国立国会図書館 国立国会図書館の特色

国立国会図書館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 05:04 UTC 版)

国立国会図書館の特色

資料の収集・整理

世界各国の国立中央図書館は、法律などによって定められた納本制度によって出版者に特定の図書館に出版物を納めることを義務づけ、一国内の出版物を網羅的に収集することを重要な役割としている。

日本の国立中央図書館である国立国会図書館においては、国立国会図書館法が、国内すべての官公庁、団体と個人に出版物を国立国会図書館に納本することを義務づけている[44]。納本の対象となる出版物は、図書、小冊子、逐次刊行物(雑誌や新聞、年鑑)、楽譜地図マイクロフィルム資料、点字資料およびCD-ROMDVDなどパッケージで頒布される電子出版物(音楽CDやゲームソフトも含む)などである[44]。納本を求められる部数は、官公庁では2部から30部までの複数部であり、民間の出版物は1部である[44]

納本以外の資料収集手段としては、寄贈・購入や、出版物の国際交換がある[45]。購入を通じては、古書・古典籍など納本の対象とならないものや、百科事典辞典年鑑など参考図書としてきわめて利用の多い資料の複本、そして学術研究に有用であると判断され選択された外国資料が収集される。国際交換は、他国の国立図書館・議会図書館に対し、納本制度によって複数部が受け入れられた官公庁出版物をおもに提供することにより、交換で入手の難しい外国の官公庁資料等を収集するのに用いられている[46]

こうして国立国会図書館に新たに収集された資料は、一件一件についてその書名、著者、出版者、出版年などの個体同定情報が記述された書誌データが作成される。また国立国会図書館の書誌データには同館独自の国立国会図書館分類表(NDLC)によって分類番号がつけられ、国立国会図書館件名標目表(NDLSH)によって件名が付与されて、目録に登録される。現在では目録の大半はオンライン化されており、インターネット上から検索することが可能になっている。

なお、国立国会図書館の蔵書構築など図書館技術に関する運用は、1948年(昭和23年)9月にGHQ民間情報教育局特別顧問ロバート・B・ダウンズ(イリノイ大学図書館長)によって提出された『国立国会図書館に於ける図書整理・文献参考サーヴィス並びに全般的組織に関する報告』(ダウンズ報告)に基づく面が大きい。図書の整理は、開館当初はダウンズ報告に基づいて、和漢書は日本国内の図書館で一般的な日本十進分類法(NDC)、洋書は世界的に使われるデューイ十進分類法(DDC)によって行われていた[47]。しかし、膨大な蔵書を書架に配架して利用していくうえで十進分類法に不便がみられたため、1963年に国立国会図書館分類表が考案され、1968年に洋書に、1969年に和書に適用された[48]。ただし、和図書についてはそれ以降も書誌データには日本十進分類表による分類番号は付与されており、日本十進分類法を日常に利用しているほかの図書館や一般利用者の便にも備えている。

書誌データの提供

納本制度により、国立国会図書館は原則としてすべての出版物が継続的に揃うことになるため、理論的には国会図書館の編成する自館所蔵資料の目録は、日本で出版されたすべての出版物の書誌情報を収めた目録となる。こうして作成された目録に収められる、全国の出版物に関する網羅的な書誌情報を全国書誌といい、国立国会図書館においては毎週一度、その週に納本制度によって受け入れられた資料の書誌情報が『日本全国書誌』としてまとめられている。

『日本全国書誌』はインターネット上で公開されるほか、冊子体で刊行・頒布される。また、電子情報・データベース化したものが『JAPAN/MARC』として頒布され、CD-ROM版やDVD-ROM版でも販売されている。その基本的な機能は、日本において出版された出版物を検索調査する際の総合的・統一的な索引である。

また、各図書館は、自館で所蔵する資料の目録を作成するにあたって、自館で書誌データを作成せずとも、『日本全国書誌』を利用してコピーカタロギング(書誌情報を複製して自館の目録を作成すること)することができる。これには各図書館の目録作成の労力の軽減、および国内各図書館の間での書誌データの共有というメリットがあるが、国立国会図書館の目録の作成には刊行からタイムラグがあり、新刊の検索に向かないことが欠点として指摘されている。これは、ほかの図書館が新規に受け入れて目録化する資料の多くは新刊書であるためである。このため、公共図書館の多くは『JAPAN/MARC』よりも民間の図書取次会社の作成する書誌データベースを目録作成に用いることが多く、コピーカタロギングのための全国書誌としての役割はあまり活用されていない。

また、国立国会図書館は全国書誌の作成とともに、開館以来『雑誌記事索引』を作成・頒布している。これは国内の主要な雑誌の収録記事を目録化したもので、索引の範囲はおもに学術誌など調査上の利用に対する要求が大きい雑誌に限定されているものの、通常の目録では検索されにくい雑誌記事の目録として貴重なものである。

蔵書

国立国会図書館の所蔵する資料の基礎となる部分は、戦前の帝国議会両院付属図書館が議会の審議を助けるために収集した資料と、当時の日本唯一の国立図書館であった帝国図書館の蔵書の2つから成り立っている。特に帝国図書館の蔵書は出版法の納本制度に基づいて網羅的に収集された戦前の和図書や、貴重な古書洋書などを含み、きわめて価値が高い。

国立国会図書館の成立以降は一国の網羅的な収集と全国書誌の作成を目的とした本格的な納本制度が導入されたため、この図書館には原則として日本で出版されたすべての出版物が所蔵されている。外国資料については、国際交換や購入により、学術研究や参考調査に有用な人文・社会科学資料や、科学技術資料、日本関係資料などを中心に収集している。

国会図書館の蔵書の中には、旧帝国図書館時代を含め図書館がまとまって受け入れた特色あるコレクションが含まれる。これらの特殊コレクションは、資料的に価値の高いものが多い。代表的なコレクションとして、帝国図書館から引き継いだ旧藩校蔵書、徳川幕府引継書類、本草学関連の古書からなる伊藤文庫・白井文庫や、戦後の国会図書館が議会のための図書館であるという性格から重点的に受け入れた近代政治史関連史資料からなる憲政資料、国内外の議会・法令関係資料、支部上野図書館で旧蔵していたバレエシャンソン関連資料の蘆原英了コレクション、出版文化史資料を中心とする布川文庫(布川角左衛門旧蔵書)、国語学者の亀田次郎の収集した国語学関係書(亀田文庫、約6,900冊)などがある。また、戦前に発禁処分を受けた書籍・雑誌もコレクションに含まれ、旧帝国図書館所蔵の発禁図書は一般資料の一部として、旧内務省保管の発禁図書は貴重書扱いのため一定の制限下で閲覧に供されている。

2021年度末の統計によれば、国立国会図書館の所蔵資料は東京本館・関西館・国際子ども図書館の合計で、図書1,192万7,978冊、雑誌・新聞1,993万9,341点、図書形態以外の資料(マイクロフィルムや地図、楽譜、映像資料、録音資料、磁気記録資料、絵画・写真、点字資料など)1,435万211点である[3]


  1. ^ 議員の調査研究に資するため、別に定める法律により、国会に国立国会図書館を置く。
  2. ^ この法律により国立国会図書館を設立し、この法律を国立国会図書館法と称する。
  3. ^ 会計検査院図書館、人事院図書館、内閣法制局図書館、内閣府図書館(本府庁舎と中央合同庁舎第4号館に分かれている)、日本学術会議図書館、宮内庁図書館、公正取引委員会図書館、警察庁図書館、金融庁図書館、消費者庁図書館、総務省図書館、総務省統計図書館、法務図書館、外務省図書館、財務省図書館、文部科学省図書館、厚生労働省図書館、農林水産省図書館(農林水産政策研究所分館・農林水産技術会議事務局つくば分館の2分館あり)、林野庁図書館、経済産業省図書館、特許庁図書館、国土交通省図書館(国土技術政策総合研究所分館・国土地理院分館・北海道開発局分館の3分館あり)、気象庁図書館、海上保安庁図書館(海洋情報部分館の1分館あり)、環境省図書館、防衛省図書館。
  4. ^ 当初は200人程度だったが、後に400 - 800人 - 1000人程度に段階的に拡大している。
  5. ^ 当初は16時以降のみだったが、2021年6月1日以降は9時30分 - 10時30分も同様の処置を行っている。
  6. ^ 国立国会図書館デジタルコレクション
  7. ^ 近代デジタルライブラリー(2016年5月3日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  8. ^ アーカイブされたコピー”. 2010年2月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年2月11日閲覧。 近代デジタルライブラリー - 国立国会図書館
  9. ^ インターネット資料収集保存事業トップ”. 国立国会図書館. 2023年7月23日閲覧。
  10. ^ 2002年に「インターネット資源選択的蓄積実験事業」を試験的に立ち上げると[57]、2006年には「インターネット情報選択的蓄積事業」に改称し事業化した[58]
  11. ^ 当館の言う「公的機関」とは、国、自治体、国公立大学などと位置づける。国とは国の機関、それに準ずる独立行政法人等や国立大学法人)、自治体とは地方公共団体(都道府県、政令指定都市、市町村)とそれに準ずる公立大学法人等の法人と分類される。
  12. ^ 近年は、12月27日頃~1月6日頃が休館日になっている。
  13. ^ 国立国会図書館資料利用規則第31条で複写範囲を規定している。
  14. ^ 食堂の再開後は、売店に移動して販売を継続している。






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