こうかがく‐はんのう〔クワウクワガクハンオウ〕【光化学反応】
光化学反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 04:23 UTC 版)
光化学反応(こうかがくはんのう、英語: photochemical reaction, light‐dependent reaction)は、物質が光を吸収して化学反応を起こす現象であり、一般には、色素分子が光エネルギーを吸収し、励起された電子が飛び出し、物質の酸化還元を引き起こすものであるが、特に生物学で光合成の過程に含まれるこのような化学反応を指す。光合成における光化学反応では、特定のクロロフィル分子がこの反応を起こし、還元物質NADPHやATPの合成の源となる。酸素発生型光合成では光化学反応により水を電子供与体として用い、酸素を発生し(=水の光分解)、炭酸ガスを還元する。光合成系に含まれる多数のクロロフィル分子のうち光化学反応を起こすのは特定の分子(二量体)だけなので、クロロフィルの特別ペア (special pair) という。これ以外のクロロフィルは、集光色素または電子受容体などとしてはたらく。
- ^ Béjà, Oded; Aravind, L.; Koonin, Eugene V.; Suzuki, Marcelino T.; Hadd, Andrew; Nguyen, Linh P.; Jovanovich, Stevan B.; Gates, Christian M. et al. (2000-09-15). “Bacterial Rhodopsin: Evidence for a New Type of Phototrophy in the Sea”. Science 289 (5486): 1902–1906. doi:10.1126/science.289.5486.1902 .
- ^ Giovannoni, Stephen J.; Bibbs, Lisa; Cho, Jang-Cheon; Stapels, Martha D.; Desiderio, Russell; Vergin, Kevin L.; Rappé, Michael S.; Laney, Samuel et al. (2005-11). “Proteorhodopsin in the ubiquitous marine bacterium SAR11” (英語). Nature 438 (7064): 82–85. doi:10.1038/nature04032. ISSN 1476-4687 .
光化学反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/01 13:57 UTC 版)
光化学反応は光合成の中でも明反応といわれる光エネルギーの関与する反応である。この反応も呼吸鎖と同様、酸化還元反応が連鎖的に起こる反応であるが、水の光分解というユニークな反応を含んでいる。光化学反応については光照射による電子の励起により酸化還元電位が下がる(外部からのエネルギーの投入)と言う興味深い現象が見られる。 光化学系II 複合体における反応光化学系II においては水の光分解の反応が見られる。これは光励起により活性中心P680において電子がフェオフィチンに移動するのに伴い、水分解の活性中心であるマンガンから電子が引き抜かれ、4価のマンガンとなって水から電子を引き抜くと言う反応が見られるがゆえである。つまり、P680における酸化還元電位は水のものよりもはるかに高い。 P680(E’0 = 1.2V) → フェオフィチン(E’0 = -0.4V) チロシン残基(E’0 = 1.1V) → P680 2価マンガン(E'0 = 0.85V) → チロシン残基 H2O(E’0 = 0.82V) → 4価マンガン 光照射によって以上の反応が起きる。電子伝達経路としては上記の順番は逆だが、光照射による励起が関与するために上記の順番で反応は起こる(とはいえ、電子伝達はナノ秒程度の一瞬だが)。酸化還元電位差は以下の通りである。 ⊿E’0 = -1.6V ←負の電位差、光エネルギーの投入 ⊿E’0 = 0.1V ⊿E’0 = 0.25V ⊿E’0 = 0.03V フェオフィチン以降はプラストキノンを経てシトクロムb6/f複合体に伝達される。 光合成系II の構造やその酸化還元活性分子の配置に大きな相同性を持つといわれている紅色光合成細菌の光合成反応中心にはマンガンが存在せず、水の分解は行われない。 光化学系I複合体における反応光化学系Iにおいてはシトクロムb6/f複合体でプロトン濃度勾配形成に関与した電子をプラストシアニンを経て光励起する。その後フェレドキシンに伝達され、カルビン - ベンソン回路に関与するNADPHの生産が行なわれる。 プラストシアニン(E’0 = 0.39V) → P700(E’0 = 0.4V) P700 → 初発電子受容体A0(E’0 = -1.2V) 初発電子受容体A0 → フェレドキシン(E’0 = -0.43V) フェレドキシン → NADP+/NADPH(E’0 = -0.32V) 光照射により再び酸化還元電位が下げられ、プロトン濃度勾配に寄与した電子を今度はNADPHの合成に当てる。また以上の反応は非循環的な電子伝達だが、循環的伝達経路ではフェレドキシンからプラストキノン(E’0 = 0.10V)を経て再びシトクロムb6/f複合体に伝達され、光照射によるプロトン濃度勾配形成(ATP生産)に当てられる経路も存在する。酸化還元電位差は以下の通りである。 ⊿E’0 = 0.01V ⊿E’0 = -1.6V ←負の電位差、光エネルギーの投入 ⊿E’0 = 0.77V ⊿E’0 = 0.11V
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光化学反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:05 UTC 版)
光化学反応は光エネルギーによる電子の励起およびそれに伴う電子伝達によってATP生成が行われる。光合成反応は植物および一部の細菌(光合成細菌;シアノバクテリア、紅色硫黄細菌など)のみが有している。電子供与体には酸素発生型光合成の場合H2Oが使用される。また酸素非発生型光合成の場合は、硫化水素、水素をはじめ幾つかの有機化合物(プロパノールなど)を電子供与体として利用する。 酸素発生型光合成の場合、水2分子あたり4分子のATPおよび2分子のNADPHが生産される。うち3分子のATPおよび2分子のNADPHを用いて炭酸同化を行う。また電子がピリジンヌクレオチド(あるいはフェレドキシン)に伝達された後に再び電子伝達系に戻る光化学反応を循環的光リン酸化というが、こちらは電子が光合成電子伝達系を回転するために、光励起を受ける限りATP生成が行われる。明条件かつ有機物の少ない環境ではこのような異化反応が見られる。循環的光リン酸化の収支は以下の通りである。 光化学系I → 光励起P700(光化学反応中心) 光励起P700(光化学反応中心) → 初発電子受容体A0 初発電子受容体A0 → フェレドキシン フェレドキシン → プラストキノン プラストキノン → シトクロムb6/f複合体 シトクロムb6/f複合体 → 光化学系I(上に戻る) なお、光合成反応は好気的な反応と思われがちだが、必ずしもそうではない。酸素を発生するために好気条件のように見えるが、酸素非発生型光合成を行う光合成細菌のほとんどが極度の嫌気性である(シアノバクテリアは除く)。酸素発生型光合成の起源は光合成細菌の光化学系を起源とするので、光化学反応は『明条件かつ嫌気的な』代謝系である。 詳しくは光合成、光化学反応を参照。
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