トローバとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > トローバの意味・解説 

トローバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/24 16:54 UTC 版)

カサ・デ・ラ・トローバ(トローバの家)

トローバ(trova)とはキューバシンガーソングライターたちが作る音楽、または歌曲のスタイルを指す。

トロバドール

カリブ海諸国では言語感覚の優れた詩を作り、歌うことのできるシンガーソングライターを中世の吟遊詩人になぞらえ、敬意を込めてトロバドールと呼び、その作品をトローバと呼んだ。トローバとは広い意味では「」を指し、キューバ人にとってトロバドールが自作自演する音楽は、ジャンルを問わず全てトローバと考えられている[1]。そういう意味ではトローバは厳密にはジャンル名ではない。

狭義のトローバはスペイン韻律に従った繊細な詩と、イタリアフランスオペラの歌唱スタイルが融合したサルスエラのような歌曲であり、キューバ独立戦争の時代から20世紀にかけて、サンティアーゴ・デ・クーバを中心にシンド・ガライホセ・サンチェス英語版、といった優れたトロバドールが現れ、多くの名曲を残した[1]。彼らはサルスエラやボレロなどから、時代を経るにつれハバネラソン、サルスエラから発展したフィーリン英語版といった多くのジャンルの音楽を演奏した[2]

トローバのほとんどは愛の喜びや悲しみ、日々の日常といった普遍的なテーマであり、即興で作られる十行詩英語版の音楽よりも長く人々に愛唱された。キューバの各地には「カサ・デ・ラ・トローバ(トローバの家)」と呼ばれるライブハウスがあり、今日でもトローバが演奏されている。

ヌエバ・トローバ

キューバ革命後の1969年、革命政府はICAIC(キューバ国営映画公社)のプロジェクトとして、世界的なギタリストであり指揮者だったレオ・ブローウェルの指揮の元に、ICAIC音響実験集団を発足させた。そこで見出されたパブロ・ミラネススペイン語版シルビオ・ロドリゲスといった音楽家たちが、のちのヌエバ・トローバと呼ばれるムーブメントの原動力となった[3]

ヌエバ・トローバとは、トロバドールの全盛期の勢いを現代に蘇らせる意識からそう名付けられた[4]。初期の作風は熱気とやる気に満ちた無邪気な革命讃歌が多いが、時代が下るにつれ、現実的な視線をもつ、政治性の低いプロテストソングが多くなっている[3]

1970年代公民権運動ベトナム反戦運動など、世界的に若い世代が「反乱」を起こすことがブームとなっていた。スペイン語圏諸国の軍事政権下の抑圧された若者たちに、ヌエバ・トローバの革命讃歌は絶大な支持を受けた。反して、既に革命が達成されたキューバでは、暗示的、比喩的に政府批判を盛り込むヌエバ・トローバの立場は微妙なものだった[3]

1980年代には、キューバ国内でヌエバ・トローバのコンセプトのもとに作られたソンやロック・ミュージックなど「ヌエバ・トローバ系」と呼ばれる様々なジャンルの音楽が流行した。1990年代にはブームは去ったが、内憂外患のキューバを憂えるジャンルとして一定の地位を得ている。

脚注

  1. ^ a b 八木、吉田 2001, p. 54-59.
  2. ^ 北中 2007, p. 31-32.
  3. ^ a b c 八木、吉田 2001, p. 112-126.
  4. ^ 竹村淳『ラテン音楽 名曲名演名唱ベスト100』講談社 p.272

参考文献

関連項目

ヌエバ・カンシオン - ヌエバ・トローバと同時期に中南米に起こった音楽のムーブメント




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「トローバ」の関連用語

トローバのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



トローバのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのトローバ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS