この問題に対する各界の反応
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「女子柔道強化選手への暴力問題」の記事における「この問題に対する各界の反応」の解説
2013年1月31日に文部科学大臣の下村は、一連の事態は監督辞任で済むような問題ではないと、JOC会長の竹田にこの問題の再調査を含めた全容解明を求めた。さらに、この事態が「日本のスポーツ史上最大の危機」であるとの認識も合わせて示した。自民党スポーツ立国調査会の遠藤利明会長は再発防止のための第三者機関設置を求める法改正を進める意向を明らかにした。 また、今回の件を受けてJOCは2月1日に英文で「スポーツにおいて暴力はあってはならず、五輪運動の価値に反する」といった暴力撲滅を訴える内容の声明を世界の主要メディアに発信した。さらに、国際オリンピック委員会もこれを受けて、「JOCがこの問題で効果的な対応をするものと確信している」と述べた。 さらにJOCは、夏季及び冬季五輪加盟競技31団体の強化責任者から暴力やパワーハラスメント、セクシャルハラスメントがなかったかの聞き取り調査を行った結果、一切ないとの回答を得たという。しかし、共同通信社によるオリンピック競技種目の責任者へのアンケート調査によると、柔道以外に2つの競技団体で暴力行為の存在を認める回答があったという。 2月7日に日本体育協会は116の加盟団体に対して、暴力の根絶に務めるようにとの通達を発した。 2月12日に日本スポーツ仲裁機構は今回の件を受けて、スポーツ界における不祥事の調査や摘発を行うための「調査摘発部」を新設する意向を明らかにした。 2月13日にJOCは「スポーツ団体マネジメントセミナー」を開催して、今回の問題を題材にしながら、コンプライアンス(法令順守)の重要性を学習することになった。 2月21日には自民党や公明党、民主党、日本維新の会などの超党派の議員で構成されるスポーツ議員連盟の総会において、暴力を受けた被害選手の相談窓口の開設や調査のための第三者機関の設置を盛り込んだ「日本スポーツ振興センター法改正案」が了承された。27日には政府・与党によって同改正案が了承されることになった。 2月22日にフジテレビ社長の豊田皓は定例記者会見において、告発選手によって批判されたロンドンオリンピック代表選手発表会見での見世物のような中継方法に関して、「配慮が足りなかった。代表で出る人と出られない人が一緒にされ、テレビに映されるのが嫌な気持ちは重々分かる。」と釈明した。また、発表会見に集められた選手の人選や場所は全柔連が決めたものの、中継方法に関してはフジテレビと全柔連の話し合いによって決まったという。 2月26日にJOCはアメリカオリンピック委員会の「Safe Sport」制度を参考に、選手から競技団体に告発がなされた場合に、当事者同士の匿名性を維持した状態で、第三者の法律専門家などに調査を委託して問題を速やかに解決する第三者機関の設置を提案した。さらに、JOCと全柔連にそれぞれ独立してこの通報機関を設置することをあきらかにした。 2月28日にJOCは、加盟57団体の選手と指導者約6,500人に無記名で「競技活動の場におけるパワハラ、セクハラ等に関する調査」をアンケート形式で実施したところ、4割から回答があったことを明らかにした。その集計と分析を弁護士事務所に依頼して、結果を各競技団体にもきっちりフィードバックする意向だという。 3月13日にJOCは日本体育協会、日本障害者スポーツ協会、全国高等学校体育連盟、日本中学校体育連盟と連携して、スポーツ界における暴力の根絶を宣言して、啓発活動に取り組むことを明らかにした。18日には宣言文作成委員会を設置した。さらに、「暴力行為等相談窓口」を設けて、そこで暴力やセクハラ、ドーピング問題などの相談を受け付けることになった。この窓口は日本スポーツ振興センターやJOCにも設置されることになるという。 3月19日にJOCは「競技活動の場におけるパワハラ、セクハラ等に関する調査」のアンケート結果を公表した。選手1,798名、指導者1457名の計3,255名の回答のうち、選手の11.5%にあたる206名が暴力行為を含めたパワハラやセクハラを受けたことがあると回答した。さらに、指導者の3%にあたる43名がパワハラやセクハラを行ったことがあると回答した。指導者の29.1%は何らかの形で暴力行為を認識していたことも確認された。一方、そのような行為を「見たことも噂に聞いたこともない」と回答した者は74.5%に上った。 3月20日にJOCはパワハラやセクハラ問題に対応するための「通報相談窓口」を都内の弁護士事務所に設置して業務を開始することになった。弁護士が調査を担当して、不当行為が明確になった場合はJOCが対応することになった。 3月22日に文部科学省はこの問題を受けて、暴力を用いない科学的見地に則ったトレーニング方法や、指導力向上などを含めたトップレベルのスポーツ選手の育成方法を検討するための有識者会議を発足する意向をあきらかにした。 3月28日にはJOCの女性スポーツフォーラムが「指導者と選手の間のコミュニケーション」というテーマの下で開かれて、JOC女性スポーツ専門部会部でもある山口香部会長が「(円滑なコミュニケーションのためには)指導者も選手も双方向から意識を変えていくことが必要」との意見を述べた。 4月12日に文部科学省はスポーツ指導の実績がある研究者6名のメンバーから成る「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議」の初会合を持った。この会合に出席した下村文部科学大臣は「わが国のスポーツ史上最大の危機。暴力一掃のきっかけとなる議論をお願いする」と発言した。この会議では暴力に頼らないスポーツ指導者のあり方を検討して6月に報告書を提出することになるという。 4月16日にJOCは加盟団体に不祥事があった場合、JOCが事務所への立ち入り調査や帳簿の閲覧等の権利を行使する調査権を明文化した、加盟団体規定の改定を行うことに決めた。さらに加盟団体に定期的な資格認定の更新手続きを義務付ける方針だともいう。また、JOCが3月20日から強化指定選手やスタッフを対象に始めた通報相談窓口には5件の相談が寄せられて、その内の1件は継続調査を要することが報告された。 4月23日には参議院の予算委員会で、日本維新の会の片山虎之助が、柔道界における一連の不祥事に関連して大改革の必要性を首相の安倍晋三に問い質すと、「柔道は一般スポーツと違う。ただ勝てばいいというものではない。」「礼に始まり礼に終わるという武道の神髄を究めることこそ、全柔連に課せられた使命」にもかかわらず、かくの如き事態となった現状は「極めて残念。青少年に悪い影響を与える。」との認識を示して、組織改革の徹底を求めた。文部科学大臣の下村も「自浄作用を発揮して立ち直ってもらいたいし、文科省としても監督していく」と述べた。柔道界の不祥事が国会の場でも取り上げられたことに関して全柔連会長の上村は「はなはだ不名誉なこと」とコメントした。 4月25日には「スポーツ界における暴力行為根絶に向けた集い」において、日本体育協会、JOC、日本障害者スポーツ協会、全国高等学校体育連盟、日本中学校体育連盟が合同で「暴力行為根絶宣言」を採択した。宣言では「暴力は人間の尊厳を否定し、指導者とスポーツを行う者の信頼関係を根こそぎ崩壊させ、スポーツそのものの存立を否定する」「暴力による強制と服従では、優れた競技者は育たない。指導における必要悪との誤った考えを捨て去る」として、今後はスポーツ界におけるいかなる形の暴力も決して認めないことを確認することになった。 また、JOCはこの日に「競技活動の場におけるパワハラ、セクハラ等に関する調査」の最終報告書を公表した。選手と指導者3,379名のうち、選手の25.9%にあたる494名、指導者の29%にあたる429名が競技活動の中で暴力を認識していたと回答した。JOCの福井烈理事は「こういう数字が出たことを重く受け止める。スポーツに携わる一人一人が問題意識を持たないといけない」と述べた。 4月26日には参議院本会議で、スポーツ指導において選手が暴力を受けた際の相談窓口となり、さらには暴力の実態調査も行えるようになる第三者機関をJSC内に新設するための法改正が可決されることになった。 5月10日には文部科学省の有識者会議が体罰防止の具体例を示したガイドラインを公表したが、日本体育協会専務理事の岡崎助一が「単純に許される行為、許されない行為に二分できるのか」とグレーゾーンの存在を指摘した。「不必要な身体接触は避けるべき」との提案には、JOC専務理事の市原則之が柔道やレスリングなどでは指導者が体を使って教えるケースが多いことから、「殴るまでに至らない微妙な行為もある。厳しさから強さが生まれることもあり、非常に難しいテーマだ」と疑問を呈することになった。 5月27日には文部科学省の有識者会議が「勝つことのみを重視し過重な練習を強いることがないよう求める」ことを唱えた、体罰やパワハラを防止するための部活動指導のガイドラインを策定して、全国の学校に通知することになった。それによれば、体罰は「子どもの技能向上に役立たない」と強調するとともに、殴る蹴るといったあからさまな暴力行為やパワハラに当たる発言の他に、「長時間にわたる無意味な正座」、「熱中症が予見される状況下で水を飲ませず長時間ランニングさせる」、「柔道で受け身ができないように投げる」などを体罰の具体例として提示した上で、「指導者と生徒との間で信頼関係があれば許されるとの認識は誤り」との見解を示した。一方で、「初心者に受け身を反復させる」「バレーボールで、反復してレシーブさせる」といった指導や、暴力を振るってくる生徒を押さえつける行為などは認められることになった。 6月4日にJOCは加盟団体規定を改訂して、問題を起こした競技団体に的確に対処するため「事務所に立ち入り、活動状況に関する資料を閲覧し、役職員に質問できる」などJOCの調査、監督機能面での権限強化を明文化した。さらに、ガバナンスの確立や代表選手選考の透明化を競技団体に義務付けるとともに、違反した場合は処分の対象とすることも決めた。 6月10日には文部科学省の有識者会議に、元プロ野球選手である桑田真澄とオリンピック柔道72 kg級銀メダリストである田辺陽子が外部有識者として招かれた。このうち桑田は、小学生の時は練習で毎日のように殴られたと自身が受けた体罰の体験談を語るとともに、「一方的に怒鳴ったり殴ったりするのではなく、選手と一緒に悩み喜ぶ伴走者」こそが理想の指導者であると述べた。また、体罰や長時間練習などで肩や肘を壊して消えていった選手も少なくなかったとして、スポーツ指導のあり方に関しては、「勝利至上主義から人材育成にシフトすることが重要だ」との意見も述べた。 6月21日には内閣府の公益認定等委員会が「スポーツ系公益法人のガバナンス(統治)の確立」というテーマでJOCと日本体育協会にヒアリングを行い、加盟競技団体の役員に外部有識者を積極的に登用することを要望した。 6月28日には最後となる5回目の有識者会議が開かれて、報告書がまとめられた。それによれば、資格制度を整備して指導者の能力向上を図るとともに、全ての指導者が資格を取得することを求めることになった。暴力を生み出す原因としてスポーツの現場における閉鎖性が指摘されたことから、国や競技団体、大学などが有機的に連携して、改善協議を行うためのコーチング推進コンソーシアムの設立も提言された。加えて、女性コーチの育成や、コーチ以外に選手の相談役を務める人材を配置するメンター制度の創設も提唱された。 7月2日には、有識者会議が先週まとめ上げたスポーツ指導者の質の向上策に関する報告書を文部科学大臣の下村に提出した。 7月4日に日本体育協会の指導者育成専門委員会は、指導現場における暴力問題などを受けて「スポーツ指導者のための倫理ガイドライン」を公表した。選手との良好な関係の構築や指導者の社会的責任などが具体的に言及されることになった。また、指導者による暴力やセクハラ、ケガを押してのプレーの強要などは、指導者が自らの権力に無自覚な時や、過度の勝利至上主義に陥った場合に起きやすいスポーツ医科学的根拠を持たない問題ある言動とみなして、注意を換気することにもなった。 7月30日には全柔連会長の上村が8月中にも辞職することを表明したことを受けて、JOC会長の竹田は「一刻も早く新たな体制を整えて改革を進め、公益法人としての社会的責任を果たすべく、信頼される全柔連を再構築するよう期待したい」、専務理事の青木は「スポーツ界のガバナンス(統治)とコンプライアンス(法令順守)が問われている」とそれぞれ見解を示した。 8月9日には日本体育協会が全柔連に対して勧告処分を下すとともに、9月30日までに改善計画書を提出して、その後3ヶ月ごとに経過報告を義務付けることを指示した。勧告内容としては、スポーツの文化的価値や組織としての倫理観を再認識し、ガバナンス(統治)の改善・改革を図ること、女子柔道の暴力問題を受けて指導者資格制度の確立を来たすこと、日本体育協会が実施する「公認スポーツ指導者制度」へ参画することの3点を挙げた。これに対して全柔連の上村は、「ご迷惑をお掛けして申し訳ない。改革、改善はきちんとやっていく。」とコメントした。 8月20日には日本スポーツ振興センター内に、暴力指導への通報や相談を受け付ける第三者機関を設置することに決めた。また、その機関の在り方を検討する「実践調査研究協力者会議」が陸上競技のハードル選手として活躍していた為末大や、競泳の背泳ぎ200mでアテネ及び北京オリンピックの銅メダリストになった中村礼子といった元選手、さらには日本スポーツ仲裁機構の機構長である道垣内正人や早稲田大学教授の友添秀則などをメンバーとして、調査方法や処分案などの仕組みを9月2日の会合で議論することになった。当面はオリンピック強化指定選手のみが対象となる。将来的にこの機関は暴力指導に限定せず、セクハラや組織の内紛といったスポーツ界の不祥事全般に対応することを視野に入れているという。 8月22日にはJOC事務局長の平真が、3月に開設した暴力やセクハラ、パワハラなどの相談を受け付ける通報相談窓口に7月末までに24件の通報があったことを明らかにした。この窓口はオリンピック強化選手や強化スタッフ、加盟競技団体の役職員などを対象としているものの、24件のうち約半数が対象外のケースであった。その一方で、体操の女子選手3名がコーチ2名から暴力を振るわれたとの訴えに関しては、日本体操協会とともにすでに調査に乗り出した。なお、体操以外にも数件の継続調査を行っているという。 9月2日には日本スポーツ振興センター内に設置する第三者機関の在り方を検討する「実践調査研究協力者会議」の第1回会合が開かれて、当面はJOCの強化指定選手のみを対象とした、弁護士や臨床心理士などによる相談窓口を12月までに設けることに決めた。暴力やセクハラなどに関する相談内容を調査した結果、事実と判明した場合は競技団体へ改善勧告を行うことになる。 9月22日に文部科学省は、2020年に東京オリンピック開催が決まったことを受けて、来年度から暴力根絶のためのスポーツ指導改革に取り組むために、関連予算約8億円を概算要求に盛り込むことになった。文部科学省が設置した「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議」においても指導における不適切な言動の背景に選手・チームとコーチの閉鎖的な関係が指摘されており、担当者も「柔道女子日本代表の暴力問題でも、選手を支える多くの人が暴力を見ていたはずなのに口出しできなかった。選手のために議論できる雰囲気が必要」だとして、指導の場に多様な関係者の意見が浸透するような体制を整備するという。それによれば、コーチやトレーナー、医師らが連携する「開かれた指導体制」の構築や、外部指導者の積極的登用、第三者機関において選手の被害相談の受付を図るなどを挙げた。文部科学省は「選手が安心してスポーツに打ち込める環境を整え、競技力向上につなげていきたい」とその意図を語った。 10月22日にJOCの女性スポーツ専門部会は、柔道界におけるセクハラなどの問題を受けて、セクハラ防止のためのガイドラインを来年度までに制定することになった。部会長の山口は「他の競技団体が作る際のたたき台にもなる。暴力の問題と同じように取り組んでいきたいと思う。」と語った。 11月12日にJOCは加盟団体審査委員会を開き、組織改革を進める新制全柔連の取り組みに対して佐藤征夫委員長が「非常に良く対応されている。引き続き見守っていく」と一定の評価を与えた。 12月2日に文部科学省の有識者会議は、スポーツ指導で暴力問題が起こった際に競技団体が指導者を処分する際の基準を制定した。状況に応じてコーチ資格の剥奪や停止が盛り込まれることになった。細部を調整したうえで各競技団体に通達する。競技団体によって処分にばらつきが出るのを避けるために、一律の処分を提示することになったという。この規定には強制力がないものの、既に指導者の処分を設けている競技団体にはこの規定に応じた改定を求めるとともに、まだ設けていない競技団体にはこの指針に合わせた基準を求めることとなった。また、JSC内に設置された暴力を受けた選手による通報や相談窓口となる第三者機関は、年末までに始動する運びとなった。そこでは弁護士や臨床心理士が相談を受け付け、問題ありと判断された場合は「調査パネル」によって事実関係の調査がなされたうえで、競技団体に改善などの勧告を行うことになる。 12月19日に文部科学省の有識者会議は、JSC内に設置するスポーツ指導における暴力やセクハラを受けた選手の窓口となる「第三者相談・調査委員会」の概要を発表した。また、指導者による暴力的指導などに関する処分を行う際の各競技団体への統一基準となるガイドラインも公表した。それによれば、処分の重い順に(1)資格はく奪(2)無期資格停止(3)有期の資格停止(4)文書による注意(5)口頭注意と規定することになった。暴力のみならず、セクハラやパワハラ、罰としてのしごきや特訓も処分の対象に含まれる。座長である早稲田大学の友添秀則教授は「暴力の根絶を本当に行わないと、スポーツという文化が存続し得ないくらい危機的状況にある」と述べた。 2014年7月23日に日本体育協会は理事会を開いて、独自に認定している約40万人にのぼる公認指導者に対して、体罰やセクハラ、パワハラなどを起こした際の処分規定を公表した。今までは指導者の資格に関する詳細な基準を設けていなかったが、柔道などにおける体罰問題を受けて、昨年4月から協議を重ねた上で具体的な基準を策定するに至った。それによれば、処分は重い順に▽資格取り消し▽有期の資格停止▽厳重注意▽注意と定めることになった。
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