メロン 分類

メロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/29 07:16 UTC 版)

分類

通常Cucumis melo L.の西方に伝わった品種群をメロンと呼び、東方に伝わった品種群を瓜(ウリ)と呼ぶ。日本マクワウリなどもそのひとつである。欧米では、ウリ科キュウリ属の甘いメロンや野菜タイプのメロンとウリ科スイカ属をまとめて、「メロン」と一般に呼ばれている[35]。メロンと同じキュウリ属の有用植物としてキュウリ(胡瓜、C. sativus)があるが、植物学的な種のメロン(C. melo)のなかでも特に甘いものが、ふつう「メロン」として扱われている[35]

植物学者のあいだで、長年いくつかの群に分類することについて取り組まれてきたが、メロンは異種交配するため系統が複雑で、厳密なグループ分けをすることがむずかしい[38]。分類法について科学者によっては見解は分かれ長く議論されているが、ここでは7つの群とその他に分けた分類法で列挙する。

品種

  • カンタルペンシス群 (C. melo var cantalupensis)
    一般に果実は丸く、果皮に畝を立てたような筋が走ってゴワゴワして、滑らかなものでもでこぼこしたタイプがあるのが特徴[38]。網目は生じない。独特の香りをもち、果肉はオレンジ色が多く、熟してもつるから外れない[38]。シャラントメロン、ガリアメロン、アルジェリアンメロンなど[38]。北米で「カンタロープ」と呼ばれるメロンは、この群には含まれない[38]
  • レティクラトゥス群C. melo var. reticulatus
    果実は丸形からラグビーボール形で、果肉に麝香のような香りを持つ品種群で、果皮には網目模様が走り、熟すとつるから外れるのが特徴[39]。果肉はオレンジ色、クリーム色、緑色のものがある[39]マスクメロンカンタロープスペインメロン、ナツメグメロン(ネットメロン)、ペルシャメロン、アンデスメロンアールスメロンなど[39]
    • アンデスメロン - 青肉で果皮に網目がある。食味が良く、日持ちがする。日本では高級なマスクメロンに代って人気がある。[5]
    • クインシーメロン - 赤肉で果皮に網目がある。口当たりの良い深みのある甘味が特徴。実は大きめで糖度が高い。[5]
    • タカミレッド - 赤肉で果皮の網目が細かく入る。糖度が高く、さわやかな甘味がある。青肉の「タカミメロン」もある。[5]
  • イノドルス群(フユメロン群、C. melo ver. inodorus)
    果実は丸形からラグビーボール形で、果皮の表面に網目がなく滑らかなものやいぼ状をしており、一部の品種を除いて熟しても大半はつるから外れない[39]。果肉は緑色や白色が多く、麝香のような香りを持たない[39]。熟すまでに時間がかかり、他のメロンよりも大型のものが多く、収穫後も数か月保管できることから「フユメロン」[注釈 2]ともよばれる[39]ハネデューメロン(ホワイトアンディーブ)、ハミウリ、クレンショーメロン、サンタクロースメロン、カナリアメロン、カサバメロン、ピエル・デ・サポ、クリスマスメロンなど[39]
    • ボナンザメロン - 網目がない果皮は黄色く、果肉が白色で熟すと半透明になってくる。皮はごく薄く、果肉に歯ごたえがあり、あっさりした甘味がある。[5]
    • ホームランスター - ハネデュー系メロンを交配して作られたやや楕円形の果実で、果皮と果肉が乳白色の品種。果肉はなめらかで、完熟すると甘味が強くなる。[5]
  • フレクスオスス群 (C. melo ver. flexuosus)
    Flex は「曲がる」の意で、果実は蛇のように長くなる[40]。果皮は淡緑色や暗緑色で、食味は甘くなくキュウリに似ており、一般には野菜として扱われる[40]。南アジアから北アフリカにかけて栽培されている。ヘビウリ、アルメニアキュウリなど[40]
  • コノモン群 (C. melo ver. conomon)
    ピクルスメロンともよばれるアジアで数千年にわたって栽培されてきたメロンで、一般に甘くはなく野菜として利用される[41]。果実は球形か円筒状で、果皮はなめらかで緑色・白色・縞模様のものがある[41]シロウリ、アカゲウリ(モーウイ)など。
  • ドゥダイム群 (C. melo ver. dudaim)
    小型のメロンで果実は球形やラグビーボール形で、果皮に縞模様、果肉は苦味を持つものもあり、あまり食用では利用されない[41]。ポケットメロン、ザクロメロン、ドゥダイムメロン、アップルメロン、ヴァインボメグラネート、プラムグラニー、ワイルドマスクメロンなどとも呼ばれ[42]プレザーブや部屋の芳香剤に用いられる。
  • モモルディカ群 (C. melo ver. momordica)
    果実は球形やラグビーボール形で、果皮は滑らか、熟すと果実が割れるのが特徴[37]。果肉の果汁は少なくパサパサした食感で、一般には実が若いうちに生食するか調理して食べる[37]。スナップメロン(ポンメロン)など。
  • チト群 (チトメロン、Chito group)
    果実が小型の球形でカンタロープを小型にしたような外見[37]。食味は中には甘いものもあるが、キュウリに近い[37]。ガーデンレモン、メロンアップル、ツルモモ、マンゴーメロン、オレンジメロンの名称でも知られ、これらは外見的特徴から名付けられている[37]。主にピクルスに使われる[37]
  • マクワ群 (Makuwa Group)
    マクワウリなど。
    • キンショウメロン - マクワウリとスペイン系メロンを交配した品種で、果実はやや縦長の球形で、果皮は濃い黄色で果肉が白い。[5]
    • マクワウリ - 日本の代表的な東洋系メロンで果肉は白い。濃厚な甘味や香りはないが、あっさりした甘味と歯ごたえがある。[5]
    • タイガーメロン - マクワウリの一種と西洋系メロンの交配種で、果皮に緑と黄色の縦縞模様が入るのが特徴。果肉は白色で、さっぱりした甘さがある。[5]

マスクメロン

マスクメロンとは、品種名ではなく麝香(Musk)の香りがするメロンの総称のことである。


注釈

  1. ^ 「テンカ」とも読むが、慣例的に「メロン」と読むこともある。また、マクワウリのことも指す。
  2. ^ アジアで栽培されるトウガン(冬瓜)とは異なる[39]
  3. ^ 必須ミネラルの中で、体内に極めて微量しかないもの[53]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cucumis melo L. メロン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月29日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Melo sativus Sager. ex M.Roem. メロン(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月29日閲覧。
  3. ^ Cucumis melo L.USDA Germplasm Resources Information Network、2015年7月6日閲覧。
  4. ^ メロンって漢字で書くとどう書くの?2種類あるって本当?”. 2020年3月29日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 210.
  6. ^ a b 農林水産省のQ&Aページ
  7. ^ 五訂増補日本食品標準成分表 果実類
  8. ^ ラブグレン 2017, p. 37.
  9. ^ キュウリやメロン、インドが原産地₋ニュース【ビジネスプレミアム】 2013年3月15日₋[1]
  10. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 39.
  11. ^ ラブグレン 2017, pp. 43–44.
  12. ^ ラブグレン 2017, pp. 45–50.
  13. ^ ラブグレン 2017, p. 52.
  14. ^ ラブグレン 2017, p. 54–56.
  15. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 40.
  16. ^ ラブグレン 2017, p. 57.
  17. ^ ラブグレン 2017, p. 70.
  18. ^ マグロンヌ・トゥーサン=サマ 『世界食物百科』玉村豊男 翻訳監修、原書房1998年ISBN 4087603172、pp.684-687
  19. ^ ラブグレン 2017, p. 72.
  20. ^ ラブグレン 2017, p. 74.
  21. ^ ラブグレン 2017, p. 78.
  22. ^ ラブグレン 2017, p. 83.
  23. ^ ラブグレン 2017, p. 86.
  24. ^ ラブグレン 2017, pp. 88–90.
  25. ^ ラブグレン 2017, pp. 96.
  26. ^ ラブグレン 2017, p. 104.
  27. ^ a b ラブグレン 2017, p. 106.
  28. ^ ラブグレン 2017, p. 108.
  29. ^ a b ラブグレン 2017, p. 109.
  30. ^ a b c d ラブグレン 2017, p. 141.
  31. ^ a b ラブグレン 2017, p. 144.
  32. ^ ラブグレン 2017, p. 145.
  33. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 142.
  34. ^ a b ラブグレン 2017, p. 147.
  35. ^ a b c d ラブグレン 2017, p. 18.
  36. ^ 小豆島産の摘果メロンの粕漬‐香川県小豆農業改良普及センター
  37. ^ a b c d e f g ラブグレン 2017, p. 26.
  38. ^ a b c d e ラブグレン 2017, p. 20.
  39. ^ a b c d e f g h ラブグレン 2017, p. 22.
  40. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 23.
  41. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 24.
  42. ^ ラブグレン 2017, p. 25.
  43. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 140.
  44. ^ a b c d 世界のメロン生産量 国別ランキング・推移”. GLOBAL NOTE グローバルノート – 国際統計データ専門サイト. グローバルノート. 2022年8月13日閲覧。
  45. ^ a b FAOSTAT>DOWNLOAD DATA” (英語). FAOSTAT. FAO. 2014年11月14日閲覧。
  46. ^ 幻の…?「クールボジャメロン」”. トヨタネ株式会社. 2022年10月30日閲覧。
  47. ^ 宮城地域からの便り(平成29年度):東北農政局”. www.maff.go.jp. 2022年10月30日閲覧。
  48. ^ 「幻のメロン」クールボジャ今年限り 岩沼の生産組合、高齢化で生産断念”. 河北新報オンライン (2022年6月22日). 2022年10月30日閲覧。
  49. ^ 作物統計調査>作況調査(野菜) >確報>平成25年産野菜生産出荷統計”. e-Stat. 総務省統計局. 2015年9月5日閲覧。
  50. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 151.
  51. ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  52. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  53. ^ a b c d e f ラブグレン 2017, p. 119.
  54. ^ a b c ラブグレン 2017, p. 114.
  55. ^ ラブグレン 2017, pp. 114–115.
  56. ^ a b ラブグレン 2017, p. 115.
  57. ^ a b ラブグレン 2017, p. 116.
  58. ^ ラブグレン 2017, p. 118.
  59. ^ a b ラブグレン 2017, p. 126.
  60. ^ a b ラブグレン 2017, p. 127.
  61. ^ ラブグレン 2017, p. 128.
  62. ^ ラブグレン 2017, p. 129.
  63. ^ a b c d e f g ラブグレン 2017, p. 136.
  64. ^ ラブグレン 2017, p. 137.






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