ユニコーン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/24 09:18 UTC 版)
中国に伝わる一本の角を持つ馬
𩣡もしくは䮀、䑏疏という一本角の馬が、古代中国の様々な事柄を書いた地誌『山海経』や郭璞の書いた『江賦』などの古代の本に記されている。
紋章獣としてのユニコーン
スコットランド王家の象徴にもなっており、グレートブリテン王国成立以後、現在のイギリス王家の大紋章には、ユニコーンがシニスターに、イングランド王家の紋章にも用いられているレパード(獅子)がデキスターにサポーターとして描かれている。
ロンドンの薬局協会の紋章には、二頭の金のユニコーンがサポーターとして描かれているが、ライオンの尾ではなくウマの尾である[16]。
シエナのパリオ祭には、ユニコーンの紋章を持つコントラーダ(小地区)がある。
伝承
ユニコーンは古代にヨーロッパに住んでいたケルト民族がキリスト教の伝来以前に信仰していた、ドルイド教の民間伝承として伝えられた怪物とも考えられている。
ケルトにもともとユニコーンの伝承があったとされることもあるが、実際には存在しないようである。しかし近い地域においてイッカクの角がユニコーンの角とされていたりもした。
したがってユニコーンの伝承は、周辺地域における角を持つ動物(サイ、オリックス、オーロックス、アイベックス、ヘラジカ、トナカイ、イッカクなど)の逸話がヨーロッパに伝わって一つに統合された結果であると考えることができる。
ユニコーンを題材にした作品
出典
- クテシアス 『インド誌』(Τα Ἰνδικά)第45節、前390年頃。
- アリストテレス 『動物部分論』(Περι ζώων μορίων)第3巻第2章、前350年頃。
- アリストテレス 『動物誌』(Περί ζώων ιστορίας)第2巻第1章、前343年頃。
- メガステネス 『インド誌』(Τα Ἰνδικά)第15章、前290年頃。
- カエサル 『ガリア戦記』(Commentarii de Bello Gallico)第6巻第26節、前52 – 51年。
- ストラボン 『地誌』(Γεωγραφικά)第15巻第1章第56節、年代不詳。
- プリニウス 『博物誌』(Naturalis historia)第8巻第31(21)章第76節、第11巻第45(37)章第128節、第11巻第106(46)章第255節、77年。
- プラエネステのアエリアヌス 『動物の特性について』(Περὶ Ζῴων Ἰδιότητος)第3巻第41章、第4巻第52章、第10巻第40章、第16巻第20章、220年頃。
- フィロストラトス 『テュアナのアポロニオスの生涯』(Τα εις τον Τυανέα Απολλώνιον)第3巻 第2章、1 – 2世紀。
- ソリヌス 『奇異なる事物の集成』(Collectanea rerum memorabilium)第52章第39 – 40節、250年頃。
- 『フィシオロゴス』(Φυσιολόγος)第22章、2 – 4世紀。
- コスマス・インディコプレウステース 『キリスト教地誌』(Χριστιανικὴ Τοπογραφία)第11巻第7章第4130 – 4139節、挿絵28 「モノケロース」、付録12 「ジャコウジカとユニコーン」、6世紀。
- セビリアのイシドールス 『語源集』(Etymologiae)第12巻 第2章第12 – 13節、622 – 623年。
- ラバヌス・マウルス 『万有誌』(De rerum naturis)第8巻第1章、842 – 847年。
- ホノリウス・アウグストドゥネンシス(オータンのホノリウス) 『世界像(イマーゴ・ムンディ)』(Imago Mundi)第1部 第12章、12世紀。
- 『アバディーン動物寓意譚』(Aberdeen Bestiary)第15葉 「モノケロース」、1200年頃、イングランド。
- 『アシュモル動物寓意譚』(Ashmole Bestiary)第14葉裏 「ウーニコルニス」、第21葉 「モノケロース」、13世紀初頭、イングランド、ピーターバラ?、ボドリーアン図書館蔵、オックスフォード。
- 『ハーレー動物寓意譚』(Harley Bestiary)第6葉裏 「ウニコルニス」、第15葉 「モノケロース」、1230 – 1240年頃、イングランド、ソールズベリー?、大英図書館蔵、ロンドン。
- アルベルトゥス・マグヌス 『動物について』(De animalibus)第22巻第2部第1章第71節 「モノケロース」、第106節 「ウーニコルニス」、年代不詳。
- ヤーコブ・ファン・マールラント 『自然の書』(Der Naturen Bloeme)第2巻 「動物」
- Koninklijke Bibliotheek, KB, KA 16, 第63葉 「モノケロース」、第71葉 「ウーニコルニス」、1350年頃、フランダース、オランダ王立図書館蔵、デン・ハーグ。
- Koninklijke Bibliotheek, KB, 76 E 4, 第26葉裏 「モノケロース」、第34葉 「ウーニコルニス」、1450 – 1500年頃、フランダース、ユトレヒト、オランダ王立図書館蔵、デン・ハーグ。
- 『アン・ウォルシュ動物寓意譚』(Bestiarius)第5葉裏 「ウーニコルニス」、第13葉 「モノケロース」、15世紀、イングランド、デンマーク王立図書館蔵、コペンハーゲン。
- アンブロワーズ・パレ 『ミイラ、一角獣、毒およびペストの説[リンク切れ]』(Discours d'Ambroise Paré : A savoir, de la mumie, de la licorne, des venins et de la peste) 1582年、フランス国立図書館蔵、パリ。
- コンラート・ゲスナー 『動物誌』、第1巻 『胎生の四足獣について』(Historiae Animalium; liber primus, qui est de quadrupedibus viviparis)第35葉裏 – 第39葉、1551年、ハイデルベルク。
- エドワード・トプセル 『四足獣誌』(The History of Four-Footed Beasts)より、「ユニコーンについて」、1607年、ロンドン。
- ウリッセ・アルドロヴァンディ 『単蹄四足獣について』(De quadrupedibus solidipedibus)より、扉絵の細部、木版画、1616年。
- ヤン・ヨンストン 『博物誌』(Historiae Naturalis)、第1巻 『四足獣誌』(De Quadrupedibus)より、図版10、図版11、図版12、金属版画、1650 – 53年、フランクフルト・アム・マイン。
- カール・グスタフ・ユング 『心理学と錬金術』(Psychologie und Alchemie)第3部第6章第2節、1944年。
参考文献
- リュディガー・ロベルト・ベーア 『一角獣』 和泉雅人訳、河出書房新社、1996年。
- トレイシー・シュヴァリエ 『貴婦人と一角獣』 木下哲夫訳、白水社、2005年。
- Odell Shepard, The Lore of the Unicorn, London: Merchant Book Company Limited, 1996.
- Jürgen Werinhard Einhorn, Spiritalis unicornis. Das Einhorn als Bedeutungsträger in Literatur und Kunst des Mittelalters, München: Wilhelm Fink Verlag, 1976.
- 種村孝弘 『一角獣物語』 大和書房、1985年。
- 『衝撃のオーパーツ!恐竜ミステリー』 双葉社
- ^ ギリシア語 Μονόκερως = μόνος 「一つ」+ κέρας 「角」
- ^ 偶蹄目の蹄。よく「割れている」と誤解されるがそうではなく、ヒトで言えば中指と薬指に相当する。
- ^ ゾウと戦うユニコーン。『クイーン・メアリー詩篇集』(The Queen Mary Psalter)第100葉裏より、1310 – 1320年頃、大英図書館蔵。
- ^ プリニウスの『博物誌』(Naturalis historia)第8巻第29(20)章第71節 や アエリアヌスの『動物の特性について』(Περὶ Ζῴων Ἰδιότητος)第17巻第44章 では、サイがゾウとの戦いに備え、角を岩で研ぐとある。
- ^ アルベルトゥス・マグヌス 『動物について』(De animalibus)第22巻第2部第1章第106節「ユニコーンについて」 より。
- ^ 尾形希和子 『教会の怪物たち』 講談社〈講談社メチエ〉、2013年、90頁。
- ^ レオナルド・ダ・ヴィンチ 「一角獣をつれた貴婦人」 1470年代、ペン画、アシュモレアン博物館、オックスフォード。
- ^ Odell Shepard, The Lore of the Unicorn, London: Merchant Book Company Limited, 1996. シェパードは一角獣の方を unicorn、その武器である角の方を古いイタリア語の形式の alicorno (ポルトガル語では alicornio)に基づいて、alicorn と使い分けている。
- ^ ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ『パルチヴァール』(加倉井粛之、伊東泰治、馬場勝弥、小栗友一 訳) 郁文堂 1974年 ISBN 4-261-07118-5。改訂第5刷 1998年、256頁上・下、482-483詩節。
- ^ アストラガロス(Άστραγάλους)とは、くるぶしの間にある距骨(ターロス、Talus)と呼ばれる動物の骨の部分で、古代ギリシア人やローマ人は、この骨をサイコロとして使っていた。
- ^ ここに出て来るヘラジカ(Alces)には、後肢の膝関節がなく、一度横たわると二度と起き上がれないと言う(カエサル『ガリア戦記』第6巻第27節)。これと似た話が プリニウスの『博物誌』第8巻第16(15)章第39節 にも見られる。そこにはアクリス(Achlis)というヘラジカに似た生き物が紹介されているが、後肢の関節を持たないことなどカエサルの言うヘラジカ(Alces)と内容が一致している。
- ^ 逸名作家『西洋中世奇譚集成 東方の驚異』(池上俊一訳)講談社学術文庫 2009 (ISBN 978-4-06-291951-7)、122頁。
- ^ 中世のラテン語訳聖書では h が付いたり付かなかったりする。
- ^ ノアの方舟に乗らないユニコーンたち。Tobias Stimmer, Neue künstliche Figuren Biblischer Historien, Basel 1576 の中の木版画。ユニコーンのつがいが、ノアの方舟に乗り込むことを拒否している。
- ^ バールラームとヨサファートの物語は、中世ヨーロッパにおいて、沢山の異本が知られており、6世紀のビザンチンに起源を持つという。さらに、いくつかの物語は、仏陀の生涯にかなり類似しているという。
- ^ The Worshipful Society of Apothecaries of London
- 1 ユニコーンとは
- 2 ユニコーンの概要
- 3 ユニコーンの角
- 4 古典文学
- 5 旧約聖書
- 6 ノアの方舟に乗らないユニコーン
- 7 中国に伝わる一本の角を持つ馬
- 8 関連項目
固有名詞の分類
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