電磁波
【英】electromagnetic wave, radio wave
電磁波とは、電場と磁場が相互に組み合わさりながら、空間を伝達するエネルギーの波のことである。
電場とは、電気エネルギーが及ぶ範囲のことであり、磁場とは磁気エネルギーの及ぶ範囲のことである。その両者が互いに絡み合って電磁波が形成される。電気が流れたり、電波が通っている空間では必ず電磁波が発生している。電磁波が真空中を伝達する速度は光速と同じ、約30万キロメートル毎秒である。
電磁波は、1秒間に生じる電磁波の波の数である「周波数」で表され、周波数が高いほどエネルギーが高いとされている。周波数の高い順に、放射線(X線、ガンマ線)、紫外線、可視光線、赤外線、電波などの種類がある。
電磁波には、X線やガンマ線などの一般に放射線と呼ばれる「電離放射線」と、可視光とそれより周波数の低い「非電離放射線」の2種類に大別できる。電離放射線は、細胞などに直接的な影響を与えるため、国際的な安全基準が設けられている。非電離放射線は細胞などに直接的影響を与えないものの、人体への影響が懸念されており、電磁波による影響を抑えるための研究が行われている。
電磁波
電磁波
(electromagneticwave から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/23 00:48 UTC 版)
電磁波(でんじは、英: electromagnetic wave, EMW)または電磁放射(でんじほうしゃ、英: electromagnetic radiation, EMR)とは、電場と磁場の変化を伝搬する波動のことである。
電磁波は波と粒子の性質を併せ持ち、散乱や屈折、反射、また回折や干渉など、波長によって様々な波としての性質を示す一方で、微視的には粒子として個数を数えることができる。
日常生活で知られる光や電波などは電磁波の一種である(詳細は「種類」の項目を参照のこと)。
種類
電磁波は波長によって様々な分類がされており、波長の長い方から電波・光・X線・ガンマ線などと呼ばれる。
- 電波
- 波長が 100 μm 以上(周波数が 3 THz 以下)の電磁波すべてを指し[1]、さらに波長域によって低周波・超長波・長波・中波・短波・超短波・マイクロ波と細分化される。
- 光
- 光は広義には電磁波を意味し、狭義には可視光線のみを指す[2]。文献によって、紫外線から赤外線までの波長範囲を意味することもあれば[3]、波長が 1 nm から 1 mmの範囲にあるものと定義されることもある[4]。
- X線、ガンマ線
- X線とガンマ線は発生機構により区別されることが一般的である。X線は電子遷移や制動放射などにより原子核外で発生し、ガンマ線は原子核内で発生する[5]。天体物理学では、波長が 0.01-1 nm のものをX線、0.01 nm より短いものをガンマ線と定義している[6]。電磁波のエネルギーが大きくなると、波長や周波数ではなく光子1個が持つエネルギー(電子ボルト)で表すことが多くなる。人類は1 GeVオーダーの光子を生成できる[7]。宇宙線観測所LHAASOはガンマ線バーストGRB 221009Aの発生中に18 TeVの光子を記録した[8]。
-
波長による電磁波の分類[9][注 1] 分類 波長/メートル 周波数(振動数)/ヘルツ 光子のエネルギー/eV[注 2] ガンマ線 < 10−11 > 3 × 1019 > 1 × 105 X線 10−11 〜 10−8 3 × 1019 〜 3 × 1016 1 × 105 〜 1 × 102 紫外線 10−8 〜 3.80 × 10−7 3 × 1016 〜 8 × 1014 1 × 102 〜 3 可視光線 3.80 × 10−7 〜 7.60 × 10−7 8 × 1014 〜 4 × 1014 3 〜 1.6 赤外線 7.60 × 10−7 〜 10-3 4 × 1014 〜 3 × 1011 1.6 〜 1 × 10−3 電波 > 10-4 < 3 × 1012 < 1 × 10−2 マイクロ波 10-3 〜 100 3 × 1011 〜 3 × 108 1 × 10−3 〜 1 × 10−6 超短波 100 〜 101 3 × 108 〜 3 × 107 1 × 10−6 〜 1 × 10−7 短波 101 〜 102 3 × 107 〜 3 × 106 1 × 10−7 〜 1 × 10−8 中波 102 〜 103 3 × 106 〜 3 × 105 1 × 10−8 〜 1 × 10−9 長波 103 〜 104 3 × 105 〜 3 × 104 1 × 10−9 〜 1 × 10−10 超長波 104 〜 105 3 × 104 〜 3 × 103 1 × 10−10 〜 1 × 10−11 極超長波 105 〜 108 3 × 103 〜 3 × 100 1 × 10−11 〜 1 × 10−14
なお、これらの境界は統一的に定められたものではない。学問分野・国ごとの法律・規格等によって多少の違いがある。
電磁放射線
放射線分野において、電磁波でありかつ放射線であるものを電磁放射線と呼び、アルファ線、ベータ線、中性子線などの粒子放射線と対比させて用いることがある[10]。一般的にX線およびガンマ線のことを指すが[11]、赤外線、可視光線、紫外線を含めることもある[12]。電離放射線とは異なる。
発見の歴史
可視光線(光)の歴史については光を参照せよ。
可視光線以外の波長を持つ電磁波は19世紀初頭に発見された。赤外線の発見は天文学者ウィリアム・ハーシェルによるものとされ、彼は1800年にロンドン王立協会で研究成果を発表した[13]。ハーシェルはガラスプリズムを用いて太陽光を分散させ、温度計の温度上昇を観測し、スペクトルの赤色領域外に加熱を引き起こす不可視の光線を発見した。この「熱線(calorific rays)」は後に赤外線と呼ばれるようになった[14]。
1801年、ドイツの物理学者ヨハン・ヴィルヘルム・リッターは、ハーシェルと同様に太陽光とガラスプリズムを用いた実験で紫外線を発見した。リッターは、プリズムで分散させた太陽光スペクトルの紫色端付近の不可視光線が、隣接する紫色光よりも速く塩化銀を黒化させることに気づいた。リッターの実験は、後に写真術となる技術の先駆けであった。リッターは、紫外線(当初は「化学線(chemical rays)」と呼ばれた)が化学反応を引き起こす能力を持つことを指摘した[15][16]。
1862年から1864年にかけて、ジェームズ・クラーク・マクスウェルは電磁場に関する方程式を導き出し、この場における波は既知の光速に極めて近い速度で伝播することを示唆した。マクスウェルは、可視光(および推論により不可視の赤外線や紫外線も)は電磁場において伝播する擾乱(あるいは放射)であると提唱した。1887年、ハインリッヒ・ヘルツは初めて人工的に電波をつくることに成功した。これは可視光よりもはるかに低い周波数で振動を生じさせるよう計算された電気回路を用い、マクスウェルの方程式が示唆する振動する電荷と電流を生成する手法に従ったものである。ヘルツはまたこれらの波を検出する方法を開発し、後に電波およびマイクロ波と呼ばれるものを作り出し、その特性を明らかにした[17]:286,7。
ヴィルヘルム・レントゲンはX線を発見し命名した。1895年11月8日、彼は真空管に高電圧を印加する実験中、近くの被覆ガラス板が蛍光していることを見つけた。彼はその後1か月でX線の主要な性質を発見した[17]:307。
最後に発見された電磁波領域は放射能に関連している。アンリ・ベクレルは1896年、ウラン塩が写真乾板を覆い紙を透過して露光させることを発見した。マリー・キュリーは特定の元素のみがこのようなエネルギー線を放出することを明らかにし、その後まもなくラジウムの強力な放射線を発見した。1899年、アーネスト・ラザフォードは実験により、ウラン鉱石からの放射線をアルファ線(アルファ粒子)とベータ線(ベータ粒子)に分類したが、これらは荷電粒子であることが判明した。1900年、フランスの科学者ポール・ヴィラールがラジウムから電気的に中性で特に透過性の高い第3の放射線を発見した。彼がこれを報告した後、ラザフォードはこれがさらに別の放射線種に違いないと気づき、1903年にガンマ線と命名した。
1910年、英国の物理学者ウィリアム・ヘンリー・ブラッグはガンマ線が粒子ではなく電磁波であることを実証した。1914年にはラザフォードとエドワード・アンドレードがガンマ線の波長を測定し、X線と類似しているがより短波長・高周波数であることを発見した。ただしX線とガンマ線の間には交差領域が存在するため、ガンマ線よりも高エネルギー(短波長)のX線や、その逆も発生し得る[17]:308,9。
特性と応用
電磁波は波長によって様々な特徴を持つ。
最も波長の長い電波は、進行方向に多少の障害物があっても進行することができる。このため、通信や放送などの長距離の情報送信に使用されることが多い。テレビやラジオ、携帯電話などが代表的である。
電波よりも波長の短い光は、物質に吸収されて化学反応や発熱などの相互作用を生じることがある。この現象は眼が見える理由でもあるが、他に植物の光合成やリソグラフィーなどが該当する。
さらに波長が短いX線になると、光子の持つエネルギーが大きいため、分子に吸収されて熱振動に変わることはなく、物質を構成する電子などに直接作用する。そのため、密度が低い物質ほどよく透過する。この性質を利用することで、レントゲン写真やX線CTを撮影することができる。工業や自然科学では、X線回折やX線光電子分光など物質の構造や元素の分析に用いられている。
X線の屈折率は極めて1に近く、レンズやプリズムによる分散は事実上できず、反射も難しい[18]。
ガンマ線のエネルギーが1.022 MeVを超えると対生成を起こすようになる[19]。
影響
本項では「悪影響」に関して記述している。
生体への影響
紫外線・X線・ガンマ線などのエネルギーの大きな電磁波は、遺伝子に損傷を与えるため発癌性を持つ。X線・ガンマ線などの電離放射線については、年間許容被曝量が法律によって決められている。
低周波電磁場
低周波は、非電離放射線であるから遺伝子に直接には影響を与えないと考えられている[20]。
また、国立環境研究所 (NIES) の評価において、超低周波電磁界の暴露によって明確な生体影響は認められなかった[21]。
高周波電磁場
国際非電離放射線防護委員会は、策定したガイドラインの中で高周波電磁界(100 kHz - 300 GHz)への曝露に対し、比エネルギー吸収率 (Specific Absorption Rate, SAR)を指標とした制限を示している[22]。日本でもこの国際的なガイドラインと同等の指針値等が定められた「電波防護指針」が策定されており、その一部は電波法令による規制として導入されている[23]。学会などでも比吸収率の計算(FDTD法)や人体を模した人体ファントムの組成の決定などが行われている。
調査の歴史
電磁波の健康への影響は調査自体が非常に難しい。
米国国立環境健康科学研究所(英語: National Institute of Environmental Health Sciences)は1992年から1999年までに電磁波の健康に対する影響の研究を行った。研究所は、「科学的証拠は超低周波電磁場への曝露がもたらす健康リスクは弱いことを示唆している」と結論した。臨床研究、細胞を用いた実験室での研究、動物を使用した研究、疫学研究の相関性の欠如が結果の解釈を複雑化しているとも述べている[24]。
1995年、アメリカ物理学会は、送電線や電化製品から発せられる電磁波による癌の危険性についてコメントするよう頻繁に求められることを受けて、「癌と送電線の電磁波に関係があるという推測は科学的に立証されていない」と公式声明を出した[25]。
1996年、全米科学アカデミーは
- 細胞、組織そして生物(ヒトを含む)への商用周波電磁界の影響に関して公表されている研究の総合評価に基づき、現在の主要な証拠は、これらの電磁界への曝露が人の健康への障害となることを示していないと結論する。
- 特に、居住環境での電磁界の曝露が、ガン、神経や行動への有害な影響、あるいは生殖・成長への影響を生じさせることを示す決定的で一貫した証拠は何もない。
1979年、コロラド州において、白血病を発症した子供たちの住居の周りには高電流の送電線が比較的多く存在するという論文が出され[28]、世論に電磁波への不安が巻き起こった。 1997年、アメリカ国立がん研究所 (NCI) は 7 年間の疫学調査の結果から「小児急性リンパ芽球性白血病と磁場との関係は検知するにも懸念するにも微弱」であると発表した。この調査の過程で、白血病患者の家庭と送電線の近隣での居住には全く相関関係が見られなかった事が判明した[29]。
1999年、カナダの五つの州において調査された結果が発表され上述の NCI の結果と酷似した結論が出される[30]。
疫学調査の正確性に対し疑問が投げかけられることもたびたびある。日本では、2003年に衆議院議員の長妻昭によって、国立環境研究所が行った「生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究」[31] が国会で取り上げられた。長妻はこの研究報告の電気毛布等の小児白血病・脳腫瘍発症への影響に関するデータについて触れ、15 歳以下の小児の電気毛布等の使用に関する健康リスク評価および電磁波の影響に対する評価の正当性に疑問を呈した[32]。この研究について政府は「交絡要因除去のための調査データであり電気毛布使用に対する健康リスク評価は直接行っていない」とし、調査そのものの正当性に関する指摘に対しては「優れた研究ではなかった、との評価がなされたところである」と回答している。電磁波そのものの影響については「子供部屋の平均磁界強度が 0.4 μT 以上の場合のみ健康リスクが上昇すること等が示唆されているが、本研究の結果が一般化できるとは判断できない」と回答している[33]。
- 世界保健機関 (WHO) による2007年時点での公式見解
- 2007年6月に公表された、世界保健機関の公式見解を示すファクトシート322 (PDF) では、短期的影響に関しては「高レベル(100 μT よりも遙かに高い)での急性曝露による生物学的影響は確立されており、これは認知されている生物物理学的なメカニズムによって説明されています。」と評価された。一方、潜在的な長期的影響に関しては「小児白血病」と「小児白血病以外のその他の健康への悪影響」に分けて評価されており、小児白血病に関しては「全体として、小児白血病に関する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません」と評価され、その他の影響に関しては超低周波磁界(Extremely Low Frequency Magnetic Field, ELF 磁界)曝露とこれら全ての健康影響との関連性を支持する科学的証拠は、小児白血病についての証拠よりもさらに弱いと結論付けている。いくつかの実例(すなわち心臓血管系疾患や乳がん)については、「ELF 磁界はこれらの疾病を誘発しないということが、証拠によって示唆されています」と評価された。
- 世界保健機関による2011年時点での公式見解
- 2011年5月31日、WHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関)は、携帯電話の電磁波と発がん性の関連について、限定的ながら「可能性がある」とする分析結果を発表した[34]。携帯電話を耳にあてて長時間通話を続けると「脳などの癌を発症する危険性が上がる可能性がある (Group 2B)」とし、癌を発症する危険性を上げないための予防策としては、マイク付イヤホンを使用することを挙げた。
- 作業部会のジョナサン・サメット (Jonathan Samet) 委員長は「神経膠腫(しんけいこうしゅ=グリオーマ = 脳のがんの一種)や、耳の聴神経腫瘍になる危険性を高めることを示す限定的な証拠がある」とした。なお、IARC 幹部は、文字のメールを打つ形での携帯電話の使用[注 3]は、発がん性との関連はないと説明した。
- なお、IARC は論文を多数検討した上で「根拠はまだ限定的である。さらなる研究が必要」とも述べた。Asahi.com の大岩ゆり記者は「それでも IARC がこのような決定をしたのは、少しでも健康に害を及ぼす可能性があるものは早めに注意喚起する、という WHO の予防原則からだ」と解説した[34]。
| 発がん性の分類及び分類基準 | 分類結果 | 分類結果(電磁波以外) |
|---|---|---|
| グループ 1:発がん性がある | 電離放射線、紫外線 | アルコール飲料、喫煙、アスベストなど |
| グループ 2A:おそらく発がん性がある | - | アクリルアミド、無機鉛化合物、マラリアなど |
| グループ 2B:発がん性があるかもしれない | 超低周波磁場、高周波電磁場 | 鉛、重油、ガソリン、コーヒーなど |
| グループ 3:発がん性を分類できない | 静電場、静磁場、超低周波電場 | 蛍光灯、原油、カフェイン、お茶など |
機械への影響
現在のエレクトロニクス機器(電子機器)は、低電圧の信号を高インピーダンスで扱うことが普通であるため、環境中に強い電磁波が存在すると誤動作を生じやすい。その機器が誤動作を生じやすいか生じ難いかを測る指標としてイミュニティ (Immunity) がある。特に携帯電話からは比較的強い電磁波が発せられるため、航空機や医療機器などへの影響が多数報告されている。
日本における航空機への影響と対策
航空機に関しては、携帯電話、携帯型ゲーム機などの電磁波の影響による運行計器の誤作動が多数報告され、その中には大惨事になりかねない事態を引き起こした例もあったため、まず各航空会社で規制が行われるようになった。2004年には改正航空法によって禁止される機器が定められた。2007年3月に同法は改正され、携帯電話、パソコン、携帯情報端末など電波を発する状態にあるものは常時使用禁止、電波を発しない状態のものでも離着陸時使用禁止とし、携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラ、テレビ、ラジオなども離着陸時使用禁止と定められた。
ゲーム機に関しては、「ニンテンドーDS」や「PlayStation Portable (PSP)」といった無線LAN内蔵の製品が存在しており機内での使用も増えているにもかかわらず、それらが2004年の改正航空法および航空法施行規則では「離着陸時のみ作動させてはならない電子機器」として指定されてしまっていて仮に無線LANの電波を発射させていても法律上取り締まれないという危険な状態であったが、各航空会社が規制を行い、その後2007年の改正で解消された。
2007年3月「航空機内における安全阻害行為等に関する有識者懇談会」の報告書では次のような症状が報告されている。
- 無線にノイズが発生
- 衝突防止装置が誤作動し、回避指示が出た
- 自動操縦で上昇している時に突然横方向に25度傾いた
- 自動操縦装置で水平飛行中、高度が設定値から 400 ft (122 m) ずれた
- 着陸時に自動操縦装置の表示が大きくズレて元に戻らなくなった
原因と推測されているのは携帯電話が 6 割強と最も多い。次いでパソコンが 1 割強。「障害が発生したケースの約 9 割において、電子機器を使用する者の存在が確認されている」とされ、「障害発生時に電子機器の使用を控えるようアナウンスしたところ、約 5 割で障害が復旧した」と報告されている[36]。
2014年、規制緩和と常時接続できる設備が整ったため飛行中でも携帯電話での通話、インターネット接続、他、電子機器の利用が順次解禁となった[37]。
日本における医療機器への影響と対策
植込み型心臓ペースメーカーへ携帯電話から電磁波による影響があるのは、2018年の総務省調査では最大でも 1 センチメートル (cm) の距離までであった[38]。この影響も、患者自身が携帯電話を離すことが可能で、影響から回復できるという調査結果になっている。ただし指針では15 cm以上離れることを推奨している[39]。なお、2002年の総務省調査では影響があるのは11 cmであり、指針は22 cm以上であった[40]。距離が異なっているのは、現在使用されていない第2世代移動通信方式での調査であることに一因がある。
その他
日本の公正取引委員会は、電磁波によるネズミ撃退器について、効果が認められないとして排除命令を出したことがある[41]。
アメリカ軍は、電磁波を利用した非致死性兵器の研究を行っている(詳細はアクティブ・ディナイアル・システムを参照)。
理論
電磁波を説明する理論は、歴史的経緯や議論の側面によって光学、電磁気学、量子力学において統合的かつ整合的に扱われる。
電磁波は、その一種である光、特に可視光線について古くから研究されてきた。光の性質を研究する学問は、光学と呼ばれている。
光学とは別に、静電気(摩擦電気)や、磁石の磁力などの研究において、電場(電界)と磁場(磁界)という二つの場によって物理現象を記述することが試みられた。この学問を電磁気学といい、伝搬する電磁場の振動として電磁波の存在が知られるようになった。
量子力学は、古典的な電磁気学に反する現象が知られるようになり、電磁気学を修正する試みの中で構築された。これに伴い、電磁波の理論も量子力学、特に場の量子論(単に場の理論とも)によって記述されることになった。たとえば、自然放出や誘導放出などの電磁波の放出現象などは、量子力学的な粒子と場の相互作用によって説明される。
光学
波を伝える媒体(媒質)が存在しない真空中でも電磁波は伝わる。電場と磁場の振動方向は互いに垂直に交わり、電磁波の進行方向もまた電磁場の振動方向に直交する。つまり、電磁波は横波である。基本的に電磁波は空間中を直進するが、物質が存在する空間では、吸収、屈折、散乱、回折、干渉、反射などの現象が起こる。また、重力場などの空間の歪みによって進行方向が曲がる(歪んだ空間に沿って直進する)。
媒質中を伝播する電磁波の速度は、真空中の光速度を物質の屈折率で割った速度になる。例えば、屈折率が 2.417 のダイヤモンドの中を伝播する可視光の速度は、真空中の光速度の約 41 % に低下する。ところで、電磁波が異なる屈折率の物質が接している境界を伝播するとき、その伝播速度が変化することによって屈折が起こる。これを利用したものにレンズがあり、メガネやカメラ、天体望遠鏡などに使われ、電子回路の複写などにも利用されている。 なお屈折率は電磁波の波長によって異なるため、屈折する角度も波長に依存する。これを分散と呼ぶ。虹が七色に見えるのは、太陽光が霧などの微小な水滴を通るとき、分散があるために、波長が長い赤色光と波長の短い紫色光が異なる角度に屈折するためである。
電磁波は、特にその波長によって物体との相互作用が異なる。そこで、波長帯ごとに電磁波は違う呼び方をされることがある。すなわち、波長の長い方から、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線(あるいはガンマ線)などと呼ばれる。我々の目で見えるのは可視光線のみだが、その範囲(波長 0.4–0.7 μm)は電磁波の中でも極めて狭い。可視光線の中では単色光の場合、赤、黄、緑、青、紫の順に波長が短くなる。そのため、ある基準よりも波長の長いことを「赤方」、波長の短いことを「青方」と表現することがある。
前述の通り、真空中では電磁波の速さは一定であるため、波長の長い電磁波は振動数が小さく、波長の短い電磁波は振動数が大きい。
電磁波には重ね合わせの原理が成り立ち、電磁波は線型性を持つことが知られる。線型性によって、電磁波を平面波、すなわち特定の振動方向と進行方向を持つ波の重ね合わせとして表現することができる。平面波はまた、同じ方向へ進む正弦波を用いて分解することができる。各々の正弦波は、波長、振幅、伝播方向、偏光、位相によって特徴付けられる。
ある電磁波を多くの正弦波の重ね合わせとみなしたとき、波長ごと、あるいは振動数ごとの成分の大きさの分布をスペクトルという。 例えば、理想的な白色光はすべての波長成分が一様に含まれている。逆に単色光は一つの波長成分だけを持つ。
電磁気学
1864年にジェームズ・クラーク・マクスウェルは、それまでに明らかにされていた、
- ファラデーの電磁誘導の法則
- アンペール=マクスウェルの法則
- 電場に関するガウスの法則
- 磁場に関するガウスの法則
という電磁場に関する四つの法則を統合することによって、マクスウェルの方程式を完成させた。これは電磁気学の基本原理である。電磁波は振動する電磁場であるため、マクスウェルの方程式によって電磁波も記述することができる。
マクスウェルの方程式は、電荷も電流もない空間では電場に対する波動方程式と磁場に対する波動方程式に帰着する。電磁場が波動方程式によって記述されるということは、電荷の運動に起因する電磁場の振動が波として空間を伝わるということである。マクスウェルの理論によって予想されたこの電磁波の存在は、1888年にハインリヒ・ヘルツによる実験で確認された。
また波動方程式から得られる真空中を伝播する電磁波の速さは一定である。そのため、相対性原理を仮定するならば、どのような慣性系についても、すなわち観測者がどのような方向と速度で動いていたとしても、観測される電磁波の速さは不変である。これを光速度不変の原理という。 その速さは真空中の光速に等しく 299792458 m/s(約 30万 km/s)である。光速度が不変であることは、有名なマイケルソン・モーリーの実験をはじめとして様々な実験により確かめられている。この真空中の光速は最も重要な物理定数の一つである。光速度不変の原理から、光速を用いて長さと時間の単位を定義することができる(メートル、秒の定義を参照)。
波動方程式の解として、電磁場が時間の関数と空間の関数の積で表されるような変数分離形のものを仮定すると、電磁場は調和振動子として記述されることが分かる。波動方程式の線型性から、このような変数分離形の解の線形結合もまた波動方程式を満たす解となるため、一般に電磁場は独立な調和振動子の集まりであると見なせる。
電磁波の発生機構
電磁波は上述の議論により、物質がない場所では伝播はするが、もともと振動がない場合には発生しない。つまり、物質との相互作用として電荷や電流を組み込むことで電磁波が発生する。電磁波の発生機構を議論する場合、ポテンシャル形式の方が見通しが立ちやすいため、ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルを用いて4元形式で議論することが一般的である。4元形式で議論した場合、マクスウェル方程式はローレンツゲージを適用することで
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可視光線は大気をよく透過する。これは可視光の窓として知られる性質である。その理由は、窒素、酸素、オゾンの励起に対してはエネルギーが低すぎ、水蒸気や二酸化炭素の分子振動周波数の励起に対してはエネルギーが高すぎるためである[46]。
赤外線領域の吸収帯は主に水蒸気の振動励起モードに起因する。マイクロ波や電波は、水蒸気を励起するにはエネルギーが低すぎるため大気をよく透過する[47]。
波長が30メートル以上(約10メガヘルツ以下)になると、電離層のプラズマと相互作用し一部が反射されるようになる。短波でも長距離通信ができるのはこの特性のためである。逆に言えば、この波長領域では宇宙からの電波の到達が妨げられる[48]。
電磁波と熱
電磁波が物質に衝突すると、物質内の荷電粒子は振動してエネルギーを得る。その後、散乱光・反射光として物質から再び出ていく場合もあれば、物質内の微視的運動に散逸して熱エネルギーあるいは運動エネルギーに変わる場合もある。高エネルギーの電磁波で起きるいくつかの例外(蛍光、高調波発生、光化学反応、光起電力効果など)を除けば、吸収された電磁波は物質を加熱する。これは赤外線、マイクロ波、電波領域において起こる現象である。
強力な電波は生体組織を熱的に焼損させ、食品を加熱調理できる。赤外線・可視光・紫外線レーザーも十分な強度があれば紙を容易に発火させる[49]。X線やガンマ線は物質内に高速電子を生成し(電離作用)化学結合を切断する。電子は他の原子と何度も衝突した後、最終的にそのエネルギーの大部分は熱エネルギーとなる。紫外線はほとんど電離作用を持たないが、電子励起による分子損傷を引き起こす可能性がある[49]。
黒体の赤外線放射は、熱の一形態とみなされる。これは、赤外線が相当温度を持ち、単位熱エネルギーあたりのエントロピー変化と関連しているためである。ここでいう「熱(heat)」は物理学および熱力学における専門用語であり、熱エネルギーとは異なる。あらゆる種類の電磁エネルギーは、物質との相互作用において熱エネルギーに変換され得る。したがって、あらゆる電磁波は、吸収される際に物質を「加熱」(熱エネルギー温度を上昇させるという意味で)し得る[50]。その逆または時間反転プロセスが熱放射である。物質中の熱エネルギーの多くは荷電粒子のランダムな運動からなり、このエネルギーは物質から放射される。その結果生じる電磁波は別の物質によって吸収され、その物質を加熱する[51]。
マクスウェル方程式からの電磁波の導出
電磁波は、マクスウェル方程式として知られる古典的な電気と磁気の法則によって予測される。自由空間におけるマクスウェル方程式から始めよう(自由空間には電荷![]()
「Electromagnetic wave」の例文・使い方・用例・文例
- <wend, waver<wave.
- electromagneticwaveのページへのリンク


