複合体IVとは? わかりやすく解説

シトクロムcオキシダーゼ

(複合体IV から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/14 11:05 UTC 版)

シトクロムcオキシダーゼ
リン脂質二重層内にあるウシ亜科のシトクロムcオキシダーゼの構造。膜間スペースは画像の上方。PDB: 1OCC​より。
蛋白質構造データバンク 今月の分子005:シトクロムc酸化酵素(Cytochrome c Oxidase)
識別子
EC番号 1.9.3.1
CAS登録番号 9001-16-5
データベース
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MetaCyc metabolic pathway
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シトクロムcオキシダーゼ (cytochrome c oxidase, COX) または複合体IV(Complex IV)またはcytochrome a3 は、バクテリアおよびミトコンドリアで見られる膜貫通タンパク質複合体の一つである。

ミトコンドリア膜(またはバクテリア膜)における電子伝達系の最後の酵素であり、4分子のシトクロムcからそれぞれ電子を受け取り、酸素1分子に転移させ2分子のに変換する機能を持つ。この過程では、マトリックス由来の4個のプロトンから水が生成されるのと同時に4個のプロトンがマトリックスから膜間スペースに透過する。これにより発生した膜間の電気化学ポテンシャルの差がATP合成酵素によるATP合成に用いられる。

構造

複合体IVは、哺乳類では、いくつかの金属補欠分子族部位と13のタンパク質サブユニットから構成される巨大な内在性膜タンパク質である。哺乳類では、10個のサブユニットは核由来で、残りの3個はミトコンドリアで合成される。複合体IVには2種のヘム(ヘムa 、ヘムa 3)、2種の中心(CuAとCuB)が含まれている[1]。2種類のヘム(ヘムa、ヘムa 3)とCuBはサブユニットIに位置し、2個のCuAはサブユニットIIに配位している。サブユニットIのヘムa 3とCuBはそれぞれで二核中心を形成し、酸素の還元部位となっている。

シトクロムc は、複合体IIIのシトクロムc 1によって還元された後、複合体IVのCuA二核中心と結合し、シトクロムc の鉄中心はFe2+からFe3+に酸化される。還元されたCuA二核中心はその電子をヘムa に送り、さらにそこからヘムa 3-CuB二核中心に送られる。この二核中心の2個の金属イオンは4.5 Å離れており、十分な酸化状態の水酸化物イオンに配位している。

シトクロムc の結晶学的研究では、Tyr(244)のC6とHis(240)のε-Nが結合するという独特な翻訳後修飾が見られた(ウシ亜科のクロムcオキシダーゼでの酵素ナンバーリング)。これにより、ヘムa 3-CuB二核中心が4電子を受け取って酸素分子を水に還元するという極めて重要な役割が可能になっている。以前は、還元機構は過酸化物中間体が関与していると考えられ、それが超酸化物の生成に繋がっていると考えられていた。しかし、現代では、4電子還元によって酸素-酸素結合が開裂する反応機構が支持されており、超酸化物が形成しそうな中間体は避けられている[2]

生化学

反応の概要:

シトクロムcオキシダーゼの構造

  • シトクロムcオキシダーゼの反応機構の模式図

  • シトクロムcオキシダーゼの酸化還元サイクル

  • 電子伝達系

  • 脚注

    1. ^ Tsukihara T., Aoyama H., Yamashita E., Tomizaki T., Yamaguchi H., Shinzawa-Itoh K., Nakashima R., Yaono R., Yoshikawa S. (1995) Structures of metal sites of oxidized bovine heart cytochrome c oxidase at 2.8 Å. Science 269, 1069-1074
    2. ^ Voet D., Voet JG (2004) Biochemistry, 3rd Edition. John Wiley & Sons, pps. 818-820
    3. ^ Alonso J, Cardellach F, López S, Casademont J, Miró O (2003). “Carbon monoxide specifically inhibits cytochrome c oxidase of human mitochondrial respiratory chain”. Pharmacol Toxicol 93 (3): 142–6. doi:10.1034/j.1600-0773.2003.930306.x. PMID 12969439. 

    関連項目

    外部リンク


    複合体IV

    出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:41 UTC 版)

    電子伝達系」の記事における「複合体IV」の解説

    詳細は「シトクロムcオキシダーゼ」を参照 複合体IVでは複合体III生じた還元シトクロムc酸化してプロトンポンプ機構によりプロトンを膜外に放出する同時に好気呼吸最終電子受容体である酸素電子伝達行ない生成する反応式以下の通りである。 O2+4シトクロムc2++8H+in → 2H2O+4シトクロム3++4H+out 細菌ではシトクロムc代わりにキノンメナキノンカルダリエラキノンなど)が用いられている。ただし、キノール酸化酵素場合プロトンポンプ機構ではなくスカラー反応によってプロトン放出される。 複合体IVでは、4分子シトクロムcから4つ電子酸素分子移され、2分子形成される同時に4つプロトンマトリックス側から除かれプロトン勾配形成されるシトクロムcオキシダーゼ作用は、シアン化物によって阻害される。 複合体IVは還元シトクロムcあるいはユビキノール真核生物シトクロムc一部原核生物ユビキノールあるいはメナキノール)から最終電子受容体電子伝達を行う。シトクロムc酸化するものは「シトクロムcオキシダーゼ」と呼ばれる電子伝達最終反応をになう重要な酵素であり、この酵素存在がゆえに好気呼吸成立すると言っても過言ではない好気呼吸を行う全生物がこの複合体所持している。現在、脱窒細菌である Paracoccus denitrificans の複合体 IV の立体構造明らかになっている。複合体 IV の構成以下の通りである。 サブユニットI(原子ヘム a3、a を持ちプロトンポンプ機構および最終電子受容関与するサブユニットII原子持ち還元シトクロムc酸化を行う) サブユニットIII立体構造安定化サブユニットIV立体構造安定化サブユニットI, IIシトクロムcオキシダーゼ活性発揮することが明らかになっている。また、上記サブユニット構成真核生物のものだが、原核生物サブユニットI に配位されているヘム種類異なっている(ヘムb,oなど)。 電子伝達は以下の手順で行われるシトクロム c Fe2+ → ヘムa,a3 → 酸素最終電子受容体) 複合体IVは嫌気呼吸硝酸塩呼吸をになう NOR(一酸化窒素還元酵素)および N2OR(亜酸化窒素還元酵素)を起源に持つとされている。その後、これらの酵素酸素への耐性獲得したものが複合体IVとされている。

    ※この「複合体IV」の解説は、「電子伝達系」の解説の一部です。
    「複合体IV」を含む「電子伝達系」の記事については、「電子伝達系」の概要を参照ください。

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