エッチング技法の革新
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/30 09:38 UTC 版)
「ジャック・カロ」の記事における「エッチング技法の革新」の解説
カロは卓越した版画技術を持っていたが、それは彼自身がおこなった重要な技術革新に支えられていた。カロは「エショップ(échoppe)」という、先端が傾斜した楕円形の断面になっているエッチング針を多用し、これによってそれまでエングレービングでしかできなかったような膨らみのある線を、エッチングにおいても表現できるようになった。 またカロは、エッチングに用いる防蝕剤をそれまで一般に使われていたロウではなく、リュートの制作者が使う硬いニスを使用した。この変更によって彫られた線がより深く腐蝕されるようになり、印刷に使う版の寿命を伸ばすと同時に、酸の過剰な侵食による失敗、ファウル・バイティング(foul-biting)を劇的に減らすことに成功した。ファウル・バイティングはそれまで、版画制作者が一つのエッチングにあまりに多くの時間をかけることを躊躇させていたが、この革新によってそれまでエングレービングの占有物であった高度に細密な表現が、エッチングによっても可能となった。 カロはまた「ストッピング・アウト(stoppings-out)」を複数回行なう技術において卓越していた。これは版全体を酸で腐蝕させる際、陰影のトーンを軽くしておきたい部分を防蝕剤で覆っておく技法であり、カロはこの工程で入念な調節を行い、前例のないほどの微妙な距離感や陰影の表現に成功した。 これらのカロの技法は、彼の弟子の一人であったアブラム・ボス(Abraham Bosse)によって書かれたエッチングの技法書によって紹介され、イタリア語、オランダ語、ドイツ語、英語に訳されてヨーロッパ中に広まった。
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