京都朝鮮学校公園占用抗議事件
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法的責任の追及
刑事事件
逮捕・起訴
2010年(平成22年)8月10日、京都府警は本事件に関して西村・荒巻・川東他1名、計4名を威力業務妨害などの容疑で逮捕するとともに桜井誠在特会会長の自宅ほか12か所を捜索し、パソコンなどの資料を押収した[53][54]。また8月27日には本事件に参加した他の7名も組織犯罪処罰法違反容疑などで書類送検されたが[3]、西村ら4名に比べて関与の程度が薄いことを理由に9月1日付で起訴猶予処分とされた。4名は同日付で起訴された[55]。
その後、西村・荒巻・川東の3名は徳島県教組業務妨害事件に関して勾留中に再逮捕され[56][57]、9月29日付でこちらも起訴された[58]。そのためこの3人については当事件と徳島の事件とを併合して京都地裁で審理することになった。
公判
公判ではチーム関西による侮辱罪および威力業務妨害罪、Cによる器物損壊罪の成否が争点となった。西村らは、
- 侮辱罪の規定は明確性の原則に反して違憲無効である。仮にそうでなくともこれを政治的言動に対して適用することは違憲である。
- 本事件での西村らの行為は相当な目的による相当な態様の抗議活動であり、法益侵害の程度が低いものであるから、正当な政治的表現行為として違法性がない。
- 川東による配線コード切断は政治的表現行為の一環である上、危険な状況を解消するための緊急避難行為であるから違法性が阻却される。
- 侮辱罪の構成要件は明確であり、また政治的目的を有するからといって公然と人を侮辱する行為が全て許されることになるわけではない。
- 被告人らは約46分間にわたって拡声器を使うなどして被害者らに対する侮蔑的な言辞を大音量で怒号した上、被害者らの所有物を移動させてその引取りを執拗に要求するなどの実力行使に及んで喧噪を生じさせたものであり、その行為に許容される余地はない。
- 配線コードの切断を正当な政治的表現とみる余地はないし、配線コードの切断が公園利用者の危険除去のために緊急に必要であったとは言えない。
と判断し、侮辱罪・威力業務妨害罪・器物損壊罪の成立を認めた。また徳島の事件についても西村・荒巻・川東を有罪とした。
その上で、犯行態様が悪質であるにもかかわらず被告人らには反省の様子が見られないと指摘しつつも、4名とも見るべき前科がなく今後は活動手法を改める旨述べているという事情も認められるとして、2011年(平成23年)4月21日、西村を懲役2年・執行猶予4年、荒巻・川東を懲役1年6月・執行猶予4年、Dを懲役1年・執行猶予4年とする判決を言い渡した[5]。
A・B・Cは控訴せず有罪判決が確定したが、Dは「自身の言動は侮辱罪などを構成するほどのものではなく、A・B・Cによって罪にあたる言動がなされることは認識していなかった」などの理由を挙げて無罪を主張し、大阪高裁に控訴した。しかし大阪高裁は同年10月28日、Dが以前からAと共同で街宣活動を行っていたことから、DはAが日常的に用いていた侮蔑語を発したり実力行使に及んだりすることを予め認識した上で当事件に臨んでいたと認定し、共犯としての罪責を免れないとしてDの控訴を棄却した[12]。Dはさらに上告したが、最高裁は2012年(平成24年)2月23日付で上告を棄却する決定を下し、これによりDの有罪判決も確定した[59]。
初級学校側
一方、在特会の告発などにより、初級学校に対する都市公園法違反容疑での捜査も進められた。2010年(平成22年)8月27日には初級学校の前校長が、京都市が管理する公園を無許可で占用したとして、京都区検察庁により同法違反の容疑で書類送検された[3][10]。前校長は9月1日に略式起訴され[55]、9月9日付で京都簡裁から罰金10万円の略式命令を受けた[10][60]。
民事訴訟
2010年(平成22年)6月28日、初級学校を運営する学校法人京都朝鮮学園は本事件・1.14デモ・3.28デモへの参加者らを被告とする民事訴訟を京都地裁に提起した。
原告は本事件・1.14デモ・3.28デモがいずれも不法行為にあたり、それぞれ1000万円の損害を原告に与えたとした上で、全ての活動に参加または関与した在特会(団体)・主権会こと西村・荒巻・松本修一の1団体6名に3000万円を、1.14デモと3.28デモにのみ参加したFとほか1名に2000万円を、それぞれ連帯して賠償するよう求めた。また同時に被告らによる初級学校への面談の強要や学校周辺での街宣・ビラ配布、それらの活動に対するAの父親による自動車の提供を禁止する内容の差止め請求を併せて行った[61]。
原告側は京都弁護士会の弁護士を中心とする98名の弁護団を組み[62]、被告側は徳永信一弁護士を代理人に立てた。
1審の京都地裁は2013年(平成25年)10月7日、原告の主張を認め、街宣禁止(移転後の所在地を中心とした半径200メートル以内も含めて)と1226万円3140円(一度目が554万7710円、二度目が341万5430円、三度目が330万円)の賠償(仮執行宣言付き)を在特会・主権会のメンバー8人(西村修平など、ただし、両方に属していない者もいる)に命令[10][63][64]。判決文の中では、裁判所が人種差別撤廃条約の直接の名宛人として国際法上の義務を負う、との解釈を示した[10]。また、賠償金の算定根拠としては、無形損害の評価にあたって日本国政府が留保している人種差別撤廃条約第4条のa,bも適用され、それをもとに高額の賠償金を算定した[10]。被告側は21日、判決を不服として控訴した[65]。
2014年7月8日、大阪高裁は1審判決を支持し、被告側の控訴を棄却[66][67]。高裁判決文の中では、地裁判決の人種差別撤廃条約の直接適用を否定し、間接適用説から判決理由が出された[6]。また、判決では「民法に基づき、具体的な損害が発生して初めて賠償を科すことが可能」であり、現行法ではヘイトスピーチにおける損害賠償及び街宣差し止めは具体的な被害者及び具体的な損害を立証することが必要とし、人種差別撤廃条約第4条を理由とした高額の賠償金支払いを命じた京都地裁の論拠を否定したものの、京都地裁が決定した賠償金額はそのまま追認した[6]。
事実認定では「本件学校も、本件公園の使用に際して届出や許可申請をしたことはなかった。」「本件公園は、都市公園法の規制が適用される公の施設であり、サッカーゴール等の物件を常時設置してこれを占用することは、京都市長の許可がない限り違法である。」「平成21年5月頃から、京都市に対しては、複数の近隣住民から、本件学校の本件公園の使用に関する苦情が寄せられ始めた。その内容は、本件学校が本件公園を校庭として使用していることや、住民が使用しようとした際に本件学校関係者と言い争いになったこと等を訴えるものであった。 」「同年10月4日にも京都市から許可を得ることなく本件公園で運動会を行い、これに対しても、違法駐車や放送の音量、また酒類の販売や飲酒がされていたことについて近隣住民から苦情が寄せられた。」と朝鮮学校による不法占拠や近隣住民とのトラブルの存在が認められたものの、 「控訴人らは、本件活動は、仮に差別的な目的を併有していたとしても、朝鮮学校による公園の不法占拠を糾弾し、その継続を阻止して周辺地域の法秩序を回復するという目的に基づくものであり、(略)主として公益を図る目的であった旨主張する。しかし、本件活動は、本件学校が無許可で本件公園を使用していたことが契機になったとはいえ、本件発言の内容は、本件公園の不法占拠を糾弾するだけでなく、在日朝鮮人を劣悪な存在であるとして嫌悪・蔑視し、日本社会で在日朝鮮人が日本人その他の外国人と共存することを否定するものであって、(略)主として公益を図る目的であったということはできない」といった文章も追加された[6]。
7月17日、被告側は判決を不服として最高裁へ上告した[68]。
2014年12月9日、最高裁第三小法廷は被告側の上告を棄却。1審・2審判決が確定した[69][70]。
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