影 影の概要

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 10:15 UTC 版)

障子に映る

なお、光の当たらないところは、区別して、(かげ、英語:shade)と書く。

物理現象としての影

影は物理現象としては、光が直進性を持つことから生まれる。また光の波長に較べ、影の原因となる物体が非常に巨大であるため、輪郭の明瞭な影が成立する。電波は、物理学的には、本質的に光と変わりない電磁波であるが、波長が非常に長く、人体や建造物などと較べると遥かに大きいため、電波もまた直進性を持つとは言え、電波による影は、日常的なサイズの物体等については生まれない。

ビルの蔭などになると、TV電波の受信で電波障害が起こるが、これは光学的な「半影」に相当する現象である。影という場合は、通常、特定光源・電磁波源からの光・電磁波についての「真影」のことを指すので、電波等の場合は、日常的な物体サイズでは、影は生じないのである。別の言葉で述べると、直進する電波がビルに当たった場合、波長が非常に長いため、電波は散乱してビルの背後にまで回ってしまい、純粋な影はできない。

投影

影については、光源を「点光源」として考えると分かりやすい。一つの点より光が放射され、それが四方八方の空間に広がって行くとき、このような光源は「点光源」である。

また影が映る地面または壁としては、抽象化して、「平面スクリーン」を考える。もちろん、地面も壁も、具体的に存在するものは決して純粋な平面ではなく、でこぼこが表面にあったり、大きく円盤状に湾曲していたり、あるいは波状に起伏している場合もあるが、理想化して、純粋な平面スクリーンに映ると考える。

このように考えると、影の形は、光源とスクリーンのあいだにあって、光を遮る物体あるいは人等の「輪郭」を、スクリーン平面に投影した形となる。

点光源による影

点光源と物体の中心点(どこが中心点かは、物体に応じて適宜に決める)とを結ぶ直線を考えると、スクリーンが、この直線に対し、直角に交わる形に置かれているか、または傾いた角度で置かれているかで、影の輪郭の「歪み」のありようが変化する(この、光源と物体の中心を結ぶ直線を、「投影中心線」とここでは呼ぶ)。

  • スクリーン平面が、投影中心線と直角に交わる場合(言い換えれば、投影中心線に対し、スクリーンが法平面である場合)
    • 物体の輪郭と、影の輪郭は相似形で、歪みはない。光源とスクリーンが固定されている場合、物体が光源に近づくと、スクリーン上の影は大きくなり、その反対に、光源から遠ざかると、影は小さくなる。
  • スクリーン平面が、投影中心線と直角に交わらず、傾きを持つ場合(このとき、スクリーンには、二つの方向ができる。影の部分からスクリーン上を移動すると、光源より遠ざかる方向と、その逆の方向で、光源に近寄ろうとする方向である)
    • 光源より遠ざかる方向に進むと: 影は、投影中心線がスクリーンと交わる位置にできる影よりも、大きくなり歪んだ形になる。
    • 光源に近づく方向に進むと: 影は、投影中心線がスクリーンと交わる位置にできる影よりも、小さくなり歪んだ形になる。

平行光源による影

点光源による影の場合の話を、点光源が「無限に遠い位置」にあるとして考えた場合が、平行光源による影である。無論、物理的には、点光源が無限遠方にあると、光のエネルギーはゼロとなり、投影像は生まれない。しかし、幾何学的には、平行な光の影を考えることができる。光源が非常に遠方にある場合、例えば、太陽の光などが造る影だと、近似的に、太陽が無限の遠方にあると考え、平行光源と見なすことができる。

先に、投影中心線とスクリーン平面の交わりが、直角かそうでないかによって、二つの場合があった。平行光源の場合、この二つのケースは、製図における「正投影」と「斜投影」に該当する。

  • スクリーン平面が、平行に進む光と直角に交わる場合(正投影の場合)
    • 物体の輪郭と、影の輪郭は合同で、歪みはなく、大きさにも違いはない。
  • スクリーン平面が、平行に進む光と斜めに交わる場合(斜投影の場合)
    • この場合も、スクリーンには二つの方向ができるが、点光源の場合の影とは別の歪み方となる。物体の影は、この二つの方向で、幅に変化はなく、長さだけが、一定の比率で大きくなる。

夕方などになって、太陽の高度が低くなると、平面に近い地面にできる人の影などは、長く伸びた影となる。この影は、上の「斜投影」の場合に当たっており、影は、幅に変化は生じず、長さだけが大きくなる。その結果、人の影などは、長さを n倍しただけの歪みのない、「縦に伸びた姿」になる。

サーチライトなどの点光源で照らされた場合、地面にできる人の影は、遠く離れるほどに幅も大きくなって行くが、太陽が光源となって地面にできる影は、どこまで遠ざかっても、幅は一定である。平行光源によってできる影よりも、点光源による影の方が、より歪みが大きい。

複合投影像としての影

光源を点光源とし、点光源が有限の距離にある場合と、無限の距離にある場合(平行光源)の影のできかたを以上で述べたが、現実には、複数の光源があるのが通常である。また、光源が「点光源」というのは理想化であって、光源は普通、「大きさ」を持っている。

複数光源による影

光源を点光源とし、単一ではなく、複数の光源がある場合の影を考えることができる。

この場合は、「光の重ね合わせ」の原理が適用できる。影は、光が物体等で遮ぎられて、光が当たらない結果できるものであるので、光源ごとでできる影のパターンを考え、この影のパターンを重ね合わせれば、どのような影ができるのか再現できる。

真影と半影

この場合、スクリーン上にできる影の領域は、影の合成として、明るさの度合いが異なる複数のものが生まれる。どの光源からも光が来ない領域は、本来の影であって、これを真影と言う。他方、ある光源からは真影であるが、別の光源からは光が来る領域は、完全な影ではない。このような領域を半影と言う。

半影の明るさ

N個の(点)光源があるとして、それぞれの代表的な「明るさの比率」というものを考える。ここでいう「明るさの比率」とは、影ができる位置で、影の中心とも考えられる点を考え、光を遮る物体がない場合のこの点の明るさを、1 として、この明るさ 1 に、それぞれの光源がどの程度の明るさの寄与を行っているかを示す比率数字である。

これを、S1, S2, S3, ……Sn とするとき、S1+S2+S3+……+Sn=1 である。二つの光源 A と B があり、A の方が明るく、光の明るさの寄与として、A が6割、B が4割のときは、S(A)=0.6, S(B)=0.4 というような数字になる。

更に、ある半影の点が、特定の光源について、真影であるか、そうでないかによって、0 と 1 の数字となる、パリティ P (i) を考える。i 番目の光源について、半影の点において、光が遮られている場合、P (i)=0 であり、光が遮られていない場合、P (i)=1 である。このようにすると、ある特定の点の「半影としての明るさ」は次の式で表現できる:

明るさ=P (1)・S1+P (2)・S2+P (3)・S3+……+P (n)・Sn

N個の光源があるとき、それぞれの光源の明るさの比率が異なると、2^n-2( 2 の n 乗マイナス 2 )種類の半影領域があることになる(「マイナス 2」は、影のない領域と真影の二つの領域である)。

色彩半影

複数の光源が存在し、それぞれの光源が異なる色の光である場合、半影には微妙な色彩のヴァリエーションが生まれることになる。

青い星と赤い星の連星系惑星があった場合、この惑星上では、青と赤の半影が存在することになる。

大きさを持つ光源の影

点光源は理想化であって、現実に存在する光源は大きさを持っている。曇りガラスのランプの下にできる影は、輪郭が曖昧でぼけており、フリンジには、連続半影が生じる。太陽の場合でも、厳密には大きさのある光源であって、影の輪郭には、連続半影のフリンジが存在する。

螢光灯のような光源は、光源の広がりが大きいので、天井などにある場合は、床にできる影はすべて半影となる。天井に非常に多数の螢光灯があったり、天井全体が、乱反射による発光源である場合は、床に影がほとんど存在しない場合もある。

外科手術などの場合、外科医の手や器具などが影を造り出すことで、手術の過程が見づらくなることがある。これを回避するため、影ができないように「無影灯」が工夫されている。








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