黒板家と叔母
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黒板 五郎(くろいた ごろう) 演 - 田中邦衛 1935年1月5日生。本作の主人公。先祖は阿波徳島藩出身。八人兄弟の五男。1950年富良野工業高校を卒業。卒業と同時に集団就職で上京し、東京田端の中村製鋼所、東京上板橋あけぼの自動車修理工場、中央区築地高津自動車サルベージを経て、青山三丁目の坂田商会ガソリンスタンドに入社する。1968年のサルベージ会社勤務時代に礼子と知り合い、同年結婚。坂田商会淀橋支店で働きながら一家4人で暮らしていたが、妻・令子の不倫をきっかけに1980年純と螢を連れて郷里の富良野へ帰ってくる。その時の所持金はわずか7、8万円だった。その後、令子とは正式に離婚したが、それから2ヵ月あまり後に死別する。富良野では中畑木材の仕事を手伝ったり、小規模の農業や炭焼きをしたりして、生計を立てる。発想力と行動力があり、沢から水道を引いたり風力発電を作ったり、井戸を独力で掘ったり、廃品で家を建築したりする。性格は基本的に温厚だが、頑固なところもあり一度ヘソを曲げると手が付けられなくなることもある。また、初期には内弁慶なところもあり、外で面白くないことがあると家に帰ってから子供たちに当たることもあった。「'83冬」では内地(本州)へ出稼ぎへ行く様子も伺える。みどりの借金を被せられ土地を追われる危機に瀕するも、村の仲間たちの助けもあり危機を逃れる。「'84夏」では出稼ぎから帰った当日に丸太小屋が焼失する事件が起き、心身が疲弊する様子が描かれた。「'89」で再び丸太小屋の制作に着工するが、「'92」では一人の寂しさから「アキナ」という柴犬を飼いはじめる。やがて、純がタマコを妊娠させてしまい、純の不始末を購うため上京して謝罪し、建設用の木材を売り払って100万の金を作り慰謝料として支払う。かわりに廃石を利用して石の家を建設する。久しぶりに3人が富良野に集う大晦日、螢から就職のため札幌に行くと宣言されて失意に打ちのめされ、純が和久井家に居る螢を迎えに出た間に石の家の建設作業中に屋根から転落。材木に足を挟まれて猛吹雪の中遭難。未明になっても帰らないことを心配した純が近隣を訪ね歩いた際に加納から建設現場の話を知らされ、三人が駆けつけたことで発見され、九死に一生を得る。「秘密」では螢の駆け落ちに動揺するが娘の想いをどうにか理解しようと苦悶する。純の彼女であるシュウから慕われ、二人の交際を応援する。「時代」では無農薬農法に熱意を注ぎ、五郎を慕い教えを請う完次に目をかけていたが、疫病の発生と完次に対する草太の惨い仕打ち、完次の自殺未遂と夜逃げについて草太を責めることもなくじっと見守る。妊娠し、正吉と結婚すると言ってきた螢には感動の余り涙を流すが、和夫から螢の子の父親が黒木だと聞き、動揺して雪子に相談。やがて疑惑は確信となるが、それでも螢を支えようという正吉の男気に感謝し、螢の結婚式では酔い潰れるほど舞い上がる。草太の死後、彼の遺した牧場を純と正吉が継ぐ運びになったことを危惧していた。「遺言」では五郎の危惧は現実のものとなり、牧場の破綻で五郎の家族は離散状態となってしまう。それでも恨み言一つ言わずに初孫の快を溺愛し、返済のため富良野を離れた純と正吉を案じていた。富良野を訪れたシュウから結婚の報告を受けるが頑なに純の所在は明かさず、彼女の手紙を純に送る。健康面に不安を感じるようになり、螢の強い勧めもあって精密検査を受けるがそのことで自分の死を意識するようになる。結果的に杞憂だったが不安は拭えず、新吉の勧めで山下に弟子入りして「遺言」を書き始める。中畑家に入り婿することになった正彦が五郎を慕い、すみえとの新居作りを手がけることになる。やがて、みずえの病気が発覚。愛妻の余命を知って動揺する和夫を支えつつ、事情を知る寛次らと共に突貫工事を進める。その頃、羅臼から訪ねてきた吾平を事情を知らずに建築工事に巻き込み、それを謝罪して自宅に泊め、酒を酌み交わす。「流氷を見せたい」という純の招待で羅臼を訪れるが、そこで純から結との結婚を相談される。だが、結が人妻だと聞いて動揺し、純の長時間の説得でようやく納得したものの、吾平の遭難事故に巻き込まれてしまう。生還した吾平から思わぬ歓待を受けるが、そこにみずえの訃報が届き、純と共に富良野に急ぎ戻り、みずえの死に落胆する和夫を見守る。やがて、純に嫁ぐ覚悟で富良野に来た結を歓迎し、螢も正吉からの手紙で安堵。久しぶりの家族団欒を楽しむ。だが、正吉と暮らすため螢が富良野を離れることになり、快との別れに最後まで抵抗し、みっともない悪あがきをする。完成した五郎の遺言は物語を振り返り、締めくくるものとなった。 倉本の設定では学生時代は女好きであり、付き合った女性はすぐ妊娠することから「一発屋の五郎」というあだ名がつけられていた。なお、「黒板」という姓は倉本が若い頃に片思いした女性に由来するという。 黒板 純(くろいた じゅん) 演 - 吉岡秀隆 1969年1月生まれ。五郎の長男。第一話の時点では小学4年生。典型的な都会っ子で理屈っぽい。母親っ子でもあり、両親が離婚する原因になった吉野のことも嫌いにはなれなかった。当初は東京に帰りたがっていたが、母の発病に際した再上京時には新しい物や流行を追うだけの生活に魅力を感じなくなったこともあり、徐々に富良野の生活に馴染むようになる。気弱で傷付きやすいクセにおしゃべり。言わなくてもいい一言を言ったり、自らの責任を回避しようとして嘘を重ねて事態を悪化させることもしばしばある。「'87」では機械を見るとすぐに分解する趣味を持ったため、周囲からは「ペンチ」という愛称で呼ばれる。大里れいと出会い初恋をし、彼女が東京の高校へ行くと聞いて、自分も同じ進路を希望するようになる。その後、五郎との衝突や大里家を襲った悲劇等のため一度は東京行きを諦めるものの、五郎と螢に背中を押されて中学卒業後は一人で上京。井関と雪子のところへ身を寄せて働きながら定時制高校へ通う。「'89」では髪を染めたりバイクに乗ったりと東京を楽しもうとするが、盗品のバイクを買わされ、さらに泥の付いたピン札をめぐり傷害事件を起こしてしまう。すっかり疲れ果て、富良野に戻りたいと考えるが、五郎にそれを諭される。「'92」ではガソリンスタンドに勤める。再会したれいと遠距離恋愛をしていたが、欲求不満に苛まれ、職場で知り合ったタマコと肉体関係を持つ。その結果、タマコは妊娠。タマコは九州の実家に帰郷し、螢の札幌行きと五郎の事故が決定打となって富良野に戻る。「秘密」からは市の臨時職員としてごみ収集の仕事に従事し、市内にアパートを借りて正吉と同居生活を始める。北海道に戻ったもののれいとは気持ちがすれ違い、その間にシュウと知り合う。シュウの過去を巡る問題からギクシャクするも順調に交際し、上砂川にあるシュウの実家に挨拶に行くがシュウの家族から交際を反対され、引き離されてしまう。最初は辛かったごみ収集の仕事にも誇りを持つようになり、草太から牧場の仕事を手伝うよう再三誘われるも拒否。完次の悲劇により溝が生じ、草太からの頼まれ事を断ったことが原因で草太は事故死を遂げる。螢が正吉の子を妊娠し、二人が結婚すると言われ激怒するが、五郎の喜ぶ姿を見て二人を認める。だが、雪子から「螢の子の父親が正吉ではない」という話を聞かされ動揺。真相が明らかになっても結婚を祝おうという五郎を支える。「時代」で周囲からの頼みで草太の牧場を引き継ぐが、「遺言」では借金により牧場が破綻。3000万の借金を正吉と半分ずつ受け持ち、返済のため五郎と螢にだけしか居所を告げずに富良野を去る。相思相愛で家族公認の仲だったシュウとも音信不通が原因で別離。金になる仕事を転々とした後、羅臼で廃棄物処理の仕事に就き、漁師の友人の好意で番小屋を借りて一人暮らす。最初の半年は借金を返済していたがやめてしまい、携帯の出会い系サイトを利用していた。失意と孤独のどん底に居たが、偶然再会した涼子先生の引き合わせで結と知り合い交際するようになる。だが、友人から結が人妻だと聞かされ動揺し、さらに結の義父吾平に交際を知られてしまう。その後、羅臼に戻った結の夫、弘から襲撃を受け吾平に助けられるが、もう逃げないと腹をくくり、結と共に弘の許を訪れ別れてくれるよう談判。吾平の勧めに従い五郎を羅臼に呼んだ際、吾平が遭難し、生還したことを通じて弘とも和解する。直後に螢からみずえの訃報を聞き、覚悟を決めて五郎と共に富良野に戻る。その後、家族の反対を押し切り純の負債を引き受けてくれた三沢のおじいちゃんが寝たきりになったことを知り、五郎の仕事を手伝いながら彼の介護を行うようになり、嫁ぐ覚悟で富良野に来た結と結ばれた。 スペシャル以降はあだ名で呼ばれることが多い。 黒板(笠松) 螢(くろいた(かさまつ) ほたる) 演 - 中嶋朋子 1970年12月生まれ。五郎の長女で、純の妹。幼稚園で過ごした純とは違い保育園に通う。第一話の時点では小学2年生。兄とは対照的に父親っ子。令子の不倫現場を目撃してしまったこともあり、当初から五郎を気遣っていた。吉野のことも避けており、母の発病時も上京には同行しなかった。正式な離婚手続きに伴う別れの際にも令子に対しては素直になれず、そのことで純からは責められた。幼い頃は純真で五郎に対し従順だったが、その反動か、成長するにつれて五郎の意思と異なった自分の道を歩み始める。中学卒業後に看護学校へ通い、「巣立ち」では看護学校へ通う電車の中で出会った和久井勇次と恋に落ちる。しかし彼も受験勉強のため東京へと去ってしまう。「'92」では大学に進学した勇次に会うため富良野線を行き来するも五郎を訪ねず、その姿を正吉に目撃される。勇次から正看になるよう勧められ札幌の病院を紹介されて五郎より勇次を選んでしまい、螢が麓郷に戻ると思い、就職に奔走していた五郎を落胆させる。その結果、五郎が大晦日の夜に遭難。その事故をきっかけに富良野の病院に就職すると純に告げたが、麓郷に戻る決意を固めた純にそのまま札幌の病院に就職することを勧められため、富良野を離れる。その後、「秘密」では北部大附属病院で勤務していた札幌の医師・黒木光彦と不倫し、根室市落石に駆け落ちする。「時代」では別れるが、黒木の子を身ごもっていた。彼には知らせず一人で産むつもりで札幌に引っ越し清掃業に従事していたが、事情を知った草太の計らいで正吉から求婚される。最初は拒んだものの、正吉の情熱に打たれ結婚する。「遺言」では快を出産。正吉が借金返済のために離道した後は富良野市内の病院に看護師として勤務し、市内に一軒家を借り二人で暮らす。母親となってからは気が強く逞しい女性に成長し、快に夢中の五郎を煙たく思うようになる反面、老いた五郎の健康面を心配する。正吉に棄てられたという不安を抱え続けていた。みずえの死後、正吉からの手紙で栃木に居ることを知り、快を連れて富良野を離れ正吉の許に行く。 黒板(宮前)令子(くろいた(みやまえ)れいこ) 演 - いしだあゆみ 1947年5月生まれ。五郎の妻で、純と螢の母。東京都淀橋高校を経て、栗山美容院へ見習いとして勤務する傍ら中央区「築地美容師スクール」へ通う。美容院「ローズ」(第7話より「ビューティーサロンRei」)の経営者。高校時代、文芸部の同級生だった吉野信次と出会いラブレターをもらうが、社会人になってから妹の雪子の紹介で偶然再開する。この吉野との不倫が原因で五郎と離婚。その後、かねてから患う激しい痛みを伴う胆石らしき病で他界(劇中では詳細は言及されていない)。発病時には吉野の紹介による入院先が小病院だったために神経痛としか診察されず、雪子をはじめ周囲からは大病院に替わるよう忠告されるが、吉野への気兼ねから転院できなかった。最期にも適切な治療を施されず、雪子からの解剖の申し出も遺族たちに拒まれたため、結局死因は分からずじまいだった。『巣立ち』では、凍死寸前の五郎が見た「幻想」で登している。 宮前(井関)雪子(みやまえ(いぜき)ゆきこ) 演 - 竹下景子 1955年12月生まれ。大学卒。純と螢の母方の叔母で令子の腹違いの妹(実父、豊の再婚相手)。豊、高子の娘として生まれるが、豊は1966年に死亡している。五郎らが富良野へ去った際、喫茶店で彼女が令子の有責を責めるところから物語は始まる。純と螢からは「雪子おばさん」と呼ばれており、懐かれている。不倫相手の井関利彦との交際に悩み、富良野の五郎たちを頼って同居するようになり、家事も引き受けていた。その後草太の共同牧場や中畑木材の関連工場で働く。令子の死で東京へ戻った後、丸太小屋の火事があった日に出稼ぎ帰りの五郎とともに再訪するまでは距離を置いていた。「'83冬」では冒頭のみの登場。草太に好かれ、一度は草太との結婚を決意するが、同時期に井関から離婚成立の知らせを受けたことで気持ちが揺らぎ「'84夏」では結局は井関と結婚して東京へ帰る。そして井関との間に長男・大介をもうけるが、井関が再び不倫したことで離婚し、再び富良野へやってきた。富良野へ来てからはニングルテラスにある「森のろうそく屋」で働く。「'02遺言」では、五郎が廃品を利用して建てた家で暮らしており、夫の許しで成長した大介が富良野を訪ねるが、大介は不登校に陥り、口も聞かず、ようやく大介から出会い系で知り合った女性とメールで交際している事実を聞き出して五郎に相談し、五郎は大介に説得を試みるが、大介は五郎に悪態の限りを尽くし、その態度にみずえの病気で悩んでいた和夫が怒り、大介を殴り飛ばしたことで大介とは物別れとなってしまった。みずえの葬儀の後、富良野を離れる螢を五郎や純と共に見送った。なお「秘密」のみ登場していない。
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