政令指定都市 歴史

政令指定都市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 01:41 UTC 版)

歴史

以下に大都市制度の沿革を記す。以下とは別に、首都圏整備法(昭和31年法律第83号)、近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)、中部圏開発整備法(昭和41年法律第102号)が大都市圏制度として制定されている(三大都市圏」を参照)。

明治以降

  • 1878年明治11年)7月22日郡区町村編制法(明治11年太政官布告第17号)を制定。同法第四条により、「人民輻輳ノ地」に法人格を持たないが置かれ、区会(議会)も設置された。また東京、大阪、京都の三都は勅令指定都市に指定された。通常、1都市1区であったが、東京には麹町区以下15区、大阪には東区南区西区北区の4区、京都には上京区下京区の2区と、人口密集地が広い勅令指定都市には1都市に複数の区を置いた。
  • 1889年(明治22年)4月1日市制(明治21年法律第1号)を施行。「市制中東京市京都市大阪市ニ特例ヲ設クルノ件」(明治22年法律第12号、三市特例)も制定され、人口が多い東京市大阪市京都市の三市では区が存置された。市を代表するのは市会であるが、一般市では市会が3人の市長候補を推薦し、内務大臣天皇に上奏して1人の市長が裁可(市会推薦市長。任期6年)されたのに対し、三市では、市長を置かずにその職務は府知事が行った。
  • 1898年(明治31年)10月1日:市制中東京市京都市大阪市ニ於ケル特例廃止法律(明治31年法律第19号)を施行。三市での反対運動により、三市特例が廃止されて一般市と同じ市制を適用し、市会推薦市長が生まれた。市制中追加法律により、三市では区制が残された。
  • 1908年(明治41年)4月1日:名古屋市に区制施行(4区)。「三市」(三都)以外では初の大都市制度導入例。
  • 1911年(明治44年):市制改正法律を施行。三市の区は法人格を持つこととなった。
  • 1922年大正11年):「六大都市行政監督ニ関スル法律」を制定。「三市」に横浜市神戸市、名古屋市を加えて六大都市とした。六大都市では、府県知事の許可等なしで市の実務実行ができるようになった。
  • 1927年昭和2年)10月1日:横浜市に区制施行(5区)。
  • 1931年(昭和6年)9月1日:神戸市に区制施行(8区)。
  • 1943年(昭和18年)7月1日東京都制(昭和18年法律第89号)の施行により、東京府東京市が廃止されて東京都が置かれた(以降、東京については「特別区」を参照)。「六大都市」から東京市を除いた5市に「五大都市行政監督特例」を施行し、五大都市(京都市、大阪市、横浜市、神戸市、名古屋市)とした。

戦後

  • 1947年(昭和22年):地方自治法(昭和22年法律第67号)を公布。「五大都市」が指定されることを見込んで、「特別市」の規定を盛り込んだ[6]。従来の五大都市の行政区については、地方自治法第155条第2項及びこれに基づく政令(地方自治法第百五十五条第二項の市の指定に関する政令(昭和22年政令第17号)に根拠を移した。
  • 1956年(昭和31年):地方自治法を改正。特別市に関する規定を削除。「五大都市」が指定されることを念頭に「指定都市」制度を創設[17]
  • 1956年(昭和31年)9月1日:改正地方自治法を施行。地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令[1](昭和31年政令第254号)を施行。同政令で指定された大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市の「五大都市」が指定都市となる。「五大都市行政監督特例」は、同日より廃止された。
  • 1963年(昭和38年)4月1日:5市合併により北九州市が指定都市となる[† 7]。旧「五大都市」以外では初の大都市制度導入例となった(#先行指定都市と同格」を参照)。また、同市の指定以降、指定都市移行日は4月1日が通例となる。
  • この間、1972年(昭和47年)4月1日に札幌市川崎市福岡市が、1980年(昭和55年)4月1日に広島市が、1989年平成元年)4月1日に仙台市が、1992年(平成4年)4月1日に千葉市が指定都市となる。
  • 2001年(平成13年)8月30日:市町村合併支援プラン[18]を決定。市町村合併を進める国の方針に従い、2005年(平成17年)3月までに大規模な合併をした自治体に限って、人口要件の運用基準を緩和する方針(#期間限定措置」を参照)が打ち出された[19]
  • 2003年(平成15年)4月1日:さいたま市が指定都市となる(#先行指定都市と同格」を参照)。
  • 市町村合併支援プランによる緩和措置に基いて、2005年(平成17年)4月1日には静岡市が、2006年(平成18年)4月1日には堺市が、2007年(平成19年)4月1日には新潟市および浜松市が指定都市に移行した[20]
  • 2005年(平成17年)8月31日:新市町村合併支援プラン[21]を決定。当プランにおいても、2010年(平成22年)3月まで人口要件の弾力運用が継続延長されることになった。
  • 新市町村合併支援プランによる緩和措置に基いて、2009年(平成21年)4月1日には岡山市が、2010年(平成22年)4月1日には相模原市が、2012年(平成24年)4月1日には熊本市が指定都市に移行した。

注釈

  1. ^ なお、法令で単に「政令で指定する市」と書かれている場合、各法令により指定基準が異なるため、地方自治法第252条の19に基づく指定都市(政令指定都市)と必ずしも一致しない。特定の市を「政令で指定する市」として定めている法令には、中小企業支援法国民健康保険法地方税法道路整備特別措置法、国際観光文化都市の整備のための財政上の措置等に関する法律などがある。
  2. ^ 国内で政令市と通称されるものには、他に保健所政令市廃棄物処理法政令市がある。
  3. ^ なお、本法の制定時の名称は「六大都市行政監督ニ関スル法律」であり、東京都制(昭和18年法律第89号)の施行に伴い、東京市が除外されるに当たり名称が変更された。本法は、地方自治法の1956年(昭和31年)の一部改正(昭和31年法律第147号)に伴い廃止された。
  4. ^ この指定都市の特例処理事務から中核市の特例処理事務を限定し、さらに特例市の特例処理事務を限定する仕組みになっている(第252条の22第1項、第252条の26の3第1項)。
  5. ^ 自治体警察から都道府県警察に移行する過度期の1954年度に五大都市で市警察が暫定措置として存置された。
  6. ^ たとえば堺市静岡市の例。静岡市「平成17年度一般会計決算の概要」、堺市「平成18年度当初予算の概要」など。
  7. ^ 府県庁所在地以外で指定都市に移行したのは北九州市が初。同じく福岡県の県庁所在地である福岡市が移行するより早かった(福岡市の指定移行は1972年)。
  8. ^ 太字の行政区は市役所がある区を示す。
  9. ^ 『大都市比較統計年表(平成25年)』(横浜市)[43]の「XX 財政」から、「歳入」は「6.普通会計歳入歳出決算額(1)歳入」の「総額」、「歳出」は「6.普通会計歳入歳出決算額(2)目的別歳出」の「総額」、「地方税収入」は「6.普通会計歳入歳出決算額(1)歳入」の「地方税」、「市債残高」は「5.地方債現在高(1)会計別」の「総額」より。
  10. ^ ここで用いた市債現在高は、千万円の桁を四捨五入して計算。
  11. ^ 「石川県 県都政令市推進経済人会議」[47](のち「構想いしかわ経済人会議」に移行[48])など。

出典

  1. ^ a b c d e 地方自治法第252条の19第1項の指定都市の指定に関する政令(昭和31年政令第254号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2008年10月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 地方自治法(昭和22年法律第67号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2008年1月20日閲覧。
  3. ^ 政令指定都市とは”. 自由民主党政令指定都市議会議員連盟. 2018年2月14日閲覧。
  4. ^ 地方自治法第2条第5項
  5. ^ 政令指定都市は全部で20 : 最大は横浜372万人、最小は静岡70万人”. nippon.com (2020年11月2日). 2021年1月16日閲覧。
  6. ^ a b c d 大都市に関する制度について” (PDF). 総務省第28次地方制度調査会第14回専門小委員会における総務省配付資料. 総務省 (2005年1月17日). 2005年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年11月28日閲覧。
  7. ^ “県と歪み増す政令市 大都市行政現状を探る”. 日本経済新聞: 東京・首都圏経済面. (2011年11月22日) 
  8. ^ a b 政令指定都市の指定要件、熊本県
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  11. ^ 地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2008年10月15日閲覧。
  12. ^ 県費負担教職員の給与負担等の移譲について
  13. ^ 総務省. "平成19年度地方財政白書"「市町村の規模別財政収支」項において総務省が算定した額による。
  14. ^ 指定都市市長会「指定都市の事務配分の特例に対応した大都市特例税制についての提言」(平成17年12月22日)の指摘による。
  15. ^ 指定都市市長会「平成20年度大都市行政の実態に即応する財源の確保等に関する要望」の、「税制措置」の項において指定都市側が主張することを根拠とする。
  16. ^ a b 第28次地方制度調査会(総務省)。 "大都市制度のあり方に関する報告" の中で指摘。
  17. ^ 指定都市制度の目的と沿革”. 分権時代における県の在り方検討委員会. 愛知県. 2007年11月28日閲覧。[リンク切れ]
  18. ^ 市町村合併支援本部 (2001年8月30日). “市町村合併支援プラン”. 首相官邸. 2007年5月10日閲覧。
  19. ^ 市町村合併支援本部”. 首相官邸. 2007年5月10日閲覧。
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  24. ^ a b 地方自治法[1]第254条“この法律における人口は、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口による。”
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