ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
英語:NAD、NAD+、nicotinamide adenine dinucleotide
生体内で起こる様々な酸化還元反応において、電子の伝達を行う補酵素の一種。特に、好気呼吸や光合成などで重要な役割を果たす。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、ニコチンアミドヌクレオチドとアデノシンがリン酸結合した化合物であり、ビタミンの一種であるナイアシンが化学変化したものである。水素と結合すると還元型となり、NADHと呼ばれる。
NADは老化との関連が注目されており、NADの量が加齢とともに減少していくことが老化に繋がるという説もある。カロリー制限によって生体内でのNADの量が増加することが、「長寿遺伝子」として知られているサーチュイン(NAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素)遺伝子の活性化、さらには寿命延長に繋がるともいわれている。
また、2013年12月にハーバード大学やニューサウスウェールズ大学の研究グループが「Cell」誌に発表した論文によると、マウスに対してNADを投与したところ、2歳のマウスが生後6か月のマウスと同程度まで「若返った」という結果が得られた。研究グループは、2014年からヒトにNADを投与する臨床実験も行うとしているが、投与には1日あたり5万ドルもの費用がかかることが課題となっている。
関連サイト:
Declining NAD+ Induces a Pseudohypoxic State Disrupting Nuclear-Mitochondrial Communication during Aging - Cell
エヌ‐エー‐ディー【NAD】
読み方:えぬえーでぃー
《nicotinamide adenine dinucleotide》生物界に広く存在する補酵素。NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)とアデノシン一リン酸からなり、体内ではニコチン酸(ナイアシン)などから合成される。生体内の酸化還元反応で、水素を伝達することにより有機物の酸化に関与する。多くのデヒドロゲナーゼの補酵素として、水素原子と電子1個を受容して還元型となる。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド。ナッド。補酵素Ⅰ。コエンザイムⅠ。CoⅠ。
ナッド【NAD】
読み方:なっど
《nicotinamide adenine dinucleotide》⇒エヌ‐エー‐ディー(NAD)
NAD
分子式: | C21H27N7O14P2 |
慣用名: | Nicotinamide adenine dinucleotide、NAD、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、β-ジホスホピリジンヌクレオチド、コジマーゼ、Coenzyme 1、補酵素1、β-Diphosphopyridinenucleotide、Cozymase、ジホスホピリジンヌクレオチド、補酵素I、コデヒドロゲナーゼI、コデヒドラーゼI、Cozymase I、Diphosphopyridine nucleotide、Coenzyme I、Codehydrogenase I、Codehydrase I、エンゾプリド、ナジド、コジマーゼI、β-NAD、Enzopride、NAD+、Nadide、3-(Aminocarbonyl)-1-[5-O-[(5'-adenylyloxy)oxylatophosphinyl]-β-D-ribofuranosyl]pyridinium、βNAD+、3-(Aminocarbonyl)-1-[5-O-[[1-(6-amino-9H-purin-9-yl)-1-deoxy-β-D-ribofuranose-5-O-yl]phosphonyloxy(oxylato)phosphinyl]-β-D-ribofuranosyl]pyridinium |
体系名: | 3-(アミノカルボニル)-1-[5-O-[(5'-アデニリルオキシ)オキシラトホスフィニル]-β-D-リボフラノシル]ピリジニウム、3-(アミノカルボニル)-1-[5-O-[[1-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-1-デオキシ-β-D-リボフラノース-5-O-イル]ホスホニルオキシ(オキシラト)ホスフィニル]-β-D-リボフラノシル]ピリジニウム |
ナトリウムヒドリド‐d1
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
ピリジンヌクレオチド
補酵素NADとNADPは、窒素原子を1個含む6員環含窒素芳香族化合物であるピリジン誘導体にリボースが結合しているため、こうよばれる。
化合物名や化合物に関係する事項: | ナフタレン酢酸 ニコチン ニコチンアミド ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸 ニコチン酸 ネオン |
NAD
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/03/29 18:32 UTC 版)
NAD
- ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (nicotinamide adenine dinucleotide) - 生体化学物質
- NADエレクトロニクス (NAD Electronics) - カナダのオーディオ機器メーカ
- ナミビアドルの通貨コード
- ナトリウムD線 (NaD)
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ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
(NAD から転送)
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物質名 | |
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別名
Diphosphopyridine nucleotide (DPN+), Coenzyme I |
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識別情報 | |
3D model (JSmol)
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ChEBI | |
ChEMBL | |
ChemSpider | |
DrugBank | |
ECHA InfoCard | 100.000.169 |
IUPHAR/BPS
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KEGG | |
PubChem CID
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RTECS number |
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UNII |
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性質 | |
C21H28N7O14P2+ (酸化型) C21H29N7O14P2 (還元型) |
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モル質量 | 664.4 g/mol (酸化型) 665.4 g/mol (還元型) |
外観 | 白色の粉末 |
融点 | 160 °C (320 °F; 433 K) |
危険性 | |
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド (英: nicotinamide adenine dinucleotide) とは、全ての真核生物と多くの古細菌、真正細菌で用いられる電子伝達体である。さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取り得る。二電子還元を受けるが、中間型は生じない。略号であるNAD+(あるいはNADでも同じ)のほうが論文や口頭でも良く使用されている。またNADH2とする人もいるが間違いではない。
かつては、ジホスホピリジンヌクレオチド (DPN)、補酵素I、コエンザイムI、コデヒドロゲナーゼIなどと呼ばれていたが、NAD+に統一されている。別名、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドなど。
構造と物理化学的特性
NAD+はニコチンアミドモノヌクレオチドおよびアデノシンからなる物質であり、ヌクレオチドの5'がそれぞれリン酸結合によって結合している構造を取る。アデノシンの2'には-OH基が付属しており、これがリン酸基に置換されると、NADP+となる。
酸化還元反応に関与しているのは、ニコチンアミドであり、酸化型および還元型の構造は図の通りである。(還元型は4位の炭素に立体特異性がみられる。)

上図では、水素原子が1つだけ付加されたように見えるが、ニコチンアミドのN+が電子によって還元されるために、結果として2つの水素原子を運搬しているのと同じ状態となる。すなわち、全体としての二電子酸化還元反応は以下の通りである。
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UV吸収スペクトル アデニン塩基を含むことから、NAD+とNADHはともに強いUV吸収を示す。NAD+の吸収ピークは259 nmで、モル吸光係数は16,900 M−1cm−1である。一方、還元型のNADHのみ、339 nmに第2の吸収ピークを持ち、そのモル吸光係数は6,220 M−1cm−1である。この第2のピークは酸化型のNAD+には存在しないため、分光光度計を用い波長340nmあるいは339nmの吸光度を測定することでNAD+とNADHの間の酸化還元反応を簡単に測定することができる。[1]脱水素酵素活性測定にはこの方法が良く用いられている。
NAD+とNADHは蛍光にも差が存在している。水溶液中のNADHは460 nmをピークとする寿命0.4 nsの蛍光を発するが、NAD+は蛍光を発しない。[2]NADHの蛍光特性はタンパク質に結合すると変化するため、これを用いて解離定数を測定することができる。[2][3]また蛍光顕微鏡を使って生細胞の酸化還元状態を測定することも可能である。[4]
生理学的意義
NAD+は生物のおもな酸化還元反応の多くにおいて必須成分(補酵素)であり、好気呼吸(酸化的リン酸化)の中心的な役割を担う。解糖系およびクエン酸回路より糖あるいは脂肪酸の酸化によって還元物質NADHが得られる。還元物質NADHを生産する好気呼吸反応系は以下の通りである。なお、酸化物質および還元物質を太字で表記する。
NADH生成経路
- エムデン-マイヤーホフ経路
→「解糖系 § エムデン-マイヤーホフ経路」も参照- グリセルアルデヒド3リン酸 + NAD+ → 1,3-ジホスホグリセリン酸 + NADH (グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素、EC 1.2.1.12)
- ピルビン酸 + SH-CoA + NAD+ → アセチルCoA + NADH + CO2 (ピルビン酸脱水素酵素複合体、EC 1.8.1.4))
- イソクエン酸 + NAD+ → α-ケトグルタル酸 + NADH + CO2(イソクエン酸脱水素酵素、EC 1.1.1.41)
- α-ケトグルタル酸 + NAD+ + SH-CoA → スクシニルCoA + NADH + CO2(α-ケトグルタル酸脱水素酵素、EC 1.2.4.2.)
- リンゴ酸 + NAD+ → オキサロ酢酸 + NADH(リンゴ酸脱水素酵素、EC 1.1.1.37)
- パルミトイルCoA + 7CoA + 7FAD + 7NAD+ + 7H2O
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