真庭忍軍(まにわにんぐん)
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この物語における「噛ませ犬」役。『卑怯卑劣』を売りにした暗殺専門の忍者集団で、正式名は真庭忍軍十二頭領。人格破綻者の集まりで、集団行動をしない。それぞれ突出した能力を持っているが固まって動くと互いの足を引っ張ってしまうため、頭領が12人いる。頭領は3人ずつ手を結んでおり、それぞれ「鳥組」「獣組」「魚組」「虫組」の四組の派閥に区分されている。服装は一般的な忍者のイメージとかけ離れており、覆面はしておらず、装束には袖がなく、主に防具として全身に鎖を巻いている。巻き方、巻く場所は一人一人違う。とがめから「刀集め」を依頼されたが、時代の流れで滅びかかっている真庭の里を救うため、変体刀の売却で得られる金目当てに裏切っている。とがめと七花、および七実からは「短くていい」「可愛らしくて素敵」という理由で「まにわに」と呼ばれている。実は、四季崎記紀の歴史改竄の歪みによって生まれた存在で本来の歴史には存在しなかった。 真庭 蝙蝠(まにわ こうもり) 声 - 鈴木千尋 「冥土の蝙蝠」。獣組。絶刀「鉋」の蒐集に成功し、その後とがめを裏切った。体内にどんなものでも収納できる柔軟な体質をしていて、絶刀「鉋」を呑み込んで保管していた。耳障りな甲高い声でしゃべり、「きゃはきゃは」と特徴的な笑い方をする。自身の「冥土」という異名を聞かされた七花の印象は「不思議と可愛い感じ」。 使用する忍法は、体内に収納した多量の手裏剣を一気に吐き出す「手裏剣砲(しゅりけんほう)」と、外見から声色まで自在に作りかえる「忍法骨肉細工(にんぽう こつにくざいく)」。しかし衣装までは変えられないため、変装用の衣装は自分で用意している。 卑怯卑劣が売りの忍者にしては珍しい接待好きと評されており、異名も「冥土の土産を大盤振る舞いする」ことが由来。ただ忍びとして育った結果、自分に役目が回ってきただけと語り、敵をいい気分にさせるためわざと負けるようなどお茶目な所がある。自分でも本来の姿に確信を持っていない。組を気にせず鳥組とも親しい間柄だったようで、人鳥の回想の中で寛ぎながら人鳥にとがめに対する情報(ひねくれている・腹の中まで腐ってる等)を語っているシーンがあり、蟷螂に対しても一目置いている。丹波の不承島で七花と戦い敗れ、真庭忍軍最初の殉職者となった。 身長五尺八寸。体重十五貫。趣味は「陶芸」。 真庭 白鷺(まにわ しらさぎ) 声 - 羽多野渉 「逆さ喋りの白鷺」。鳥組。「ぜうらもてせら乗名」(「名乗らせてもらうぜ」)のように常に逆向きに喋っており、その喋り方自体が白鷺の使う忍法に密接に関係しているらしい。使用する忍法は「忍法逆鱗探し」という名前だが、詳細不明。斬刀「鈍」を入手すべく下酷城へ赴くが、銀閣のいる部屋に足を踏み入れた瞬間に一刀両断され死亡した(斬られた瞬間はそのことに気づかなかった)。 真庭 喰鮫(まにわ くいざめ) 声 - 坪井智浩 「鎖縛(さばく)の喰鮫」(登場回においては「先月登場しとけば」などと、言いもしないツッコミを自ら(原作では語り手が)入れている(ただしノイタミナ版ではカットされている。))。魚組。無益な殺生が好きで、金銭目的以外で働いたことがないのを誇りにしているが、誰に対しても敬語で接する慇懃無礼な人物。「〜ですね」など(主に「いいですね」)を3・4回繰り返して言うのが癖。 使用忍法は、鎖に繋いだ刀を高速回転させて相手をバラバラにする「忍法渦刀(にんぽう うずがたな)」で、幕府の関所を壊滅させたほどの戦闘力を持つ。使用する忍法の特性上、装束に巻いている鎖が他人より若干長い。七花に「まにわに」と直接呼ばれた最初の真庭忍軍だが、この奇妙な愛称を喜んでいた。「戦う理由をわざわざ考えるくらいなら、そもそも戦う必要はない」という旨を口にしており、これは奇しくも最終話で七花が同様のことを口にしている。千刀「鎩」を入手すべく出雲国三途神社に赴き攻撃を仕掛けるが、迷彩に自分の刀を両方とも使われ斬殺された。 真庭 蟷螂(まにわ かまきり) 声 - 保村真 「首狩りの蟷螂」。虫組の指揮官。真庭忍軍の組では唯一頭領三人で行動を共にしており、絆も固い。回数に限度はあるが、自分の爪を数十秒から数分にかけて異様なほどの長さに伸ばすことができ、これを武器とする「忍法爪合わせ」を使う。そのため虫組の中では最も戦闘向きと評される。誰を相手にしても過大評価も過小評価もしない人格者。虫組で丹波の不承島に赴き、蟷螂の単独行動にて鑢七実をさらいに襲いかかるが、攻撃をかわされたあげく逆に七実に捕らえられて拘束され、武器となる爪をすべて剥がされた上、拷問的な仕打ちを受ける。従うふりをして反撃を狙うが、返り討ちにあい絶命する。 真庭 蝶々(まにわ ちょうちょう/まにわ てふてふ) 声 - 阪口大助 「無重の蝶々」。虫組。喰鮫とは逆に無益な殺生を好まない。使用する忍法は、自分や自分が持った物の重量を消す「忍法足軽」。それを応用し、人を自身の肩の上に乗せて海の上を移動することができる。また真庭忍軍独自の武術真庭拳法の使い手でもある。南方の生まれで、真庭の里の出身ではなかった。同じ十二頭領の一人である鳥組の真庭鴛鴦と婚約している。紙巻煙草(アニメ版での銘柄は「舞流怒」)を吸っていたが、鴛鴦との結婚の条件として禁煙している。蟷螂の敗死を察すると、敗北を承知で仇討ちと次の手の捨石となるために蜜蜂を残して七実に勝負を挑む。当初は足軽を用いた身軽な動きで優位に戦っていたかに見えたが、見ただけで足軽を習得した七実の前に敗れ去る。 アニメ版では、初代真庭蝶々と鑢一根との邂逅について言及している。 真庭 蜜蜂(まにわ みつばち) 声 - 三浦祥朗 「棘々の蜜蜂」。虫組。使用する忍法は、20丈先からでも百発百中の精度で、毒を仕込んだ巻菱を飛ばす「忍法巻菱指弾」。虫組頭領で一番若く、また一番長身。少々控えめな所があるが虫組同士の友情は篤く、虫組の将来を託されていた。蟷螂と蝶々の敵を討つために七実に麻痺毒付きの巻菱指弾を打ち込むことに成功。勝利を確信し饒舌となるが、実は全く通用しておらず七実が知りたかった情報を喋らせられることになる。その直後、自分が投げた巻菱指弾に蟷螂が自決のために奥歯に仕込んでいた毒を塗られた物を打ち返されて戦闘不能となり、毒で死ぬよりも斬り殺されることを選ぶ。命乞いの代わりに三人一緒に葬ることと、線香代わりに蝶々の煙草を立てることを懇願した。 真庭 狂犬(まにわ きょうけん/まにわ けふけん) 声 - 根谷美智子 「伝染の狂犬」。獣組。真庭の里の観察者。真庭忍軍で人一倍情に篤い。こなゆきに乗り移る前の体は長い髪を後ろでひとつに縛った女。全身に黒い直線が出鱈目に這ったような刺青がある。使用する忍法は、触れた相手に刺青を介して体から体へ残留思念を移し、対象の体と記憶、経験、知識などを乗っ取る「忍法狂犬発動」。ただし狂犬自身が女性であるため、男性には使用不可。身体ではなく刺青が狂犬の本体とも言え、この忍法によって100人を越える手練の女性武術家の体を乗り換え続けており、真庭の里の創生期から存在している(アニメ版ではこなゆきに憑依した後、前の体は灰のようになって砕け散った)。また、乗っ取った相手の記憶を引き継ぐことができ、他の体に移っても前の憑依した相手の記憶を持ち続けることができる。残留思念だけで存在している自分を恥じており、それゆえ仲間の生命に関するこだわりは人一倍強い。 鳳凰の話を聞かずに暴走し、仲間の仇である七花を殺すべく単身で蝦夷・踊山に向かい、こなゆきの肉体を乗っ取り七花に戦いを挑む(ただし、この時点で七花が殺したのは蝙蝠だけであり、白鷺を殺したのは銀閣、喰鮫を殺したのは迷彩、虫組を殺したのは七実なのだが、彼女はそれを知らない)。だが、武道の心得があるため動きを読まれてしまい、「飛花落葉」で皮膚=刺青だけを攻撃され敗れる。 真庭 川獺(まにわ かわうそ) 声 - 川田紳司 「読み調べの川獺」。獣組の指揮官。使用する忍法は、石や机、刀などの無生物が持つ「記録」を読むことが出来る「忍法記録辿り」。探魂法のようなものなので、人の心を読むことは出来ない。蝙蝠の一番の友人にして、良きライバル。誰に対しても常に飄々とした態度で接し、自分の命に対する執着がほとんどない。真庭の里の出身だが、父方の血に陸奥のものが入っているため、死霊山神衛隊の交霊術と「忍法記録辿り」の関連性が作中で言及されている。 七花&とがめと真庭忍軍との同盟を交わした矢先、真庭狂犬の独断専行による七花を襲った理由により信頼失墜、同盟破綻ともいえる事態に陥った際、その責任として、とがめと七花の前で自らの首を差し出し真庭鳳凰によって殺害された。片腕を失っていた鳳凰は彼の腕を取り込んで両腕に回復し、「忍法記録辿り」も使えるようになった。 真庭 海亀(まにわ うみがめ) 声 - 関俊彦 「長寿の海亀」。魚組の指揮官。一見すると若い風貌の男だが実は結構な年で、本人によると若作りしているらしい。一人称は「わし」で、事あるごとに自身を「最高格好よくて最高いかした最高強い最高もてもて最高金持ち」と評する。南蛮渡来の刺突剣であるレイピアを帯刀しており、忍術に関しては「ほとんど使えぬ」と語る一方、剣術に関しては「虚刀流や錆白兵にも引けを取るつもりはない」と豪語する。 七花ととがめが微刀「釵」の収集している時に、人鳥の情報を基に信州にあるという完成形変体刀を探しに赴く。そこで右衛門左衛門に行く手を阻まれ交戦するが、力及ばず敗死する。 真庭 鴛鴦(まにわ おしどり) 声 - 山像かおり 「巻戻しの鴛鴦」。鳥組。全身に鎖を巻いたしのび装束でも隠しきれないほどの妖艶さを持つ女。同じ十二頭領の一人、虫組の真庭蝶々と婚約している。目上の鳳凰に対しては敬語を使うが、基本的には蓮っ葉な話し方をする。使用する忍法は、1つの持ち手から10本に枝分かれして1つ1つの先端に刃物がついている鞭を両手に1本ずつ持ち、それを同時に振り回して操る「忍法永劫鞭(にんぽう えいごうべん)」で、その攻撃特性は彼女曰く「防御こそ最大の攻撃」という攻防一体の技。 毒刀「鍍」を入手した矢先に、否定姫から真庭忍軍暗殺の命を受けた右衛門左衛門の襲撃を受け、人鳥と鳳凰を逃がし殿を引き受けた。一時は永劫鞭で押すが、右衛門左衛門の炎刀「銃」に撃たれ、蝶々を想いながら息絶える。 真庭 人鳥(まにわ ぺんぎん) 声 - 広橋涼 「増殖の人鳥」。魚組。年端もいかない小柄な童子であるが、真庭忍軍頭領の中でも鳳凰に次ぐ実力者とされている。特に情報収集とその分析に関しては、鳳凰に「お前の情報には千に三つの誤りもない」と言わせるほど。自らの忍術の影響で、常に何かに怯えたような態度でたどたどしく挙動不審の気があるが、頭領の1人として自分の意見はしっかり口にする。使用する忍法は、人鳥を狙って放たれた飛び道具を自らの強運によって当たらなくする(一発必中とされている蜜蜂の「忍法巻菱指弾」ですら全く当たらない)「忍法運命崩し」と、反射によって加速し威力を増す2つの楕円形の球「柔球」を跳ね回らせ、「運命崩し」と組み合わせて使用する「忍法柔球術」。 毒刀「鍍」の毒に体を乗っ取られた鳳凰に斬られ瀕死の重傷を負い、出羽に逃げて道中で倒れたところをその場に通りかかった七花ととがめに助けられ、鳳凰の危機をとがめに託す。七花ととがめが去った後に右衛門左衛門が現れ、狭い旅館の一室という好条件の下で「忍法柔球術」を用いて優位に戦局を進めたが、自らの意思の宿らない跳弾を用いた右衛門左衛門の射撃の前に敗れる。この段階ではまだ重傷を負うに留まり戦闘不能程度の状態であったが、「感情の不安定な子供であるが故に、見逃せば思わぬ障害になる危険性がある」と判断した右衛門左衛門により、確実に致命傷を与えるためにと口に銃口を咥えさせられた状態で発砲され、落命した。死ぬ間際に「戦いたくなんてなかった」と嘆き、右衛門左衛門は「そんな情けないことを言って死ぬのは、歴史上お前が初めてだ」と侮蔑した。 真庭 鳳凰(まにわ ほうおう) 声 - 置鮎龍太郎 「神の鳳凰」。謎多き男。鳥組の指揮官で、実質的な真庭忍軍の頭。すらりとした長身で、伸ばした髪を真っ直ぐに下ろしている。十二頭領の中で唯一、実在しない動物の名を冠している。使用する忍法は、自分の身体を切り落として他人の身体を繋ぎ直し、その特性を奪う「忍法命結び」と、詳細不明の「忍法断罪円」。かつてリーダーシップ(社会性)を得るために後の右衛門左衛門から顔面の上半分を奪い、その副産物として「忍法生殺し」(鳳凰が使う「忍法断罪円」と右衛門左衛門が使う「不忍法不生不殺」)が使えるようになった。 七花ととがめが薩摩に着いた時点で真庭忍軍の頭領が半数に減っていたため、とがめを信用させるために自ら左腕を切り落とし、同盟(とがめに言わせると一時休戦)を結ぶ。この時、とがめは自分が所在を知っている双刀「鎚」のありかを、鳳凰は3振りの変体刀のありかを教えあった上で、鳳凰は否定姫が動き出したことをとがめに伝えた。その後、独断で動いた狂犬を止めに川獺と共に蝦夷に向かうも間に合わなかった。川獺を殺害し、収集に有効な忍法記録辿りを封じてとがめとの同盟破綻の回復の証としたように見せたが、その後で川獺の左腕を自らの左腕として接続、「忍法記録辿り」を使用できるようにするなど狡猾さも併せ持つ。 毒刀「鍍」に忍法記録辿りで触れてしまったことで刀の毒に体を乗っ取られ、真庭の里を皆殺しにした後、変体刀の実態を語り、歴史上暫くは破られる予定の無い突き技を放つなど四季崎記紀本人であるかのような言動を取る様になった。とがめはこれを乱心の一種、「他人になったという思い込み」ではないかとも述べており、本当に四季崎記紀の思念が蘇ったのかは判然としない。 32歳。身長五尺九寸四分。体重十六貫。趣味は「気苦労」。
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