マルクス経済学批判とは? わかりやすく解説

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マルクス経済学批判

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 16:28 UTC 版)

マルクス主義批判」の記事における「マルクス経済学批判」の解説

マルクス経済学」、「労働価値説」、および「資本論」を参照 労働価値説は、マルクス主義のなかで最も一般的に批判されている教義1つである。 オーストリア学派カール・メンガーは 『国民経済原理』(1871年)などで、労働価値説およびアダム・スミスからマルクスにいたる古典派経済学客観主義として批判し人間創造的主体的な行為者であり、主観的価値が重要であるとする主観主義経済理論論じた古典派経済学は、階級集計量・物理的生産要素などが客観的実在として存在することに固執したが、人間欲求直截的満たす第一次元の財」は消費財であり、それは行為者求め窮極的な目的であり、人々それぞれの主観的価値を持つ目的かなえるために、またそれに動機づけられて経済行為をおこなっていくとメンガー主張し経済行為者の主観的視点経済行為プロセス経済学研究対象とした。メンガーは、価値とは、目的対す行為者主観評価であり、効用とは、手段対す行為者主観評価であるとする。 経済学での価値理論において、価値源泉労働から、個人主観的な価値評価移行したことは、マルクス経済理論結論覆すことになるとミーゼスはいう。 マルクスは、資本家階級革命により没落させよう主張しているが、資本家リスク管理市場調査などの重要な社会的分業担っているのであり、その役割不当に過小評価している。経済学者オイゲン・フォン・ベーム=バヴェルクは『資本利子理論の歴史批判』(1884年)でマルクス搾取論を批判し1896年には『マルクス体系終結』を発表し批判した1884年にはルロワ・ボーリューが『集産主義新し社会主義批判的検討』を発表した貧困解決課題としたイギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルも『経済学原理』(1890年)などで労働価値説マルクス価値理論批判し、「工場での糸の紡績労働者による労働産物であるというのは正確ではない。それは労働者産物であるだけでなく、雇用主管理者、など資本家産物でもある」として、資本家ビジネスへの投資通じて工場仕事生み出すとともに生産性貢献する指摘しまた、価格価値供給だけでなく、消費者需要によっても決定されるとして需要と供給分析した経済学者レオン・ワルラス1896年に『社会経済学研究第5章所有理論」でマルクス経済学労働価値説希少性価値説から批判しマルクス主義的な集産主義は、「その基礎欠陥のためにつまずく実践的な不可能性」を持っている指摘された。ワルラスによればマルクス労働にのみ価値認め土地用役価値認めないため、土地用役を必要とする生産物需給不一致する場合生産停止するしか方法がなく、効用面で大きな犠牲を払うまた、ワルラスによればマルクス国家唯一の企業者とみなすが、その生産計画において消費者需要を知る必要があるのに、消費者必要性絶え変化するため、消費者から国家伝えることができない他方市場では価格変動任せられるマルクス正義実現のために経済的有利性犠牲にしていると、ワルラス批判したワルラスは、資本家企業者、両者受け取利子利潤区別するべきだが、「資本家企業者による搾取排除するために、マルクス主義すべての企業国家の手ゆだねる」と批判した。ただし、ワルラス企業者が異常な利潤手中におさめないように、国家役割を担うべきだと考えていた。 エンゲルスとも親交のあったドイツ社会民主主義者ベルンシュタインは、独占資本形成資本労働敵対関係変化させたとして、剰余価値論、資本蓄積論、貧困化論などを批判し、またプロレタリア独裁観点排撃し、民主主義的改良による社会主義唱えたマルクス主義陣営ベルンシュタイン修正主義として排斥した。 V.K.ドミトリエフは1898年著作で、ミハイル・トゥガン=バラノフスキー1905年の『マルクス主義理論的基礎』で、ラディスラウス・フォン・ボルトキエヴィチは1906-07年の著作マルクス労働価値説利潤率低下法則矛盾していると批判したマルクス理論的前提過誤であれば剰余価値や、労働者搾取利潤唯一の源泉であるという主張疑問視されることになる。 ジョン・メイナード・ケインズは『説得論集』(1931)で「資本論」を「科学的に誤りがあるだけでなく、現代世界への関心応用もない時代遅れ教科書」とコメントしたシュンペーターは「資本主義・社会主義・民主主義」(1949)で、ジョーン・ロビンソンは「マルクス経済学についての一試論」(1942)や「マルクス主義経済学検討」(1955)で、サミュエルソンは「経済学6版」(1964)、マレー・ウルフソンは「マルクス経済学再評価」(1964)でそれぞれマルクス経済学批判的検討行なった経済学者高田保馬は『マルクス価値論価値論』(1930年)や『マルクス経済学論評』(改造社1934年)、「マルクス批判昭和30(1955)などで、たびたびマルクス経済学批判した経済学者小泉信三は『マルクス死後五十年』(昭和8、1933年)などでマルクス主義批判行ないマルクスは『資本論』の中で、商品過剰労働者過剰による資本主義没落説いたが、これはただの景気循環問題過ぎず資本主義本質的な没落を招く欠陥ではないとし、ケインズ主張したように財政出動による公共事業失業対策対処可能で、あくまでも商品価格需給関係によって成立するのであり、労働価値説誤りだと批判した。ほかに経済学者難波田春夫経済学者堀江忠男や、竹内靖雄マルクス経済学批判したマルクス主義は「資本主義」をあらゆる人間奴隷にしてしまう「最も恐ろしく逃れられない帰結有する経済メカニズム」と解釈しマルクスが「一人資本家は、他の多く資本家を殺す」と書たように資本少数の手集中し多く無産階級悲惨な飢え苦しむことになるとされる。しかし、哲学者カール・ポパーこのような資本主義」は存在しない単なる妄想であると批判するマルクス主義掲げた政党は、この妄想された社会システム抹殺することを主要課題とし、実際にソ連西側諸国との核兵器軍備拡張競争熱中し敗北したが、こうしたことは「資本主義地獄という存在しないもの一掃するということマルクス主義課題でだったから生じたこと」で、「マルクス主義知的なブラックホールへと、虚構絶対零度へと落ち込んでしまった」とポパーはいう。 マルクス搾取理論は、労働価値説剰余価値理論、つまり、商品価値社会的に必要とされた労働量に比例するという理論基づいている。しかし、搾取という基本的なアイデア価値理論それほど依存すべきなのか、その場合、労働価値説誤りがあるならば搾取理論崩壊することになると政治哲学者ロバート・ノージックは『アナーキー・国家・ユートピア――国家正当性その限界』(1974年)で異議提起した1985年経済学者トーマス・ソウェルは、「資本論」は巨大な知的偉業であるが、経済学への貢献事実上ゼロであり、マルクス経済学者でさえ、マルクス経済分析ではなくイデオロギー的、政治的、または歴史観のためにのみマルクス用いている。「資本論」は、歴史的に世界的な政治運動中核とみなしうるが、経済学専門家の間では袋小路への入り口にすぎない。しかし、「資本論」を読んだとがない人々によって「資本論」は語られたあげく、天才資本主義間違いを「証明」したという保証権威に訴える論証)の源泉となり、魔術的な力を持つとみなされたと指摘するジョージ・スティグラーは、マルクス経済学は、主要なエコノミスト専門的な仕事実質的な影響与えていないと1988年指摘している。ロバート・ソローは、マルクス重要な思想家であり、マルクス主義知的な影響力をもっていたが、まじめな経済学者マルクス経済学行き止まり袋小路みなしているという。 ゲーリー・モンジオヴィも、マルクス価値利潤率についての説には矛盾があると批判した経済学者政治哲学者マレー・ロスバードは、マルクス理論中核にある「物質的生産力」や「生産関係」は曖昧な定義しかなされていないと指摘するマルクスは「哲学の貧困」のなかで、技術の進歩によて新し生産力獲得し、それが生産様式社会的関係も変化させていくと述べるが、この技術はどこから来たのか、誰が作り改善していくのか、マルクスはこの始まり問題について言及していない。フォン・ミーゼスが指摘したように、生産技術的設備道具・機械といった、「物質的な生産力」の起源について問いかけることはマルクス主義では許されないため、これらの技術技術革新天国から与えられたと仮定するほかないのである。しかし、技術発明は「物質的」というよりも、新しアイデア考案する精神的なプロセス産物であり、道具機械物質的ではあるが、それを生み出した心理的な働き精神的なのである機械アイデア具体化したものであり、そこには発明だけでなく、設備投資も必要であるし、社会において分業十分に発達していることも必要である。技術決定論者でもあったマルクスロンドン電気機関車展示会見学し、「電気必然的な共産主義革命引き起こす」と喜んでいたが、そうした技術イノベーション発明には資本家投資やそこにたいる合理的な判断などの介入があった。生産関係には明らかに法的な財産関係が先立って存在しているが、マルクスはこれを無視して生産関係適切に定義しなかったが、これは深い混乱招いたまた、マルクス階級闘争プロレタリア革命によって、生産力生産関係矛盾解決し技術システムとの関係も調和にいたると主張する。しかし、「封建的な資本家」が技術革新投資しない前提することはできないし、事実歴史的に資本家たちは新し技術開発投資してきたのであるまた、イデオロギー経済的土台決定され意識社会関係階級生じ生産関係)によって決定されるマルクス主張するが、マルクスブルジョア階級所属していたが、マルクス以外の経済学者ブルジョア階級利益束縛されるに対して、なぜマルクスだけはブルジョア階級利益によって決定されないのかは説明されていないし、マルクス決定論には自己矛盾がある。 さらにロスバードによればマルクスは「資本家階級」に共通する階級利益」があると主張するが、資本家企業は、原材料労働力獲得商品の販売において、つねに価格品質たえまない競争にあり、競合相手先んじるための新製品模索している。国家介入すれば、ある産業界での支配層カルテルなど「特権」を生み出すだろうが、そのような介入以前に、共通の利益を持つ「階級」は市場存在していない。特権階級作ることができるのは国家一党独裁制による国家含めて)であり、自由市場には「支配階級としての資本家」は存在しないし、同様に、共通の階級利益を持つ「労働者階級」も存在しない。なお、国家によって形成される特権階級は、「労働者」「共産党員」やビジネスマンといった集団によっても形成されるのであり、「資本家」だけではない、とロスバードは批判する発展途上国は、先進国搾取されいるから経済的に貧しいのであり、この国家間格差はますます広がっていくと言う従属理論展開されたが、フランシス・フクヤマは、日本・大民国中華民国シンガポールは、積極的に先進国交流し奇跡とも言われる高度経済成長達成した発展途上国発展途上国のままでいるのは、先進国搾取されいるからではなく、むしろ積極的に先進国貿易技術交流相互投資行わないからであるとの見解出した池田信夫は、経済理論学会マルクス経済学学会)に所属する金子勝反グローバリズム』(1999年)の書評で、マル経マルクス経済学)は、よりどころとする理論崩壊してしまったので、「国際」「情報のようなきわもの」的なテーマ探すしかないが、「グローバリズム」の定義も書かれてないまま、「グローバル・スタンダード」への非難繰り返され改革批判根拠は「リストラしたら景気悪くなる」というだけで、「市場の失敗」を非難する一方で政府の失敗」をいわない介入主義も、マルクス経済学弊害だと述べている。 S.ビヒラーとJ.ニッツァンは、労働価値説実証目的とした研究は、労働価値総計複数経済部門価格総計比較して強い相関関係があると主張するが、しかし各経済部門価格労働価値相関関係実際に小さく、したがってこうした研究統計学的な誇張であり、方法論的な誤り犯していると指摘するまた、ビヒラーとニッツァンは、抽象的な労働測定する定量的研究は困難であるために、研究者仮説の構築専念するが、命題の証明においてその命題仮定した議論用いたり証明すべき結論前提としたりするなどの循環論法含まれることが多いと批判する労働力価値実際賃金率に比例するという仮定また、可変資本剰余価値比率賃金利潤価格比率によって与えられるという仮定、さらに、減価償却された不変資本価値資本貨幣価値一部等しくなるといった仮定なされているが、ここで研究者労働価値説が「証明」されることを事前に想定してしまっている。 — S.ビヒラー、J.ニッツァン、『Capital as power: A study of order and creorder』(2009) 経済的不平等専門的な経済学者トマ・ピケティによればマルクスは、民間資本が完全に廃止され社会どのように政治的経済的に組織化されるかという問題ほとんど考えていなかった。 政治学者ウィリアム・クレア・ロバーツは、基本的に資本論』は、経済学というよりも政治理論著作であると2017年著書指摘する

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