エッチングとアクアチント(間接法)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 01:19 UTC 版)
「版画」の記事における「エッチングとアクアチント(間接法)」の解説
「エッチング」および「アクアチント」も参照 間接法としてはエッチングとアクアチントがよく知られている。なお西欧語ではすべての間接法を総称して「エッチング」と呼ぶこともある。 エッチングとは銅版を防食剤で一面にコーティングしたのち、ニードルで線描し、酸に浸して腐食させる技法である。ニードルで防食剤を剥がした部分だけが浸食され、それが版の凹部となる。最後に防食剤を洗い流して版が完成する。レンブラントはエッチングを好んで制作した最初期の作家であり、ほかの銅版画技法と併用するなど、意欲的にその表現可能性を拡大した。凹版画のなかでは特殊な技能をもっとも必要としない技法なので広く普及している。有名画家が「手ごろな」価格の作品を提供するためにエッチングを手がけることも多い。そうした場合に腐食の工程にまで画家が関与するかどうかは画家のこだわり次第で、「職人任せ」の場合もある。ただし、腐食の時間を長くするとより深い溝になってはっきりした線になり、短くすると淡い調子になるなど、工夫次第で複雑な描画ができるので腐食の工程はけっして単純作業ではない。近年では薬液を用いない乾式エッチングも開発が進んでいる。 エッチングが線の表現技法であるのに対して、アクアチントは面の表現技法である。エッチングの場合は、版面に塗られた防食層を剥がしてその部分を腐蝕することで図柄を作るが、アクアチントは防食剤(松脂)を粉末状にして、銅版面が半分ほど露出する程度に銅版に振りかける。松脂が降りかかった銅版を裏から熱して銅版に定着させ、腐蝕液で腐蝕する事によってざらざらな面をつくる。濃淡は腐蝕の時間で調節する。また、松脂を振りかける量でもニュアンスが変わってくる。メゾチントの場合と違って、防食と腐蝕の二つの工程が余分に介在しているため、版面の仕上がりをコントロールするのはより難しい。単独で用いられるよりも、他の線描技法と併用されることの方が多い。水彩画のようなぼかし、にじみをつけるときによく使われたので、その名がある。 アクアチントの応用技法とされるものにシュガー・アクアチントがある。これは、水が半偶発的に作る形状を定着させる技法であり、飛沫や水玉など特殊な模様をつけるためにもよく用いられる。その工程はまず、銅版面に砂糖水を撒いたり、筆で広げたりして模様を作ることから始まる。続いて、砂糖水を乾かして定着させ、そのうえから防食剤を塗り重ねる。これを温水に浸すと、砂糖のうえの防食剤は砂糖が溶けるとともに剥がれ落ち、版面が露出する。あとはこれを腐蝕の工程にかければ砂糖水による模様が版面に刻まれる。場合によっては腐蝕の前に他の間接法が施される。水溶性のものであれば砂糖でなくとも代替できるが、砂糖はその濃度を調整すると適度に粘り気が出て模様をコントロールしやすいし、なにより安価である。
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