ロードレース (自転車競技) ロードレース (自転車競技)の概要

ロードレース (自転車競技)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 05:24 UTC 版)

2020年東京オリンピックの自転車競技女子ロードレースで多摩ニュータウンを通過する選手たち。

概要

個人戦と集団戦

ロードレースの最も単純な形態はワンデイレース(1日で終了するレース)で、「個人」が、「ゴールの順番を競う」というものであり、これはアマチュアレースや小規模なレースでよく見られる形態である。しかし、プロのレースや、アマチュアのレースの中でも大規模なものでは、ワンデーレースだけでなくステージレース(複数日行われるレース)も加わり、「チーム」が「メンバーの誰かを勝たせるために走る」ことが多い。

広告媒体としての走り

ジャージやヘルメットにはユニフォーム広告が入っているため、たとえ勝利につながらなくても、序盤から積極的に先頭を走るなど印象深い走りを見せた選手には「敢闘賞」が与えられる。また、メディアへの露出が多い有名なレースで見せ場を作ることは、チームにとってもスポンサーの宣伝になるため、タイトルに絡まない選手やチームであっても、時に有力な選手やチーム以上の走りを見せる場合がある。

頭脳戦

大きなレースでは上記に挙げた敢闘賞だけでなく様々な賞が設定されているため全ての選手が優勝目指して走るのではなく、個人やチーム単位でいくつかの戦略目標[注 1]を設定し、それに向かって各自が最善を尽くすことになる。

結果として、グランツールをはじめとする大きなステージレースでは個々の選手の思惑や意地、チーム単位での戦略が絡み合い、更に刻々と変わる気象条件や落車、選手の微妙なコンディションの差異などの偶発的要素もそれらの戦略目標に大きな影響を与える為、極めて複雑な頭脳戦の様相を呈する。

チームのカテゴリー

ロードレースに参加するチームにはサッカーのクラブチームにおける一部リーグや二部リーグのようなカテゴリーがあり、参加できるレース、出来ないレースがある。詳しくはUCIワールドツアー#チームのカテゴリーを参照のこと。

競技方法

ロードレースの競技規則は国際自転車競技連合(UCI)によって決められている。

マスドスタート(マスドレース)

全選手が一斉にスタートし、ゴールの順番や所要時間を競う。通常行われるレース形式であり、「ロードレース」と言うとこの競技方法を指している場合もある。

チームタイムトライアル(チームTT)

TTT(Team Time Trial)。

一定時間毎にチームの全員が出走し、チームごとのゴールタイムを競う。チームのうち規定の順番(1チームの定員によって異なる)でゴールした選手のタイムがそのチームのタイムとなる。

個人タイムトライアル(個人TT)

ITT(Individual Time Trial)。

一定時間毎に選手が個別に出走し、ゴールタイムを競う。

レースの種類

レースにおける距離、ステージの構成やポイントの配分などは、レースの主催者が決定している。

ワンデイレース

  • 1日(厳密には単一のステージ)で勝負を決するレースで、基本的に「着順」のみを競う。UCIの略記では「1.xx」と表記され、「1.UWT」(UCIワールドツアー)、「1.Pro」(UCIプロシリーズ)、「1.1」「1.2」(UCIコンチネンタルサーキット)などに分類される。英語では"Single-day race"(シングルデイレース)とも呼ばれる。
  • なかでも特に伝統のあるものは“クラシック”と呼ばれ、最狭義では5つの記念碑的なレースを総称したモニュメント(対象レース下記参照)のことを指すが、現在では概ね、UCIワールドツアー対象レースのことをクラシックと呼ぶ傾向にある。また、UCIプロシリーズにランクされるレースのことを、クラシックに次ぐ格付けのレースという意味合いから、セミクラシックと呼ぶことがある。なお、世界選手権は、クラシックレースやステージレースなどの一般のレースを出場するUCIに登録された各チームと違い、国別のナショナルチームで出場するためチャンピオンシップ(選手権大会)という位置づけであり、クラシック等の言い方はしない。
  • 相対的に見て、ワンデイレースの中で一番栄誉あるレース(一番勝ちたいレース)は世界選手権と言われ、モニュメントを中心としたクラシックがそれに続き、各国で開催される国内選手権もクラシックと同格の存在と考える選手が少なくない[注 2]。また欧州以外の地域では、各大陸選手権のステータスも相対的に高い[注 3]
  • 一方、夏季オリンピックもチャンピオンシップのカテゴリーの中に含まれ、1996年アトランタオリンピック以降、プロ選手の出場が認められるようになったことから、ワンデイレースを得意とする選手の中には、世界選手権と違う意味合いで栄誉があると考えている選手も出てきている[注 4]
  • 閉鎖されたコース(最短800m、最長10km[1])を周回して順位を競うレースは特にクリテリウム(Criterium)と呼ばれる。基本的にクリテリウムはUCIのカテゴリーにおいて「1.xx」の範疇には含まれず、「CRT」の表記で区別される。2012年よりUCIポイントではステージレース(カテゴリー2.2)と同等の扱いとされている[2]

主なレース

選手権大会(チャンピオンシップ)
UCIワールドツアー対象レース
太字はモニュメントと呼ばれるレース。
UCIコンチネンタルサーキット 1.HC カテゴリ対象レース[4]
なお、UCIコンチネンタルサーキット カテゴリー(1.1もしくは1.2)対象レースは多数存在するため割愛。
クリテリウムも多数存在するため、日本開催のもののみ取り上げる。
廃止等で行なわれなくなった主なレース

ステージレース

  • 複数日(厳密には複数のステージ)にわたってレースを行い、各日ごとにゴールまでの「順番」を争うほか、「最終的な所要時間」「ゴールまたはコース途中の指定地点での通過順におけるポイント」「指定された山岳および峠での通過順におけるポイント」など複数の分野で総合成績を競う。UCIの略記では「2.xx」と表記され、「2.UWT」(UCIワールドツアー)、「2.Pro」(UCIプロシリーズ)、「2.1」「2.2」(UCIコンチネンタルサーキット)などに分類される。
  • ステージレースの最高峰として位置づけられるレースは総称してグランツール(対象レースは下記参照)と呼ばれる。グランツールは15日以上23日以内、途中休養日を2日含むという規定があり、現在のグランツールはプロローグを含めた21ステージ+休養日2日の23日間程度で行われる例が多く、概ね3週間程度の期間に亘って開催される。この他、ステージレースとしては主流をなす、1週間前後で終了するものや、数日間程度のレースも含まれ、要は1日では勝負が決しないレースを総称して呼ばれる。
  • 過去のステージレースでは1日1レースとは限らず、ハーフステージと呼ばれる形式で1日の中で2レースが行われることもあった。タイムトライアルステージがある時にこの形式を採用した[注 6]ことが多く、この場合は主に「第□ステージa」、「第□ステージb」(□は同一の数字)などと表記される。現在ではほとんど行われていない。

様々なステージ

ステージレースでは、一般的なマスドスタート以外にもタイムトライアルのステージが設定されることがある。上記の競技方法が用いられているが、グランツールにおいては下記の特色がある。

マスドスタート
最も一般的なステージ。
場合によっては選手が一斉にスタートする地点(セレモニースタート)と競技開始地点(アクチュアルスタート)が異なる場合がある。この区間はパレードランと呼ばれ、審判車の先導の元ゆっくりと移動する。
個人タイムトライアル
他の競技者の直後を走るドラフティング走行は認められない。グランツールでは「プロローグ」と称して初日に数キロのごく短い個人タイムトライアルを行うこともある。マスドスタートの山岳ステージとともに、個人総合優勝の行方を大きく左右するステージとなる。
チームタイムトライアル
チーム単位でスタートし、レース中はチームが一団となって走り(ドラフティング走行は同一チームの競技者のみ可能)、チームのうち規定の順番(1チームの定員によって異なる。1チーム9人のグランツールでは5番目)でゴールした選手のタイムで競う。初日に行われた場合は最も短い走破タイムを出したチームのうち、最初にゴールラインを切った選手が翌日のリーダージャージを着用する。ステージレースにおける個人総合タイムは基本的に「チームのタイム」が与えられるが、途中で集団走行から遅れてしまった選手についてはその選手のゴールまでの走破タイムが与えられる。

ステージレースの表彰対象

ステージレースでは「時に個人、時にチーム」で、「その日のゴールの着順」「最終的な所要時間など各種の総合成績」などいくつかの目的のために走ることになる。例えば最も有名なステージレースである3つのグランツールでは、勝利を争う主体は「個人」及び「集団(チーム)」であり、争われるのは「ステージごとの着順」と「最終的な走破時間」及び「最終的な獲得ポイント」であり、

  • 個人総合優勝(レース全体を通しての走破タイムで争われる)
  • ステージ優勝(ステージごとの着順で争われる)
  • チーム総合優勝(ステージごとに各チームの先着3人のタイムが積算されていき、そのタイムで争われる。同一チーム内の総合上位3人の合計タイムではない)
  • ポイント賞(レース全体を通してのスプリントポイント獲得数で争われる)
  • 山岳賞(レース全体を通しての山岳ポイントの獲得数で争われる)
  • 新人賞(ヤングライダー賞とも。開催年に25歳以下の誕生日を迎える選手限定でレース全体を通しての走破タイムで争われる。ジロとツールのみで、こちらは逆に下記の複合賞がない)
  • 複合賞(コンビネーション賞とも。ブエルタのみで新人賞の代わりにある。個人総合順位、ポイント賞順位、山岳賞順位それぞれの順位合計が少ない人[注 7]が獲得する)

といういくつもの賞をめぐる争いが展開される。

主なステージレース

UCIワールドツアー対象レース
太字はグランツール
UCIコンチネンタルサーキット 2.HC カテゴリ対象レース[5]
UCIコンチネンタルサーキット カテゴリー(2.1または2.2)対象レースは数多存在するため、日本開催レースのみ取り上げる。
廃止等で行なわれなくなった主なレース

シリーズ

ワンデー、ステージ各レースをひとつのシリーズとしているもの。各レース成績優秀者にポイントを付与し、そのシリーズ全レースが終了後に付与されたポイント最上位の選手が優勝となる。

主なシリーズ

女子レース

女子については、世界選手権、夏季オリンピック、年間シリーズ戦であるUCI女子ワールドツアー英語版ジロ・ローザなどのステージレースが重要な大会である。


注釈

  1. ^ 例えばAは山岳賞を獲りにいく。そのためにチームメイトのBとCが中心となってサポートする。またDは普段はAのサポートを務めるが、別チームのエースでAのライバルと見られているEが抜け出した場合は、それについて行き、余計なポイントを与えないようにする、など。
  2. ^ 世界選手権優勝者はアルカンシエルを、各国選手権優勝者にはその国のナショナルカラーをあしらったジャージを各レース優勝後1年間、下記に挙げるチャンピオンシップレース以外のレースに着用して出場できるという特典があるため。
  3. ^ 欧州以外の地域の国籍選手は、各大陸選手権で優勝しないと世界選手権に参加できないケースがあるため。
  4. ^ アマチュア選手だけしか参加できなかった1992年のバルセロナオリンピックまでは、傾向的に見て、『オリンピックの自転車ロードレース金メダリストは、プロになってから大成しない。』というジンクスがあった。
  5. ^ 2015年昇格。
  6. ^ ツール・ド・フランスでも、1982年までは、一部のステージにおいて、ハーフステージの形式を取っていた。
  7. ^ たとえば総合4位、ポイント賞15位、山岳賞2位なら21ポイント。またポイント賞か山岳賞どちらかがノーポイントの場合コンビネーション賞を得る権利が無くなる。
  8. ^ 特にスプリンターと総合優勝争いの選手を同時に起用しているチームでは顕著。平地ではスプリンターのために他がアシストになり、総合勢は集団ゴールするだけで何も行わない。山岳ではスプリンターは序盤で総合勢をアシストし山岳に入るまでが仕事で残りはグルペットに入り一日を終えるが、総合勢は勝負を仕掛けタイムを稼いでいく。
  9. ^ ふじいのりあき 2008: 115の計算によると、ランス・アームストロングの巡航時の平均出力370ワットをエネルギー効率25%と仮定するならば、4時間の競技で基礎代謝を含め7490カロリーを消費するとされる。
  10. ^ 1日で勝負が決まるワンデーレース、特に路面状況と道幅の面で特徴を持つパリ〜ルーベやツール・デ・フランドルでは、ステージレースとは全く異なるレース展開となることが多い。
  11. ^ 2008年のジロ・デ・イタリア第2ステージでは、2人の逃げ集団の片方の選手が強引にポイントを独り占めしてしまった為、もう片方の選手が先頭交替を拒否し、逃げは早い段階で崩壊した。
  12. ^ ブエルタ・ア・エスパーニャ2009の第19ステージ、上位12人による2位狙いスプリントで総合リーダーだったアレハンドロ・バルベルデが頭を取り、ボーナスタイム12秒を入手して他を突き放している。
  13. ^ 過去には、2004年のツール・ド・フランスにおいて、第12ステージでランス・アームストロングイヴァン・バッソに優勝を譲ったものの、翌日の第13ステージではアームストロングがバッソにスプリント勝負を仕掛けて自らステージ優勝した例などがある。
  14. ^ 2000年のツール・ド・フランス第12ステージで、ランス・アームストロングに優勝を譲られたマルコ・パンターニが激怒した例などが有名。
  15. ^ 2006年のジロ・デ・イタリア第19ステージで、チームCSCのエースであるイヴァン・バッソのために逃げ集団に着き位置していたイェンス・フォイクトが、最後まで逃げ続けたフアン・マヌエル・ガラテにステージ優勝を譲った例などがある。
  16. ^ ゴールまでの残り距離が遠い場合は、逆に新たな逃げ集団を発生させてしまうことが多いため。通常の平坦ステージでは「ゴールまで残り数kmのところで逃げ集団を吸収してゴールスプリントへの準備に移る」のが理想とされる。
  17. ^ 2009年のツール・ド・フランス第9ステージでは、残り3km地点で逃げ集団を猛追撃していたメイン集団内でチーム・サクソバンクのエースアンディ・シュレクにパンクのトラブルが発生し、これが原因でメイン集団が減速したため結果的に逃げが決まった。反対に2007年のツール・ド・フランス第5ステージでは、残り25km地点でアスタナのエースアレクサンドル・ヴィノクロフが落車したが、既に逃げ集団を吸収する態勢に入っていたメイン集団はヴィノクロフを待つことなく加速してしまった。このためヴィノクロフはこのステージだけで1分20秒も失ってしまい、落車のダメージもあって、その後マイヨ・ジョーヌ争いからは脱落していった(最終的にドーピング陽性で失格)。
  18. ^ ジロ・デ・イタリアではミラノが最終ステージの通例とされてきたが、2009年にジロ100周年記念としてローマで個人タイムトライアルが行われたのを皮切りに、「ミラノ固定」ではなくなりつつある。
  19. ^ 例えば、フランス・ベルギー・オランダ・イタリア・スペインは国旗の色をそのままジャージにあしらっている。白地にストライプをあしらっているものでは、イギリス(赤・白・紺)、ドイツ(黒・赤・金)、オーストラリア(緑・黄・緑)が挙げられる。日本は日の丸、アメリカは星条旗を模したデザイン。ニュージーランドは黒地にシダである。ただしこれらのデザインは、所属チームやスポンサーの意向により変更される場合も多く、必ずしも固定されていない。

出典

  1. ^ UCI Cycling Regulations 2.7.016
  2. ^ UCI permits criteriums in UCI 2.2 stage races - cyclingnews・2011年9月9日
  3. ^ a b 2009 - 2010 UCI Road Calendar: Men Elite, World
  4. ^ Road Calendar”. 国際自転車競技連合. 2015年3月28日閲覧。
  5. ^ Road Calendar”. 国際自転車競技連合. 2015年3月28日閲覧。
  6. ^ サイクルロードレース入門 用語集2010年度版 - J SPORTS[リンク切れ]





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