神社本庁 政治活動・主張

神社本庁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/22 03:30 UTC 版)

政治活動・主張

神社本庁の関係団体に神道政治連盟がある[34]。また、神社本庁総長の田中恆清は日本会議の副会長である[45]

1953年(昭和28年)の第3回参議院議員通常選挙で神社本庁は宮川宗徳を擁立したが、宮川は落選した[34]。1966年(昭和41年)に神社審議会は「神社本庁関係の全組織をあげて強力な推進団体を組織して、国会に代表を送る」べきだと答申した[46]。1969年(昭和44年)の神道政治連盟結成後は、独自候補擁立ではなく既存政党の政治家の推薦が行われた[34][46]。塚田穂高によれば神道政治連盟結成後、神社本庁と神道政治連盟は自由民主党の議員を主に支援しており[46]堀幸雄によれば「利益代表を出すのに熱心」だった[34]ジェフ・キングストンによれば、神社本庁は日本遺族会など他の右派団体と共に、靖国神社を参拝する見返りに政治家に票と金を提供するロビー活動をおこなった[47]

上杉聰は、過去に実施された日本会議の行事の受付では、神社本庁を含む各種宗教団体別の受付窓口が設けられ、参加者を組織動員した旨を述べている[48]

皇室典範の改正

2005年(平成17年)3月17日、神社本庁は、「皇室典範に関する有識者会議」が皇位継承のあり方を検討していることを受け、「皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢」としてまとめ、各都道府県の神社庁に送付した。また同年11月24日に有識者会議が報告書を提出したことに対し、12月2日に「皇室典範改正問題に関する神社本庁の基本見解」を発表した[49]。その中で皇位は「一つの例外もなく男系により継承されて」いるとして[49]、「皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢について」で政府や有識者会議に対して男系による皇位継承の尊重を呼びかけた[49]

首相の靖国神社公式参拝

2005年(平成17年)6月9日、神社本庁は内閣総理大臣の参拝等で議論を呼んだ靖国神社の諸問題、いわゆる靖国神社問題に関して、神社本庁としては分祀は「神社祭祀(さいし)の本義からあり得ない」などとする基本見解を発表した[50][51]。その中で、神社本庁としては、A級戦犯も含め、戦争裁判犠牲者を日本政府の一連の措置により昭和殉難者として合祀、慰霊してきた靖国神社を支持するとともに、多くの人が祭神の「分祀」の意味を誤解して神社祭祀の本義から外れた議論がなされていることを憂慮すると表明。見解の要旨は、靖国神社は日本の戦没者追悼の中心的施設である・祭神の分離という意味の「分祀」は神社祭祀の本義からありえない・首相は靖国神社参拝を継続するべきである・いわゆるA級戦犯は国会の決議とそれにかかる政府の対応により合祀されたというものである。

なお、神社本庁は靖国神社崇敬奉賛会の法人会員でもある。

紀元節復帰運動

1957年(昭和32年)8月21日に、生長の家修養団などと合同で紀元節(西暦紀元前660年2月11日に初代・神武天皇が即位したとされる日を日本国誕生の日とする)を復活させる運動のための統一団体「紀元節奉祝会」を結成した。1967年(昭和42年)には「建国記念の日」の名称で紀元節を復活させるなど政治的な理念も有して活動している。

上関原子力発電所建設に伴う四代八幡宮境内地処分問題について

中国電力が建設予定の山口県上関原子力発電所予定地の一部が四代八幡宮の境内地にかかっていたが、当時の宮司林春彦が神社地の原発用地への提供に反対した[52][53]。このことについて、神社本庁の代表役員らが林の解任を画策したと林は2002年に主張した[52]。2003年には原発推進派の氏子が宮司解任を要求するなどの騒動に発展した[53]

神社本庁は同神社境内地の財産処分申請に対し「原子力発電地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しないため環境破壊に当たらない」として、四代八幡宮に対して境内地売却の財産処分を承認した[54]

神社境内における憲法改正署名運動

各地の神社において、神社本庁が参加する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(櫻井よしこ主宰)が憲法改正を求める署名活動を行っている[55]。神社におけるこのような活動に対して、単立神社である新熊野神社宮司の尾竹慶久は「神社の職務は、参拝者に気持ちよくお参りをしていただく環境を整えること。不快感を抱く人もいる改憲運動を持ち込むのは、神職の職務放棄、神社の私物化」であるとして批判している[37]

津地鎮祭訴訟の最高裁判決について

1977年(昭和52年)、津地鎮祭訴訟の最高裁判決(昭和52年7月13日大法廷判決)において、国や自治体が、社会の一般的慣習に従った儀礼などにおいて宗教と関わることが日本国憲法第20条第3項で禁止される「宗教的行為」には該当しないとする合憲判決が下される[56][57]。神社本庁では、これにより占領軍による国家と宗教の「完全分離主義」が退けられ、憲法の政教分離条項の解釈が確定したとしている[56]。また、この法理解釈により、平成の皇位継承に関する儀式・儀礼を根拠づけることが可能となるとしている[58]




  1. ^ a b c d じんじゃほんちょう【神社本庁】 世界大百科事典第2版
  2. ^ 神社本庁 > 神社本庁のご案内 > 神社庁一覧
  3. ^ 神社本庁 > 神社本庁のご案内 > 関係団体一覧
  4. ^ 宗教年鑑 平成30年版 文化庁(編) p.103
  5. ^ a b 『宗教年鑑』平成19年 2-4ページ
  6. ^ 神社本庁 神社庁一覧
  7. ^ 神社庁とは”. 岡山県神社庁. 2020年5月4日閲覧。
  8. ^ 会通雑誌社『会通雑誌』、NDLJP:3567527国立国会図書館、図書館送信閲覧対象。
  9. ^ 松本久史 2011, pp. 78-79.
  10. ^ 神社本庁研修所 2005, pp. 216-218.
  11. ^ a b c 松本久史 2011, pp. 80-81.
  12. ^ 「日本奨学義会規則」、飯山正秀編『成功名家列伝』、国鏡社。1910年。NDLJP:778190/5
  13. ^ 神社本庁研修所 2005, pp. 215-221.
  14. ^ 1936年成立の思想犯保護観察法により、東京市渋谷区千駄ヶ谷4-658の住所(旧住所)には思想犯保護観察所が設置され、東京・千葉・埼玉・山梨で思想犯とされた集団の保護観察に当たっていた。
  15. ^ 神社本庁研修所 2005, pp. 232-234.
  16. ^ 用語解説|日本国憲法の誕生”. 国立国会図書館. 2016年5月3日閲覧。
  17. ^ a b 神社本庁研修所 2005, pp. 244-246.
  18. ^ 松本久史 2011, p. 83.
  19. ^ 神社本庁研修所 2005, pp. 245-248.
  20. ^ a b c d e f g h i 神社本庁研修所 2005, pp. 252-253.
  21. ^ 『神道』 136頁。
  22. ^ 神社本庁 設立
  23. ^ a b 武田 幸也「神宮奉斎会から神社本庁へ」神社本庁総合研究所紀要 (20), 1-43, 2015-06
  24. ^ 文化庁 (2015年3月20日). “宗教年鑑 平成25年版”. 文化庁. p. 4. 2016年4月27日閲覧。
  25. ^ 神社本庁教学研究室編『神社本庁憲章の解説』神社本庁、1985
  26. ^ 神社本庁編『新編神社実務提要』神社新報社、2001年
  27. ^ 神社本庁編『神社本庁規程類集』平成25年度版、神社新報社
  28. ^ a b c d e f 「全国10万社の頂点に鎮座 比類なき伊勢神宮の威力」、週刊ダイヤモンド、2016年4月16日。
  29. ^ 神社本庁データベース、宗教情報リサーチセンター、2016年5月9日閲覧。
  30. ^ 神社本庁 関係団体一覧
  31. ^ 会社概要 / 神社界唯一の新聞社 神社新報社
  32. ^ 本会のあゆみ – 神道文化会 | 伝えたい日本のココロとカタチ。
  33. ^ 神社本庁編『神社本庁規程類集』平成25年度版、神社新報社
  34. ^ a b c d e 堀幸雄『最新右翼辞典』2006年、「神社本庁」の項、295ページ
  35. ^ http://www.sinseiren.org/ouenshiteimasu/ouensimasu.htm
  36. ^ 神社本庁編『神社本庁規程類集』2002年(平成14年)度版、神社新報社、2002
  37. ^ a b “続報真相 改憲急ぐ安倍首相を応援する人々 「美しい日本の憲法」とは”. 毎日新聞. (2016年3月18日). http://mainichi.jp/articles/20160318/dde/012/010/017000c 2016年3月18日閲覧。 
  38. ^ 大阪府神社庁 第六支部 東大阪市参照。なお、ここにおける単立神社には式内社石切剣箭神社等も含まれている・
  39. ^ 「強権発動で宮司人事にも介入 完了・世俗化する神社本庁の罪」、週刊ダイヤモンド、2016年4月16日。
  40. ^ 「気多大社 人事で混乱 宮司2人 法廷頼み」、朝日新聞、2006年9月17日
  41. ^ 「最高裁、神社規則の変更認める 羽咋市の気多神社訴訟」、共同通信、2010年4月20日
  42. ^ 週刊ダイヤモンド編集部 (2017年7月5日). “神社本庁「恐怖政治」の実態、地方の大神社で全面戦争も(2/4)”. 週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社). http://diamond.jp/articles/-/134148?page=2 2017年12月14日閲覧。 
  43. ^ “富岡八幡宮、神社本庁に6月離脱通知、9月に認証”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社). (2017年12月9日). https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201712090000123.html 2019年10月14日閲覧。 
  44. ^ a b c 神社本庁の「政治力」と「資金力」、不気味がるほどではなかった!、週刊ダイヤモンド、2017年6月28日。
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  46. ^ a b c 塚田穂高 2015, pp. 44-48.
  47. ^ ジェフ・キングストン, Contemporary Japan: History, Politics, and Social Change since the 1980s, p.160 ISBN 978-1-118-31506-4
  48. ^ 上杉聰。「日本における『宗教右翼』の台頭と『つくる会』『日本会議』」戦争責任、39、2003年 53ページ。
  49. ^ a b c 皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢・「皇室典範改正問題に関する神社本庁の基本見解」・「皇室典範改正に関する神社本庁の基本的な姿勢について2005年(平成17年)12月2日
  50. ^ 「靖国神社のA級戦犯分祀「あり得ない」 神社本庁が見解」2005年6月10日朝日新聞朝刊4ページ
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  52. ^ a b 山口県上関町・八幡宮宮司 林春彦「人間・自然破壊の原発に神の地は売らず 神社、鎮守の森の永続は村落の永続」、『現代農業増刊 新ガーデンライフのすすめ 庭、里山、鎮守の森』(農山漁村文化協会)2002年5月1日発行、pp.224-229
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