部活動指導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:37 UTC 版)
「学校における働き方改革」の記事における「部活動指導」の解説
「部活動」を参照 部活動に関して、内田良らが行った2017年の全国の中学校教員に対する質問調査では、平日平均12時間を超え、9割以上が月1度以上休日出勤し、また休日出勤者の77%が週一度以上恒常的な休日出勤をしていた。部活顧問は9割以上の職員が就いており、どの職域でも週10時間程度は部活の立ち合いをしているが、教員の半数は次年度は顧問をしたくないと回答しており、顧問の部活を自分が未経験な場合もストレスを増加させている。そもそも学習指導要領では部活動は教育過程外であり、生徒の自主的、自発的活動と位置づけられている。しかしコロナ禍前では多くの教員が、1年間の全部の教科の授業時間数の1コマ50分の1,015時数より多くの時間を部活動にさいてきたと指摘されている。一方で、部活動は「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」ことが新学習指導要領に定められている。運動部活動は、顧問の教員の積極的な取組に支えられるところが大きいが、学校教育の一環としてその管理の下に行われるものであることから、各活動の運営、指導が顧問の教員に任せきりとならないようにすることが必要であり、校長のリーダーシップのもと、教員の負担軽減の観点にも配慮しつつ、学校組織全体で対応すべきである指針が示されている。 1955年の部活活動日数は中学で男子3.8日、女子3.7日で高校が男子4.8日、女子4.2日だったが2001年調査では男女で中学5.5日、高校で5.6日と増加した。生徒自身も負担に感じており2001年調査では中学で20.9%、高校で22.6%が休日が少ないと回答している。教員の責任が問われることもあり、熊本市立中学の1970年7月の柔道部での半身不随事故では顧問と校長、熊本市が注意義務違反で敗訴した。これにより特に熊本県で部活が学校から社会体育化へと移行が推し進められたが、1978年に日本学校安全会の災害共済給付制度が改善されたことにより地域クラブ活動の保証が及ばないことで再度全国的に部活が学校へ回帰した経緯がある。また1989年の学習指導要領で部活動参加を以って必修クラブ活動の履修を認める「部活代替措置」が認められたが、学校5日制の実施で授業数確保を苦慮した現場では必修クラブを授業時間からなくして代わりに生徒の部活動を義務付けた。埼玉県では98.8%が部活代替措置を行った。しかし1999年の学習指導要領で必修クラブ活動が廃止されたため部活代替措置の前提が崩れ、運動部活動の従事が半ば公務と見做される根拠も失われた。しかし一方で東京都教育委員会では2006年に都立学校の部活動を教育課程内に含めるよう制度変更しているなど部活動の位置づけは変遷している。2014年、福岡県の公立中学校に勤務する体育教諭は、長時間化する「ブラック部活」に異を唱え、教員仲間6人で「部活問題対策プロジェクト」を立ち上げ、顧問強制や採用試験で部活顧問の可否を質問すること、生徒の加入強制に反対する署名活動を行い、6万以上の署名を集めた。顧問の強制などの部活動問題の改善を専門に訴える組合「愛知部活動問題レジスタンス(IRIS)」が2021年11月に設立されている。 共同通信調査によると、法令で部活による時間外勤務を認めていないため、23府県では土日部活動で練習試合で生徒を引率した教員に対し旅費を支給していない。 一方で2020年10月、経済産業省は、少子化による学校単位でのクラブ存続難と教員の働き方改革の必要性の高まり、ボランティア主体による指導の質のバラツキによる弊害により、学校部活動から持続可能なスポーツクラブ産業への移行を探る「地域×スポーツクラブ産業研究会」を発足させた。 部活によって私生活がなく、夫が家庭を顧みない状況を「部活未亡人」、それにより起こる離婚を「部活離婚」、結婚に至る私生活を送る時間もない「部活未婚」という言葉もある。しかし部活に奉仕しようとも、平日及び土日も4時間未満は無手当であり、福井県での土日部活動手当は4時間を超えた時間無制限に対し、一律3600円が支給されるのみとなっている。 名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授内田良はハンマー投げ死亡事故や、競技未経験者が部活顧問を行う問題事案として山岳が「向いていない」と自覚しつつもしていた部活動で教員(29)自らも事故死した那須雪崩事故、時には交通事故も起こる部活遠征でのマイクロバス運転の送迎活動の問題を挙げ、生徒や教員の犠牲のうえに成り立部活の「無理矢理のパッケージ」による弊害だと言及している。公立学校では少額の休日手当以外無償奉仕であるが、ハンマー投げでは顧問教諭2名が書類送検され、那須雪崩事故では男性教諭3人を業務上過失致死傷容疑書類送検されたうえ、遺族との民事調停では県が3教諭に賠償を求償する意見書が出されているなど顧問に重大な責任が課されている。 文部科学省は休日に教員が部活動の指導に関わる必要がない仕組みを整備する改革案をまとめ、今後、各地域にある拠点校で実践しながら研究を進め、2023年度から段階的に実施する予定となった。
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