ホルモン天ぷら
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/10 09:22 UTC 版)
ホルモン天ぷら(ホルモンてんぷら)は、広島県広島市福島町・小河内町(現西区)エリアを発祥とするご当地グルメである[1][2][3][4][5][6][7][8][9]。発祥は1960年代ともいわれる[10]。
ホルモンを天ぷらとして提供するのは広島だけとされる[11][12][13]。
概要
広島ではミノを「白肉」と呼び[14]、「白肉の天ぷら」は広島っ子には古くからの人気のメニューで[14]、中華料理店などでも「白肉の天ぷら」を出す店が今日でも数多くある[14]。福島町界隈のお店は白肉だけでなく、チギモやオオビャク、ハチノス(第二胃袋)、ビチ(赤センマイ)、ガリ(気管)[11]やフワ(ヤオギモ=肺)など、ホルモンの他の部位も出す店が多い[3][7][8][12][15]。様々な部位の美味しさが「ぶちウマ」で味わえる[3][4][14]。値段も安い[1][11][13][16][17]。広島市民にとってはお馴染みのソウルフードである[8][13][14]。
ホルモンは広義には家畜(牛、豚)の内臓肉全ての総称で[2]、正式には「畜産副生物」といい[2]、最近では「バラエティーミート」とも呼ばれる[2]。狭義には食肉のうち小腸や大腸のことを指すが、ホルモン天ぷらの対象となるのは広義のホルモンである[1]。通常のホルモンのように焼いて食べるのではなく、天ぷらにして粉唐辛子を大量に放り込んだ酢醤油に付けて食べる[14][15][16][17][18]。意外に辛くないともいわれるが、広島は「日本のタイ」とも言われる[7]知られざる激辛地帯である[7]。衣がついているため、通常のホルモンが苦手な人でも食べやすいとされる[1][2]。新鮮なホルモンを使用するため[2][8]、ニオイも気にならない[2][8]。また、多くの店でセルフカット方式を採用しており、かつては注文前からテーブルにまな板とプロ用の迫力ある包丁が備えてあったが[3][12][17][16]、時代と共に家庭用の包丁やはさみ・トングに代わりつつある[1][12][15][14]。包丁やはさみ、トングを使ってホルモン天ぷらを一口サイズに切って食べる[3][14][17]。本来は店側で切って出してもよいが[12]、自分の好きなタイミング・サイズでカットして食べるのが広島流で[7][12]、これが醍醐味となっている[1][12][17]。
歴史
かつて、広島市の福島町には食肉施設(広島市中央卸売市場)があり[2][10][14]、独自の食肉文化が多数生まれ[10][11]、施設で廃棄されていた内臓の肉を活用するために当地でホルモン料理店が軒を連ねるようになった[1][2][11]。もともとは、広島市内でも福島町と近隣の都町、小河内町といった限られた地域でのみ食べられていた局所的なご当地グルメで[1]、労働者の味として親しまれていた[19]。ホルモンが広島で早くから食べられた理由については、ホルモンを好んで食べる街は労働者が多い街という共通点があり[12]、軍都として栄えた広島は製造業が発展し、そこで働く労働者にとって安価でスタミナが付くホルモンが好まれたという説もある[12]。こうしたホルモン料理店では、ホルモンを使って様々な料理が行われていたが、徐々に天ぷらが主流になっていった[1]。天ぷらにした理由としては、見た目が苦手な人にも食べやすいように揚げた[2]、柔らかく食べやすいように揚げたなど諸説あるが[2]、福島町のホルモン料理店のひとつである「あきちゃん」のスタッフは、福島町のホルモン料理が天ぷらに特化していった理由はわからないとしつつも、客の評判が一番良かったからではないかと想像している[1]。
戦後の食糧難の際、同地区を中心とした一般家庭にも拡がったとされる[2][11]。近年メディアで取り上げられることも増え[3][5][8][20][21][22]、21世紀になってから徐々に普及[1]、知名度を上げた[6][10]。エリア外でも提供する店舗が増加し[1][10]、広島市民のソウルフードと呼ばれるようになった[8][10][20][23]。広島県でも広島市のソウルフードと認定し[20]、2015年の広島県観光キャンペーン「カンパイ!広島県」でも取り上げた[20]。
広島にはホルモン関連として裏メニューといわれる「でんがく汁」や[2][3][7]、ホルモンのおでん[12]、ホルモンの刺身[2]、ホルモンラーメン[12]、ホルモンうどん[7]なども大抵のお店にあり、新メニューも増えている[2]。またホルモンを揚げて干したせんじがら(せんじ肉、せんじ揚げ)は[2][5][16][24][25][26]、スナックや酒の肴として広島市周辺のコンビニやスーパーマーケット、駅の売店、高速道路のサービスエリアの他、関東や関西の一部コンビニでも入手可能で[5][16]、ホルモン天ぷら同様に福島町界隈が発祥といわれる[1][2][25]。
アクセス
福島町エリアは、広島駅から宮島に広電(広島電鉄本線)で行く場合なら途中にある。観音町か福島町停留場下車。JRでは、山陽本線西広島駅で下車し、新己斐橋を渡れば歩ける距離[15]。こちらの方が早い。近くには広島ラーメンの有名店「中華そば つばめ」や元祖はっさく大福「もち菓子のかしはら」[27]などもある。
他県への波及
2021年には大阪の焼き肉店でもメニューに取り入れられるようになった[18]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m アサノヨウスケ (2020年1月23日). “ホルモン→揚げる→天ぷら→自分でチョキチョキ→楽し!→食べる→美味し!”. メシ通. ホットペッパーグルメ. 2025年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q “2011年4月9日の放送は… ホルモン特集”. あっぱれ!熟年ファイターズ. 広島ホームテレビ. 2024年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。【岡本愛衣と野村舞が広島を学ぶ】広島の隠れたソウルフード「ホルモン天ぷら」を探しに西区福島町へ!【あいまい】 – 広島ホームテレビ
- ^ a b c d e f g “武田真治、ホルモン天ぷら堪能しハニートラップの予感?”. TVerプラス (2019年8月19日). 2022年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。不倫食堂 分冊版 15
- ^ a b 麦吉ぼに (2016年12月15日). “広島で食べたい隠れたB級グルメ!ぶちウマ「ホルモン天ぷら」”. オリコンニュース. オリコン. 2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c d “【バイきんぐ 西村瑞樹の】男の料理に最適な手軽に楽しむホルモン料理!”. 男の隠れ家デジタル. 三栄 (2022年3月2日). 2024年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ a b 「特集1「海まち水まち大遊覧 広島 宮島 尾道 呉」 【column】 ‟ホルモン天ぷら”を知らない!?」『旅の手帖』2025年7月号、交通新聞社、46頁。
- ^ a b c d e f g 野瀬泰申 (2015年6月25日). “箸に小皿に包丁&まな板 広島ホルモン天ぷらの食べ方いわゆる冷やし中華(3)”. NIKKEIリスキリング. 日本経済新聞社・日経BP社. 2025年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g “【せっかくグルメ】広島県広島市で絶品グルメ探し!”. バナナマンのせっかくグルメ!!. TBSテレビ (2020年12月31日). 2025年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。“【せっかくグルメ】鮮度抜群!ミノやハラミが天ぷらになった黒毛和牛の「ホルモン天ぷら」”. バナナマンのせっかくグルメ!!. TBSテレビ (2021年2月7日). 2021年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ “Vol.4 ミノ・ハチノス・センマイ・ギアラ・ガツ編 おつまみにもおかずにもなる広島のご当地グルメ! 牛ミノと牛ハチノスの天ぷら”. バラエティミートレシピ. 日本畜産副産物協会 (2021年11月10日). 2024年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。広島のご当地グルメ! ホルモンの天ぷら
- ^ a b c d e f 佐藤明日香 (2022年4月23日). “ホルモンとは思えない柔らかさ! 広島新名物「一夜干しホルモン」を使った天ぷらにハマる”. 食べログMagazine. カカクコム. 2025年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e f 裵學泰『「ガリとウルテ」』西便制広報西支部発行2021年11月号
- ^ a b c d e f g h i j k “包丁で切りながら食べるホルモンの天ぷら”. 食文化を旅する. 日本食文化観光推進機構 (2021–01–15). 2025年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c 広島ソウルフード[ホルモン汁 / ホルモン天ぷら]広島市西区/ ますい – [HIPPY] YouTubeチャンネル[ひぴ動]“【動画】[感動美味]ホルモンの天ぷらとホルモン汁、ホルモンうどんのお店[天ぷら ますい]”. 西広島タイムス publisher=エル・コ (2021年9月2日). 2022年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 麦吉ぼに (2016年12月20日). “広島で食べたい隠れたB級グルメ!ぶちウマ「ホルモン天ぷら」”. トラベルjp. ベンチャーリパブリック. 2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c d “マストの広電 福島町電停前、ホルモン天ぷらとでんがく汁”. 鉄道チャンネル. エキスプレス (2018年4月29日). 2023年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e 江ノ島茂道 (2022年7月28日). “広島にはホルモンの天ぷらがあるらしい”. デイリーポータルZ. デイリーポータルZ. 2025年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ a b c d e P.K.サンジュン (2018年11月28日). “まな板と包丁ドーーン! 広島の知られざるB級グルメ「ホルモンの天ぷら」がカルチャーショックを受けるウマさ”. ロケットニュース24. ソシオコーポレーション. 2025年6月26日閲覧。
- ^ a b 山中羊子s (2021年11月2日). “広島が発祥のB級グルメ…大阪の焼肉店が提供する「ホルモン天ぷら」を食べてみた”. まいどなニュース. 2023年6月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月2日閲覧。
- ^ “広島 ホルモン天ぷら=広島市西区 労働者の味、客層広がる コリコリした食感 大きさ、自分で切って”. 毎日新聞 (2017年6月20日). 2022年2月2日閲覧。
- ^ a b c d “広島市のソウルフード「ホルモン天ぷら」実食!「カンパイ!広島県」記者発表会4”. MANTANWEB. MANTAN (2017年6月20日). 2025年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ “クラムチャウダー世界一!千葉県・船橋市のブランド貝とは?広島で愛されるおつまみ「ホルモン天ぷら」『秘密のケンミンSHOW 極』…”. 婦人公論.jp. 中央公論新社 (2024年7月11日). 2025年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ “千原ジュニアの思い出の1台「いつか、あんな車に…」 実は“同期”…最新型に大興奮「アカン、アカン」”. ENCOUNT (2025年4月23日). 2025年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ “鮮度抜群!ミノやハラミが天ぷらになった黒毛和牛の「ホルモン天ぷら」”. テレビドガッチ (2021年2月7日). 2022年2月2日閲覧。
- ^ テレビ東京・BSテレ東, 知る食うロード~発見!食の景観~【広島市 牛ホルモン編】(BSテレ東、2018/3/24 18:00 OA)の番組情報ページ | テレビ東京・BSテレ東 7ch(公式), オリジナルの2021年11月17日時点におけるアーカイブ。 2024年7月19日閲覧。
- ^ a b “広島ソウルフード『せんじ肉』←お酒にぴったりな豚ホルモンのおつまみ 「噛めば噛むほどうまみ出る」”. ラジトピ ラジオ関西トピックス. ラジオ関西 (2024年12月4日). 2025年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ 福田マリ (2018年11月22日). “TOKIO・松岡昌宏、広島フード「せんじがら」に「バカうまじゃん!」と立ち上がって感動!”. サイゾーウーマン. サイゾー. 2025年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月26日閲覧。
- ^ 認定品名 元祖はっさく大福
- ホルモン天ぷらのページへのリンク