にさんか‐けいそ〔ニサンクワ‐〕【二酸化×珪素】
二酸化ケイ素
二酸化ケイ素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/11 10:24 UTC 版)
二酸化ケイ素 | |
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二酸化ケイ素の試料
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Silicon dioxide |
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別称
石英、シリカ、無水ケイ酸
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識別情報 | |
ECHA InfoCard | 100.028.678 |
E番号 | E551 (pH調整剤、固化防止剤) |
KEGG | |
日化辞番号
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CompTox Dashboard (EPA)
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特性 | |
化学式 | SiO2 |
外観 | 白色の粉末 |
密度 | 2.648 (α-石英), 2.196 (アモルファス) g·cm−3 [4] |
融点 | 1713 °C, 1986 K, 3115 °F (アモルファス[4](p4.88)) |
沸点 | 2950 °C, 3223 K, 5342 °F [4] |
水への溶解度 | 0.012 g/100 mL ( °C) |
磁化率 | −29.6·10−6 cm3/mol |
熱伝導率 | 12 (|| c-axis), 6.8 (⊥ c-axis), 1.4 (am.) W/(m⋅K)[4](p12.213) |
屈折率 (nD) | 1.544 (o), 1.553 (e)[4](p4.143) |
危険性 | |
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |
NIOSH(米国の健康曝露限度): | |
PEL
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TWA 20 mppcf (80 mg/m3/%SiO2) (amorphous)[5] |
REL
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TWA 6 mg/m3 (アモルファス)[5] Ca TWA 0.05 mg/m3[6] |
IDLH
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3000 mg/m3 (アモルファス)[5] Ca [25 mg/m3 (クリストバライト, 鱗珪石); 50 mg/m3 (石英)][6] |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
二酸化ケイ素(にさんかけいそ、英語: silicon dioxide)は、化学式SiO2で表されるケイ素の酸化物で、地殻を形成する物質の一つとして重要である。シリカ(英語: silica[7])、無水ケイ酸、ケイ酸、酸化シリコンとも呼ばれる。純粋な二酸化ケイ素は無色透明であるが、自然界には不純物を含む有色のものも存在する。代表的なシリカ鉱物は石英(英語: quartz、水晶)であるが、それ以外にも圧力、温度の条件等の違いにより多様な結晶相(結晶多形)が生成され、自然界では長石類に次いで産出量が多い。マグマの粘性を左右する物質でもある。鉱物以外では植物 (イネ・スギナ・サトウキビなど) にも含有され、生体内にも微量ながら含まれている。
性質
二酸化ケイ素は石英などの鉱物に代表される結晶性二酸化ケイ素と、シリカゲル・未焼成の珪藻土や生物中に存在する非結晶性 (アモルファス) 二酸化ケイ素の2つに大別される。結晶性二酸化ケイ素は共有結合結晶であり、ケイ素原子を中心とする正四面体構造が酸素原子を介して無数に連なる構造をしており、圧力や温度などの生成条件の違いにより様々な形(結晶多形)をとる。
結晶多形
二酸化ケイ素は温度や圧力をかけると結晶構造が変化する(相変態を起こす)。結晶構造などは次の一覧項で説明する。
- 温度を上昇させた時の相変化
- 常温常圧下ではα–石英が安定だが、二酸化ケイ素は温度変化によって相変化を起こす。
- 以下に示す温度は常圧での温度であり、溶剤や圧力等により変化する[8][9]。
- β–石英は高純度であればβ–トリディマイトを経由せずにβ–クリストバライトに直接相転移する[10]。
- 実際にはβ–石英を870℃以上に加熱しても、通常トリディマイトやクリストバライトに変化せず、準安定状態を保ったまま最終的に融解する[11]。これは相転移の活性化エネルギーが高いためである[注 1]。
- 上記の理由で工業的にもβ–石英の融解温度は転移温度以上に設定するが、融点未満とすることが多い (例:1550℃)。これは工業原料は粘土やアルカリといった不純物が含まれており、これらが石英の融解を補助するためである。
- 温度を下げた時の相変化
- β–トリディマイトを急速に冷却すると、114℃でα-トリディマイトとなる。
- β–クリストバライトを急速に冷却すると、270℃でα-クリストバライトとなる。
- 圧力による相変化
- 500℃から800℃、2~3 GPa以上になるとコーサイトに[12][13]、1200℃10 GPa以上でスティショバイトに転移する[14]。
- ザイフェルト石は、既知の多形の中で最も高い圧力 (40 GPa) で発見されている。
自然界におけるシリカ
自然界ではケイ素は多くの場合シリカとして存在し、最も一般的に見られるのは石英である。また、砂の主成分であり、ガラスの原料となる珪砂や珪石もシリカからなる[24]。地殻内にはシリカが大量に含まれており、地球の表層の約6割がシリカを含む鉱物によって構成されている[要出典]。
天然水や水道水にも含まれており、含有量は湧水や地下水は多く、雨の混じるダム水や河川水は少ない傾向にある。また、水の味にも影響し含有量が多いほうが美味しくないと感じる傾向にある[25]。
生物学上のシリカ
生物の中には、二酸化ケイ素の形でガラス質の骨格や殻を形成するものがあり、一部のシダ植物、イネ科の植物、コケ植物などのプラント・オパールや、ケイソウ類、放散虫などの骨格、枯草菌が作る芽胞などに利用されている。また、植物一般において成長促進や環境ストレスの低減、病害虫への耐性向上の効果がある。(植物について詳しくは栄養素_(植物)#ケイ素参照)
人体中のシリカ
人体においてシリカはほとんど吸収されず、肝臓や腎臓への蓄積もほとんど行われない。水が付加したオルトケイ酸が血中に約1μg/mlの割合で吸収されるが、タンパク質とは反応せず、大部分が尿中に排泄される[26]。
食品からの摂取が困難なことから、体内のシリカ濃度は年齢を重ねると減少していく。
体内のシリカ濃度は、30代になると生まれた時に比べ半分以下になることから、シリカが加齢に関わっていると考えられている[27]。
結晶構造
相 | 結晶対称性 ピアソン記号, group No. |
密度, ρ g/cm3 |
注釈 | 構造 |
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α-石英 α-quartz |
三方晶系 hP9, P3121 No.152[29] |
2.648 | 鏡像異性体があり、それぞれ左右方向への3回らせん軸対称 573℃でβ-石英に変態 |
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β-石英 β-quartz |
六方晶系 hP18, P6222, No. 180[30] |
2.533 | 鏡像異性体があり、それぞれ左右方向への6回らせん軸対称 | ![]() |
α-トリディマイト α-tridymite |
直方晶系・単斜晶系[11] oS24, C2221, No.20[31] |
2.265 | 常圧下で準安定状態 | ![]() |
β-トリディマイト β-tridymite |
六方晶系 hP12, P63/mmc, No. 194[31] |
α-トリディマイトと相互に速やかに変態する β-トリディマイトは2010Kでβ-クリストバライトに変態する |
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α-クリストバライト α-cristobalite |
正方晶系 tP12, P41212, No. 92[32] |
2.334 | 常圧下で準安定状態 | ![]() |
β-クリストバライト β-cristobalite |
立方晶系 cF104, Fd3m, No.227[33] |
α-クリストバライトと相互に速やかに変態する 1978 Kで溶融する |
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キータイト | 正方晶系 tP36, P41212, No. 92[34] |
3.011 | Si5O10, Si4O14, Si8O16 環 ガラス状シリカとアルカリから600-900Kおよび40-400MPaで合成 |
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モガン石 | 単斜晶系 mS46, C2/c, No.15[35] |
Si4O8 と Si6O12の環 | ![]() |
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コーサイト | 単斜晶系 mS48, C2/c, No.15[36] |
2.911 | Si4O8 と Si8O16環 900 K と3–3.5 GPaで合成 |
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スティショバイト | 正方晶系 tP6, P42/mnm, No.136[37] |
4.287 | シリカの多形体のうち最も密度の高いものの一つ ルチル型構造 7.5–8.5 GPa |
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ザイフェルト石 | 直方晶系 oP, Pbcn[38] |
4.294 | シリカの多形体のうち最も密度の高いものの一つ 40 GPaで得られる[39] |
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メラノフログ石 | 立方晶系 (cP*, P4232, No.208)[40] または 正方晶系 (P42/nbc)[41] |
2.04 | Si5O10, Si6O12 環 包摂化合物[42](青色はキセノン) 高温相のβ-メラノフログ石がある |
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fibrous W-silica[43] |
直方晶系 oI12, Ibam, No.72[44] |
1.97 | 硫化ケイ素の様な鎖状 | ![]() |
英: 2D silica[45] | 六方晶系 | シート状の2次元構造 | ![]() |
反応
二酸化ケイ素はフッ化水素ガス(HF)やフッ化水素酸(HF (aq))と反応し、それぞれ四フッ化ケイ素(SiF4)、ヘキサフルオロケイ酸 (H2SiF6)を生ずる。
- ケイ素、ケイ素化合物 - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
二酸化ケイ素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 06:54 UTC 版)
溶岩の主成分は二酸化ケイ素(SiO2)だが、その比率が増えるに従って粘度が上昇する。 二酸化ケイ素の少ない玄武岩を噴出する噴火では、火口から噴出した溶岩は十分に粘度が低く、長い距離を流れ下り、典型的な溶岩流となる(ハワイ諸島や伊豆大島など)。 逆に、二酸化ケイ素を多く含むデイサイトや流紋岩質の溶岩は粘度が非常に高く、マグマが地上に出た場合、溶岩ドームをつくるのが普通で、溶岩流にならないことが多い。そのため、溶岩流を発生させた場合は、厚さが100mを超えるような溶岩流ができることもある(雲仙普賢岳新焼溶岩流の末端など)。 溶岩流の厚さは流紋岩が一番厚く、デイサイト・安山岩・玄武岩の順に薄くなる。
※この「二酸化ケイ素」の解説は、「溶岩流」の解説の一部です。
「二酸化ケイ素」を含む「溶岩流」の記事については、「溶岩流」の概要を参照ください。
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