万能鑑定士Q
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 07:11 UTC 版)
「Qシリーズ (小説)」の記事における「万能鑑定士Q」の解説
沖縄の波照間島に育ち、高校までは万年学年最下位だった天然の美少女・凜田莉子(りんだ りこ)が、上京をきっかけにその奔放な感受性を生かした勉強法を伝授され、たちまち広範囲の知識を身につけてディスカウントショップ買い取りコーナーの花形鑑定員となる。そして20歳で独立し、「万能鑑定士Q」なる店を持つ。やがて23歳になった莉子は、高度な「ロジカル・シンキング(論理的思考)」を駆使し、店に持ち込まれる多種多様な依頼品の鑑定を発端として事件解決に乗り出す。
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万能鑑定士Q(登場人物)
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「Qシリーズ (小説)」の記事における「万能鑑定士Q(登場人物)」の解説
凜田 莉子(りんだ りこ) 今作品の主人公。身長159cm 体重47kg 23歳(2011年12月末日時点。『事件簿0』では22歳)。緩いウェーブのロングヘア、猫のように大きく円らな瞳を持ち、モデルのように長い手足を持つ美女。巻が進む毎に美しさには磨きがかかり、一度会ったら永遠に忘れない美貌の持ち主となっている。 飯田橋の神田川沿いにある雑居ビルの1階に、「万能鑑定士Q」の店を構える鑑定家。「鑑定士」はあくまで屋号であり、本人は特別な資格を持っているわけではないが、絵画、骨董、宝石、ブランドは勿論、漫画や映画など広いジャンルの事柄について即座に鑑定するだけの知識、能力を有している。他にも地域情報にも詳しく、一枚の写真の些細な情報から写された地名を特定するなどの知識も披露した。高度な論理的思考(ロジカル・シンキング)法を駆使する。 沖縄の波照間島出身。石垣島の八重山高校時代は教師が頭を抱える程の劣等生で、体育・音楽・美術以外はオール1の万年最下位学生だったが、本人はその事を全く気にかけない底抜けに明るい性格だった。 島の独居老人の家々をまわり、話し相手や、お買い物の手伝いなどを、誰に頼まれたわけでもなく行っていたため、莉子のその優しい心根は島民に知れ渡っており、とても愛されていた。前出の劣等ぶりを理由に、莉子が虐められそうになった時は、「莉子の優しさが解からない奴は、島の人間でもなければ、俺の子でもない」と、いじめっ子がその親から絶縁を申し渡されるほどであった。 高校卒業(2006年)後、島民の暮らしの改善を夢見ながら何の当てもないまま上京。しかし一般常識・知識のなさから就職活動が難航し、生活に困窮し始めた頃に瀬戸内陸と出会う。彼から豊かな感受性を生かしたさまざまな勉強法を伝授されたことで、「賢く」なることに成功する。瀬戸内の経営するリサイクルショップ「チープグッズ」で働きながら鑑定士に必要な知識を身に付けたのち、彼の支援により20歳で独立し、『万能鑑定士Q』の主人となる。非常に感受性が強く、涙もろい。鑑定の依頼人や関係者に感情移入する事もしばしばあり、その真情が犯罪者を改心させる事もある。 怖がりな一面もあり、オカルト的な事象は信じてはいないが、かなりの苦手。子供の頃、UMAの噂を雑誌で読んで恐怖した。 恋愛感情にはかなり疎く、小笠原をはじめ多くの男性から好意を寄せられているが、本人は気づいていないことが多い。高校時代、そして20歳の時に淡い恋愛(どちらも片思い)を経験しているが、男性と付き合ったことはない模様。しかし『事件簿』11巻以降は、徐々に小笠原と気持ちが通じ合っていく。 「凛田」と誤字表記されることが多いが、正しくは「凜田」である。この違いが事件解決の鍵になったこともある。 小笠原 悠斗(おがさわら ゆうと) 角川書店入社4年目の26歳。『週刊角川』編集部勤務の記者。力士シール事件の真相究明を編集長に命じられ、「万能鑑定士Q」を訪ねたことで莉子と知り合う。 山梨県北杜市出身で北杜市立長坂中学校卒→山梨県立北杜高等学校卒→立教大学社会学部メディア社会学科卒業。 細面で鼻が高く、『メンズノンノ』系のルックス。アオキの、安っぽい3点セットのスーツを身に付けている。腕時計だけは、親からプレゼントされた高級品のオメガ・ダイバーズウォッチ。女性心理に疎く、自覚なしで女性問題の火種を抱えそうになるタイプ(自然体で男女問わず親切にするため)。この点についてはあまりにも周囲から指摘されることもあり、最近は本人も自覚はしているらしいが、いっこうに直らない。 仕事はさほど出来ないが、スポーツは得意。角川書店の社内フットサル大会では、エース級の活躍。日本推理作家協会との親善ソフトボール大会でも、同様に活躍。 性格は良いがドジが多い。正社員の記者でありながら取材に駆り出される事は少なく、専ら取材を必要としない海外ソースの記事の日本版を書くなどデスクワークばかり。しかし凜田莉子との出会いから、彼女の解決した事件を記事にした事もありスクープに貢献、徐々に信頼を得つつある。また原稿を見てばかりいるせいで校正に慣れていて、誤字脱字については莉子以上に早く気づいて事件解決に貢献する事もある。また当初は頼りない人物として描かれていたが、巻を負うごとに男らしさが増していき、体を張った捨て身の行動で幾度となく莉子のピンチを救っている。 整理整頓の能力があるようで、映像事業局(旧大映)宣伝部の堰代課長から映画看板の管理について、是非部署内に迎えたいと待望される。しかし小笠原は記者に未練があると言って断っている。現在は社内各編集部の便利屋のように使われているが、逆にそれが彼の人脈を広げており、出版関係では莉子でも知り得ないような専門的な知識を吸収していっている。 暇を見込まれて角川書店の様々な事業に手伝いとして借り出されているため、新社屋に移転して半年で備品がどこにしまわれているか、社長室に何があるかまで把握している。宮牧からは「角川がらみで関わっていないのは角川博だけ」と揶揄されている。 西池袋三丁目の家賃8万3千円のワンルームマンションに一人暮らし。20歳の頃までは彼女がおり、詳細は不明(長坂中時代は津島瑠美と付き合っていたようだが高校時代も付き合っていたかは不明)。目下のところ彼女がおらず、莉子に想いを寄せる日々。 荻野 甲陽(おぎの こうよう) 『週刊角川』編集長。マスコミが伝えるべきは情報であるという信念のもと、アニメ誌・漫画誌などが中核である角川内でも昔気質の記者精神を見せる。 細身ながら、目つきのすわった白髪頭。編集部では水槽に熱帯魚を飼い、一人だけエグゼクティブ風のデスクと黒革椅子に収まっている。 莉子を、「美人すぎる鑑定士」としてグラビアに採用した。 小笠原にとっては頻繁に雷を落とされる怖い上司だが、空振りかスクープかの「ホームランバッター」タイプとして、内心小笠原を高く評価している。 宮牧 拓海(みやまき たくみ) 小笠原の同僚にして同期。魚眼のような大きな目をしている。小笠原の前では女性好きを隠そうとしないが、上司には露骨にへりくだる。要領がよく仕事もソツなくこなしているが、荻野からの信頼は今ひとつ。 女性アイドルグループに夢中になったりもする。 葉山 翔太(はやま しょうた) 牛込警察署知能犯捜査係警部補。髪を七三に分けたひょろりとした体格。馬面だが、刑事部屋の中ではそれなりにハンサムと呼べるルックス。しかし飄々とした態度で捉えどころがなく、相談にもいい加減に応じる癖がある。 『事件簿』篇第1巻以前、3年前に莉子が店を出したばかりの頃に、瀬戸内陸に連れられて被害届を提出しに来た莉子と出会った。その後広域指定暴力団璽北会のエメラルド密輸出事件(10巻)に絡み、警視庁の面々が万能鑑定士Qの店を訪ねる際に同行。その際大勢の専門家が在籍する店と思ったが違っていたなどと愚痴をこぼす。事件の規模が拡大し手に負えなくなり、警視庁にお株を奪われたため、事件が解決された後は莉子との再会を願わない状況だった。 以前は鎌倉の大船署に勤務していた。その頃の鑑識課員は現在も鎌倉でスナックを経営しており、葉山も時折立ち寄る。通常、地方公務員の警察官は都道府県を越える異動はないため、神奈川県警の大船署と警視庁の牛込署の経歴があるということはキャリア組であると解釈できる。 雲津という部下がいる。 宇賀神 博樹(うがじん ひろき) 警視庁捜査二課警部。猪首で大柄の男ばかりが大半を占める本庁の捜査員の中にあって、スマートで長身、品よくスーツを着こなす洒落た中年。国際詐欺犯罪専門として警察庁からの信頼も厚い。雨森華蓮の贋作事件について担当。竹富町議会が台湾での淡水化フィルターをめぐる巨額詐欺事件の被害に遭った際も、警察庁での決定を受け、ただちに八重山署に飛んだ。 牛込署の葉山とは違い、本庁の捜査本部が人選した捜査協力者、凜田莉子に対し当初から全面的な信頼を寄せている。そのため、華蓮の目には警視庁のキャリアでありながら「莉子の犬に成り下がった」ように見え、台湾事件の容疑者からは、「大物の莉子に指示を仰ぐ」側近のような人物に見られる程である。日仏両国にとっての大事件であるモナ・リザ盗難においても、犯人逮捕に駆けつけた。 瀬戸内 陸(せとうち りく) リサイクルショップ「チープグッズ」の経営者。牧師となって恵まれない子供たちを救うのが夢で、その資金を稼ぐためにリサイクルショップを始めた。しかし経営そっちのけの人助け精神が災いし、赤字経営が続いている。 莉子の人柄と才能に気付いて勉強法を伝授し、彼女が鑑定家となる道筋を作った人物で、「万能鑑定士Q」の店舗名の名付け親でもある。しかしQを「クイーン」と読ませようとするセンスには莉子も閉口している(のちに瀬戸内本人の了承を得て「キュー」と呼ぶことが許された)。 独立後の莉子は初日から詐欺師に騙されるなど、社会人として独り立ちするには不安も多かったが、瀬戸内は諸事情からそうした海千山千のトリックを暴く知恵を得ており、これを莉子に授ける。莉子に伝授された推理法は演繹法や帰納法ではなく、論理学の対偶を活用した原因究明法で、瀬戸内は「有機的自問自答」と「無機的検証」の二段階思考と名付けている。莉子はチープグッズのパート勤務時に得た知識に加え、暗算のコツ及びこの思考法を忠実に守ることで、名探偵さながらの推理力を展開できるようになった。 娘に瀬戸内 楓がいる。 雨森 華蓮(あまもり かれん) 26歳。パンクファッションに身を固めた細身で小柄の美女だが、メイクは薄めで可愛い顔だち。海外の警察にも目をつけられている「万能贋作者」 (All-round Counterfeiter) 。 但し、莉子の愛読する漫画『ゼロ』のように万物の複製を成し遂げるmultiな贋作者というわけではなく、あくまで本質は詐欺師であり、下請工場などを騙してブランド品の複製を大量に作らせ、それを売りさばくなどの知能犯ぶりを発揮する。 莉子と同様に、腕時計を見ただけで初対面の男性の身の上や諸事情など全てを見抜いてしまう、抜群の鑑定眼を持つ。幼くして両親が蒸発した過去を持ち、逮捕を恐れず社会を挑発し続ける愉快犯的な側面もある。ライバルとみなす莉子については一目置いていて「Qちゃん」のニックネームで呼び、自身についても「華蓮」と呼び捨てにするよう指示する。敵対関係と言うよりは屈折した友情を育てている仲にあり、莉子の活躍によって逮捕された後も小笠原を通じ陰ながら知恵を貸し、莉子を助けたりする。 複製だけでなく、オリジナルの洋服の型紙を起こせるレベルのデザインセンスの持ち主でもある。 ペットの黒猫ヨゾラを可愛がっている。 受刑中、素行態度に優れ成績も良いことから岐阜の笠松刑務所に移された。『短編集』第2巻で恩赦につき刑期短縮、出所。 痩せた出っ歯の天笠絢音、太った丸眼鏡の熊切比乃香という、漫才コンビのハリセンボンそっくりの手下2名を従えている。逮捕後同じ刑務所に収監されていたが、華蓮の恩赦に伴って出所。 氷室 拓真(ひむろ たくま) 『事件簿』1巻の時点では、早稲田大学理工学部物理学科准教授。実際の学部の変更に伴い同7巻では基幹理工学部、8巻では先進理工学部応用物理学科となっている。年齢は35歳。鋭い眼つきで整った容姿だが、愛嬌も併せもつ親しみやすい性格。莉子には困難な科学鑑定などを請け負う。 西早稲田キャンパスの58号館の研究棟を拠点とする。その甘いルックスから、近くの学習院女子大学の女子大生から絶大な人気を誇り、3年前の時点でも西早稲田キャンパスの門の前でサインをせがまれたり、一緒に写真を撮るよう求められたりしていた。彼の著書『理工学術院の先進技術』はゼミを受講する学生たちではなく、そのような著者近影を目当てに買ったファンの女子大生たちによく売れていた。訪ねてきた莉子も当初はそんなファンの一人かと思って軽くあしらおうとしたが、彼女の知性の高さに驚き、ある民事裁判で証人の代理を務めることになる。 当然ながら理系についての知識は豊富だが、その生真面目さからかごく単純なトリックには気づかなかったりする。 喜屋武 友禅(きやん ゆうぜん) 莉子の高校時代の恩師。劣等生であった彼女の上京を心配しながらも、見送ってくれた。実家は宮古島。石垣島の八重山高等学校勤務。 卒業が危ぶまれていた莉子について、校長先生に「自分が責任をとる」と申し出てなんとか卒業にこぎつけたという過去がある。このため莉子の保護者代わりを自負していて、パリ旅行にも同行しようとする。 それなりにハンサムなので女生徒からは人気があり、教え子からは「キャンキャン」のあだ名で呼ばれていた。 莉子が高校3年の頃、詐欺まがいの通信教育に対し、知識の盲点(この場合は学校教育法の「学生」の定義に高校生が含まれないという事)を突いて逆転するという機転を披露。莉子は「名探偵みたい(既刊13巻現在、探偵という言葉が出てきたのはこの1回と第10巻での計2回)」と拍手するが、のちに莉子はこのやり方を得意とし犯行を暴く。それ故に莉子の探偵的技能の最初の先生ともいえる。 嵯峨 敏也(さが としや) 東京療寿会医大病院の臨床心理士。年齢は30代前半の、痩せて頬のこけた端正な顔立ちの持ち主。莉子とはある事件(4巻)をきっかけに対面し、後に心理的要因が絡む事件などでの相談役になる。小笠原も彼の連絡先を知っていて、莉子が精神面で悩んでいる際に相談を持ちかけていた。 その優れた専門的知識とカウンセラーとしての洞察力を以て、莉子の持つ清らかな精神性に即座に気付き、指摘している。逆に彼自身は莉子からの真贋で「本物」という評価を得ている。 同作者による『催眠』シリーズの主人公。
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