国税庁 財政

国税庁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/28 09:10 UTC 版)

財政

2022年度(令和4年度)一般会計当初予算における国税庁所管の歳出予算は6254億1380万2千円[2]。財務省が所管する一般会計予算31兆1688億3965万8千円に占める割合は約2.01%である。ただし、財務省予算から国債費24兆3392億8486万5千円及び予備費(新型コロナウイルス感染症対策予備費を含む。)5兆5000億円を除くと47.1%になる。科目別の内訳は、国税庁共通費が5555億4927万9千円、国税庁施設費が30億3766万8千円、税務業務費が611億1885万円、国税不服審判所が46億9717万6千円、独立行政法人酒類総合研究所運営費が10億1082万9千円となっている。

職員

一般職の在職者数は2020年7月1日現在、54,587人(男性41,941人、女性12,646人)である[24]。定員は省令の財務省定員規則に55,969人(2022年9月30日までは、56,875人)と規定する[1] と定められている。

職員の競争試験による採用は主に国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)、同(大卒程度試験)、国税専門官採用試験及び税務職員採用試験の合格者の中から行われる。いずれの試験も人事院が実施機関である。国家公務員採用総合職試験について、国立大学は帝国大学、私立大学は早慶(大蔵国税三田会等[25])が多い(「公務員試験」の項も参照)。2019年度(令和元年度)の採用実績(2020年(令和2年)4月1日付採用)[26] によると、総合職試験合格者からの採用者数は15人で、区分別内訳は院卒(行政)2人、院卒(化学・生物・薬学)2人、院卒(農業科学・水産)2人、大卒(政治・国際)1人、大卒(法律)4人、大卒(経済)2人、大卒(工学)1人、大卒(農業農村工学)1人、大卒(教養)1人となっている。

採用実績

国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)、同(大卒程度試験)の合格者からの採用(事務系)にあたり、“「人間力」重視の採用を行っている結果、出身大学(院)も多様”[27] となっている。平成20年以降、平成31年まで24大学(院)から97名を採用している。なおこの数値は事務系のみのものである。技術系については同様のデータは公表されていない。このデータは、平成31年(2019年)度採用までのものであり2021年5月現在、それ以降の更新がされていない。

国公立大学 北海道大学東北大学東京大学一橋大学東京外国語大学千葉大学金沢大学信州大学名古屋大学京都大学大阪大学神戸大学岡山大学広島大学九州大学大阪市立大学
私立大学 慶應義塾大学早稲田大学上智大学中央大学東京理科大学明治大学立命館大学同志社大学

令和3年時点において、国税庁がマイナビ2022で公開している採用情報を下記に記載する[28]

採用年度 総合職
2017年度 12名
2018年度 13名
2019年度 12名
2020年度 15名
2021年度[29] 16名
総合職試験【事務系】採用実績(学校)
東京大学、京都大学、中央大学、神戸大学、慶応大学、大阪市立大学、大阪大学、北海道大学、慶応大学大学院、名古屋大学大学院 ほか

2020年(令和2年)4月1日付で、国税専門官試験からは1,151人、税務職員採用試験からは767人を採用した。また、国税庁経験者採用試験(国税調査官級)[注釈 2] で197人を採用した[26]

国税庁職員は一般職国家公務員なので、給与一般職の職員の給与に関する法律(一般職給与法)によって規律される。俸給表は他省庁の一般職職員と異なり税務職俸給表が適用される。これは国税庁に勤務し、租税の賦課及び徴収に関する事務等に従事する職員に適用する俸給表である(人事院規則九―二第3条第1項)。ただし、内部部局に勤務しとくに指定を受けていない者(同規則第3条第1号)や幹部職員(第2・3号)および行政職俸給表(二)の適用を受けるもの(第4号)などには適用されない。国税実査官、国税調査官又は国税査察官が国税通則法の規定に基づく調査、検査又は犯則の取締りの業務で人事院の定めるものに従事したときは特殊勤務手当として犯則取締等手当が支給される(人事院規則九―三〇第28条の5第1項第6号)。金額は業務に従事した日一日につき550円である(同条第2項第1号)。

職員労働組合の概要

国税庁及びその地方支分部局の職員には、労働基本権のうち争議権と団体協約締結権が国家公務員法により認められていない。団結権は保障されており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法第108条の2第3項)。

現在、職員団体としては国税労働組合総連合(略称:国税労組)、全国税労働組合(全国税)および沖縄国家公務員労働組合(沖縄国公労)全税支部が活動している。国税労組は国税局ごとに組織された単一労働組合の連合体で、道国税、東北国税、関信国税、国税東京、北陸国税、名古屋国税、大阪国税、四国国税、福岡国税、熊本国税および沖縄国税の12単組で構成されている。全国税は国税局ごとに、複数の支部によって対応する「地方連合会」を作る形式をとっている。沖縄国公労全税支部は沖縄国税事務所のみに組織をおく。

加盟単産は国税労組および沖縄国公労(全税支部)は国公連合、全国税は国公労連となっている。組織人員は2011年度(平成23年度)の労働組合基礎調査によると国税労組が3万1795人、全国税は379人となっており、前者が絶対的多数派の地位にある。国税労組は他財務省関係機関の連合系労組のとともに協議会の全大蔵労働組合連絡協議会(全大蔵労連)を構成している。全国税はこれに相当する組織として全税関と大蔵国公を構成する。

職員労働組合の沿革

第二次世界大戦の終結から間もない1946年(昭和21年)、日本の労働運動の全般的な高揚を背景に、2月の東京財務局における東京財務職員組合を発端として、国税部門における労働組合の結成が相次いだ。5月16日には国税職員の最初の全国的労組である全国財務職員組合連合会(全財)が結成された[30]。全財は1947年(昭和22年)1月に単一組合に改組し、略称は引き継ぎつつ正式名称も全国財務労働組合に改めた。全財は全国官庁労働組合協議会(全官労)の中核労組として、1947年(昭和22年)の二・一ゼネストや1948年(昭和23年)の3月闘争および7月闘争など急進的な官公庁労働運動に参加し、1947年(昭和22年)2月には大蔵当局と労働協約を調印した。

7月闘争を契機として国公労働者からスト権が剥奪されるのに前後して、全財では執行部の方針を左翼的としてこれに批判的な勢力が強まった。全財再建同盟が1948年(昭和23年)7月に結成されたほか、関東、東北、山陰等の諸支部の脱退が相次ぎ、1949年(昭和24年)2月8日、脱退支部は新たな全国組織である日本財務職員労働組合協議会(日財労)を結成するに至った。分裂後の組合員数は全財が3万8000人、日財労が1万6000人であった[31]。しかし、1949年(昭和24年)夏の総定員法による大量馘首を経て、税務職員労組の分裂状態を克服する機運が高まり、1950年(昭和25年)1月25日、全財と日財労は再統一して日本財務職員労働組合連合会(日財労連)を結成した。また1949年(昭和24年)12月に全官公から分裂して結成された日本官公庁労働組合協議会(官公労)に加盟した。1953年(昭和28年)4月26日、日財労連は全国税職員労働組合連合会(全国税)に改称し、1958年(昭和33年)12月24日には組織を単一化、現在の名称である全国税労働組合に改称した。

1962年(昭和37年)から1963年(昭和38年)にかけて、1962年(昭和37年)5月の関東信越国税局を皮切りに、全国各地の国税局で全国税から脱退し、第二組合を結成する動きが急速に進んだ。発生した第2組合群は1962年(昭和37年)10月29日に全国組織として国税労働組合全国会議を結成した[32]。全国税から国税会議系へ移行する動きは進行し、全国税は少数派組合へ凋落していった。全国税は総評に加盟していたが、国税会議は系列の全官公へ加盟して同盟に接近し、1977年(昭和52年)には同盟に正式加盟した[33]。このとき、国税会議の組合員数は2万7000人に達していた。1960年代から1970年代の組合勢力の激変の背後には、大蔵省・国税庁当局による全国税組合員を対象とした切り崩し工作と第二組合の育成があったことが指摘されている。全国税はそのような認識から、「勤務条件に関する行政措置の要求」(国公法第86条)の制度を利用して、人事院に対し当局に脱退工作を止めさせるよう「団結阻害行為[注釈 3] の排除」を要求したものの、人事院の調査ではそれを裏付ける証拠は見つからず、棄却判定が下された。当時大蔵官僚だった秦郁彦は1962年(昭和37年)から1963年(昭和38年)にかけて、「遠山修審議官を指揮官とする庁をあげての切り崩し工作が成功して壊滅状態になった」「説得工作にあたっては……不当労働行為の口実を与えないよう細心のルールでのぞんだという」と著書で記している[34]

労戦再編の最終局面にあった1989年(平成元年)10月15日、国税会議は協議会に改組して名称を現在の国税労働組合総連合に改め、日本労働組合総連合会(連合)の結成に参加した。一方、全国税は上部組織の国公労連とともに全国労働組合総連合(全労連)に参加した。

不祥事

障害者雇用、最多水増し

2018年8月28日、菅義偉官房長官は、中央省庁の障害者雇用の水増し数を発表、全省庁水増し3,460人中、国税庁は最多の1,022.5人に上った[35]

送別会参加、新型コロナウイルス感染

2021年7月、国税庁課税部の職員のべ20名弱が7月6日~7月9日に蔓延防止等重点措置発令中の東京都内で開催された複数回の最長2時間半の送別会に参加、うち20代~40代の7名が新型コロナウイルス感染症に感染した[36]


注釈

  1. ^ 財務省設置法第26条第3項に「国税庁監察官は、第一項の規定による職務以外の職務を行ってはならない。」と規定する。
  2. ^ 大学等を卒業した日又は大学院の課程等を修了した日のうち最も古い日から起算して8年を経過した者が対象
  3. ^ 民間労働法制における不当労働行為に相当
  4. ^ 当時は法人課税課ではなく法人税課。

出典

  1. ^ a b 財務省定員規則(平成13年1月6日財務省令第3号)」(最終改正:令和4年3月25日財務省令第5号)
  2. ^ a b 令和4年度一般会計予算 (PDF) 財務省
  3. ^ 第5国会衆議院内閣委員会会議録20号p12昭和24年05月13日 池田国務大臣(大蔵大臣)の修正案の趣旨説明
  4. ^ 国税審議会令(平成12年政令第278号第4条
  5. ^ 国税審議会委員名簿 令和2年6月25日現在(敬称略)(最終閲覧日:2021.2.23)
  6. ^ researchmap 田近栄治 (最終閲覧日:2021.2.23)
  7. ^ 教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  8. ^ 専任教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  9. ^ 執筆者プロフィール (最終閲覧日:2021.2.23)
  10. ^ 文芸創作学科 教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  11. ^ 380年を超える歴史、14代の伝統(最終閲覧日:2021.2.23)
  12. ^ 研究者総覧(最終閲覧日:2021.2.23)
  13. ^ 税務経営情報ネット「国税庁幹部の異動発令、新長官は川北力理財局長」税務関連情報 -2010年08月02日(最終閲覧日:2021.3.1)
  14. ^ 新任代表執行役の略歴(最終閲覧日:2021.2.23)
  15. ^ PROFILE(最終閲覧日:2021.2.23)
  16. ^ 研究者情報(最終閲覧日:2021.2.23)
  17. ^ 慶應義塾研究者情報データベース(最終閲覧日:2021.2.23)
  18. ^ 手島麻記子プロフィール(最終閲覧日:2021.2.23)
  19. ^ 中空麻奈 略歴(最終閲覧日:2021.2.23)
  20. ^ researchmap 三村 優美子 (最終閲覧日:2021.2.23)
  21. ^ 吉村 典久 教授(租税法、国際租税法) (最終閲覧日:2021.2.23)
  22. ^ researchmap 渡辺 哲 (最終閲覧日:2021.2.23)
  23. ^ 略歴 (最終閲覧日:2021.2.23)
  24. ^ 一般職国家公務員在職状況統計表(令和2年7月1日現在)
  25. ^ 「最強の学閥パワーを解剖する 慶應義塾の人脈と金脈」、p133、『文藝春秋』2023年11月号
  26. ^ a b 国税庁 「第3部第1章第2節 : 任用及び採用試験」『第69回 : 事務年報 - 令和元年度』 2021年3月、pp.89-90。
  27. ^ 国税庁等について 採用情報 総合職試験(事務系)採用実績
  28. ^ 国税庁採用データ マイナビ2022 - ウェブアーカイブ(ウェイバックマシン、2021年3月3日)
  29. ^ マイナビ2023 国税庁 採用実績 総合職試験【事務系】
  30. ^ 国公労連 「国公労働運動の歴史(国公労働運動50年史年表から抜粋)」 京都国公
  31. ^ 法政大学大原社会問題研究所 「第2部第2編第7章 全国財務労働組合」『日本労働年鑑 : 第23集 - 1951年版』 時事通信社、1951年1月
  32. ^ 法政大学大原社会問題研究所 「大原クロニカ 『社会・労働運動大年表』解説編 国税会議(国税労働組合全国会議)」 2012年9月6日閲覧。
  33. ^ 「同盟……77年には、それまでも事実上その傘下にあった全日本紙パルプ・紙加工産業労働組合総連合(紙パ総連合)約2万9000人、国税労働組合全国会議(国税会議)約2万7000人等を正式加盟させることで、形のうえでは傘下組合員数を約1,000人増加させた」(法政大学大原社会問題研究所編著 「第2部I 労働組合の組織現状と組織運動」『日本労働年鑑 : 第50集 - 1980年版』 労働旬報社、1979年11月)
  34. ^ 秦郁彦『官僚の研究』(講談社、1983年)p.239。川村裕三『ものがたり公務員法』(日本評論社、1997年)がp.177で引用。
  35. ^ 「27機関で3460人水増し 最多は国税庁」 - 【産経新聞】2018年8月28日付
  36. ^ 「国税庁職員 3人以上の飲み会に参加 7人が感染」 - 【NHK】2021年7月13日付
  37. ^ a b c "人事異動(令和5年7月4日発令)" (PDF) (Press release). 財務省. 4 July 2023. 2023年8月19日閲覧
  38. ^ [1]
  39. ^ 商工中金 役員異動(pdf)
  40. ^ [2]
  41. ^ 「国家公務員法第106条の25第1項等の規定に基づく国家公務員の再就職状況の報告(平成28年10月1日~同年12月31日分)」 内閣官房内閣人事局
  42. ^ 「人事、信金中央金庫」 日本経済新聞2017/5/18 17:05
  43. ^ [3] 株式会社シグマクシス






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