戦時下の日本とその周辺とは? わかりやすく解説

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戦時下の日本とその周辺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 14:40 UTC 版)

戦争文学」の記事における「戦時下の日本とその周辺」の解説

バスに乗り遅れるな 日華事変勃発とともに出版社依頼により作家戦地へ派遣され多く報告文学生まれたその中で中央公論』の特派員として南京攻略戦に従軍した石川達三戦地現実に深い衝撃受けて生きてゐる兵隊」を執筆したが、戦争残酷さ描いたことから「反軍内容持った時局不穏当な作品」として発禁処分を受け、作者発表誌『中央公論』の編集者は「新聞紙法違反」として起訴され石川禁固4ヶ月執行猶予3年判決受けた徳田秋声戦時風景」では東京の花街日常中に召集受けた男の感情綴っているが、のちの「卒業風景」(1941)では戦争がまったく描かれないことから「時節柄風俗甚だ面白からざる」として発禁処分となった天津北京見た尾崎士郎は「悲風千里」で中国民衆への同情もにじませた。また従軍した兵士軍人の手記、報告類が一般読者には歓迎され上田広鉄道部隊の労苦描いた鮑慶郷」「黄塵」や、藤田実彦戦車戦記』、棟田博分隊長の手記』などをがある。召集され第二次上海事変従軍した日比野士朗の『呉淞クリーク』では、激烈な戦闘描きながら、「戦記文学要求される皇軍意識とは無縁」に自分心情や、戦死した戦友への鎮魂思い記している。従軍看護婦だった大嶽康子日記体の『病院船』は百版を重ねるほどとになり、続いて多く従軍看護婦ものが出版された。 火野葦平1937年戦地で『糞尿譚』により芥川賞受賞の報を受けて注目され、翌1938年に軍報道部員として徐州会戦従軍することを命じられ、この戦場体験記した麦と兵隊」は、国民喝采をもって受け入れられ100万部ともいわれるベストセラーとなり、火野続いて土と兵隊」「花と兵隊」などを発表。1943-44年に新聞連載された『陸軍』は「火野最高傑作」(安田武)と呼ばれ1945年8月20日発行予定されていたが、敗戦とともに裁断され終戦とともに戦犯作家として休筆余儀なくされている。 1939年ノモンハン事件では、野砲中隊長として戦闘参加していた草葉栄『ノロ高地』(1941)がベストセラーになった他、樋口紅葉ノモンハン実戦記』、田中英次『闘魂』、松村次郎撃墜』、入江徳郎ホロンバイル荒鷲』、高島正雄『バルシャガル草原』が刊行されたが、陸軍による日本軍勝利喧伝助けるような内容のものだったこの頃科学小説書いていた海野十三は、「空襲葬送曲」(1932)、「東京要塞」(1938)などの架空戦争小説で、科学知識活かして戦争悲惨さ描いた少年時代満州育った北川冬彦戦争』(1929)では、「義眼中にダイヤモンド入れて貰ったとて、なんになろう。」といったアヴァンギャルド詩、新現実主義スタイル表現創造した国策文学 1938年8月内閣情報部漢口攻略戦への作家従軍要請し、「ペン部隊」として陸軍14人、海軍班8人が、音楽家による「円盤レコード部隊」や、画家によるグループとともに従軍次いで11月には南支従軍ペン部隊として10数名従軍林芙美子戦線』、丹羽文雄海戦』、岩田豊雄獅子文六)『海軍』など、文学者視点による作品書かれ岸田國士従軍報告では中国における日本の文化工作批判行った一方で新聞社から派遣され小林秀雄も、国策のための文学者動員批判したこの年には農民文学振興目的として「農民文学懇話会」が結成され続いて大陸開拓文芸懇話会海洋文学協会経国文芸の会、国防文芸連盟、輝く部隊日本文学者会などが設立される1940年大政翼賛会設立されると、日本文芸中央会という翼賛会文芸部との連絡協議会作られ1942年に各団体併合した日本文学報国会作られるこうした流れの中での国策文学として、立野信之後方の土」、徳永直先遣隊」、湯浅克衛先駆移民」などの大陸文学間宮茂輔あらがね」、中本たか子南部鉄瓶工」、橋本英吉坑道」などの生産文学など書かれた。1941年12月8日対米開戦には、多く文学者日記にて感慨記しており、「ああこれでいい、これで大丈夫だ、もう決まったのだ、と安堵の念が湧くのをも覚えた」(伊藤整)、「世界一新せされた。時代はたつた今大きく区切られた」(高村光太郎)などどあり、多く詩人歌人俳人感動うたった太宰治小説十二月八日』は主婦日記という体裁戦争へ期待を語らせている。 1941年には数十人の作家画家漫画家記者などが軍報道班員として徴用され、マレービルマ、ジャワ・ボルネオ、フィリピンなど各方面派遣され従軍記などを著した日本文学報国会は、大東亜共同宣言五大原則についての作品執筆依頼や、佐佐木信綱らによる「愛国百人一首」の選定大東亜文学者大会開催などを行った。また『新青年』などの娯楽雑誌でも国際スパイ小説軍国調の作品書かれ一方で岡田誠三ニューギニア山岳戦』(1944)では兵士達悲惨な最期描かれた。小川未明発禁処分受けた野薔薇」(1928)などの反戦童話小説執筆したが、戦時下には戦争協力童話「僕も戦争に行くんだ」(1937)や、傷痍軍人保護政策キャンペーンによる『銃後童話読本』(1940)掲載の「帰った傷兵」などを書いた佐多稲子は「香に匂ふ」「故郷の家」(1942)などの、銃後戦争支えるという形での女性社会参画描いたが、戦後新日本文学会では戦争責任問われることになる。当時戦争文学諸作品を総じて伊藤整は「叙述形式の素化は、決し小説貧困ではなく精神厳しさ事実重さとによって生じた不可欠帰趨であり、日本民族思考と生活にとっての絶対的なものを選みけっていし、そこから新しく歩みだすための準備」と評している。 詩の分野では日米開戦後はほとんどの詩誌が廃刊して日本文学報国会部会統合され多く詩人戦争誌を書いた高村光太郎大いなる日に」、室生犀星美以久佐」などの他、文学報国会からは150あまりによる戦争アンソロジー「辻詩集」が刊行された。その中で金子光晴のみは疎開先の山中湖畔で反戦詩を書き続け戦後に『落下傘』『』として発表された。 1937年には「川柳人」の反戦作品特高検挙され1940年には自由主義的な京大俳句」の平畑静塔十数名が検挙される新興俳句弾圧事件起きるなどの弾圧が行われ、1942年日本文学報国会俳句部会俳句界は統一された。短歌では大日本歌人協会による「支那事変歌集戦地篇」が1938年、「銃後篇」が1941年刊行されるが、歌人協会自由主義的傾向攻撃され解散文学報国会吸収され戦時短歌満ち溢れた。 また明治以来日清戦争における木口ラッパ兵や「平の母」、日露戦争における軍神広瀬少佐第一次上海事変における爆弾三勇士など多く軍国美談が、報道美談のような書籍物語など広く知られ学校教科書教材でも取り上げられた。火野葦平や、脚本家でやはり帰還兵である中野実も『軍国美談集』『善行美談集』の執筆加わった台湾朝鮮中国満州 日本占領下の台湾でも文芸銃後運動影響が及び、1943年日本文学報国会台湾支部設立台湾文芸家協会台湾文学奉公会に移行し台湾皇民文学樹立目指す運動なされる。その過程上にある、周金波志願兵」や高進「道」などが書かれ、また反面占領兵士として動員され苦悩を描く呉濁流『胡太明』がひそかに書かれ戦後になって出版された。同じく朝鮮では、1939年内鮮一体スローガン掲げた朝鮮文人協会が創られ、のち朝鮮文人報国会発展張赫宙岩本志願兵』(1944)では内地に住む朝鮮人少年志願兵となるまでの姿を描いている。 抗日戦線下の中国では、茅盾によって第一次上海事変下の農民商人を描く短編小説春蚕」「商店」(1932)、国民党特務工作員を描く『腐蝕』(1941)などが書かれ続いて茅盾占領され香港脱出して桂林次いで重慶移り香港陥落扱った陥落後」(劫後拾遺1943)、抗戦のために工場上海から杭州移転する工場主を描く戯曲清明前後」(1945)などを書いた毛沢東の「文芸講話」の影響受けた趙樹理には、閻錫山蔣介石内戦から抗日戦争が終わるまでの農村描いた李家荘の変遷』(1945)などがある。延安革命運動身を投じて宣伝教育工作従事していた女流作家丁玲は、抗日戦に立ち上がろうとする農民の姿を描いた霞村にいた時」などを書いた満州国では、北村謙次郎による建国当時争乱を語る『春聯』(1942)など日系作家による「開拓文学」や、古丁中国作家による「面従腹背作品書かれていたが、1941年弘報処の公布した芸文指導要綱」に基づく芸文統制進められ種々あった文学団体満州芸文聯盟統合されていった

※この「戦時下の日本とその周辺」の解説は、「戦争文学」の解説の一部です。
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