DVD
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登場から普及までの経緯
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第2世代光ディスクの開発と規格争い
DVD登場以前の1990年代初頭、CDより高密度の第2世代光ディスクには映画の情報量から考えると50倍の容量が必要でそれを実現するためには青色レーザーが必須と考えられており、研究が行われていた。ハリウッド映画業界から早期に商品化してほしいという要望があったが当時は青色レーザーによる光ディスクの実用化は困難であった。そのため当時急速に進歩していた動画圧縮技術で必要とする容量を大幅に減らし、青色レーザーを使わず大容量化を図った光ディスクを組み合わせる方向で開発が進められた[4]。ソニーは青色と赤色レーザーの中間の波長となるSHGグリーンレーザーを用いた光ディスクを研究していたがCDと同じディスクの厚みに拘ったため他社の赤色レーザーを用いた改良型の光ディスクに容量で劣っていた[5]。1994年末には東芝・タイム・ワーナー・松下電器産業(現・パナソニック)・日立・パイオニア(2022年まではオンキヨーホームエンターテイメント、2022年に経営破綻後はオンキヨーテクノロジーなど)・トムソン・日本ビクター(現・JVCケンウッド)の連合による赤色レーザーを使ったSuper Density Disc(SD)の開発がされていた。一方で、フィリップス・ソニー陣営も赤色レーザーを使った[6][注釈 1]MultiMedia Compact Disc(MMCD)を同時期に開発しており、1980年代のVHS対ベータ戦争の再来が危惧されていた。
そこで、IBMのルー・ガースナーが仲介に入り、フィリップスとソニーはMMCD規格の採用を諦めることと引き替えに、SD規格のサーボトラッキング機構に関する2項目の修正を認めることで、フィリップスとソニーも東芝主導のSD規格につき、両陣営は合意に至った。
1つ目の項目は、フィリップス・ソニーの特許技術である「プッシュプル式トラッキング」技術を可能とするためのピットジオメトリーの採用だった。2つ目は、ケイス・スホウハメル・イミンクの設計によるフィリップスのEFMPlus採用だった。これは、東芝のSDコードよりも効率が6 %低かったため、SD規格自体の容量は5 GBだったが、結果的に4.7 GBの容量となった。EFMPlusは、ディスク面に対するひっかき傷や指紋等に対する耐障害性に大きく優れていた。結果としてDVD specification Version 1.0が1995年に発表され、1996年9月に完成した。名称はDVDになったが、SDのロゴはSDメモリーカードのロゴに継承されている。
この統合により、規格の乱立は避けられると一旦は思われたが、その後各家電メーカーや映画会社から多数の注文をつけられ(ランダムアクセス、2時間収録、ドルビーデジタル収録など)、後述の「DVD-」「DVD+」「DVD-RAM」など、多数の派生規格が生まれた。また、2000年4月に入り、PlayStation 2やマトリックスのDVD版の発売の影響でワーナー・ブラザーズなどのDVD製造が本格化するまではDVDの普及率はマイナーな方に入る状態であった。その前までは、DVDを二層にせず、レーザーディスクのように両面1層にしたり、ディスクケースがVHSを参考にしたものであったり(ワーナーブラザーズ製)、CDのケースを流用したものだったり(ユニバーサルなど)と、規格の理解に混乱が発生していた。2000年を過ぎることで、CDでもあまり行われていなかったディスクのインクジェット印刷が本格化し、ディスクケースのサイズがPS2用のディスクケースのサイズで統一され始めるようになった。DVD-ROM、DVD-VIDEOのロゴは2001年を境によりわかりやすいものに変更されている。
名称
DVDは上記の経緯により当初はデジタルビデオ映像を記録するためのメディアとして策定され、Digital Video Discの略だと解釈されたが、その後コンピュータ補助記憶メディアとしても用いられることから[3]、DVDフォーラムはDVDをvideo の代わりに「多用途」の意味がある versatile(ヴァーサタイル)を用いた「Digital Versatile Disc(デジタルヴァーサタイルディスク)」の略称とした[7]。
またデジタルビデオ映像が記録されたDVDのことを世間的に総称で「DVDビデオ」と表現することが多いがそれとは別にDVDへのデジタルビデオ映像データの記録方法の1つに「DVD-Video」があり、両者は同義ではなく全く別のものである。「DVD-Video」は、DVDにデジタルビデオ映像のデータをDVD-Videoフォーマット(「DVD-VF」) で記録したものに限定される。
一方、「DVDビデオ」という総称はDVDにデジタルビデオ映像のデータが記録されたもの全て(DVD-Video、DVD-VR、AVCHD、AVCRECなどビデオ専用アプリケーションフォーマットで記録したもの、ビデオ専用フォーマットを用いずにMPEGファイルやAVIファイルを直接記録したものなど)が対象になる。ビデオカメラの撮影記録メディアとして記録されたものも一般的にここに包含される。[要出典]
DVD-Videoメディア・プレイヤーの商用化
プレーヤーやドライブは、CD-DAやCD-ROMの再生にも兼用できるものが一般的であり、DVD-Videoメディア及びプレイヤーの初の商用化は日本では1996年11月、米国では1997年3月、欧州では1998年3月、豪州では1999年2月になされた。世界で初めての市販DVD-Videoソフトは『Ya&Ya〜世界初のDVD電脳マガジン』であり、1996年11月1日にビクターエンタテインメントから発売された。なお、初の2.1chサラウンド音響は『ツイスター』、5.1chサラウンドは『インデペンデンス・デイ』が初である。
その後日本では2000年3月4日にソニーコンピュータエンタテインメントから発売されたゲーム機、PlayStation 2にもDVD視聴機能が搭載されたことで普及が始まり、2004年にはDVDプレーヤーの国内出荷台数がVTRを上回った。
パソコン分野でも光学メディアの中心はCDからDVDに移行した。一方オーディオ分野では、一部愛好者向けに留まり、普及しなかった(DVD-Audio参照)。
メディア製造コストは、VHSの1巻120円程度に対し、DVDは1枚20円程度と安い。取扱いも容易なので、パブリッシャー側からすれば収益が上げやすい。このため、映像を取り扱う産業では、セルDVDを(副ではなく)主な収益源とする企業が増え、業界の状況を一変させた。
こうしてデジタルビデオといえばDVDと認知されるほど広く定着した。
注釈
- ^ ソニー陣営だがMMCDは前述のSHGグリーンレーザーは使ってない
- ^ PS2のゲーム用ディスクはグランツーリスモ4などで2層も存在するが、SCPH10000~18000の型番などで読み込み不良を起こしかねないほどのディスク密度になってしまったため、2層を実現したPS2作品はほとんど存在しない。Xbox 360のディスクは単純な2層のDVDではなく、独自規格によって1層から2層の中間あたりまでに容量を拡張したものである。Xbox,Xbox 360のゲーム用ディスクを通常のDVDプレイヤーに挿入すると専用のエラー演出が出るが、Xbox 360の初期以外に製造されたDVDではエラー演出も見ることができない。
- ^ Firebeatでは、ゲームデータ用のCDROM、音楽データのみが入ったDVDROMの二枚組で基板を起動させる。
- ^ 正しく書き込まれたか読み込みをして検証すること。
- ^ カートリッジから出せば使用可能。従ってディスクを出せないタイプ1は使用不可。
- ^ a b c メディアIDをROMに変えることをROM化という。
- ^ パナソニックのDVD-RAM関連特許ライセンス回避の目的もある
- ^ 2009年1月現在までサイバーリンク・トランスデジタルのDigiOnブランドから発売されていたDVDオーディオ作成用オーサリングソフトの「DigiOn DVD Audio」がこれに該当していた。但し現在では販売終了。
- ^ 例 : サイバーリンク社製の「PowerDVD 8 ULTRA」および「PowerDVD 8 DELUXE」等。現在絶版。
- ^ 第3世代光ディスクへの記録アプリケーションフォーマットやハイビジョンレコーダーに搭載のHDD録画のフォーマットに一部応用利用されている。
- ^ 第3世代光ディスクの市販ソフトがDVDフォーマットの映像も同一ディスクに収録できるのはこのため。
- ^ DVD±RWは書き換えを何十回も繰り返すことで耐久性が大幅に減少するため、ハードディスクの需要が失われることはなかった。また、4K映像はウルトラHDブルーレイに収めることが可能であるが、8K以上の画質になるとブルーレイにすら映像が入らなくなるため、必然的に8K映像の録画はハードディスクなどで行う必要がある。2023年現在では、ブルーレイの容量限界は100GBが一般になっている。
出典
- ^ 「HD DVD基盤要素技術の現状と動向」『東芝レビュー』第60巻第1号、東芝、2005年、2-8頁。
- ^ “DVD-RAMの記録速度を支配する構造の謎を解明”. 高輝度光科学研究センター; 科学技術振興機構; 理化学研究所; 松下電器産業; 筑波大学 (2006年10月16日). 2021年5月3日閲覧。
- ^ a b “DVD技術解説”. パナソニック (2000年1月). 2022年1月11日閲覧。
- ^ “発見と発明のデジタル博物館: DVDの開発およびその国際標準化推進 (入門向け)”. 2021年2月25日閲覧。
- ^ “書込型光ディスク技術の系統化調査”. 2021年2月27日閲覧。
- ^ “Philips and Sony Tease High Density Multimedia Compact Disc”. 2021年2月27日閲覧。
- ^ “DVD Primer”. DVD Forum (2000年9月6日). 2022年1月10日閲覧。
- ^ DVD Format/Logo License Corporation
- ^ ニュース解説:混沌のDVD規格、ライトワンス型のDVD+Rが登場ITmedia
- ^ 記録型DVDフォーマットの特徴
- ^ 粗悪な記録型DVDメディアが、なぜ“怖い”のか
- ^ “120 mm DVD - Read-only disk” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ “80 mm DVD - Read-only disk” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
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- ^ 三菱、初の8.5 GB DVD-R DLメディア
- ^ “80 mm (1,46 Gbytes per side) and 120 mm (4,70 Gbytes per side) DVD re-recordable disk (DVD-RW)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ 日本ビクター、世界初の片面2層DVD-RWディスク技術(Impress PC Watch 2005年4月4日)
- ^ 日本ビクター、容量8.5 GBのDVD-RW DLメディア (Impress PC Watch, 2007年7月3日)
- ^ ビクター、DVD-RW DLメディアの発売計画を凍結 (Impress PC Watch, 2008年3月10日)
- ^ “120 mm (8,54 Gbytes per side) and 80 mm (2,66 Gbytes per side) DVD re-recordable disk for dual layer (DVD-RW for DL)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ “120 mm (4,7 Gbytes per side) and 80 mm (1,46 Gbytes per side) DVD rewritable disk (DVD-RAM)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ “日立、DVD-RAMドライブを4月に発売”. 2014年3月7日閲覧。
- ^ “ASCII.jp:DVDフォーラム、4.7 GBのDVD-RAMディスクの規格“DVD-RAM バージョン2.0”を決定”. 2014年3月7日閲覧。
- ^ “録画用DVD-RAMディスク 生産完了のご案内”. パナソニック. 2021年1月12日閲覧。
- ^ 出典
- ^ 地デジ番組をDVDにダビングしたいのですが注意する点はありますか?I-O DATA
- ^ DVD&ブルーレイコピーパーフェクトガイド 晋遊舎 12頁 ISBN 978-4-8018-0490-6
- ^ “Data interchange on 120 mm and 80 mm optical disk using +R format - Capacity: 4,7 and 1,46 Gbytes per side (Recording speed up to 16X)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ DVD-R/RWはもっと便利に : パイオニア All About DVD-R/RW
- ^ “Data interchange on 120 mm and 80 mm optical disk using +R DL format - Capacity: 8,55 and 2,66 Gbytes per side (Recording speed up to 16X)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ “Data interchange on 120 mm and 80 mm - Optical disk using +RW format - Capacity: 4,7 and 1,46 Gbytes per side (Recording speed up to 4X)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ 「日立maxell株式会社ホムページ DVD+RW/+R規格について」
- ^ “Data interchange on 120 mm and 80 mm optical disk using +RW DL format – Capacity: 8,55 and 2,66 Gbytes per side (Recording speed 2,4X)” (英語). Ecma International. 2022年1月10日閲覧。
- ^ a b c d e “DualDiscについて詳しく教えて!”. CDJournal リサーチ (2005年12月22日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ “片面CD/片面DVDの両面ディスク“DualDisc”発表”. AV Watch. インプレス (2004年8月26日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ “DVDフォーラム、「Japan Conference 2004」を開催”. AV Watch. インプレス (2004年10月7日). 2023年11月20日閲覧。
- ^ “東芝ら、片面で2層HD DVDとDVDを収録できる3層ツインフォーマットディスク”. PC Watch. インプレス (2006年9月11日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ a b “48時間視聴限定DVD「48DVD」を試す”. AV Watch. インプレス (2005年9月15日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ “「このDVDは48時間で消滅する」――M:i:IIIプロモに“時限DVD””. ITmedia NEWS (2006年5月18日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ 「「48(よんぱち)DVD」が創刊誌の付録に採用」『ニュースリリース』、日本出版販売、2006年10月16日。 オリジナルの2006年11月9日時点におけるアーカイブ 。2023年11月19日閲覧。
- ^ “48時間有効の使い捨てDVDに環境活動家から非難の声”. WIRED. コンデナスト・ジャパン (2003年5月22日). 2023年11月19日閲覧。
- ^ DigiOn DVD Audio
- ^ 公式
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