移民 移民の概要

移民

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 15:36 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
アルゼンチンに到着したヨーロッパからの移民

概要

移住は長期にわたる居住を意味しており、観光旅行は通常含まない。ただし、通常1年以内の居住を指す季節労働者は移民として扱う場合が多い。

国際的に合意された「移民」の定義はまだ無い。最も引用されている定義は、国際連合(UN)の国連統計委員会への国連事務総長報告書(1997年)に記載されているもので、「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12か月間当該国に居住する人のこと(長期の移民)」を言う。この定義によると長期留学生、仕事での長期赴任者、長期旅行者も「移民」である。

また、国籍に関する要件が含まれていないため、日本で出生した外国籍の保持者は通常の居住国は日本であるため、移民ではない。

国際移住機関(IOM)は「国内移動を含め、自発的に他の居住地に移動すること」と定義している。「非自発的な移住」として自分の意思に反して強制的に移動を余儀なくされる場合で戦争や内乱・武力紛争、人権侵害自然災害などによって起こる難民、あるいは避難民、また人身取引の被害者、研修生や留学生で搾取を受けている人、自分の意思で移動してもその後に紛争に巻き込まれてしまったというケースなどを国際的な人道支援の対象としている。

出ていった移民を移出民(いしゅつみん、emigrant)、入ってきた移民を移入民(いにゅうみん、immigrant)と呼ぶ。受け入れ国の法的手続きによらず移入した人々を不法移民(ふほういみん、illegal immigrant)と呼ぶ[1][2]

通常、統計上の移民は、外国からの(外国への)移住者と同義だが、社会的問題としての「移民」には、文字どおり「民」すなわち特定の出身国から来る「大勢の人々」という意味合いが含まれている。そのため、一般的に移民は、巨視的な移住現象(社会全体に影響しうる程度のもの)、又はそれを構成する個々の移住者を意味している(場合によってその子孫が含まれることもある)。

一方、相対的に移住者数が少数である国籍等の場合、移民ではなく、単なる移住者とみられる。例えば、日本には欧州諸国(欧州文化地域)からの移住者が多少居住するが、日本の人口に比してその規模が非常に小さく、通常の社会・政治論ではこれを移民現象として捉えない。なお、より経済力のある豊かな国へ裕福な生活を求めることが多数の移民の動機になっていることから、移民が「経済的移民」を指すことも少なくない。

さらに、英訳の「イミグレーション」(Immigration)は、国の入国管理事務も意味しているため[3]日本語の「移民」より、語義が広範(曖昧)な言葉になっている。こうした定義の曖昧さが移民問題の議論を難しくする要因の一つである。

国連の推定によれば2005年には1億9000万の人々が移民した。これは全世界の人口の3%に満たない。残りの97%は出生した国もしくはその後継国に在住している。1990年には国連で「全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約」が採択された。

国際労働機関(ILO)は、2017年時点で世界の移民労働者数が推計1億6400万人、移民全体が同2億7700万人おり、いずれも前回調査(2013年時点)より増加しているとの報告書を2018年12月5日に公表している[4]

またSFなどで宇宙移民について描かれることもある。

移民の法制

アメリカ合衆国

米国政府が発給する外国人へのビザは、大きく「移民ビザ(Immigrant Visa)」と「非移民ビザ(Non Immigrant Visa)」に分けられる [5]

移民ビザは「Permanent resident Visa(永住権)」とも呼ばれ、滞在期限や活動(就業)に一切の規制がない。一方で「非移民ビザ」は、滞在期限や滞在中の活動(就業可・不可やその職種・条件など)に制限があり、非移民ビザによる滞在の外国人は住居の有無・就労・滞在期間に関わらず全てVisitor(訪問者)として扱われる。

すなわち、米国政府は移民とは「永住権所持者」と定義している。なお、日本の自民党特命委員会が提案している「入国時に在留期間の制限がない者」は、この定義に近い。(ただし、米国永住権は期間だけではなく在留中の活動にも制限がない)

対して、一般市民の認識では「永住権所持者」と「帰化米国籍者(他国で出生した後に米国へ移住し米国籍を取得した者)」の両方を含めて「移民」と呼ぶ事が多い。

フィリピン

フィリピン政府が移民法に基づき発給するビザには、割当移民ビザ(Quota Immigrant Visa)や非割当移民ビザ(Non-Quota Immigrant Visa)がある[6]

割当移民ビザは、移民法13条に基づき、対象国ごとに一年あたり定められた人数まで発給されるビザである[6]

非割当移民ビザは、移民法13条に基づき、フィリピン人と結婚した者などを対象として発給されるビザある[6]


  1. ^ [IOM JAPAN] - 移住と開発 現代の移民の特徴?ヨーロッパの現状に学ぶ(前編)
  2. ^ [IOM JAPAN] - 国際移住機関(IOM) プレス・ブリーフィング・ノート日本語版 2009年12月18日
  3. ^ 大辞泉を参照
  4. ^ 「世界の移民労働者1.6億人/ILO調べ 17年、4年で9%増」『日本経済新聞』夕刊2018年12月6日(3面)2018年12月13日閲覧。
  5. ^ ビザサービス”. 在日アメリカ大使館. 2020年3月22日閲覧。
  6. ^ a b c フィリピンにおける駐在員及び長期出張者用ビザ取得手続”. 日本貿易振興機構マニラ事務所. 2020年7月4日閲覧。
  7. ^ Todd, Emmanuel (1999), 移民の運命, 東京: 藤原書店, ISBN 4-89434-154-9 
  8. ^ a b c How France Grew Its Own Terrorists M.G. Oprea, World Affairs, The Federalist, 16 Jan 2015
  9. ^ Charlie Hebdo attack: French values challenged in schools H. Astier, BBC News, Europe, 30 Jan 2015
  10. ^ a b 英国の移民問題―「過去」と「現在」”. 労働政策研究・研修機構. 2019年12月5日閲覧。
  11. ^ a b イギリスに汚点を残した「ウィンドラッシュ」問題”. ニューズウィーク. 2019年12月5日閲覧。
  12. ^ a b Paris Attacks Lead French to Reinforce Secular Values in Schools M. de la Baume, The New York Times, 23 Jan 2015
  13. ^ a b Refusing to look at immigration R. Lowry, New York Post, 12 Jan 2015
  14. ^ Paris terror attacks: Europe must confront failed integration D. Murray, The Daily Telegraph, News, 14 Nov 2015
  15. ^ Anti-Muslim, anti-immigrant rallies grow in Europe T. Talaga, Toronto star, 13 Jan 2015
  16. ^ a b c French attacks prompt East Europe calls for curbs on immigration Z. Simon, Bloomberg, 12 Jan 2015
  17. ^ ドイツの移民政策における「統合の失敗」 小林薫,東京大学『ヨーロッパ研究』第8号,2009年
  18. ^ メルケル「多文化主義は失敗」発言の真意 ニューズウィーク日本版2010年10月28日
  19. ^ 欧州で勢いを増す反移民感情・極右発言 - スラヴォイ・ジジェク、デモクラシー・ナウ、2010/10/18
  20. ^ Switzerland votes to re-introduce curbs on immigration The Telegraph, 9 Feb 2014
  21. ^ Europe elections: Swiss lessons for Brussels BBC News Europe, 9 Feb 2014
  22. ^ a b UPDATE 2-Swiss plan for immigration quotas denounced by EU Reuters, 20 June 2014
  23. ^ 域内の移動の自由はEUの基本的政策の一つではある。だがスイスはシェンゲン協定には加盟しているもののEU加盟国ではない。
  24. ^ http://www.bbc.com/news/uk-politics-30224493
  25. ^ http://www.bbc.com/news/uk-15868793
  26. ^ a b http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM28H7I_Y4A121C1FF2000/
  27. ^ http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/law-and-order/8439117/EU-migrants-commit-500-crimes-a-week-in-UK.html
  28. ^ a b 熊谷公男 「秋田城の成立・展開とその特質」『国立歴史民俗博物館研究報告』179 国立歴史民俗博物館、2013年11月、248頁。
  29. ^ 小林昌二 「未発見「渟足柵」の調査等をめぐって : 「前近代の潟湖河川交通と遺跡立地の地域史的研究」の中間報告など」『新潟史学』48巻 新潟史学会、2002年7月、14頁
  30. ^ 小林昌二 「「浅層地質歴史学」への展望と渟足柵研究の成果」『新潟史学』51巻 新潟史学会、2004年5月、71頁。
  31. ^ 武廣亮平 「古代のエミシ移配政策とその展開」『専修大学社会知性開発研究センター古代東ユーラシア研究センター年報』3 専修大学社会知性開発研究センター、2017年3月、127-128頁。
  32. ^ 中村明蔵 「隼人二国の公民移配地と官道について : 律令国家の辺境支配に関連して」『季刊社会学部論集』15(3)  鹿児島国際大学、1996年11月、11頁。
  33. ^ 中村、1996年11月、8-9頁。
  34. ^ a b c d e f 森本豊富. “ブラジル移民100周年を迎えて”. 早稲田大学、読売新聞. 2020年7月4日閲覧。
  35. ^ a b c d e f g 殖民論と国の移民政策”. 国立国会図書館. 2020年7月4日閲覧。
  36. ^ 『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(27) ニッケイ新聞、2015年8月21日
  37. ^ 小林, 忠太郎 (2004-11), ドミニカ移住の国家犯罪―移民という名の偽装「海外派兵」, 創史社, ISBN 978-4915970245 
  38. ^ コロニアの再統合”. 国立国会図書館. 2020年7月4日閲覧。
  39. ^ 西川, 敦子 (2010-01-29), 若者の「海外流出」が止まらない! 冷え込む雇用がもたらす日本の衰退, http://diamond.jp/articles/-/6629 2010年7月5日閲覧。 
  40. ^ 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和2年10月末現在)”. 厚生労働省. 2021年1月30日閲覧。
  41. ^ 若林, 亜紀 (2007-09-22), サラダボウル化した日本 Welcome or Reject, 光文社, ISBN 978-4334934194 
  42. ^ 令和2年末現在における在留外国人数について”. 出入国在留管理庁. 2021年4月1日閲覧。
  43. ^ a b 外国人技能実習制度への介護職種の追加について”. 厚生労働省. 2020年2月2日閲覧。
  44. ^ 人材開国!日本型移民政策の提言 世界の若者が移住したいと憧れる国の構築に向けて - =中間とりまとめ= - 2008年6月12日 自由民主党 外国人材交流推進議員連盟
  45. ^ 複国籍PT - 自由民主党 外国人材交流推進議員連盟 日本型移民政策の提言(6月12日)
  46. ^ Protecting Japan from immigrants? An ethical challenge to security-based justification in immigration policy”. www.tandfonline.com. doi:10.1080/18692729.2018.1478938. 2018年12月5日閲覧。
  47. ^ 介護・地域包括ケアの情報サイトJoint 2014年4月14日 介護福祉士会が外国人受け入れに反対の声明、「介護は単純労働じゃない」
  48. ^ 建設分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)”. 厚生労働省. 2020年2月2日閲覧。
  49. ^ 安倍政権、業界圧力で外国人労働者の在留資格を緩和か”. BOLGS. 2020年2月2日閲覧。
  50. ^ 建設通信新聞2014年3月19日 群馬建協が慎重論提言/外国人材拡大は両刃の剣/「国内若年者確保が本筋」
  51. ^ “世帯主が外国籍の被保護世帯の人員-平均年齢、世帯主の国籍・年齢階級別”. 統計局. 2021年9月11日閲覧。
  52. ^ 自民特命委「単純労働者」の受け入れ容認へ 外国人労働者受け入れに関する政府への提言案概要判明 - 産経ニュース
  53. ^ 国家戦略特別区域諮問会議
  54. ^ 衆議院議員奥野総一郎君提出外国人労働者と移民に関する質問に対する答弁書”. 衆議院. 2021年9月11日閲覧。
  55. ^ 特定技能とは 日本人と同等以上の待遇義務付け”. NHK. 2021年9月11日閲覧。
  56. ^ ザ・ドキュメンタリー「“新移民”大国ニッポン~知られざる外国人留学生の実態~」 - テレビ東京
  57. ^ The impact of immigration on occupational wages: evidence from Britain S. Nickell and J. Saleheen, Staff Working Paper No. 574, Bank of England (2015)
  58. ^ a b H. Johannsson, S. Weiler, The Social Science Journal 42, 231 (2005)
  59. ^ 塗師本(2014)「外国人の増加は若年の失業を増やすのか」OSIPP Discussion Paper、DP-2014-J-005(May)。
  60. ^ a b Obama on immigration: I'm going to fix as much as I can, on my own CNBC, Immigration, 30 June 2014
  61. ^ a b No permisos. Lawmakers, feds debate surge of immigrant kids CNN, 2014 Midterm Elections, June 26, 2014
  62. ^ a b c Six arrested as Southern California demonstrators clash over immigration US Immigration, theguardian, 5 July 2014
  63. ^ a b Homeland Security chief:‘We're going to stem this tide’of illegal immigration CNN Political Ticker, July 6, 2014
  64. ^ a b White House seeks $3.7bn in extra funding to address child migrant crisis The Guardian, World News, 8 July 2014
  65. ^ a b c Swiss government moves to curb pension-funded home ownership Reuters, June 25, 2014
  66. ^ [1]
  67. ^ イスラム恐怖症は過激なステージへ NZモスク襲撃で問われる移民社会と国家の品格”. ニューズウィーク. 2019年12月5日閲覧。
  68. ^ <消えぬ分断 ベルリンの壁崩壊30年> (下)排外主義 社会に亀裂”. 東京新聞. 2019年12月5日閲覧。
  69. ^ 南アで移民襲撃、百人逮捕 ナイジェリア人ら標的”. 産経新聞. 2019年12月5日閲覧。






品詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

移民のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



移民のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの移民 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS