ユーゲントシュティルとは? わかりやすく解説

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ユーゲント・シュティール

(ユーゲントシュティル から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/05 03:59 UTC 版)

雑誌『ユーゲント』表紙(1896)

ユーゲント・シュティール (Jugendstil)またはユーゲントシュティール様式または青春様式 は、1896年に刊行された雑誌『ユーゲント』(Die Jugend) に代表されるドイツ語圏の世紀末美術の傾向を指す。ユーゲントは若さ、シュティールは様式を意味するドイツ語で、アール・ヌーヴォーと意を同じくし、「青春様式」と表記されることもある。19世紀末から20世紀の初頭にかけて展開し、絵画や彫刻のほかにも、建築、室内装飾、家具デザイン、織物、印刷物から文学・音楽などに取り入れられた。

アウグスト・エンデルらによって、この様式はベルリンやミュンヘンで広く人々の心を掴んだが、ヒトラーによって退廃芸術として弾圧された[1]

概要

19世紀末頃になると新古典主義などに代表される歴史回帰・折衷様式は「悪趣味」と言われるようになり、芸術家たちはそれまでにない新しいスタイルを求めるようになった。フランツ・フォン・シュトゥックらによって1892年ミュンヘン分離派が結成され、旧来の芸術を批判し新たな芸術を志向する活動が展開される。この運動はその後ベルリンオーストリアにも波及し、ベルリン分離派1899年結成)やウィーン分離派1897年結成)の活動につながった。

当時ドイツ世紀末芸術の中心地であったミュンヘンで刊行された『ユーゲント』は、イラストレーションの多い大衆的な雑誌であった。石版刷りの斬新な表紙や都会的で若々しい感覚のイラストレーションが評判になり、爆発的成功を収めた。ここから「ユーゲント・シュティール」(青春様式)という言葉が生まれた。やがてミュンヘンやベルリンを中心にした若い芸術家による芸術運動の傾向全体を指して「ユーゲント・シュティール」と呼ぶようになった。

1899年には、ヘッセン大公であったエルンスト・ルートヴィヒの招聘によりダルムシュタットに芸術家村「マチルダの丘」が形成され、ドイツ語圏におけるユーゲント・シュティール運動の中心的役割のひとつを担った。

特徴

ユーゲント・シュティールは、「構成と装飾の一致」を理念とし、美や快楽と実用性を融合させることを主たる目的としていた。

美術・工芸デザインに見られるユーゲント・シュティールは、動植物や女性のシルエットなどをモチーフとし、柔らかい曲線美を特徴とする。 一方、直線平面を強調し、やや左右非対称の幾何学的な模様を使用する傾向がある。ユーゲント・シュティールの建築は、簡潔で機能を重視した形体が重んじられる一方、一度限りの芸術性、唯一無二のデザインが尊重される。そのため、「装飾過多」「貴族主義」などの批判を受けることがある。

ユーゲント・シュティールへの影響としては、日本浮世絵フランス後期印象派があげられる。また、イギリスの新しい工芸運動「アーツ・アンド・クラフツ」の動きからも強い影響を受けている。

代表的な作家

ダルムシュタット・芸術家村アトリエ

また、ウィーン分離派の芸術家たちも、ユーゲント・シュティールの動向に含めて論じられる。

その他

  • 1897年から1914年までドイツ租借地だった青島には、ドイツ総督官邸(現青島迎賓館中国語版、1907年竣工)などの典型的なユーゲント・シュティール様式の建築が残っている。
  • 日本でもドイツ出身の建築家ゲオルグ・デ・ラランデ(Georg de Lalande, 1872年-1914年)などがユーゲント・シュティール風の作品を造った。関東大震災で倒壊したり、その後、取壊されたものが多く、日本国内では、1904年に建てられた神戸市風見鶏の館(日本の重要文化財に指定)が残っている。ゲオルグ・デ・ラランデの横浜時代の事務所にいた、ヤン・レッツェル(Jan Letzel, 1880年-1925年)も、ユーゲント・シュティール色の濃い建築を造っていた。

ギャラリー

「ユーゲント・シュティール」を代表するポスター画家、イラストレーターの作品

脚注

  1. ^ 戸谷英世・竹山清明『建築物・様式ビジュアルハンドブック』株式会社エクスナレッジ、2009年、156頁。 

主な日本語文献

外部リンク




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