静脈注射
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静脈注射(じょうみゃくちゅうしゃ、英: intravenous injection、英略語: IV[1])は、静脈に直接水分や薬物、栄養素等を投与する医療技術である。意識レベルの低下などにより、経口(英: per os、英略語: p.o.)で食物や水を摂取できない、あるいは摂取しようとしない人への水分・栄養補給に用いられる投与経路のひとつである。また、血液製剤や電解質異常を是正するための電解質など、薬物投与やその他の治療にも使用される。投与速度や投与機器により、速い順にポンピング、ボーラス注射(単に注射とも)、点滴静脈注射、持続注入に分類される。本稿では、静脈注射に関わる事物について概説する。
- 1 静脈注射とは
- 2 静脈注射の概要
静脈内投与
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 15:09 UTC 版)
静脈内投与は投与した薬物が直ちに循環に入り、急速に血漿濃度を高めることができる投与法である。バイオアベイラビリティは1.0となる。筋肉内注射や皮下注射と比べると大量の薬物投与が可能である。短所としては急速に血漿濃度が高まるため望ましくない作用も急激に起こりうること、塞栓、出血、感染などの危険を伴うことがあげられる。静脈内投与により血液脳関門を通過させて神経細胞に核酸医薬をデリバリーさせる方法は少ないがいくつか報告されている。特定物質のコンジュゲートによってASOを中枢神経へ送達する方法が知られている。膜透過ペプチドを用いる方法、抗体を用いる方法、脂質を用いる方法などがある。また中枢神経系には送達されないがN-アセチルガラクトサミン(GalNac)は肝細胞内へ送達し家族性アミロイドポリニューロパチーの治療へ応用可能という点は注目に値する。抗体のコンジェゲートの例としてはトランスフェリン受容体に対するモノクローナル抗体をASOにコンジュゲートし受容体介在性エンドサイトーシスの機序で中枢神経系へASOを送達したという報告がある。膜透過ペプチドをASOにコンジェゲートする方法も知られている。アルギニンを多く含む膜透過ペプチドを用いると大脳および小脳へASOを送達することができる。しかしアルギニンを多く含む膜透過ペプチドを用いた方法は血液脳関門への選択性が乏しく様々な臓器への核酸医薬の移行性を高める。副作用としては行動異常、体重減少、腎障害といった副作用が報告されている。脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)にトランスフェリン受容体に対するモノクローナル抗体を結合させ受容体介在性エンドサイトーシスの機序でASOを中枢神経に送達するという報告もある。 siRNAではペプチドを用いて神経細胞に送達させたという報告がある。またインスリン受容体やトランスフェリン受容体など、脳血管内皮細胞に発現している受容体に対するモノクローナル抗体をリポソームに結合させ、siRNAを内包してデリバリーさせる方法が報告されている。またsiRNAに狂犬病ウイルス外殻の一部の糖蛋白配列(rabies virus glycopretein、RVG)を結合させる方法が報告されている。RVGはアセチルコリン受容体に対するリガンド配列となっており、アセチルコリン受容体は脳血管内皮細胞および神経細胞に発現していることから、静脈内投与により神経細胞に特異的にデリバリーさせることが可能とされる。RVGをsiRNAに静電的に直接結合させる方法やエクソソームにRVGを発現させ、siRNAを内包させる方法などが報告されている。最大の問題はRVGの合成が容易でなく、医薬品化する際の精製は困難であると考えられている点である。グルコース修飾高分子ミセルといったナノマシンもASOやsiRNAのデリバリー方法となる可能性もある。 核酸自体を修飾するのではなく血液脳関門のタイトジャンクションを制御することでASOをはじめとした高分子医薬品を送達する方法も考案されている。代表例が収束超音波法(high-intensity focused ultrasound、HIFUまたはFocused ultrasound、FUS)である。収束超音波法は外科的処理を必要とせず一過性にタイトジャンクションに作用して送達される。しかし収束超音波法は無菌性の炎症を誘発すると報告されている。トリセルラータイトジャンクションに存在するangulin-1に結合するウェルシュ菌のイオタ毒素由来のリコンビナント蛋白質angubindin-1を利用してASOを中枢神経系へ送達したという報告もある。 また脳血管内皮細胞自体を標的としたデリバリーも選択肢の一つとなる。脳梗塞や多発性硬化症といった脳血管内皮細胞が病変の場となる疾患だけでなく、アルツハイマー病などの神経変性疾患においても脳血管内皮細胞が病変の一端を担っているという報告がなされている。脳血管内皮細胞に対する標的遺伝子の発現抑制の方法としては、siRNAを大量の輸液とともに静脈内投与することで圧力をかけて投与する方法(ハイドロダイナミクス法)やHDLをベクターとしてコレステロール結合siRNAを静脈内投与する方法が報告されている。血液脳関門と同様に血液脳脊髄液関門(blood-cerebrospinal fulid barrier、BCSFB)を構成する脳脈絡叢についても中枢神経疾患の病態への関与が指摘されており、ASOを静脈内投与することによって脳脈絡叢における有効な標的遺伝子発現抑制が報告されている。
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