森林 森林の動物

森林

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/11 07:08 UTC 版)

森林の動物

森林には、様々な動物が住み、その種類数は、草原など、他の植物群落の形態よりはるかに多いのが普通である。地上生の動物のあらゆる型のものが、木々の枝の間から土壌にいたる空間に生息する。

大型動物の場合、森林の内部は、樹木の枝や幹、下栄えなどがあって見通しが利かず、また隠れるところが多いから、よほど大きな動物でも姿を隠す場所があり、ほとんどの動物は隠れながら行動する。そのため草原のような大きな群れを作るものは少ない。

森林の土壌は、樹木の落葉を集めて、熱帯以外の地域では厚い層をなす。ここには、落ち葉を分解する菌類細菌と共に、それらを分解する働きをになうもの、それらを喰うものなど、様々な土壌動物が生息し、それらはまとめて分解者と呼ばれる。

また、最近では、林冠部に生息する動物相にも関心がもたれている。特に、熱帯雨林の樹上には、地上から離れたところで豊かな動物相があり、様々な動物が活動していることが知られるようになってきた。

森林と降雨

森林に水源を涵養する機能が存在することはよく知られている。これは、雨水が樹冠や森林下部の下草や落ち葉などに滞留し、その後土壌へと浸透し地下水を形成したり直接地表水として河川に流入するため、河川の流量をある程度一定に保つためである。こうした機能に着目し、特に河川の源流部において水源林として森林が保全・整備されることがある。この考えを推し進め、緑のダムと呼ばれる大規模な水源涵養林によって治水の一端を担わせる構想があるが、森林は流水を遮るものではないので豪雨などには対応できない欠点がある。また、森林の浸透能は自然林・人工林ともに大きな差は見られないものの、人間が適切な管理を怠った人工林においては土壌が荒廃し、浸透能が大幅に落ちるとされる[8]。また、森林は降雨を貯蔵する機能だけでなく、葉の上に落ちた降雨を蒸発によって再び空気に戻したり、葉からの蒸散によって再び大気中に水分を戻すなど、降雨を地上に落ちるのを遮断する役割も持っている。特に樹木の生命活動による蒸散の量は大きく、裸地よりも蒸散の量が大きいために、森林がある場合は地面に流れ込む総水量は裸地よりもむしろ少なくなる。森林の水源涵養機能とは、あくまでも水量の平準化の機能のことである。このため、乾燥地においては森林を伐採して蒸発量を抑え、降雨をすべてダムにため込むことが行われることがある[9]

森林と人類

森林は人類にとって非常に有用な空間である。その利用は、安定した自然環境という間接的な利用と、資源産出地としての直接的な利用とに大別される。森林を扱うための学問分野は林学と呼ばれる。

林業

伐採した木をハーベスターで処理する様子

資源産出地として、森林は非常に重要である。森林において樹木を伐採することを産業的には林業と呼び、古来より重要な産業の一つとなっている。森林で得られる資源で最も重要なものは木材である。木材の利用は、建材パルプをはじめとする工業製品の原料としての用材と、木そのものを燃料として燃やす薪炭材としての利用の2つに大別される。かつては全世界において、薪炭材としての利用は普遍的であり、森林は最も重要なエネルギー供給源であったが、化石燃料の使用と電力の普及によって、特に先進諸国においては、薪炭材の利用は急速にすたれ、使用は限定的なものになっている。21世紀においていまだ薪炭材としての利用が多いのは、熱帯を中心とする発展途上国である。これは、電力の普及の遅れによって薪炭を燃料とせざるを得ないためである。しかし近年の急速な人口爆発によって薪炭用の需要が急増し、森林破壊の原因の一つとなっている。工業用材の需要も多く、現代においても製材業・木材工業・製紙業といった木材を原料とする工業の多くは、原料供給地たる森林地帯、または森林の近くの港湾都市などに工場を建設し生産を行うことが多い。こうした用材の搬出は、古くは河川を利用した筏流しが多用されていた。19世紀以降は搬出用の小規模な森林鉄道が各地に敷設され、より奥地までの開発が可能になったが、20世紀後半に入ると森林鉄道は全廃され、かわりにさらに奥地まで自動車の走行可能な林道が整備されることにより、大型トラックによる搬出が主流となった。また、木材生産を目的として伐採後に再び植林が行われ人工林が育成されることは珍しくなく、とくに先進国においては一般的に行われている。

日本においては、特に第二次世界大戦後に木材需要が爆発的に増加。1950年の段階では、自然育成量を加味しても国内の用材林、薪炭林は、向こう26年間で伐りつくされるといった推計も行われていた[10]。このため生産を目的として大規模な単一樹種の植林が行われたが、輸入材の増大と国内林業の不振によって除草間伐除伐などの十分な手入れの行われていない人工林も多い。

熱帯林は樹種が多種多様であるため用材としての利用は遅れ、商業的な林業はコクタンシタンチークラワンマホガニーといった硬木の高級材を選抜的に伐採するものに限られ、薪炭材としての利用が主であったが、近年では冷帯や温帯における森林資源の減少によって熱帯林の用材としての利用も増加しつつある。これに対し、市場に近い温帯林は最も早く開発が進み、植林によって森林資源を再生させた人工林も大きな割合を占める。冷帯林は冷涼な気候の関係で生育できる樹種が少なく、樹種が揃っている傾向があって伐採や輸送が容易であるうえに軟木が多く工業原料に使用しやすいため、大規模な林業開発がしやすく、用材としての利用が大半を占める。

近代化以前は、森林の産業における役割は現代よりさらに大きかった。製鉄業やガラス工業、製塩業といった、燃料を大量に消費する産業はかならず燃料供給地である大森林地帯に立地していた。の生産は日本においてもヨーロッパにおいても森林における最大の産業であり、の生産も地域によっては重要な産業となっていた。さらに、さまざまな木材製品、とくに船舶用の木材は他に代えのきかない素材であり、造船用の木材の確保は初期の森林保護政策の重要な目的のひとつだった。16世紀以降、ヨーロッパでは産業の発展に伴い木材不足が深刻化し、これが森林保護や植林の発展をもたらした。また18世紀イギリスにおいては不足する木材に代わり徐々に石炭が燃料に用いられるようになった。

森林と農村

里山の風景。東京都稲城市坂浜

木材のほかにも、森林からとれる林産品は多岐にわたる。キノコ山菜果物といった植物食糧の採集や、森に生きる動物を狩猟によって獲得するなど、食糧供給源としての役割も小さなものではないが、単一的な食料生産地域として整備されたいわゆるに比べると食料生産効率は落ち、このため農業地域においては森林を伐採して開墾し新しく田畑を開くことが古くからおこなわれており、特に農業地域において森林の面積は狭まる傾向にある。こうした地域においては平地の森林は希少なものとなり、森林の多くは山岳丘陵といった農業に不適な地域にのみ広がっていることが多い。ただし、熱帯地方においては荒廃した土地に樹木を植栽し、その陰で食用植物などを栽培する混栽が行われることがある。こうした混栽農法が最も用いられているものとしてはカカオがある。カカオは陰樹であり、空閑地にそのまま植栽してもうまく育たないため、まず空閑地にバナナヤムイモまたはキャッサバを植え、急速に成長するバナナによって日陰を作り、ヤムイモやキャッサバによって地面の被覆を行い、そのうえでカカオを植栽することで成長しやすくさせる。10年ほど経過してカカオの木が十分大きくなるとバナナを伐採し、カカオ農園が完成するというこの農法は20世紀前半においてガーナで広く用いられ、同国が世界最大のカカオ生産国となる原動力となった。こうした樹木との混栽農法はアグロフォレストリーと呼ばれ、自然破壊を軽減する農法として注目されている。また、森林内の下草や落ち葉なども、近代化以前の社会においては肥料として重要なものであり、飼い葉として家畜を養うための飼料ともなった。こうしたことから近代以前において農村と森林は不可分の関係を持っていることが多く、日本の里山などのように農村の人間活動の影響下で生態系が構築された森林も存在する。

環境その他

環境面での役割としては、上記のとおり水源を涵養する役割のほか、土壌侵食の防止も含まれる。森林の表層土壌浸食防止能力は非常に高い[11]。また、森林は光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する。この量は莫大なもので、地球環境の安定化に森林は大きな役割を果たしている。20世紀後半以降、各地で森林の伐採が進み、特にアマゾン熱帯雨林をはじめとする熱帯林が急速に破壊されているが、この森林の減少は二酸化炭素の吸収量を減らし、地球温暖化を招く大きな原因の一つと考えられている。

こうした生産地や環境保全の役割のほかに、森林浴など人間が癒しを求めて森林へと向かうこともある。その美しさから観光地となっている森林もあり、なかでも屋久島白神山地などの世界遺産に指定されている自然林は多くの観光客を集めている。また、森林を伐採するほかに、上記の木材としての利用や土壌流出の防止など治水機能に着目して、人間により裸地に樹木が植えられ(植林)、新しく森林を育成することも広く行われている。なかでも、森林によって風を防ぐ、いわゆる防風林は海岸沿いや農園地帯などに広く育成されている。日本では各地の海岸沿いに防風林が広くみられ、また北海道東部の根釧台地では人工的に育成され正方形に区画された大規模な防風林が広がっている。農村部において家屋の周辺に樹木をめぐらし風の害を避けることも多く、こうした森を屋敷林と呼ぶ。また、森林が文化的に聖性を帯びることもあり、日本においては特に神社の境内の森林は伐採されずそのまま残されることが普通であり、こうした森林は鎮守の森と呼ばれて長く保護の対象とされ、日本の重要な文化的景観のひとつとなっている。


  1. ^ 講談社『暮らしのことば新語源辞典』初版
  2. ^ 三省堂『新明解語源辞典』初版
  3. ^ 「モリ(盛り)と同源の語といわれている」講談社『暮らしのことば新語源辞典』初版
  4. ^ 「遠くから見ると濃い緑が盛り上がって見え、近づいてみると日のさすことがほとんど無い所の意」三省堂『新明解国語辞典』第七版
  5. ^ 密林はジャングル(熱帯雨林)を指していう場合もある。
  6. ^ 「林政学講義」p4-p6 永田信 東京大学出版会 2015年11月20日初版
  7. ^ 「林政学講義」p5 永田信 東京大学出版会 2015年11月20日初版
  8. ^ 「流系の科学 山・川・海を貫く水の振る舞い」p52 宇野木早苗 築地書館 2010年9月10日初版発行
  9. ^ 「森と人間の文化史」p109 只木良也 日本放送出版協会 1988年10月20日第1刷
  10. ^ 「26年間で国中ハゲ山 世界的不足で輸入木材も高値」『日本経済新聞』昭和25年10月10日2面
  11. ^ 「流域学事典 人間による川と大地の変貌」p61-62 新谷融・黒木幹男編著 北海道大学出版会 2006年7月25日第1刷発行
  12. ^ ジャングルは狭義には東南アジアの熱帯雨林を指していう。また、広義には熱帯雨林に限らず、密林を意味する語としても用いられる。
  13. ^ 「環境の経済史 森林・市場・国家」p53 斎藤修 岩波書店 2014年6月18日第1刷
  14. ^ a b c http://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_3.html 「世界の森林を守るために 3」環境省 2016年11月23日閲覧
  15. ^ 丸山浩明 (2012-03). “ブラジルのバイオ燃料生産とその課題”. 立教大学観光学部紀要 (立教大学観光学部) 14: 61 - 73. doi:10.14992/00006318. 
  16. ^ a b c http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/22hakusyo_h/all/h32.html  平成22年度 森林・林業白書第1部 第III章 第3節 国際的な取組の推進(1) 林野庁 2016年11月18日閲覧
  17. ^ a b http://watashinomori.jp/study/basic_01.html 「森学ベーシック:1.日本の森・世界の森:世界の森林分布・面積」私の森.jp 2016年11月23日閲覧
  18. ^ http://www.env.go.jp/nature/shinrin/index_1_2.html 「世界の森林を守るために 2」環境省 2016年11月23日閲覧
  19. ^ 見山謙一郎 (2009年2月18日). ““森林大国ニッポン”にチャンスあり! 地方銀行が、新たな「森」と「ビジネス」を育てる : この「環境ビジネス」をブックマークせよ!”. ダイヤモンド・オンライン: p. 1. http://diamond.jp/articles/-/6092 2016年1月1日閲覧。 ※ 面積の算出根拠などが違うため統計により数値は異なる。
  20. ^ 日本の森林法では地方自治体などが所有する公有林は民有林に含まれる。





森林と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「森林」の関連用語

森林のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



森林のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの森林 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2020 Weblio RSS