電子伝達体とは? わかりやすく解説

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でんし‐でんたつたい【電子伝達体】

読み方:でんしでんたつたい

生体内での酸化還元反応において、電子移動を担う物質総称いずれも電子受け取酸化型の電子受容体電子与え還元型の電子供与体二つの状態をとり、電子伝達系利用されるユビキノンチトクロムなどが知られる電子伝達物質


電子伝達体

英訳・(英)同義/類義語:electron carriers

電子を渡すことによって別の化合物還元する物質

電子伝達体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 02:26 UTC 版)

電子伝達体(でんしでんたつたい)とは生体内における電子伝達反応を担う化合物の総称である。電子伝達体の多くには、補酵素補欠分子族の中でも特に鉄、あるいはそれに含まれない多くの物質が含まれているが、その全てが電子を受け取る「酸化型」および電子を与える「還元型」の2つの状態を取る。また二電子還元を受けるものでは中間型(一電子還元型)も取り得る。別名水素伝達体、電子伝達物質など。

電子伝達体の反応

電子伝達体は電子の授受の行いやすさによって以下の状態を取る。

  • 電子受容体 — 電子を受け取りやすい状態、酸化型
  • 電子供与体 — 電子を放出しやすい状態、還元型

これらそれぞれの状態は、以下の収支式によって説明される。

  • 電子受容体(酸化型) + H+ + e = 電子供与体(還元型)

この反応が、連鎖的に起きることによって酸化と還元が同時に別の電子伝達体で同時に発生し、電子伝達が行われる。

  • A(酸化型) + e → A(還元型)
  • A(還元型) + B(酸化型) → A(酸化型) + B(還元型)
  • B(還元型) + C(酸化型) → B(酸化型) + C(還元型)…

上記の反応の方向性は、酸化還元電位が低いほうから高いほうに流れる。すなわち、AからBには自然に電子は流れてもBからAに電子を流すにはエネルギーの投入が必要となる。

酸化還元電位

上記の酸化還元電位 (E0) とは、電子伝達体の電子の受け取りやすさおよび放出しやすさの尺度である。一般に

  • 酸化還元電位が高い → 電子を受け取りやすい
  • 酸化還元電位が低い → 電子を放出しやすい

すなわち、電子は酸化還元電位の低いほうから高いほうに流れる。酸化還元電位の単位はボルト (V) であるために、エネルギー的には自然数の増加とは逆の表現となり、マイナス方向に大きいと「大」、プラス方向に大きいと「小」となる。

酸化還元電位の測定はその基準に、H2 → 2 H+ + 2 e という反応を用いるが、水素ガス1気圧、プロトン活量が1モル時の反応であり、生体内においてはこのような極限環境は存在しない(いわゆるpH = 0の状態)。したがって生体内を 25 ℃、pH 7.0 としたときを標準状態としてそのときの酸化還元電位を中点酸化還元電位(E0' あるいは Em,7)とする。電子伝達体の場合は単に酸化還元電位と書くと中点酸化還元電位を意味することが多い。呼吸鎖複合体の酸化還元電位を以下に示す。

電子は上から下に流れ、各呼吸鎖複合体でプロトン濃度勾配を形成する(仕事)。形成されたプロトン濃度勾配を用いてATP合成酵素でエネルギー保存を行う。

酸化還元電位の詳細については、酸化還元電位を参照。

電子受容体

電子受容体(でんしじゅようたい、electron acceptor)とは、電子を他の物質から自分自身へと移動させる化学物質である。電子の受け取りは電子受容体自身を還元させ、また、電子供与体を酸化させる。このため、電子受容体は本質的に(特定の物質に対する)酸化剤である[1]。典型的な酸化剤は他の物質と共有結合またはイオン結合することにより電子を完全かつ不可逆に受け取り、恒久的に他の物質へと変化する。実際には電子は完全に移動せず、したがって電子受容体が受け取る電荷はより少ない場合が多い。この場合、電子供与体と受容体は電子共鳴により電子を共有する。また、電子の授受の過程で一時的に電荷移動錯体が形成される。

電子受容体が電子を受け取る能力の程度は電子親和力として測定できる。電子親和力とは、最低空軌道(LUMO)を電子で満たしたときに放出されるエネルギーの大きさである。

電子供与体から受容体への電子の授受の際のエネルギー差(ΔE)、エネルギーの獲得量または損失量は受容体の電子親和力(A)の変化と供与体のイオン化エネルギー(I)との差によって決まる。



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