けん‐ぼう〔‐バウ〕【健忘】
健忘
健忘
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/04 15:57 UTC 版)
HMの状態は、重度の前向性健忘と、時間によって強弱の差がある(temporally graded)逆向性健忘としてまとめられる(Smith & Kosslyn, 2007)。HMは新しい出来事や新しい知識について長期記憶を形成することが全くできなかった - 彼は基本的に思い出のなかを生きていた(Corkin, 2002)。手術の前にはHMは記憶障害を示さなかったことから、内側側頭葉の切除が記憶障害の原因であると考えられる。このことから、内側側頭葉は意味やエピソードについての長期記憶を形成するための主要なコンポーネントであると考えられる(cf. Smith & Kosslyn (2007)では、内側側頭葉はエピソード記憶を符号化するための中心的な領域であるとされている)。こうした考え方は、内側側頭葉に障害をもった他の患者の研究によって、さらに支持されている(cf. Kolb & Whishaw, 1996; Scoville & Milner, 1957)。 このような健忘にも関わらず、HMは知的検査をきわめて正常に遂行し、ほぼ正常な言語能力を持つことが分かっている。このことは、いくつかの記憶の機能(e.g., 短期記憶の貯蔵、語や音素の貯蔵)は、手術により障害を受けていないことを示している(Smith & Kosslyn, 2007; Corkin, 2002)。HMは短い時間内の出来事であれば想起が可能である。このことは、ワーキングメモリーの実験によりテストされ、以前に呈示した数字の再生を行わせることで示された;実際に、彼の成績は統制群の被験者に劣らなかったのである(Smith & Kosslyn, 2007)。このことは、ワーキングメモリーの機能は内側側頭葉には依拠していないことを示している。さらに、短期記憶と長期記憶という一般的な分類が正しいことも示される(Kolb & Whishaw, 1996)。HMの言語能力が正常であることは、言語の産生や理解、あるいは語彙の記憶が、内側側頭葉のはたらきとは独立に行われていることを示している(Corkin, 2002)。
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