フレックスタイム‐せい【フレックスタイム制】
フレックスタイム制(ふれっくすたいむせい)
フレックスタイム制
フレックスタイム制
フレックスタイム制
フレックスタイム制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 23:44 UTC 版)
フレックスタイム制(フレックスタイムせい、英: flextime system)とは、労働者自身が日々の労働時間の長さあるいは労働時間の配置(始業及び終業の時刻)を決定することができる制度[1]。弾力的労働時間制度の一種[1]。1967年にメッサーシュミットが初めて導入した。
フレックスタイム制は、一般的には労働者の個々の生活に応じた柔軟な労働時間配分を可能とする[1]。
日本におけるフレックスタイム制
![]() | この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本においては、1987年の労働基準法の改正により、1988年4月から正式に導入された。変形労働時間制の一種である。使用者は始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることを就業規則等で定め、かつ一定事項を労使協定で定めれば、使用者はフレックスタイム制をとる労働者について、清算期間(1ヶ月以内の期間で、労使協定で定めた期間)を平均し、1週間あたりの法定労働時間(1日につき8時間、1週間につき40時間)を超えない範囲内において、1週又は1日の法定時間を超えて労働させることができる(労働基準法第32条の3)。
コアタイムとフレキシブルタイム
実際のフレックスタイム制では、1日の労働時間帯を、労働者が必ず労働しなければならない時間帯(コアタイム)と、労働者がその選択により労働することができる時間帯(フレキシブルタイム)とに分けて実施するのが一般的である。なお、これらを定めるか否かは任意である。コアタイムのないフレックスタイム制をスーパーフレックスタイム制という[1]。
「変則できない時間帯」としてコアタイムを設定した場合、例えば、午前10時から午後3時までをコアタイムとすると、休憩を取らない限り、午前10時から午後3時までは「必ず就業」しなければならない。導入各社はこの時間帯を使い、職制内でのミーティングや取引先との打ち合わせなどの時間を確保することが多い。
法律や労使協定の定めにより、休憩を一斉に取らせることが必要な場合(労働基準法第34条等)、コアタイム中に休憩時間を定めるようにしなくてはならない。
公務員におけるフレックスタイム
一般職の国家公務員には、労働基準法が全面適用除外されていることから、フレックスタイム制は導入されていない。1993年(平成5年)4月から、国家公務員のうち、試験研究機関等に勤務する研究公務員及び研究支援職員について、フレックスタイムと称する制度が実施されているが、これは労働基準法に規定されたものではなく、職員の申請に基づいて正規の勤務時間を割り振る制度である(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第6条第3項)。
地方公務員については、地方公務員法第58条第3項の規定により、労働基準法第32条の3の規定が適用除外となっていることから労働基準法によるフレックスタイム制はない。ただし、勤務開始時刻と勤務終了時刻を同じだけずらす「時差出勤(時差勤務)」は全国の自治体で試行されており、本格実施しているところもある。
所定労働時間との関係
フレックスタイム制度によって1日あたりの労働時間が変則可能だが、月あたりの所定労働時間(1日あたりの所定労働時間×月あたりの勤務日数)を下回ると、就業規則によっては不足している時間が遅刻・欠勤などの扱いになる。労働者は、時間外労働時間の超過に注意するだけではなく、実働時間の不足にも注意を払う必要がある。
導入状況
厚生労働省の2012年(平成24年)就労条件総合調査結果によると、同年におけるフレックスタイム制の導入状況として、以下の様に報告されている。
- 1000人以上の事業所では25.9%の事業所が導入しているが、100人未満の中小零細企業では2.9%に留まり、事業所規模が小さいほど導入されていない傾向にある。
- 業種別では情報通信業、電気・ガス・熱供給・水道業での導入実績が高い。建設業、鉱業、採石業、砂利採取業、宿泊業、飲食サービス業での導入は少ない。
規模の大きな会社ほど導入される理由として、労働組合の強さと勤務時間分散による業務への影響の少なさのためとされている。規模の小さい企業では取引先に迷惑がかかる、労務管理が煩雑になる等の理由のため導入が進まないとされている。
欧州におけるフレックスタイム制
2013年の欧州企業調査では企業の約半数が8割以上の従業員に対してフレックスタイム制を導入している[2]。
イギリスのフレックスタイム制
イギリスでは2003年4月から弾力的勤務制度が導入された[1]。弾力的労働時間制度では26週間以上継続雇用する一定の被用者(17歳未満の子どもの養育責任を負う者、成人の配偶者、同居者の看護や介護を行っているもしくは行う予定のある者など)が労働条件の変更を申請できる制度であり、行政実務ではこの制度によりフレックスタイム制を選択することもできることになっている[1]。ただし、被用者は法律に定められた事由が存在する場合(追加の人員の採用が不可能な場合など)には弾力的勤務の申請を拒否できる[1]。
ドイツのフレックスタイム制
この制度の発祥の国のドイツでは労働協約によりフレックスタイム制度の導入が可能である[1]。ドイツのフレックスタイム制には単純フレックスタイム制、弾力的フレックスタイム制、可変的労働時間制がある[1]。
- 単純フレックスタイム制
- 単純フレックスタイム制とは、コアタイム及び1日の労働時間が決定されているフレックスタイム制である[1]。
- 弾力的フレックスタイム制
- 弾力的フレックスタイム制とは、1日の最長労働時間が定められており、その時間内で労働者が出勤時間と退勤時間を決定できるフレックスタイム制である[1]。
- 可変的労働時間制
- 可変的労働時間制とは、コアタイムの設定のないフレックスタイム制である[1]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l “労働政策研究報告書 No.151 ワーク・ライフ・バランス比較法研究<最終報告書>” (PDF). 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 (2012年6月11日). 2017年7月24日閲覧。
- ^ “フレキシブル・ワーク”. リクルートワークス研究所. 2021年2月25日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 変形労働時間制の概要 - 厚生労働省
- フレックスタイム制の場合、残業時間をどう計算すればいいのでしょうか? (一般財団法人労務行政研究所)[リンク切れ] 社会保険労務士 本田和盛氏による解説
- 労働基準法の基礎知識 (労務行政研究所)[リンク切れ] - 労働基準法がわかりやすく解説されている。
- 労働基準法 - e-Gov法令検索
- 『フレックスタイム制』 - コトバンク
- 『フレックスタイム』 - コトバンク
- 『変形労働時間制』 - コトバンク
フレックスタイム制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/04 21:30 UTC 版)
「変形労働時間制」の記事における「フレックスタイム制」の解説
第三十二条の三使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。一 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)三 清算期間における総労働時間四 その他厚生労働省令で定める事項 1988年(昭和63年)の改正法施行により新設され、2019年(平成31年)4月の働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(整備法)施行による改正で要件が改められた。フレックスタイム制は、一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者が仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとする制度である。整備法においては、子育てや介護、自己啓発など様々な生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、効率的な働き方を一層可能にするため、フレックスタイム制がより利用しやすい制度となるよう、清算期間の上限の延長等の見直しを行ったものである。なお、フレックスタイム制の運用に当たっては、使用者が各日の始業・終業時刻を画一的に特定することは認められないことに留意すること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 労使協定には、以下の事項を定めなければならない(施行規則第25条の2)。当該労使協定は、清算期間が1か月を超えるものである場合においては、当該労使協定に有効期間の定めをするとともに、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届出なければならない(第32条の3第4項)。第32条の3第4項の規定に違反した使用者は、30万円以下の罰金に処せられる(第120条)。 フレックスタイム制により労働させることができることとされる労働者の範囲フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲を特定するものである(昭和63年1月1日基発1号)。 清算期間及びその起算日フレックスタイム制において、労働契約上労働者が労働すべき時間を定める期間を定めるものであり、その長さは、仕事と生活の調和を一層図りやすくするため、平成31年4月の改正法施行により、それまでの「1か月以内」から「3か月以内」に延長された(平成30年9月7日基発0907第1号)。 清算期間における総労働時間フレックスタイム制において、労働契約上労働者が労働すべき時間を定めるものであり、この時間は、清算期間を平均し1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるような定めをすることを要し、その計算方法は、1か月単位の変形労働時間制の場合と原則として同様である(昭和63年1月1日基発1号)。 平成31年4月の改正法施行により、完全週休2日制の下で働く労働者(1週間の所定労働日数が5日の労働者)についてフレックスタイム制を適用する場合においては、曜日のめぐり次第で、1日8時間相当の労働でも清算期間における法定労働時間の総枠を超え得るという課題を解消するため、完全週休2日制の事業場において、労使協定により、所定労働日数に8時間を乗じた時間数を清算期間における法定労働時間の総枠とすることができるようにした(第32条の3第3項)。この場合において、次の式で計算した時間数を1週間当たりの労働時間の限度とすることができる(平成30年9月7日基発0907第1号)。8×(清算期間における所定労働日数)÷(清算期間における暦日数)/7 特例事業における法定労働時間の総枠の計算について、清算期間が1か月以内の場合は従来通り週44時間を用いるが、清算期間が1か月を超える場合は特例事業で合っても特例の適用はなく週40時間となる(規則第25条の2)。 標準となる1日の労働時間フレックスタイム制の下において、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間等となる労働時間の長さを定めるものであり、単に時間数を定めれば足りる。なお、フレックスタイム制の下で労働する労働者が年次有給休暇を取得した場合には、当該日に標準となる一日の労働時間労働したものとして取り扱うこととするものである(昭和63年1月1日基発1号)。 労働者が労働しなければならない時間帯(コアタイム)を定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻 労働者がその選択により労働することができる時間帯(フレキシブルタイム)に制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻 実施には労使協定を締結し、就業規則その他これに準ずるものに、始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨を記載しなければならない。始業時刻または終了時刻の一方についてのみ労働者の決定に委ねるのでは足りない。コアタイム・フレキシブルタイムも第89条でいう「始業及び終業の時刻」に関する事項であるので、それらを設ける場合には、就業規則においても規定すべきものである。なお、フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる一日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレックスタイム制の趣旨に合致しない(昭和63年1月1日基発1号)。 清算期間を3か月以内に延長することにより、清算期間内の働き方によっては、各月における労働時間の長短の幅が大きくなることが生じ得る。このため、対象労働者の過重労働を防止する観点から、清算期間が1か月を超える場合には、当該清算期間を1か月ごとに区分した各期間(最後に1か月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えないこととした。また、フレックスタイム制の場合にも、使用者には各日の労働時間の把握を行う責務があるが、清算期間が1か月を超える場合には、対象労働者が自らの各月の時間外労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、使用者は、対象労働者の各月の労働時間数の実績を対象労働者に通知等することが望ましい(第32条の3第2項、平成30年9月7日基発0907第1号)。加えて、清算期間が1か月を超える場合であっても、1週平均50時間を超える労働時間について月60時間を超える時間外労働に対して5割以上の率で計算した割増賃金の支払が必要であることや、法定の要件に該当した労働者について労働安全衛生法に基づき医師による面接指導を実施しなければならないことは従前と同様であり、使用者には、長時間労働の抑制に努めることが求められる(平成30年9月7日基発0907第1号)。 フレックスタイム制を採用した場合に法定時間外労働となるのは、以下の1.及び2.に示す労働時間である。なお、完全週休2日制の場合の清算期間における労働時間の限度の特例に留意すること(平成30年9月7日基発0907第1号)。 清算期間が1か月以内の場合従前のとおり、清算期間における実労働時間数のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間が法定時間外労働となるものであること。具体的な計算方法は、次の式によること。(清算期間における実労働時間数)-(週の法定労働時間)×(清算期間における暦日数)/7 清算期間が1か月を超え3か月以内の場合次の両項を合計した時間が法定時間外労働となるものであること。清算期間を1か月ごとに区分した各期間(最後に1か月未満の期間を生じたときには、当該期間)における実労働時間のうち、各期間を平均し1週間当たり50時間を超えて労働させた時間。具体的な計算方法は、次の式によること。(清算期間を1か月ごとに区分した期間における実労働時間数)-50×(清算期間を1か月ごとに区分した期間における暦日数)/7 清算期間における総労働時間のうち、当該清算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(ただし、上項で算定された時間外労働時間を除く。) 清算期間における実際の労働時間が総労働時間として定められた時間より多かった場合、総労働時間として定められた時間分のみ賃金を支払い、超過時間分を次の清算期間に繰越することは、賃金の全額払いの原則(第24条)に違反するので認められない。一方、清算期間における実際の労働時間に不足があった場合、総労働時間として定められた時間分の賃金を支払って不足時間分を次の清算期間に繰越することは、法定労働時間の総枠の範囲内であれば差し支えない(昭和63年1月1日基発1号)。清算期間が1か月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い労働者については、当該労働させた期間を平均して1週間当たり40時間を超えて労働させた時間について、第37条の規定の例により、割増賃金を支払わなければならない(第32条の3の2)。 法律や労使協定の定めにより、休憩を一斉に取らせることが必要な場合(第34条)、コアタイム中に休憩時間を定めるようにしなくてはならない。
※この「フレックスタイム制」の解説は、「変形労働時間制」の解説の一部です。
「フレックスタイム制」を含む「変形労働時間制」の記事については、「変形労働時間制」の概要を参照ください。
「フレックスタイム制」の例文・使い方・用例・文例
- フレックス-タイム制のページへのリンク