金日成 神格化とその変化

金日成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 15:51 UTC 版)

神格化とその変化

北朝鮮においては「偉大なる首領様」などの尊称の下に神格化され、個人崇拝されてきた[106]。その一例として金日成による抗日パルチザン時代の活動について北朝鮮では学生用・人民用教材において「縮地法を使い、落ち葉に乗って大きな川を渡り、松ぼっくりで銃弾を作り、砂で米を作った」といった記述が行われていた[107]

しかし、2019年頃から変化が指摘されており、労働新聞の2019年3月の記事は孫の金正恩が書簡で「もし偉大さを強調するなどといって、首領(最高指導者)の革命活動や風貌を神格化すれば、真実を隠すことにつながる」との考えを表したことを伝えた[107][108]。2020年5月20日付の労働新聞も「縮地法の秘訣」と題した記事で抗日パルチザン時代の縮地法について霊的な技術を言ったものではないとして金日成・金正日時代の解釈とは異なる見解を伝えた[107]。北朝鮮のメディアが最高指導者に独断で言及することは考えられないことから、金正恩の意向が反映されているとみられている[108]

人物像

抗日の闘士として勇名を馳せたが、たとえ日本人であっても個人として信頼を置く人物に対しては友情を示し、もし同胞であったならば決して許されないような言動に対しても寛容な態度で対応することもあった。[要出典]

金日成は終戦後も残留していた二人の日本人女性を家政婦として雇っていた。将来日本が共産主義になることを心配していた二人に彼は共産主義の優位性を説いて聞かせた。それにもかかわらず彼女たちが「天皇陛下のほうが好き」と正直に答えたので、説得することを諦め笑って受け流したエピソードが伝えられる[109][110]。同様のエピソードは息子の金正日が料理人に日本人の藤本健二を雇い、家族的な付き合いをした例がある。

評価

李栄薫は、「中国共産党傘下の抗日聯軍に中隊長クラスの位で所属していた金日成と、彼の部下50名余りは、関東軍の追撃を受けて1941年には沿海州のソ連領に逃げ込み、同地で1945年の解放時まで過ごしていました」「戦争が終結する少し前、スターリンは沿海州にいた金日成をモスクワに呼び、彼がこれからさき朝鮮北部に作る自分の代理政府の責任者として適格であるかどうかをテストします。そしてスターリンは金日成に満足したようです。これにともない金日成はソ連軍の船に乗り、解放から1カ月後に元山港に帰ってきました」と説明したうえで、北朝鮮の歴史書『現代朝鮮歴史』(1983年)が「朝鮮の解放は金日成が組織し領導した栄光の抗日武装闘争の勝利がもたらした偉大な結実だった」と記述していることを「真っ赤なウソ」「深刻な捏造」「偽善の知性」として、北朝鮮の歴史書が歴然たる事実を国民を欺いているのは、北朝鮮社会に思想・学問の自由がなく、偽善の専制権力が君臨しているから、と批判している[111]

訪朝経験のある元アメリカ大統領ジミー・カーターは2009年11月、タイの新聞との会見で金日成を「大変聡明で鋭利な人物であった」と評している。

脱北した黄長燁朝鮮労働党書記はフリージャーナリスト・山本皓一とのインタビューにおいて「金日成は自分の経歴を美化するなど俗物的な所はあったが、抗日パルチザン闘争などで苦労した経験があり人民の痛みもある程度わかっていた。ともかくも国民を飢え死にはさせなかった。現在の非民主主義的な体制を造り上げたのは金日成ではなく金正日である」と証言している。また、黄長燁は金日成は中国式の改革開放に肯定的な柔軟さを持っていたが、金正日は自己保身を優先して苦難の行軍を引き起こして経済を低迷させた責任があると証言しており[112]、これは他の記録でも裏付けられている[113][114]







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