虚偽報道 虚偽報道の背景

虚偽報道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/17 06:14 UTC 版)

虚偽報道の背景

虚偽報道が後を絶たないことに様々な理由が挙げられる。

取材者や編集者の目論み・思想と事実・現実との差

根本的な理由としては、記者・ディレクターや取材チームが取材を開始する以前に、記事に対する評価の期待値を計算し、自分なりの見通しや願望を立てていることがある。特にドキュメンタリー番組・映画などでは撮影以前に企画者がシナリオを作成している事が当たり前である。取材・撮影の進展によって予想外の事態が発生したり、思わぬ事実、さらには自分の理想・思想と相反する実態が判明することも、当然多々起き得るものである。取材者・企画者がそれを受け入れて、自分で組み上げた見通しやシナリオを、取材した事実に沿って修正する事ができるならば虚偽にはならない。だが、当初のままで押し進め、映像やコメントを自らの意図に沿う形に編集したり、取材対象者に自身の発言ではなく取材陣の求める内容の発言をさせるなどして、事実を歪めれば虚偽報道に陥る。

時間・予算の制約

上記のように取材前に立てたシナリオや仮説を途中で変更できない背景には、時間や予算の制約があるためであるとされる[12]

処分の差

また、報道機関により、虚偽報道に関与した社員に対する処分にはかなりの差がみられる。解雇という厳罰で臨む社もあれば、口頭での「厳重注意」処分程度で済ませる社もあり、その企業体質も強く関連すると見られる。

組織ぐるみの虚偽報道とその対応・国家レベルの虚偽報道

伊藤律会見報道、「ジミーの世界」報道、皇族スピーチ報道などはいずれも組織内の個人が功名心などに駆られて行なった虚偽報道であり、組織全体からすれば一種の誤報と見られなくもない。

一方で記者個人のみに一切の責任があるとし、校正を行うべき編集者や責任者たるメディア全体の反省がなされないため、体質改善が出来ずに虚偽報道が続くとの批判がある。逆に徹底した原因究明と明確な謝罪を行ったワシントン・ポストはむしろ評判をあげた。

有事においては、国家レベルで国益追求や政府高官のメンツという功利主義のもとで大規模な虚偽報道がなされる例もある。大日本帝国大東亜戦争中における大本営発表や、敗戦後の占領下でのGHQによる言論統制下に於ける報道ではあえて事実を改変した報道が行われた。また中国北朝鮮や軍政下のミャンマー中東諸国などの独裁国家のメディア、自由主義国であってもイラク戦争におけるアメリカ合衆国の対外発表のように、現在でも例がある。

インターネットでの虚偽報道

また、近年は虚偽の情報でつくられたインターネットニュースも問題視されている。主にネット上で発信、拡散される嘘の記事を指すが、誹謗中傷を目的にした個人の投稿などを含む場合がある。また、個人の投稿をテレビ、新聞等のニュースメディアが真偽確認をせず拡散する例も頻発している。インターネットでの虚偽報道は、SNSで発信、拡散される影響力を持つが、誤報であったとしても謝罪までは到らずうやむやになるケースが多い。

2016年8月25日、サイゾー系ウェブサイトのネットニュースにて、NHK関係者の発言として番組内の捏造を示唆する記事が掲載されたが、実際は取材の事実はなく、関係者の回答は架空のものであった。記事を書いた20代男性は、契約前に取材や記事執筆の経験はなかった。同社では編集長ら3名の社員が、30人程度の外部執筆者の原稿を受け取り、1日10本程度の記事を配信していたが、内容の真偽については確認していなかった。揖斐憲社長は「ネット上の書き込みを丸ごと信用してしまった」と説明し、「記事量とチェック体制のバランスが欠けていた。コストをかけずにPVを稼ぐため、記事本数で賄おうとする無料ネットメディアの構造的問題もある」とネットメディア全体の問題点も指摘した[13]

なお、日本青年会議所(JC)の「宇予くん」炎上事件の時に流出した資料によると、ツイッター等インターネットメディアを使って工作活動を行う企業やプロは存在しており、報酬は数百万円かかるとされている[14]

映画「ノロイ」では、登場する架空のジャーナリスト小林雅文のホームページインターネットアーカイブや小林のファンのブログなどが実際にインターネット上で閲覧できるようになっていた。このケースでは、映画そのものがフィクションであることは容易に想像がつくため、インターネット上でのページ開設も映画のリアリティを増すための演出としてとらえることが出来る。

2014年の御嶽山噴火では民主党政権時代の政策に絡むインターネット上で流布された事実無根の捏造情報[15][16]を信じた当時の自民党参議院議員が他党批判の材料として使用する形で捏造情報をTwitterで拡散し[17]、これが発端となり党同士の紛糾および民主党から自民党への謝罪要求にまで発展し、その後フェイクニュースの拡散を助長した自民党議員がツイートを削除の上で公式に謝罪、これを無根拠に批判された側である民主党が受け入れて決着した[18]


  1. ^ 誤報・虚報
  2. ^ ミドルトン, ジョン (1996年12月25日). “虚報被害者救済法の日本法的アプローチとコモンロー的アプローチ”. 一橋大学. 2014年9月18日閲覧。
  3. ^ Did Social Media Ruin Election 2016? - ナショナル・パブリック・ラジオ
  4. ^ As fake news takes over Facebook feeds, many are taking satire as fact - The Guardian
  5. ^ Who’s to blame for fake news and what can be done about it? - USC News(南カリフォルニア大学)
  6. ^ 米大統領選:ファクト・チェック 報道で話題、権力監視に有効か - 毎日新聞
  7. ^ フェイクニュースは戦争を起こす?! - ニューズウィーク日本版
  8. ^ Pizzagate: What to Know About the Conspiracy Theory - Time.com
  9. ^ あすへのとびら 「ポスト真実」の時代 メディアへの重い問い - 信濃毎日新聞
  10. ^ 「フェイクニュース問題」を巡りFacebookとファクトチェック機関が団結 - Wired
  11. ^ トランプ政権の「事実」と「代替的事実」 - WSJ
  12. ^ 池上彰「第4章 ビジネス文書を書く 38.(5) 「緩やかな演繹法」」『「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える! 伝える力』PHP研究所、2007年4月18日。ISBN 978-4-569-69081-0
  13. ^ “ネットメディア誤報 影響力自覚した取材とチェック態勢を”. 毎日新聞. (2016年9月19日). https://mainichi.jp/articles/20160919/ddm/004/040/006000c 
  14. ^ “デマ・曲解で野党を叩く「DAPPI(@take_off_dress)」は会社組織が運営か、平日8~21時の完全シフト制に”. (2018年4月22日). https://buzzap.jp/news/20180422-dappi-take-off-dress/ 
  15. ^ “御嶽山被害拡大は「火山観測」仕分けた民主党のせい? 早とちりで「仕分け人」勝間氏がとばっちり”. J-CAST. (2014年9月29日). http://www.j-cast.com/2014/09/29217026.html 2014年10月3日閲覧。 
  16. ^ “民主、御嶽山投稿で自民に抗議 片山さつき氏に謝罪要求”. 共同通信. (2014年10月2日). http://www.47news.jp/47topics/e/257917.php 2014年10月3日閲覧。 
  17. ^ “片山さつき氏が陳謝「事実誤認に基づく発信」 御嶽山の常時監視「事業仕分けで外れた」としたツイートに【UPDATE】”. ハフィントン・ポスト. (2014年10月1日). http://www.huffingtonpost.jp/2014/09/30/satsuki-katayama-ontakesan-tweet_n_5910730.html 2014年10月3日閲覧。 
  18. ^ “片山氏、外交防衛委でも「ご迷惑おかけした」”. 読売新聞. (2014年10月2日). http://www.yomiuri.co.jp/politics/20141002-OYT1T50086.html 2014年10月3日閲覧。 
  19. ^ 事件の原因となった記事の筆者「八戸順叔」の読み方は不明である。詳しくは八戸事件参照
  20. ^ * 姜範錫『征韓論政変 明治六年の権力闘争』(1990年サイマル出版会ISBN 978-4377108606)259頁。
  21. ^ 本田靖春「不当逮捕」、講談社、1983年
  22. ^ 北朝鮮帰国事業 全マスコミが「北朝鮮は天国」と騙されたNEWSポストセブン
  23. ^ a b c 記事を訂正、おわびしご説明します 朝日新聞社 慰安婦報道、第三者委報告書朝日新聞社
  24. ^ 「蔵出し特集 嘘みたいな本当の話 サミットで首脳夫人にも嫌われた森喜朗首相の英会話」『週刊文春』2000年8月5日
  25. ^ 中村真理子「森首相、クリントン大統領に「フー・アー・ユー」失言の真偽」『週刊朝日』2000年8月11日
  26. ^ 「ブッシュ再選と今後の日米関係」『第141回琉球フォーラム』琉球新報社 2004年8月11日
    この講演にて高畑は創作である旨を認めた。
  27. ^ 「マスコミとの387日戦争」『新潮45』2001年6月
  28. ^ 居座り朝日・木村社長の素顔 編集局長時代に虚偽報道で更迭…zakzak
  29. ^ 7月23日産経新聞の自衛隊訓練の記事について 東京都中央区
  30. ^ 「吉田調書」朝日新聞 DIGITAL
  31. ^ “本紙7月報道、ヒマワリで球児応援企画 闘病の女性実在せず”. 茨城新聞. (2014年10月24日). オリジナルの2014年10月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141028013000/http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14141235033085 2017年8月14日閲覧。 
  32. ^ “「記事の人物実在せず」 茨城新聞がおわび”. NHKニュース (日本放送協会). (2014年10月24日). オリジナルの2014年10月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141024111148/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141024/k10015678301000.html 2017年8月14日閲覧。 
  33. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2018年2月8日). “沖縄米兵の救出報道 おわびと削除” (日本語). 産経ニュース. 2019年8月1日閲覧。
  34. ^ 1992年9月30日「第1回 幻の王城に入る」10月1日「第2回 極限の大地に祈る」
  35. ^ a b 今野勉『テレビの嘘を見破る』
  36. ^ 「日本人マジメデスネ!! 英議事堂の時計デジタルになる BBCのエープリルフール放送に 抗議文やら『不要の針下さい』」『朝日新聞』1980年4月7日付東京夕刊、2面。笑えないエープリルフール、ことばマガジン(朝日新聞デジタル)、2014年4月1日。
  37. ^ 見出しの原文は"Russian Multi-Jet Bomber Lands at Haneda Airport"。ちなみにこの記事には"SHIGATSU UMASHIKA"(=四月馬鹿)の署名があった。
  38. ^ 「行き過ぎた?『四月馬鹿(エイプリル・フール)』“ソ連爆撃機、羽田へ” 日本タイムズ報道 内外読者を驚かす」『朝日新聞』1955年4月1日付東京夕刊、3面。笑えないエープリルフール、ことばマガジン(朝日新聞デジタル)、2014年4月1日。






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