紅色光合成細菌の光化学反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 04:23 UTC 版)
「光化学反応」の記事における「紅色光合成細菌の光化学反応」の解説
紅色非硫黄細菌の光化学系は非循環的であり、酸素を最終電子受容体とするが、その電子の一部は[エネルギー依存性電子の逆行]という反応からNAD+に伝達されるものも存在する。紅色光合成細菌(紅色非硫黄細菌)の光化学系構成 は以下の通りである。 光化学反応複合体 (Rhodobactor sphaeroidesの場合) 反応中心P870、バクテリオフェオフィチン、QA(ユビキノン)、QB(ユビキノン) ユビキノン シトクロムbc1複合体(呼吸鎖複合体III) シトクロムc2 シトクロムオキシダーゼ(呼吸鎖複合体IV) 反応中心P870はバクテリオクロロフィルの2量体、すなわちスペシャルペアである。電子供与体としては有機物異化代謝系由来のユビキノンが光化学反応に使用されている。その電子伝達経路は以下の通りである。 反応中心粒子P870が光エネルギーを吸収し、電子が励起される。 励起された電子はバクテリオフェオフィチン(酸化還元電位、E0'= -0.4 - 0.6 V)に伝達される。 電子はQAおよびQBの順に電子伝達を受ける 電子は光化学系複合体に含まれないユビキノン(E0'= -0.1V)に伝達され、ここで2通りの電子伝達経路を経るシトクロムbc1複合体 (E0'= 0.2V) に電子伝達される。 エネルギー依存性電子の逆行反応(プロトン濃度勾配のエネルギーを用いる)によりNAD+ (E0'= -0.4V) に電子伝達される。 シトクロムbc1複合体はシトクロムc2 (E0'= 0.4V) に電子伝達を行う。この時にプロトンキノンサイクル機構によりプロトン濃度勾配が生じる(→プロトンキノンサイクル機構についてはユビキノンを参照)。 シトクロムc2複合体に伝達された電子も、以下の2通りの電子伝達経路を経る。シトクロムオキシダーゼに電子伝達され、最終電子受容体の酸素に受け渡される。 光化学反応複合体に再び戻り、反応中心粒子P870の電子を補完する(1. に戻る)。 紅色非硫黄細菌の光化学反応は還元物質NADHの生産を直接行なうことは無く、むしろATP合成を主たる目的としていると考えられる。
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