カリプソ (音楽)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > カリプソ (音楽)の意味・解説 

カリプソ (音楽)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/09 17:23 UTC 版)

カリプソのリズム
カリプソのリズム

カリプソ (calypso) は、20世紀に始まったカリブ海音楽のスタイルのひとつである。イギリス領、フランス領のカリブの島々、特にトリニダード・トバゴカーニバルで発達した音楽ジャンルである。リズムは4分の2拍子。カリブ圏内においてはもっとも波及した音楽の一つであり、レゲエのルーツの一つであるとも言われている。

歴史

アフリカ人奴隷たちがお互いに言葉が通じず、音楽でコミュニケーションをしたのが始まりである。トリニダードの宗主国がフランススペインイギリスと代わっても、これによってアフリカ人奴隷は連帯感を強めた。特に1834年の奴隷制度の廃止後に、黒人はカーニバルへの参加を認められ、そこで行進用音楽として演奏された。カーニバルでのカリプソ競争は白熱し、音楽的にはさらに成長した。

テレビもラジオもない100年以上も前から、カリプソは島にニュースを広げる方法として発展し、多くの島民がカリプソを最も信頼できる情報源であると考えた。

カリプソの歌詞は、島の生活に関連するあらゆる話題をニュースにしていたため、カリプソニアンたちは、政治腐敗に対してもはっきりと歌い、言論の自由を押し進めた。結局イギリス当局は検閲を実施したが、それでもカリプソはなくならなかった。検閲が厳しくなるほど、比喩や暗喩を用いたり、批判の視点も鋭くなっていったためである。このようなカリプソの歌詞の攻撃的な批判性をピコン(picong)と言う[1]

1914年、最初のカリプソが録音がされた時は、カリプソの黄金時代と呼ばれている。1920年代には、カーニバルでのカリプソ競争はさらに白熱し、「カリプソ・テント」と呼ばれる仮設ステージが設けられ、ここで数多くのカリプソニアン達が歌を競い、新しいリズムを次々と生み出した。現在もトリニダード・カーニバルでのカリプソ・テントは残っている。

1930年代後半、アッティラ・ザ・フン(Attila the Hun)、ロアリング・ライオン(Roaring Lion)、ロード・インベーダー(Lord Invader)らがカリプソ歌手として世界中に知られるようになった。カリプソニアンの名前がこのように派手なものが多いのは、カリプソ・テントにおいて、自分がどれだけすごいかを誇示したり、相手をこき下ろしたりする過激な内容の歌詞で歌われたためだ。

戦後のカリプソ

1940年代後半、第二次世界大戦終了後、多くのカリビアンが職を求めて国外に出た。イギリス領であったトリニダード人はイギリスに向かったのだが、ロード・キチナー(Lord Kitchener)[2]もその一人だった。彼はイギリスのカリビアンのコミュニティで絶大な人気を誇り、1950年代にはイギリスでもカリプソブームが起る。ロード・キチナーは、2000年に亡くなるまでヒット作を量産した。

最もよく知られているカリプソの曲は、伝統的なジャマイカメントソング「バナナ・ボート」である。この曲は1956年のジャマイカ系アメリカ人のハリー・ベラフォンテ(Harry Belafonte)の歌で知られる。カリプソ風にアレンジされ、100万枚以上のセールスを記録する。

また、1956年グレナダ出身のマイティ・スパロウ(Mighty Sparrow)も「ジーンとダイナ」という曲でデビューして、国際的なヒットとなる。彼は「ケネディ・アンド・クルシュセフ(フルシチョフ)」「マーティン・ルーサー・キング」「カストロ・イーティング・バナナ」「ザ・スレイヴ」などの政治的なカリプソも歌った。また、カーニバルの行進に使用されるような伴奏曲であったカリプソを、よりシンプルで力のあるリズムにして、それにソウルフルな歌声を乗せた。彼の登場もあって、1962年のトリニダード独立以降は、カーニバルも派手なものになり、演奏されるカリプソもダンサブルなものに変化した。

カリプソのスタイルがよりダンサブルな傾向を増してきたのは、マイティ・スパロウの登場が大きく寄与している。しかし一方で、第二次世界大戦で大量に放置されたドラム缶を用いたスティールパンが登場し、より大規模なスティール・バンドが活躍しはじめたのも時期を同じくしている。さらに1970年代には、ドラムマシンシンセサイザーが導入された。これらの要因によって、1980年代ソカソウルとカリプソを合わせた言葉)への道筋が作られた、と考えられる。

関連項目

脚注


「カリプソ (音楽)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「カリプソ (音楽)」の関連用語

カリプソ (音楽)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



カリプソ (音楽)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのカリプソ (音楽) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS