フィルム 延伸

フィルム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/18 05:17 UTC 版)

延伸

合成樹脂の、ある程度の加熱をしながら一定方向に引き揃えると分子が変形方向に並び強度が増す性質を利用して、フィルムを一軸方向または二軸方向に引っ張る加工。更に耐薬品性や透明性の向上も図れる。ポリエステル・ポリプロピレン・ナイロンなどで特にその性質が顕著にあらわれる。この延伸加工を施すフィルムは、引き伸ばし後に薄くなることを計算して一次製造時に厚く成型する。

延伸する際にかけた温度を超える熱量がかかると、延伸フィルムは収縮する。この特性を利用し、緩やかに巻きつけたフィルムに熱を加えて縮ませ、梱包物を固定させるものは「シュリンクフィルム」と呼ばれる。一方、高熱下で延伸したものは熱寸法安定性に優れる性質を帯びる。これを熱固定と言う。

多層加工法

近年、求められる機能が高度化するに伴い、フィルムは複数の層を重ねた形状に加工される場合が多くなっている。それらを接合・積層させる方法は多様にあり、素材それぞれの溶融温度や相溶性または厚みの構成や製造費用など、様々な要素が考慮されつつ選択される。

共押出法(co-extrusion)

溶融押出成型法において、複数の素材を一度に押し出して重ねる手法。基本的に、積層させる材料の種類と同じ数の押出機を使用する。異なる素材同士を合わせる位置関係によって、その製造法はさらに区分される。

インフレーション法による共押出
異なる樹脂を合わせる位置により3種類に分類される。各溶融樹脂を金型手前のフィードブロック内で接触させるダイ前積層法、金型内部の経路で接触させるダイ内積層法、同心円状の複数リップから吐出し接触させるダイ外積層法がある。
比較的簡便な設備で共押出しが可能だが、樹脂の種類が限定されてしまい、層間接着性に劣る組み合わせには使用できない。
Tダイ法による共押出
異なる樹脂を合わせる位置により2種類に分類される。
シングルマニホールド法は、ダイの直前にフィードブロックを設置し、そこにアダプターを介して複数の押出機を接続する。フィードブロック内で樹脂接触させてからダイを通してフィルムを成型する。層の数はアダプターを交換することで設定でき、比較的簡単に多層のフィルムを得られる。しかしながら、溶融温度や粘度が大きく異なる材料を同時に使用できない欠点がある。
マルチマニホールド法は、内部に複数のマニホールドを持つTダイを使用し、複数の押出機から供給された樹脂をリップ部の直前で接触させ積層する。粘度差などの物性差が大きな材料を共押し出しできる上、各層の厚みを調整することも容易。しかしながら、Tダイの構造が複雑かつ大型となり、費用も高価となってしまう。

ラミネート法(lamination)

2種類以上のフィルムを重ね合わせる手法は、前出の共押出法の他に、ラミネート法がある。

押出しラミネート法
Tダイ法溶融押出成型法の設備を使用し、材料を他のフィルム上に直接押し出してから冷却する。Tダイ共押出法と併用し多層フィルムを成型することも可能。また、剥離ライナーがついたフィルムは、この手法をもってライナーの上に樹脂を押し出して製造する。
接着剤を使用したラミネート法
複数のフィルムを接着剤を使用して貼り合わせる手法。また、フィルムと紙や布または金属箔などとの貼り合わせにも用いられる。接着剤の種類により「ウエットラミネート」(水系接着剤または水分散系接着剤を使用)、「ドライラミネート」(溶剤系接着剤または反応系接着剤)、「ホットメルトラミネート」(ホットメルト接着剤)に大別される。
コストに優れ、セロファンが多用されていた頃は主流だったウエットラミネートは、貼り合わせる少なくとも片方の素材が蒸発水分を透過させる性質を持たなければならないためフィルム同士の重ね合わせには不向きで、現在では紙とのラミネートにおいて用いられる程度となった。
ドライラミネートはフィルムの種類に幅広く適応し、貼り合わせ速度も早い。溶剤系接着剤を使用する場合は、片方のフィルムに塗布しある程度溶媒を蒸発させてからもう一方のフィルムと重ねる。反応系接着剤で主に用いられるのは適応範囲が広いウレタン系二液型であり、二液を混合させてから塗布し、硬化するまでの可使時間内にフィルムを貼り合わせる。
ホットメルトラミネートの手法は、加熱して流動性を持たせたホットメルト接着剤を塗布し、硬化するまでの時間内にフィルムを貼り合わせる。粉体やフィルム形状の接着剤をあらかじめフィルム間に挟みこんでから加熱する手法は、基本的に後述するヒートシールに準ずる。

ヒートシール(heat sealing)

フィルムに熱をかけて貼り合わせる手法。原理は同じだが、フィルム全面を均一に接合させるラミネートの一手段とする場合と、部分的に接着させる二次加工として活用する場合とがある。材料である合成樹脂の性質によって作業性が大きく左右され、高融点すなわち耐熱性が高い樹脂はかける熱量が高くなってしまう。同様に、非晶性樹脂は軟化する温度=ガラス転移点における流動性が低いため、同様に高温での溶融が求められる。ヒートシールには、外側から熱を加えて接合する外部加熱法と、エネルギー波を照射して接合する内部発熱法とがある。

外部加熱法
一般にアイロンのような加熱した金属体をフィルム外部から押し当て、伝導した熱がフィルムを溶融させて接着する。金属体の形状は、全面を接着するケースでは板状や広幅のローラー、部分接着をする場合は円盤状のローラーや刃型のホットナイフなどがある。板状のうち、片面に円柱状の凹を規則的に並べフィルムを溶融させる際に意図的に空気を封入させる機能を持たせたものは、エアキャップ緩衝材の製造に使用される。
加熱した刃型や針金などでフィルムを圧着しつつ、同時に強い圧力をかけて溶断する手法を溶断シール法という。
内部発熱法
高周波の電波超音波によってフィルムに熱を発生させ接合する手法。熱伝導性が悪い比較的厚めのフィルムに対して有効である。

表面処理

極性の小さなポリエチレンやポリプロピレンなどはコーティングやラミネートまたは印刷などの接着力が弱い。そのため、フィルム表面を改質してこれらの欠点を改良する。手法は、物理的な処理と化学的な処理がある。

物理的処理
コロナ処理は、フィルム表面に放電処理を行い、極性を持つカルボキシル基水酸基を生成させ、かつ荒面化する。
プラズマ処理は、フィルム表面でガスを電離させて生じた粒子の電荷を利用して、極性を持つ塩基を生成させる。
フレーム処理(火炎処理)は、プロパンガスなどの可燃性ガスに酸素を吹き込みながらフィルム表面上で燃焼させ、酸化反応を起こして極性を持つ塩基を精製させる。
化学的処理
フィルム表面をアルカリなどで改質する。手法はJIS K 6843-3:1999で規定されている。
マット加工
フィルム表面に微細な凸凹をつけ、いわゆるシボ状態にする加工。一般的には表面積を増してコーティングやラミネートの強度向上を狙い、転写フィルム用途では転写層表面につや消し効果を与える。を吹き付けて物理的に加工する手法(サンドブラストまたはサンドマット)と、薬品で腐食させる化学的手法(エンボスまたはケミカルマット)がある。

  1. ^ 「粘土の合成」”. 材質・材料研究機構 物質研究所 山田裕久. 2008年5月22日閲覧。
  2. ^ 参考文献より
  3. ^ CNET Japan”. 液晶画面とセロファン. 2008年5月22日閲覧。
  4. ^ FUJIFILM | 業務用製品 | 放送・映画 | 映画用フィルム”. 2008年5月22日閲覧。
  5. ^ コダック 映画関連製品-製品情報”. 2008年5月22日閲覧。
  6. ^ 財団法人大田区産業振興協会”. モノづくり見聞録No.16. 2008年5月22日閲覧。
  7. ^ 透明フィルムが無線IP電話を救う?”. 日経BPnet. 2008年5月22日閲覧。





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