から揚げ 表記と語源

から揚げ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 01:35 UTC 版)

表記と語源

空揚・虚揚
「空揚」については、「虚揚」とも書かれ[47]明治以降に「虚揚」や「空揚」といった漢字表記の料理名(魚や肉を揚げたもの)が見られるようになった[25]。日本新聞協会では「『唐揚げ』を使わずに『空揚げ』で統一する」と明示しており、2008年時点の『読売新聞用字用語の手引』改訂新版でも同様であるが、実際の新聞記事には「唐揚げ」も見られる[26]。衣を(あまり)付けない素揚げ、「空の揚げ」が「空揚」としている[25][26]
から揚げ
戦後のNHKの放送用語では、当初は「から揚げ」という表記のみを認めていた。1973年の当用漢字音訓表の内閣告示による音訓の追加で、「空揚げ」という表記も許容されることとなり、さらに唐揚げの方が自然と感じる人が多数との実態もあって2011年に漢字表記の規定を「①から揚げ ②空揚げ (「唐揚げ」とも)」と修正している[25]
唐揚げ
江戸時代初期に中国から伝わった普茶料理の唐揚は、後述のもの以外にも、材料を味付けし、衣にも味を付けて揚げ、露(つゆ)を添えない(汁物ではない)のが本式であるとしているものもある[48]。また普茶料理以外に1829年の『江戸流行料理通』の卓袱料理にも唐揚は見られる。「唐揚(げ)」の漢字は辞書では1960年代の『三省堂国語辞典』には「からあげ [《空揚げ・《唐揚げ](名・他サ)ころもをつけないで、そのまま揚げ・ること(たもの)。」として記載されているが、1980年代の『広辞苑』には慣用表記としての記載はなく[49]、現在の広辞苑には空揚げ・唐揚げ両方記載されている。特に唐揚げは一般化しておりネット検索数や店・商品等での使用も多い[26]。2015年の『新明解類語辞典』のからあげ項では、「唐揚げ 1.小麦粉や片栗粉を軽くまぶして油で揚げること。2.素揚げ。異字 空揚げ」と記載されている。『日本料理語源集』のからあげの項目では、唐風(材料に下味を付けて片栗粉をまぶして揚げる)に揚げるから唐揚、何もつけずに揚げるから空揚と説明されており[34]、コトバンク「日本大百科全書」のからあげの項目では、から揚げは唐揚げ、すなわち中国風の揚げ物の意であるとしている[37]

その他のから揚げ表記

江戸時代初期に中国から伝来した普茶料理(精進料理の一種)が記載されている『普茶料理抄』(1772年)に「唐揚」(「からあげ」または「とうあげ」)の語が見られ、「空揚」が見られるようになった時代よりも古い[10][50]。もっとも、これは豆腐を小さく切って油で揚げた後に醤油と酒で煮たものであり、関係を疑問視する説もある[23][25]。1898年に当時の日本の料理法を網羅した『日本料理法大全』には「からあげ」はないが、『続 日本料理法大全』(1970年)ではからあげの項目がありこの普茶料理の唐揚のみ記されており、1923年の『日本料理法大成』でも「カラアゲ(唐揚)」として是は普茶料理の一品なりと記載されている。1929年の『日本支那西洋料理大辞典』でも同様である。

江戸時代の料理書『素人庖丁』(1803年)などでは、魚介類や野菜類の素揚や小麦をまぶして揚げたものを「煎出(いりだし)」「衣かけ」と呼んでいた[10]


  1. ^ a b 小学館デジタル大辞泉からあげ
  2. ^ 『新修国語漢和辞典』(集英社)や『実用新国語辞典』(三省堂)の「からあげ」項
  3. ^ a b c 『料理用語・基本技術辞典』(第一出版、1958年)
  4. ^ 『和食と日本文化』(小学館)
  5. ^ a b 川上行蔵著、小出昌洋編『完本 日本料理事物起源』(岩波書店、2006年)p549 ISBN 978-4000242400
  6. ^ 新村出編『広辞苑』(岩波書店、1983年)の「竜田揚げ」項
  7. ^ 日本国語大辞典』(小学館、2000-2002年)
  8. ^ から‐あげ【空揚(げ)】 デジタル大辞泉(goo辞書)2020年12月3日閲覧
  9. ^ 明鏡国語辞典』(大修館書店、2002年)
  10. ^ a b c d 川上行蔵, 西村元三朗『日本料理由来事典』(同朋舎、1994年)
  11. ^ 『江戸の料理史』(1989年、中央公論社
  12. ^ 『当て字・当て読み漢字表現辞典』(三省堂)
  13. ^ a b c d 川上行蔵著、小出昌洋編『完本 日本料理事物起源』(岩波書店、2006年)p551 ISBN 978-4000242400
  14. ^ a b 清水桂一『たべもの語源辞典 新訂版』(東京堂出版、2012年)p150「てんぷら」の項 ISBN 978-4490108224
  15. ^ a b c 岡田哲『たべもの起源辞典』(東京堂出版、2003年 )p310「てんぷら」の項 ISBN 4-490-10616-5
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  20. ^ 軍隊調理法「豚肉空揚」 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1464360/118 (国立国会図書館デジタルコレクション)2020年12月3日閲覧
  21. ^ 軍隊調理法「魚空揚」 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1464360/124 (国会図書館デジタルコレクション)2020年12月3日閲覧
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  23. ^ a b jbpress 食の研究所「「空揚げ」か「唐揚げ」か、問題の根っこは深かった」
  24. ^ jbpress 食の研究所の続き
  25. ^ a b c d e f 最近気になる放送用語 「空揚げ」?「唐揚げ」?NHK放送文化研究所
  26. ^ a b c d e f 笹原 宏之, 漢字の現在 第22回 「から揚げ」 - 三省堂ワードワイズ・ウェブ
  27. ^ PRESIDENT Online 食の研究所「男に愛され80年。東京「唐揚げ」物語」[リンク切れ]
  28. ^ 宇佐からあげ ~専門店発祥の地~ 宇佐市ホームページ
  29. ^ 【47都道府県の謎】からあげの「聖地」、なぜ大分県に?宇佐が専門店の「発祥」中津に広がり全国へ『朝日新聞』土曜朝刊別刷り「be」2020年11月7日(4面)2020年12月21日閲覧
  30. ^ 「唐揚げの定義」 日本唐揚げ協会
  31. ^ a b c d 『からあげちょい足しレシピ本』(LD&K、2012年)
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  33. ^ a b c 旭屋出版編集部『鶏唐揚げ プロのテクニック』旭屋出版、2015年。ISBN 978-4751111512
  34. ^ a b 『日本料理語源集』(2004年、旭屋出版)
  35. ^ a b 『コムギ粉料理探究事典』(東京堂出版、1999年)
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  37. ^ a b 「から揚げ」コトバンク日本大百科全書
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  43. ^ 『大分県謎解き散歩』(2012年、新人物往来社
  44. ^ 『民俗小事典 食』(吉川弘文館、2013年)
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  48. ^ 僧房の料理(1936年)
  49. ^ 新村出編『広辞苑』(1983年、岩波書店)「からあげ」
  50. ^ 日本唐揚協会 唐揚の歴史
  51. ^ 新村出編『広辞苑』(岩波書店、1983年)「竜田揚げ」
  52. ^ 参考:三省堂『新明解国語辞典』には見出し語に「竜田揚げ」がない。
  53. ^ “「竜田揚げ」の語源、実は… 奈良でご当地グルメ計画”. 朝日新聞. (2013年11月27日). オリジナルの2013年11月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131127094515/http://www.asahi.com/articles/OSK201311260010.html 2015年9月23日閲覧。 
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  56. ^ 「(食ナビ)奈良・竜田揚げ◇◇マメ知識◇◇軽巡洋艦 語源説も」『日本経済新聞』夕刊2017年5月9日
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  59. ^ から揚げvsフライドチキン 牙城にケンタッキー再挑戦 コミミ口コミ(asahi.com
  60. ^ 愛媛新聞社編集『愛媛の味紀行 ふるさと料理決定版』1989年。
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  62. ^ くしろザンギとは? 釧路ザンギ推進協議会
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  64. ^ 北海道ザンギ愛好会 ザンギの唐揚げの違い(2020年12月3日閲覧)
  65. ^ 唐揚げ・竜田揚げ・ザンギの違いとは?作り方やカロリーの違いは? | 生活のヒントjournal
  66. ^ 北海道雑学百科ぷっちがいど
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  68. ^ 『暮らしの設計128 陳健民・洋子夫妻のおそうざい中国料理』(中央公論社、1979年)
  69. ^ a b 空自空上げ|スペシャルコンテンツ|防衛省 JASDF 航空自衛隊” (日本語). 航空自衛隊. 2019年12月25日閲覧。






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