競走馬 競走馬の適性

競走馬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/03 18:28 UTC 版)

競走馬の適性

前述のように競走馬は両親の血統などに基づいて距離に対する適性が推測され、実際に競走を重ねるにつれて、競走を行うにあたっての適性が次第に明らかになる。そうした適性について記述する。

距離に関する適性

日本においては、競馬の競走は現在では平地競走は最短800m最長3600m(過去は4000mのレースが存在した。中山競馬場では4000mのコース設定が現存する)、障害競走は最長4250mの距離で行われる。競走馬にはそれぞれ、得意とする距離のレースがある。距離に関する適性は競走馬自身の走法や体型、気性、体質などのさまざまな要因の影響を受ける。競走馬生活を送るうちに走法や気性が変化し、それに伴って距離適性が変化する競走馬もいる。

得意距離による馬の呼称

一般に、短距離戦を「スプリント(Sprint)」、長い距離での持久力を「ステイ(Stay,Staying)」能力等と言う。どのぐらいの距離を短距離・長距離とみなすかは時代や国によって大きく異なる(詳細は距離 (競馬)参照)。近年では1200メートル前後の距離を「スプリント距離」、1600メートル前後の距離を「マイル」などと定義するのが一般化している。

スプリンター

スプリンター(sprinter)とは、短距離を得意とする競走馬のことである。

一般に、胴が短く筋肉質な大型馬にスプリンターの適性があると言われる。逃げ馬が前残りで勝利することもままあるため、おとなしい従順な馬よりもスタートから追っていけるような気性の荒い馬に適性があるとも言われている。また、他のカテゴリよりも瞬発力が豊富に要求される傾向にある。[要出典]

2010年には九州地区(佐賀競馬・荒尾競馬)の交流競走として「九州スーパースプリントシリーズ」という900 - 950mの超短距離レースが施行され[43]、2011年には対象を全国に拡大し「地方競馬スーパースプリントシリーズ」として最短800m - 最長1000mの短距離シリーズが行われる[44]

マイラー

マイラー(miler)とは、1マイル(約1600m)前後の距離を最も得意とする競走馬のことである。

スピード能力に優れるが、不適性の2000m以上の距離になると最後に失速する競走馬が多い。また、燃えすぎる気性が災いして距離適性が短くなるケースもある。ただし、馬の地力やレース展開・騎手の騎乗技術でカバーできることがある。逆に、スプリンターのようなスタートダッシュで走っていては逃げつぶれてしまうので、1400m以下のレースでは見せ場なく終わってしまうこともある。[要出典]

ステイヤー

ステイヤー(stayer)とは、長距離を得意とする競走馬のことである。

一般に、胴が長くすらりとした小型の馬がステイヤーとしての適性を持っていると言われる。長距離レースを勝つためにはペース配分が重要であるため、騎手に逆らって暴走することがあるような気の荒い馬は少なく、素直でおとなしい気性の馬が多い。スタートで大きく出遅れることが多い馬は、出遅れを挽回できる長距離レースでないと極端に不利となることが多い。ただし、レース中の不利を回避するため、わざと若干出遅れて勝利するという希少例も存在する。[要出典]

コースに関する適性

馬場の種類に関する適性

日本ではダート、2種類のコースによってレースが行われる。芝コースを得意とする競走馬を芝馬、ダートコースを得意とする競走馬をダート馬という。どちらのコースも得意である場合は芝ダート兼用、あるいは万能などと表現される。近年の日本では競走馬を芝あるいはダートの一方に絞って出走させる傾向が強く、芝・ダート両方でグレードワン競走を勝利するような万能馬は稀である。万能馬の例としてはアグネスデジタル(芝で天皇賞(秋)等、ダートでフェブラリーステークス等を勝利)などが挙げられる。また、芝コースでの成績が伸び悩んでいた馬が、ダート転向した結果適性が見出されて大成するというケースも少なくなく、中にはホクトベガアドマイヤドンカネヒキリのように、ダートのトップホースにまで上り詰める事例もある。

ダートに関しては競馬場によって砂質や砂の深さに違いがあり、ダート馬であるからといってあらゆる競馬場のダートコースに対応できるとは限らない。砂質は具体的には海砂と川砂に大別され、砂の採取地によっても走行時の感触などが異なってくる。またアメリカのダートコースは押し固めた土で構成されているため日本のダートとは要求される能力が異なり、むしろ日本の芝コースのようなスピードが要求される。逆にアメリカのダートで活躍した馬の仔は日本の芝で活躍しやすい傾向にあり、日本で活躍する外国産馬の多くがアメリカ産である。

芝に関しても競馬場によって使用している芝の種類や産地が異なっており、また、季節によっても異なっている。本州、九州にある競馬場では野芝と呼ばれる日本を原産地とする芝を使っている。これに対して北海道にある札幌競馬場と函館競馬場は緯度が高く、平均気温が本州、九州にある競馬場よりも低いため、洋芝と呼ばれる海外原産の芝を使用しており、ケンタッキーブルーグラスなどの寒冷地に合うものを使用している。また野芝を使っている競馬場でも冬期は芝が休眠状態に入り冬枯れを起こすため、イタリアンライグラスなどの洋芝をオーバーシードすることで1年中緑色の馬場を保つことができるようになった。このように同じ芝でも競馬場によって違いがある。北海道開催では洋芝巧者と呼ばれる馬が活躍するケース[45]があり、函館記念を3連覇したエリモハリアーなど北海道で一変する活躍を見せる馬も存在する。また、欧州遠征の試金石として北海道でのレースで適性を判断するというケースもある。

馬場状態に関する適性

競走馬の中には降雨や降雪によって悪化した馬場状態(不良馬場と呼ばれる)での競走を得意とするものがいる。そのような競走馬を道悪巧者重巧者不良巧者などと表現する。また、馬場状態がよくとも芝が踏み荒らされているなど、悪条件での競走を得意とする競走馬もいる。逆にこのような不良馬場や荒れた馬場を苦手とする馬も多く存在し、グレードワン競走を多数勝利するような超一流馬でも、不良馬場では力を発揮出来ずに格下相手に惨敗することも珍しくない。このような馬場状態に関する適性については、蹄の形状・馬自身の性格(泥などが顔に掛かるのを嫌うなど)・走法等が影響していると言われ、不良馬場を得意・苦手とする血統も存在する。一般に芝の場合、馬場が悪化すると"脚抜け"が悪くなってより多くのパワーが必要とされ、走破時計が遅くなる。逆にダートの場合は馬場が悪化すると"脚抜け"が良くなり、より多くのスピード・瞬発力が必要とされ、走破時計が速くなる。

コースの勾配に関する適性

競馬場の中にはコースの一部(主にゴール前直線区間)に急な勾配をもつものがあるが、そのようなコースを苦手とする競走馬もいる。そのような競走馬は勾配のない平坦なコースでよりよい成績を挙げるため、平坦巧者と呼ばれることがある。

左回り・右回りに関する適性

競馬の競走は、競馬場によってコースを右回りに周回する場合と左回りに周回する場合とがあるが、いずれかを苦手とする競走馬がいる。逆に、左回りが得意な馬もおり、左巧者などと言われる。なお、一般に競走馬は左回りに周回する場合のほうが右回りに周回する場合よりも早く走ることができるとされる。ちなみにヒトも多くの人は左回りの方が周回しやすいと言われている。ディープインパクトの場合、敗戦経験のあるレース(有馬記念凱旋門賞)はどちらも右回りのコースだった。

持ち回りで開催される南関東公営競馬の4場では、大井競馬場だけが右回りであるため、大井巧者や逆に大井下手と呼ばれる馬が存在する。

コースの大きさに関する適性

競馬場のコースの大きさは様々であるが、普通はコース用地が広ければコーナーの曲線はより緩やかになり、小さければより急になる、周回距離も同様である。このカーブが緩やかで周回距離の長いコースを一般に大回り、コーナーが急で周回距離の短いコースを小回りと評するが、どちらかを得意にしたり、苦手とする馬がいる。なお、中央競馬の中ではかつての中京競馬場は「平坦」「左回り」「小回り」の3拍子が揃った数少ない競馬場であるため、これらの条件にマッチし中京で良績を挙げていた中京巧者と呼ばれる馬が見られた(シーイズトウショウなど)[† 5]

また、川崎競馬場姫路競馬場のように、小回りながら急なコーナーと長い直線という組み合わせの競馬場では、小回り適性・急コーナーに対する適性と直線の末脚の両方が要求される。

障害競走の適性

一般に、障害を飛越する能力の高い馬は障害競走の適性を持つといえる。[要出典] 日本では多くの場合、平地競走で成績が振るわない競走馬が障害競走に転向するが、平地競走の能力が著しく劣る競走馬であっても、飛越能力が優れているために障害競走で優れた成績を収める例は多い。[要出典]


注釈

  1. ^ 旧法人による馬名登録実施基準は「日本軽種馬登録協会馬名登録実施基準[16]」にある。
  2. ^ ディープインパクト=「大震撼」など。
  3. ^ 戦後ではゴールデンユートピアが唯一の10文字馬名である。[要出典]
  4. ^ 2019年11月17日デビューの「ラガービール」など。
  5. ^ 中京競馬場は2012年再開のリニューアルオープンに際して、周回距離が延長され最後の直線に坂が設けられたため、中央競馬からは「平坦」「左回り」「小回り」の3条件を満たす競馬場がなくなった。
  6. ^ 日本軽種馬協会JBBA NEWS 2006年9月号武市銀治郎の記事によると、高砂、四ツ谷、老松、巴黎、吾妻、第二四ツ谷などが歴史に名を残した。高砂も参照。

出典

  1. ^ a b c 櫻井他 2004, p. 74.
  2. ^ スポニチ 2019年9月29日 【阪神6R】メロディーレーン レコードV!最少体重優勝記録を2キロ更新2019年12月22日閲覧。
  3. ^ ラジオNIKKEI 2011年1月22日 グランローズがJRA最少体重出走記録を37年ぶりに更新2015年1月9日閲覧。
  4. ^ サンケイスポーツ 2011年1月23日 JRA史上最軽量!334キロ馬デビュー2015年1月9日閲覧。
  5. ^ 東京スポーツ 2013年1月27日 “大物”新馬に2つの目標2015年1月9日閲覧。
  6. ^ ラジオNIKKEI 2013年11月3日 3歳馬ではJRA最高馬体重出走 JRA史上3番目に重い馬体重でショーグンが出走2015年1月9日閲覧。
  7. ^ 警視庁騎馬隊
  8. ^ 満13歳のゴールデンバージが復活勝利 - 十勝毎日新聞電子版「ばんえい十勝劇場」 2010年7月24日閲覧。
  9. ^ ホッカイドウ競馬の競走能力・発走調教検査で13歳馬が合格”. 日本軽種馬協会「競走馬のふるさと案内所」 (2013年9月17日). 2016年6月7日閲覧。
  10. ^ 櫻井他 2004, p. 9.
  11. ^ 矢作 2008, p. 130.
  12. ^ 中央競馬の馬主活動(日本語版) (PDF) 」(P.25) 2012年9月30日閲覧
  13. ^ 「引退馬 癒し・健康に/TCC、滋賀に交流施設」日経MJ』2018年7月13日(シニアBiz面)2018年10月3日閲覧。
  14. ^ 豪競走馬、年数千頭が虐待され食肉処理か 日本にも輸出 潜入調査報道”. AFP (2019年10月18日). 2019年10月18日閲覧。
  15. ^ a b 公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル馬名登録基準 (PDF)”. 公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル (2012年11月27日). 2015年7月21日閲覧。
  16. ^ 日本軽種馬登録協会馬名登録実施基準 (PDF)”. 財団法人日本軽種馬登録協会. 2015年7月21日閲覧。
  17. ^ a b c d e f g h i 池田 2010, p. 40.
  18. ^ ザ・キング”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  19. ^ ザ・ビクター (NZ)”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  20. ^ ラ・フウドル”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  21. ^ a b c d 珍名馬年表”. 競馬道online. 珍名馬アワード in 20 century. 2018年6月1日閲覧。
  22. ^ 「ヲ」馬名と「ヴ」馬名。
  23. ^ 優駿
  24. ^ 競馬成績書. 昭和9年 春季”. 2014年2月28日閲覧。
  25. ^ [外]アルマダ号の勝馬投票券における馬名表記(JRAホームページ、2009年6月4日)[リンク切れ]
  26. ^ NZ産まれ(アール・エフ・ラジオ日本「うまログ」、2009年6月6日)
  27. ^ トヨタクラウン”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  28. ^ (1951年生まれの馬)ヒヤキオーガン”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  29. ^ (1961年生まれの馬)ヒヤキオーガン”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  30. ^ タチカワの歴史”. 立川ピン製作所. 2018年6月1日閲覧。
  31. ^ タチカワボールペン”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  32. ^ マルマンガスライタ”. JBISサーチ. 日本軽種馬協会. 2018年6月1日閲覧。
  33. ^ https://www.jbis.or.jp/horse/0000619382/
  34. ^ 日本中央競馬会『優駿』2000年5月号、p.167
  35. ^ 地方競馬全国協会業務方法書
  36. ^ タケユタカ”. JBISサーチ. 2014年3月31日閲覧。
  37. ^ デイリースポーツ 2016年5月17日 ダービー制覇へ 3代目ヒシマサル登場
  38. ^ a b c 優駿』1982年9月号、p.128
  39. ^ 『優駿』1987年11月号 p.62
  40. ^ 大橋 1989, p. 81.
  41. ^ INTERNATIONAL LIST OF PROTECTED NAMES”. IFHA. 2020年3月6日閲覧。
  42. ^ INTERNATIONAL LIST OF PROTECTED NAMES”. IFHA. 2019年7月30日閲覧。
  43. ^ 「九州スーパースプリント」特設サイト - 楽天競馬
  44. ^ 超短距離[1ターン]、白熱の新シリーズ 誕生 地方競馬スーパースプリントシリーズを実施 - 地方競馬情報サイト 2011年4月25日
  45. ^ コース紹介:札幌競馬場 JRA”. JRA. 2020年5月4日閲覧。
  46. ^ 小島 2002, p. 172.
  47. ^ 岩手競馬が刑事告発 禁止薬物問題”. 産経新聞 (2019年1月24日). 2019年9月5日閲覧。
  48. ^ アンドレ・カズヌーヴ参照。





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