エッチング【etching】
エッチング etching
エッチング
エッチングとは、金属の表面や形状を、化学的あるいは電気化学的に溶解除去し、それを表面処理を含めた広義の加工技術とすることである。エッチングはすなわち化学加工の一種であり、主に金属表面に希望のパターン形状を得るために行われる。
エッチングの代表的な例としては電子回路のパターン製造がある。ベークライトやグラスファイバー板の表面に銅箔を張ったプリント基板上に、回路部分をマスキングして強酸のエッチング液に浸けると、銅箔のマスキングされていない部分はエッチング液の化学作用により溶け、マスキングされた部分が銅回路として残る。
LSI(集積回路)など回路パターンが微細なものは、シリコンやガラス基板の上に蒸着などで生成された金属薄膜上に、フォトレジストと呼ばれる感光性の樹脂を塗布し、これに回路パターンを感光させる。フォトレジストは感光後現像することで、感光した部分を残し回路形状が得られるので、これをエッチング液で処理することによりフォトレジストの無い部分は溶け、回路が得られる。ブラウン管のシャドウマスクなども同様に、ステンレス薄板などをエッチング処理して作られる。こうしたエッチング方法をフォトエッチングと呼ぶ。
水溶液中の化学反応の代わりに、ガス(気相)中の反応を利用して行う場合はドライエッチングと呼ばれる。また、材料表面の微細な凹凸を凸部のみ選択的に溶解して表面を滑らかにする場合、化学研磨(chemical polishing)と称するが、技術的にはエッチングと同様である。3次元的な加工形状を求めてエッチングを行う場合は、ケミカルミリングという場合もある。
エッチングでは金属プレスや板金加工では困難な、薄板の加工や微細なパターン加工、高硬度の材料の加工も可能であり、力学的な加工応力も発生しないため軟らかい材料も加工できる。反面、エッチング液による溶解作用によって加工を行うため、板厚が増すとマスキング部より浸食が起こり、加工精度が低くなる。
このほか装飾用を目的に、ステンレスや銅板の表面にシルク印刷を行い、その上からエッチング液で浸食させて模様を付ける場合もある。
適している分野・使用事例
電子分野=電子回路、半導体パターン、シャドウマスク。ドライエッチング=平滑な光沢面。装飾用=金属製ドア・エレベータ表面への装飾。
エッチング
エッチング
【英】:ETCHING
版画技法。銅版画は、凹版を製版する技法によって直刻法と酸腐蝕法に大別できるが、これは後者の内で最も代表的なものである。エッチングの語源は「腐蝕」。まず銅板にグラウンド(防触剤)を均一にひき、ニードル等の鉄筆状のもので描画すると、描いた線の部分のみ銅板が露出される。これを酸にひたし、腐蝕時間によって線の深浅(太細)を調整する。そしてグラウンドを除去し、凹部にインキをつめ、プレス機で紙に刷り上げる。エッチングの特徴は、直刻法に比べて描画が容易であり、線の表情も腐蝕の深さによって自由に加減できることである。欧州では13世紀頃から金属細工師が腐蝕を用いて図案の線刻を行なっている。それを応用したエッチング版画の登場は16世紀初頭と考えられており、17世紀にはレンブラントを頂点として数多く制作された。日本では1931年、西田武雄によって専門誌『エッチング』が創刊され、日本の現代銅版画の創成期における、エッチングの研究・普及に大きな役割を果たした。
エッチング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 00:49 UTC 版)
エッチング(英: Etching)または食刻(しょっこく)とは、化学薬品などの腐食作用を利用した塑形ないし表面加工の技法。使用する素材表面の必要部分にのみ(防錆)レジスト処理を施し、腐食剤によって不要部分を溶解侵食・食刻することで目的形状のものを得る。
- ^ コトバンクホッファー,D.とは
- ^ 出典:マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン公式サイト "表面前処理:マルチボンド".
- ^ CAR SHIELD ETCHING - 西田ガラス株式会社HP
- ^ “5軸レーザー彫刻機”. 株式会社日本エッチング. 2022年4月30日閲覧。
- ^ “(株)日本エッチング”. 株式会社日本エッチング. 2022年4月25日閲覧。
- ^ “株式会社ワールドエッチング”. www.world-g.com. 2022年4月25日閲覧。
- ^ “株式会社ニューテックス・有限会社ファインメタルアート-金型加工・建材”. www.newtexfma.com. 2022年4月25日閲覧。
エッチング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 08:51 UTC 版)
「レンブラント・ファン・レイン」の記事における「エッチング」の解説
レンブラントは画家として駆け出しの1626年から、1660年に印刷機を手放して実質的な製作活動ができなくなるまで、私生活のトラブルに忙殺された1649年を除いてエッチングに取り組み続けた。彼はこれを気軽に始めたが、ビュランの使い方を習ったりエングレービングに手を出して多くの作品を残したりしながら、束縛されないエッチング技法を自分のものとした。彼は印刷工程全体にも強く関わり、初期の作品では自分の手で印刷を行ったと考えられる。最初の頃、素描技法を基礎にエッチングを行っていたが、すぐに絵画技法へ変更し、固まりのような線と酸による腐食を多用して描線の強さに変化をつけた。1630年代末頃、レンブラントのエッチングは腐食をほとんど用いない簡素な形式へ変貌した。1640年代にはいわゆる『100グルテン版画』(en)を製作し、これはレンブラントがエッチングのスタイルを確立し始める「彼のキャリアにて中期に当る重要な仕事」に相当した。しかし、この版画は2つのステート(版)(en)しか残されていない。1版目の点数は非常に少ないが、これによって版元には作り直しが行われた証拠となり、多く存在する2版目の写しにない要素が残っている。 1650年代には成熟を迎え、現存する11の版画に見られるようにレンブラントは即席で大版の製作に携わり、時に根本的な変革を加えることもあった。ハッチング技術を用いて作り出した暗い部分は、時には画面の大部分を占めることもあった。また、紙にも検討を加えて効果を見極め、ヴェルムや後に多用した和紙などを試した。さらに、印刷時に平坦な部分のインクをすべて拭き取らずにあえて少々残すことで「表面トーン」 (surface tone) の効果を表した工夫も凝らした。特に風景描写にて、彼はドライポイント技法を多用し、一瞥では分かりにくいが豊かでぼやかされたぎざぎざを作り出した。
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エッチング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 14:53 UTC 版)
修復材料であるレジンを歯質に接着させるため、Buonocore は酸により歯を溶解させるエッチングを1955年に開発した。歯科修復物を歯に接着させる時、頻繁に使われる。これはコンポジットレジンやシーラントのようないくつかの修復物を長期的に持たせるために重要である。エナメル質中の無機質を溶解させ、エナメル質表面から約10マイクロメートルを除去し、5から50マイクロメートルの多孔質層を作る。この多孔質層にレジンが侵入し、硬化することで接着する。 エナメルに対するエッチングの影響は使用する酸の量、タイプおよびエナメルの現状などにより変化する。 エッチングによる形成には3パターンある。タイプ1はエナメル小柱が溶解されたパターン、タイプ2はエナメル小柱間質が溶解されたパターン、タイプ3はエナメル小柱があった証拠がなにも残っていないパターンである。タイプ1が最も好ましい物であり、タイプ3は最低である。これらのパターンに別れる理由はまだはっきりとは分かっていないが、エナメル質中の結晶の走行の違いによる物ではないかという説が最も一般的である。
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エッチング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 05:45 UTC 版)
エッチング工程ではそれまでに残ったウエハー表面の微細な凹凸を化学研磨によってさらに平滑にする。フッ酸 (HF) と硝酸 (HNO3) を純水か酢酸 (CH3COOH) で薄めた酸性エッチング液を使うものと、水酸化カリウム (KOH) と水酸化ナトリウム (NaOH) を純水で薄めたアルカリ性エッチング液を使うものとがある。アルカリ性の方が主体となる。
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エッチング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 16:56 UTC 版)
ウェハーに単に凹凸を付けたい場合、あるいは元々ウェハー上にパターンが作成されていた場合などは、エッチングによって不要な部分を除去する。ドライエッチングとウェットエッチングが存在する。レジストの残っている部分はエッチングによって除去されないため、残したいパターンがウェハー上に形成される。最後に溶剤などによってレジストを完全に除去する。
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「エッチング」の例文・使い方・用例・文例
- 水彩画のブロード・ウオッシュをまねたエッチングの手法
- エッチングを製作する
- アクアチントでエッチングする
- 写真ネガ、エッチングなどを製版するまた校正刷りをする、あるいは活字に組む
- どうぞ、私にエッチングを見せてください
- 水の色に似せるプロセスによって作られるエッチング
- 彼のグラフィック作品を共に形成するエッチング、ドライポイント、リトグラフ、エッジング−ブリティッシュ・ブック・ニュース
- 彼女は、酸性の浴室にエッチングを浸した
- エッチングされたまたは彫られた銅のなめらかなプレートで成る彫版
- 酸を用いてエッチングした板
- エッチングした板から作った印刷
- エッチングされたか、彫られたブロックからなる彫刻
- エッチングされたか刻まれた版を使用する印画法
- 私のエッチングをあなたに見せよう、というせりふはむしろ使い古したせりふである
- エッチングをする人
- 研磨またはエッチングで作られた粗い表面のために光を拡散するガラス
- エッチングという銅版画の技法で行う,材料の表面処理
- エッチングをするときに材料の表面の一部を保護するためのレジスト
エッチングと同じ種類の言葉
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