森林 森林保護

森林

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/07 09:28 UTC 版)

森林保護

北海道・小清水町のジャガイモ畑と防風林

自然環境の維持などを目的として、各国において森林の保護が行われている。日本においては、国有林のうち特に保護すべき森林が保護林に指定されている。保護林の種類としては、森林生態系保護地域、森林生物遺伝資源保存林、材木遺伝資源保存林、植物群落保護林、特定動物生息地保護林、特定地理等保護林、郷土の森が存在する。またこのほか、ある特定の公共の目的のためにその地域の森林を保全する保安林も存在する。保安林の内訳としては、洪水の防止や水源の確保を目的とする水源かん養保安林、土壌流出を防止するための土砂流出防備保安林、さらに不安定性が高く土砂崩壊の危険性がある地域においての土砂崩壊防備保安林、海岸等において飛来する砂を防ぐための飛砂防備保安林、風を防ぎ農地などを保護するための風害防備保安林、洪水時において水の勢いを緩和する水害防備保安林、高潮や波による塩害などを防ぐための潮害防備保安林、用水路の水源を保護し干害を防ぐための干害防備保安林、鉄道や道路などを雪から守り交通を円滑化するための防雪保安林、霧を防ぐ防霧保安林、雪庇を防いだり雪崩の勢いをそぐためのなだれ防止保安林、落石防止用の落石防止保安林、都市部において火災の延焼を防ぐための防火保安林、魚の繁殖を助けるため海岸林や島嶼部の森林を指定する魚つき保安林、航海の目印となっている航行目標保安林、煙害や汚染空気からの隔壁、及び国民の健康向上を目的とする保健保安林、そして美しい風景を守るための風致保安林がある。

気候と森林

その土地における森林の分布は、主に気候、とくに降水量気温によって変化する。このほか森林においては土壌も重要な要素となるが、土壌そのものが気候の影響を強く受けるため、気候に比べれば森林に対する影響は二義的なものとなる。また気候を区分する際に森林は重要な指標となっており、気候区分の中でも非常によく使用されるケッペンの気候区分においては気候をまず森林の生育できる気候(樹林気候)と生育できない気候(無樹林気候)に分類し、無樹林気候から乾燥度で乾燥帯、温度で寒帯を区分し、樹林気候は気温によって熱帯温帯冷帯(亜寒帯)の3つに分類する。ただし、乾燥帯においては外来河川オアシスなど、降雨によらず水分が供給される地域においては森林は生育しうる。

熱帯の、赤道付近など特に降水量の多い地域には熱帯雨林(熱帯降雨林、熱帯多雨林、ジャングル)(: jungle[13] が広がっている。なかでも南アメリカ大陸アマゾン川流域に広がるアマゾン熱帯雨林セルバとも呼ばれる)は、世界最大の熱帯雨林として知られる。熱帯雨林は主に常緑広葉樹林によって占められる。熱帯雨林は気温が高く物質生産が盛んであるが、分解者が多く多雨であるため土壌中に養分が残らず、有機物のほとんどが植物体に蓄えられていることが特徴であり、このため一度伐採した場合再生は非常に時間のかかるものとなる。ただし物質生産が盛んであるため、森林量は世界で最も大きい樹林となっている。熱帯雨林より降水量の少ない地域は、雨季にのみ葉を繁らせる熱帯雨緑林が広がり、さらにそれより降雨の少ない地域はサバンナと呼ばれ草原が優越するが、樹木も生育できるため疎林が広がる地域も多い。熱帯雨林地区よりやや気温が低く降水量が少ない多雨地域においては、亜熱帯多雨林が広がる。

温帯においては、その中でも温暖な地域において東アジアを中心に広がる照葉樹林と、地中海を中心に夏季少雨地域に広がる硬葉樹林というふたつの常緑広葉樹林帯が存在する。硬葉樹林はその名の通り、夏季の乾燥に対応するために葉が小さく固い木が主となっているのが特徴である。照葉樹林も同様に、葉の表面のクチクラ層が発達しているため葉の照りが強いことからこの名がついている。温帯の中でも気温の低い地域となると、常緑広葉樹林と落葉広葉樹林が混ざり合う温帯混交林が広がるようになり、さらに気温の低い地域においては常緑広葉樹林は姿を消して落葉広葉樹林帯が広がるようになる。落葉広葉樹林は温暖な夏にのみ葉を繁らせるため、夏緑林とも呼ばれる。また、温帯の中でも特に雨の多い地域にひろがる森林は温帯雨林と呼ばれる。

冷帯に入ると、やや温暖な地域においては針葉樹広葉樹の混交する針広混交林地帯となり、寒冷な地域においては針葉樹林が広がるようになる。こうした冷帯の針葉樹林帯はタイガと呼ばれ、ひとつの樹種により森林が形成されることが多いのが特徴である。針葉樹林の多くは常緑であるが、一部に落葉する落葉針葉樹林も存在する。

またこうした気候とは別に、標高が上昇するにつれて気温が低下するため、高山地帯においては低地の森林よりも寒冷地に広がる森林が生育することとなる。高山および寒帯においては樹木の生育しなくなる地点が存在し、これを森林限界と呼ぶ。

人為と遷移

人間の手の全く入っていない森林は原始林、または原生林と呼ばれ、人為の及ばない状況においての本来の森林の状況に最も近いものとなっている。自然に成立した森林は天然林、または自然林と呼ばれる。天然林には原生林のほか、人間が伐採をした後全く手が加わらず、自然のままに再生した天然生林なども含まれる。森林伐採後、植林などを行わず放置して残存する種子から再び森林が再生するのを待つ方法を天然更新、同じく根株を放置してそこから新たな芽が出ることを待つ方法を萌芽更新と呼び、樹種や自然条件によっては植林の代わりにこうした方法を取って森林再生を待つこともある。また、天然林は必ずしも人間の手が入っていないわけではないものも多い。天然林と言えど、たとえば人間がある程度の伐採をしたり、狩猟や採集などで圧力を加えたことで本来の生態系から離れた新しい均衡が保たれているものも多い。たとえば里山などはほぼ天然林であるが、肥料にするための下草の採集や薪炭用としての木材の利用などが定期的に行われ、人間の圧力のもとで新たな均衡が保たれていた。これに対し、木材の生産や治山などの目的で人間が植林を行い成立した森は、人工林と呼ばれる。特に木材生産用の人工林においては単一の樹種が一斉に植えられていることが多く、天然林に比べ生物多様性が少なくなりがちである。また、人工林は人間が目的を持って植えた森林であるため、その目的を十全に果たさせるためには定期的な人間の手入れが必須である。

上記の原生林は一次林とも呼ばれるが、これに対し伐採や山火事などで本来の植生が失われたのち、自然に、または人工的に再生した森林のことを二次林と呼ぶ。二次林は自然状態の場合、まず新たにできた裸地にコケ類が進入し、次いで草原が成立したのち、樹木が侵入して森林の形成が始まる。まず最初に生育する樹木は、生育に多くの光を必要とするため日当たりの良いところを好む陽樹である。陽樹は草本と日照を巡って争うものの背の高い樹木がやがて勝利し、まず陽樹の低木林が形成される。低木林がまず形成されるのは、高木より低木の方が成長が速いためである。しかし低木林においてはいまだに林床に多くの日光が差し込むため陽樹も生育でき、やがて高木が低木を押しのけて成長して陽樹林ができる。しかし、陽樹の高木林がいったん成立すると林床にはあまり光が届かなくなるため、生育に多くの光を必要としない陰樹が林床にて生育するようになり、陽樹と陰樹の混生林が成立する。この場合、光の届かない林床ではもはや陽樹が生育しないため、新たに生育する木は陰樹のみとなる。そして陽樹が寿命を迎え枯死すると、いまだに生育を続ける陰樹のみの森林が成立するというプロセスをたどる。これを遷移と呼ぶ。また、遷移が最終段階に到達した森林を極相林と呼ぶ。ただし極相林はそのまま不変であるわけではなく、樹木の枯死や倒伏などによって更新される。倒伏などによってできた空き地では日当たりがよくなるため、再び陽樹が生育し、以後上記のプロセスをたどる。この場合、倒木を礎としてその上に新たな木が生育する、いわゆる倒木更新が起きることもある。こうして極相林は断続的に更新されていく。


  1. ^ 講談社『暮らしのことば新語源辞典』初版
  2. ^ 三省堂『新明解語源辞典』初版
  3. ^ 「モリ(盛り)と同源の語といわれている」講談社『暮らしのことば新語源辞典』初版
  4. ^ 「遠くから見ると濃い緑が盛り上がって見え、近づいてみると日のさすことがほとんど無い所の意」三省堂『新明解国語辞典』第七版
  5. ^ 密林はジャングル(熱帯雨林)を指していう場合もある。
  6. ^ 「林政学講義」p4-p6 永田信 東京大学出版会 2015年11月20日初版
  7. ^ 「林政学講義」p5 永田信 東京大学出版会 2015年11月20日初版
  8. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p52 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  9. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p37 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  10. ^ 「森と人間の文化史」p109 只木良也 日本放送出版協会 1988年10月20日第1刷
  11. ^ 「26年間で国中ハゲ山 世界的不足で輸入木材も高値」『日本経済新聞』昭和25年10月10日2面
  12. ^ 「流域学事典 人間による川と大地の変貌」p61-62 新谷融・黒木幹男編著 北海道大学出版会 2006年7月25日第1刷発行
  13. ^ ジャングルは狭義には東南アジアの熱帯雨林を指していう。また、広義には熱帯雨林に限らず、密林を意味する語としても用いられる。
  14. ^ 「環境の経済史 森林・市場・国家」p53 斎藤修 岩波書店 2014年6月18日第1刷
  15. ^ a b c http://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_3.html 「世界の森林を守るために 3」環境省 2016年11月23日閲覧
  16. ^ 丸山浩明 (2012-03). “ブラジルのバイオ燃料生産とその課題”. 立教大学観光学部紀要 (立教大学観光学部) 14: 61 - 73. doi:10.14992/00006318. 
  17. ^ a b c http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/22hakusyo_h/all/h32.html  平成22年度 森林・林業白書第1部 第III章 第3節 国際的な取組の推進(1) 林野庁 2016年11月18日閲覧
  18. ^ a b http://watashinomori.jp/study/basic_01.html 「森学ベーシック:1.日本の森・世界の森:世界の森林分布・面積」私の森.jp 2016年11月23日閲覧
  19. ^ http://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_2.html 「世界の森林を守るために 2」環境省 2016年11月23日閲覧
  20. ^ 見山謙一郎 (2009年2月18日). ““森林大国ニッポン”にチャンスあり! 地方銀行が、新たな「森」と「ビジネス」を育てる : この「環境ビジネス」をブックマークせよ!”. ダイヤモンド・オンライン: p. 1. http://diamond.jp/articles/-/6092 2016年1月1日閲覧。 ※ 面積の算出根拠などが違うため統計により数値は異なる。
  21. ^ 日本の森林法では地方自治体などが所有する公有林は民有林に含まれる。
  22. ^ 森林の土地の所有者届出制度”. 林野庁ホームページ (2012年). 2020年9月17日閲覧。
  23. ^ 林地開発許可制度の概要”. 林野庁ホームページ. 2020年9月17日閲覧。
  24. ^ 林地台帳制度の概要”. 林野庁ホームページ (2018年). 2020年9月17日閲覧。





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