デカルト
「デカルト」とは、西洋哲学史において「近代哲学の創始者」「合理主義哲学の祖」として知られる、17世紀フランスの哲学者および数学者である。フルネームはルネ・デカルト(René Descartes)。代表的著作としては「方法序説」や「省察」などが挙げられる。
デカルトは絶対確実な真理に到達するための出発点として「方法的懐疑」を行った。「方法的懐疑」とは、あらゆる知識や信念に対して疑いを持ち、真実を見出すために徹底的に自己検証を行うという思考の方法論である。
「方法的懐疑」を通じて、あらゆる物事を虚偽かもしれないと疑った結果、少なくとも「疑っている自分」がいることは絶対確実であることを見出した。それを「われ思う、ゆえに我あり(コギト・エルゴ・スム)」という命題で端的に表現した。
デカルトの哲学はスピノザやライプニッツに継承されて「合理主義哲学(大陸合理主義)」の潮流を生み出しただけでなく、近世以降の西洋哲学全般の基礎を築いた人物と位置づけられる。
デカルトは、「直交座標系」を発明あるいは確立した功績をはじめ、数学の分野においても後世に大きな影響を与えている。
デカルト【René Descartes】
デカルト (Descartes, Rene)
デカルトという人は
フランス中部、トゥーレーヌ地方のラ・エイに、高等法院評定官で法服貴族の家系として生まれ、 10 歳でイエズス会のラ・フレーシュ学院に入学してスコラ的学問に飽き足らず思い、 卒業後は「世間という大きな書物」において学ぼうと決意して旅に出る。 1618 年、志願将校としてオランダ軍に入り、オランダの医師イサーク・ベークマンと知り合い、 物理数学的研究への刺激を受け、やがて「普遍数学」の構想に達する。 32 歳のときオランダに移住する。
地動説を重要な内容とした『宇宙論』の構想をもつが、 1633 年に地動説を唱えたガリレイがローマの宗教審問所で有罪になったことから公刊を断念する。 いざ印刷というときであった。
デカルトの主な経歴
1637年、オランダのライデンで”方法叙説”を発刊する。 正式な書名は「理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の序説。 加えてその方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学」である。
「屈折光学」では光の性質について触れているのだが、この問題は後にニュートンの粒子説とヤング、ホイヘンスの波動説で激しい論争が展開される。 嫌気がさしたニュートンは最終的に光の研究から身を引くことになるのだが、 デカルトの説は粒子説とも波動説ともとれる内容であるため、玉虫色と評されることがある。
ルネ・デカルト
”方法叙説”はヨーロッパ近代に思想的な地平を開き、精神と物質の二元論、意識、自然観などの概念とともに、 当時思想的な著作はラテン語で書かれるのが常であったのを、初めてフランス語で書かれた哲学書としても評価されている。
キリスト教の教義を弁証するため、 アリストテレスの哲学を用いた形式的な論法を発展させたスコラ的学問と呼ばれるものがヨーロッパを席巻していた。 アリストテレスの哲学は当時では大前提であり、無批判に受け入れた長い歴史があった。 このような時代背景のなか、デカルトはこれを超える考え方、 つまり「我思う、故に我あり」といった、世間はどうあれ自分はこう考えるという哲学は、教会にとっては危険なものであったといえる。 オランダに隠れ、やがてはデカルトの考えに賛同する人が現れていく。こうして新しい時代が生まれていった。
デカルト
デカルト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/07 07:56 UTC 版)
大陸合理論の父は、ルネ・デカルトである。デカルトは、数学・幾何学の研究によって得られた概念は疑い得ない明証的なものであると考え、これを基礎付けるための哲学体系を確立しようとした。デカルトは、合理的な学問的知識さえを疑う全面的な懐疑主義に対して方法的懐疑論を唱え、肉体を含む全ての外的事物が懐疑にかけられた後に、どれだけ疑っても疑いえないものとして純化された精神だけが残ると主張した。デカルトは、精神を独立した実体と見て、精神自身の内に生得的な観念があり、理性の力によって精神自身が、観念を演繹して展開していくことが可能であるとした。このような人間の思考には経験内容から独立した概念が用いられているという考え方を生得説という。ロックと彼を引き継ぐジョージ・バークリーやデイヴィッド・ヒュームなどのイギリス経験論者は、経験に先立って何らかの観念が存在することはなく、人間は「白紙状態」(タブラ・ラサ)として生まれてくるものと考えて生得説を批判したのである。
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