トップをねらえ!
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 09:18 UTC 版)
概要
庵野秀明初監督作品。本作品は『王立宇宙軍 オネアミスの翼』だけを制作して解散するはずのガイナックスが興行不振により生まれた借金を返済するために制作された。地味な作風でアニメファンへ受けが悪かった同作の反省を踏まえ、本作ではキャラクター原案に当時『超時空要塞マクロス』などの美少女キャラクターで人気のあった美樹本晴彦を起用、そのタイトルに見られるようにアニメ『エースをねらえ!』や映画『トップガン』を始めとする往年の作品のパロディ的な構成とし、昭和時代のアニメ・特撮作品に対するオマージュを盛り込むなど、一転して明るくとっつきやすい作風となった。
本作はパロディを中心に始まりつつも、次第にシリアスな内容になっていく物語構造を持ち[1]、ジョー・ホールドマンのSF小説『終りなき戦い』から着想を得て、「ウラシマ効果」を積極的にストーリーに取り入れるなど、根底には重厚なSF描写や細かい科学設定がある。最終回の第6話はほぼ白黒で、作品題名とラストシーンにごくわずかな着色があるのみ(リマスター版収録のノートリミング版に至ってはその部分も白黒になっている)。ラストは企画段階ですでに構想されており、庵野と岡田は「これならいける」という確信があったという。
企画立案の際、岡田のコンセプトは「作り手がやりたいSF・女の子・メカをそのまま出すのではなく、1万本売れる様に、1万円払った人が満足できるビデオを作る」を提示し、そこに庵野は「もし岡本喜八がアニメーションを監督したらどうなるか?」というテーマを持ち込んだ。そこから「しゃべる人間の顔を必ず映す」「キャラクターがあまり動かずに、切り返しを多くする」「ロケとセットもきっちり分けて、セットは今あるものの中に小道具スタッフが作ったものがポンとあるだけ」という表現を多用した。それはセル画の枚数をかけずに面白く見せるために開発した手法でもあった[2]。
家庭用ビデオデッキの普及を背景に「バブル育ち」と形容されるようなOVA作品が数多く作られた1980年代にあって[1]、映像やドラマ性を重視した本作は「OVAの金字塔」とも形容された[1]。ビデオ1巻につき2話収録。1巻あたりの制作費は2500万円。1巻あたり3万本を販売[3]。VHS、ベータマックス、LD、VHD、ビデオCDの5方式にて各全3巻リリースされている。
発売当時の宣伝などでは主人公タカヤ・ノリコとその声優である日髙のり子、オープニングテーマ『アクティブ・ハート』・エンディングテーマ『トライAgain…!』を歌っているアイドル歌手酒井法子のトリプルノリコを売りにしていた。岡田によれば、当初は酒井にノリコ役を依頼しようと検討されていたという。
なお、登場人物の名前はスタッフやガイナックス関係者に近しい人々の名前から取られているものが多く、主人公のタカヤ・ノリコは当作品の美術スタッフ・高屋法子から。オオタ・コウイチロウは岡田斗司夫の友人である漫画家・みんだ☆なお(眠田直)の本名[注 2] からなどである。
まず岡田斗司夫が企画を立ち上げてプロットを書き、それを元に山賀博之が脚本を書き上げた。岡田斗司夫名義にした理由について山賀は「小さい下請け仕事を、山賀の次回作という形で世間に出すわけにはいかない」「脚本をまとめた僕としては、“脚本:岡田斗司夫”というクレジットは匿名脚本家としての共同ペンネームのつもりでした」[4] と語っており、共同ペンネームとして当時ガイナックスの代表だった岡田斗司夫の名前が使われた。4話以降は半分以上が庵野によって書き直された[2]。
注釈
- ^ 「AIM FOR THE TOP! GUNBUSTER」の表記はLDのディスクジャケットで使用されているが、それ以外の媒体では映像中のアイキャッチを含めて「GunBuster」表記のみである。
- ^ ただし眠田は本名を公開していないが、『トップをねらえ!』リマスター版DVD収録の映像特典『シズラープロジェクト』で、エンディングイラストで「眠田 直(オオタコウイチロウ)」とクレジットされている。
- ^ 所在地は〒904-42 沖縄県嘉手納市金柱一丁目。実在しない架空の住所である。
- ^ 実在しない架空の学校である。原作・脚本の岡田斗司夫の出身校が、一文字違いの大阪市立三稜中学校であった。
- ^ 漫画『アストロ球団』に登場するジャコビニ流星打法に由来。
- ^ ただし、アマノはオオタとのデュエットで「男と女のラブゲーム」を第3話のアバンタイトルで披露しており、その時の歌唱力は普通に巧かった。
- ^ 原理は不明だが、音波を浴びた宇宙怪獣は踊りながら逃げていく。
- ^ 建造中止された同型艦と言うと、3番艦用の船体を使用しているととれる表記となるが、確定している事はヱルトリウム級が最低2隻建造された事と、14282年に稼動可能なように見える同型の艦が発見されている事だけである。コミックにおいてアレクシオンが起動する前の段階で、既に地球の科学技術は衰退しており、単素粒子船体の製造技術も失われている。シリウスを目的地として出発しており、後の時代に搭載されていたグレートガンバスターがシリウスに到着している事が確認されている。
- ^ トップ世界では、冥王星は準惑星ではなく第9番惑星のままであり、更に惑星の基準は現実世界での基準とも異なる。具体的には『トップをねらえ2!』では、旧雷王星は残存核と呼ばれ、太陽系絶対防衛戦で誕生したブラックホール・エグゼリオが新11番惑星とされている。従って「木星」と言う名前の(太陽公転)軌道都市なのではなく、ヱルトリウム級の艦体を利用した人工惑星が新たな「木星」である。
- ^ 同名の組織が『新世紀エヴァンゲリオン』にも登場している。
- ^ 後部から見ると、ヱクセリオン級は船殻が半円状になっているが、ツインヱクセリオン級は左右非対称な菱形となっている。
- ^ 現実世界では2012年にCERNによって存在が確認された。
- ^ 最初に発売されたOVAでは「励起」が「迎起」と誤記されており、再販DVDで訂正されている。
- ^ a b 岡田は名義貸しでプロットのみ執筆。残りは山賀が執筆。
- ^ イは左右反転
- ^ 『トップをねらえ! Vol.3』のVHS/VHD/レーザーディスク版に映倫マーク(審査番号113002)がついているのはこのため。
- ^ 【例】劇場版の「科学講座」では「『宇宙船』や『アニメージュ』を創刊から廃刊まで揃えています」となっていたものが、ビデオソフト版では「廃刊まで」が削除されている。
出典
- ^ a b c 『オトナアニメ』 vol.21、洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2011年8月8日、44-45,111頁頁。ISBN 978-4-86248-772-8。
- ^ a b 学習研究社刊「アニメV」1989年7月号「なぜ、今、白黒なのか!!?『トップをねらえ! Vol.3』庵野秀明監督、大論陣!!」pp.39-43より。
- ^ “『オタク学入門』粋の眼 -3 美少女キャラの文脈”. 未来編集研究所. 2016年1月15日閲覧。
- ^ 『クイック・ジャパン』 Vol.18、太田出版、1998年3月。ISBN 4-87233-374-8。
- ^ 作中では「イ」のみ鏡文字となっている。
- ^ 最終話での彼の墓標が映るシーンより。
- ^ 公式設定資料集『コンプリートガンバスター』より。
- ^ BSアニメ夜話における考案者の岡田斗司夫の発言から。
- ^ “劇場アニメ『蒼きウル』、『トップをねらえ3』、TV番組『レスキューアカデミア』など新作アニメ製作のお知らせ” (2018年9月7日). 2018年9月7日閲覧。
- ^ “【庵野監督・特別寄稿】『エヴァ』の名を悪用したガイナックスと報道に強く憤る理由”. DIAMOND online. (2019年12月30日). p. 7
- ^ トップをねらえ2! 最新情報、GAINAX/TOP2委員会
- ^ 庵野初監督作「トップをねらえ!」、全6話一挙劇場公開、AV Watch、2020年11月6日
- ^ 庵野秀明初監督作品 伝説のSFロボットアニメ『トップをねらえ!』11月27日(金)よりTOHO シネマズ池袋 他にて“OVA全話一挙劇場公開”決定!、バンダイナムコアーツ、2020年11月6日
- ^ 「トップをねらえ!」OVA劇場上映は発売当時の2chオリジナル音声で実施!、GAME Watch、2020年11月20日
- ^ 庵野秀明の初監督作品「トップをねらえ!」、公開3日間全回満席の大ヒットスタート!、アキバ総研、2020年11月30日
- ^ 「トップをねらえ!」劇場上映、東京は3日間全回満席の大ヒット、AV Watch 2020年11月30日
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