 E に対し、E の濃度を n とする。このとき、E の元を I = {1, 2, …, n} で添え字付けて、E の元の全体を「I を添え字集合とする元の列 (xi)i∈I 」とすることができる。この列の総乗を
などのように表す。ここで、E の濃度が 0、すなわち、添え字集合 I が空集合であってもよい。特に、集合 M が積 × に関する単位元 1M を持つとき、空集合を添え字集合とする列(空な列)の総乗は 1M であるとする。(空積も参照)
積が非結合的な場合
積が結合的でないならば、積をとる順番が問題になるので、a1 × a2 × … × an という記号自体が意味を持たないが、たとえば、部分列を用いて以下のように帰納的に定義することは可能である。
このとき、 と書くことにすると、
の意味になる。このようなものはあまり応用がない。
無限乗積
を定義することができ、無限積とか無限乗積 (infinite product) と呼ばれる。これらは極限操作であり、総和より微妙な意味で収束性を吟味しなければならない。
定義
実数や複素数からなる可算列 の無限乗積を定義する。無限乗積 が収束するとは2条件
が成り立つことをいう[2][3]。無限乗積 が収束するとき、その値を
と定める。この値は番号 m の取り方に依存しない。無限乗積が収束するならば、limn→∞ xn = 1 が成り立つ[4]。
また数列 に対して無限乗積 が収束するとき、無限乗積 は絶対収束するという[5][3]。無限乗積 が絶対収束するのは無限級数 が絶対収束するとき、かつそのときに限る[6][3]。
例
(はオイラーの定数である)[3][9]。
qポッホハマー記号 [11][12][13]。
注
- ^ つまり、有限個の例外を除いて数列の値はゼロでない。
- ^ Konrad 1956, p. 93, Definition 3.7.1.
- ^ a b c d e f 神保道夫、複素関数入門、岩波書店。
- ^ Konrad 1956, p. 93, Theorem 3.7.2.
- ^ Konrad 1956, p. 96.
- ^ Konrad 1956, p. 96, Theorem 3.7.6.
- ^ Sondow, Jonathan and Weisstein, Eric W. "Wallis Formula." From MathWorld--A Wolfram Web Resource. http://mathworld.wolfram.com/WallisFormula.html
- ^ A proof of the Wallis product formula, Takuya Ooura
- ^ a b 時弘哲治、工学における特殊関数、共立出版。
- ^ Weisstein, Eric W. "Gamma Function." From MathWorld--A Wolfram Web Resource. http://mathworld.wolfram.com/GammaFunction.html
- ^ Wolfram Mathworld: q-Pochhammer Symbol
- ^ a b Andrews, G. E., Askey, R., & Roy, R. (2000). Special functions. Cambridge university press.
- ^ a b Gasper, G., Rahman, M. (2004). Basic hypergeometric series. Cambridge university press.
- ^ Weisstein, Eric W. "q-Gamma Function." From MathWorld--A Wolfram Web Resource. http://mathworld.wolfram.com/q-GammaFunction.html
- ^ Salem, A. (2012). On a -gamma and a -beta matrix functions. Linear and Multilinear Algebra, 60(6), 683-696.
参考文献
- Konrad, K. (1956). Infinite Sequences and Series. Dover. MR79110. Zbl 0070.05807
関連項目
総乗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/26 14:03 UTC 版)
初項 a1 で、公差 d である総項数 n の等差数列に対して、項を全て掛け合わせた総乗 P n := a 1 ⋅ a 2 ⋅ ⋯ ⋅ a n = a 1 ⋅ ( a 1 + d ) ⋅ ( a 1 + 2 d ) ⋅ ⋯ ⋅ ( a 1 + ( n − 1 ) d ) = d a 1 d ⋅ d ( a 1 d + 1 ) ⋅ d ( a 1 d + 2 ) ⋅ ⋯ ⋅ d ( a 1 d + n − 1 ) = d n ( a 1 d ) n ¯ {\displaystyle {\begin{aligned}P_{n}:=a_{1}\cdot a_{2}\cdot \cdots \cdot a_{n}&=a_{1}\cdot (a_{1}+d)\cdot (a_{1}+2d)\cdot \dotsb \cdot (a_{1}+(n-1)d)\\&=d{\frac {a_{1}}{d}}\cdot d\left({\frac {a_{1}}{d}}+1\right)\cdot d\left({\frac {a_{1}}{d}}+2\right)\cdot \cdots \cdot d\left({\frac {a_{1}}{d}}+n-1\right)=d^{n}{\left({\frac {a_{1}}{d}}\right)}^{\overline {n}}\end{aligned}}} ( x n ¯ {\displaystyle x^{\overline {n}}} は上昇階乗冪)はガンマ関数 Γ を用いて P n = d n Γ ( a 1 / d + n ) Γ ( a 1 / d ) {\displaystyle P_{n}=d^{n}{\frac {\Gamma \left(a_{1}/d+n\right)}{\Gamma \left(a_{1}/d\right)}}} という閉じた式(英語版)によって計算できる(ただし、a1/d が負の整数や 0 となる場合は、式は意味を持たない)。Γ(n + 1) = n! に注意すれば、上記の式は、1 から n までの積 1 × 2 × ⋯ × n = n! および正の整数 m から n までの積 m × (m + 1) × ⋯ × (n − 1) × n = n!/(m − 1)! を一般化するものであることが分かる。
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