ロードレース (自転車競技)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/11 15:11 UTC 版)
ジャージ
ロードレース選手で特定の成績を上げた選手は、レース中それに応じたジャージを着なければならない。また、着用が義務となっている場合が多く、レースで着用をしなかった場合に罰金などのペナルティを課せられることがある。
ロードレースにおいては以下のようなジャージが代表的である。
- 個人総合時間リーダージャージ
- ステージレースにおける総合首位(全ステージの走破タイムの合計が最も少ない)選手がそのステージレース開催期間中に着る。ツール・ド・フランスの「マイヨ・ジョーヌ(黄色いジャージ)」、ジロ・デ・イタリアの「マリア・ローザ(薄桃色のジャージ)」が有名。ブエルタ・ア・エスパーニャでは「マイヨ・ロホ(赤色のジャージ)」がこれにあたる。レース開催期間中、個人総合時間ジャージは他のすべてのジャージに優先する。
- ポイントリーダージャージ
- ステージレースにおけるスプリントポイント最多獲得選手がそのステージレース開催期間中に着る。また、総合首位の場合は個人総合時間リーダージャージを優先して着用する。ツール・ド・フランスの「マイヨ・ヴェール(緑色のジャージ)」が有名。
- 山岳リーダージャージ
- ステージレースにおける山岳ポイント最多獲得選手がそのステージレース開催期間中に着る。ツール・ド・フランスの「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(白地に赤い水玉模様)」が有名。また、総合首位の場合は個人総合時間リーダージャージを優先して着用する。
- 世界選手権ジャージ
- 世界選手権自転車競技大会ロードレース部門の優勝者が、次回世界選手権開催前日まで世界中のロードレースで着用することを許可される(正確には義務)。白地に5色の線(Arc an ciel—虹色)が入ったジャージは通称「マイヨ・アルカンシエル」と呼ばれ、このジャージを着ることは自転車競技者として最高の栄誉の一つとされる。また、一度アルカンシエルを獲得した選手は、翌年度以降も自身のジャージの袖や襟、車体の一部にアルカンシエルを模した柄を入れることが許される(これは義務ではない)。
- なお、世界選手権ロードレース部門は、「ロードレース(マスドレース)」と「個人タイムトライアル」の2競技があり、ロードレース競技での優勝者がタイムトライアル競技やタイムトライアルステージ(個人TTまたはチームTT)でアルカンシエルを着ることはできず、逆もまた然りである。また、ステージレースにおいて各賞で首位に立っている場合は、各リーダージャージを優先して着用しなければならない(一部例外もあり)。
- ナショナルチャンピオンジャージ
- ロードレース競技とタイムトライアル競技の国内選手権優勝者は、それぞれ次回大会の開催までこのジャージを世界中のロードレースで着用する。ナショナルチャンピオンジャージはそれぞれの国の国旗またはそれに準ずるイメージカラー[注 19]をあしらった非常に目立つもので、これを着用して世界の檜舞台に立つことはロードレース選手にとって大変な名誉とされる。また各国のファンも、自国のナショナルチャンピオンには格別の声援を送る。ナショナルチャンピオンを獲得した選手はアルカンシエル同様、翌年度以降も自身のジャージの袖や襟に国旗またはそれに準ずるデザインを入れる権利を得る。
- 世界選手権ジャージと同様、ロードレース競技のチャンピオンジャージはタイムトライアル競技やタイムトライアルステージでは着用不可、逆の場合も同様。また、ステージレースにおいて各賞で首位に立っている場合は、各リーダージャージを優先する(一部例外もあり)ほか、世界選手権に優勝した場合は世界選手権ジャージが優先となる。
- 諸事情により国内選手権が開催されなかった年があった場合は、前年の優勝者が引き続き着用することになる(例:2006年のスペイン選手権はオペラシオン・プエルトの影響により、選手のボイコットが発生して中止された)。
- 日本では全日本選手権ロード及びタイムトライアルの優勝者がこれを着る事になるが、全日本選手権でアシストを多く使えるJプロツアー、もしくはUCIコンチネンタル在籍選手が有利なため、海外から凱旋してくるUCIプロコンチネンタルやUCIプロツアー在籍の選手が勝つことが困難な状況であり(元チームメイトぐらいしか協力してくれる選手が居ない)、国内選手権をメインに走っているライダーが選手権を制覇した場合、海外の試合に出場することが希なため、海外の大会で目にする事は少ない。2006シーズンにロード&TTの両チャンピオンを取った別府史之(当時ディスカバリーチャンネル在籍中)が、2007シーズン(2007年度全日本選手権開催前なので別府が保持したまま)のパリ〜ルーベにて、ナショナルチャンピオンジャージを身につけ集団の先頭を引く姿が映し出された事がある。また別府は2011シーズンでもダブルタイトルを手にしたが、2012シーズンのジロ・デ・イタリアにて、所属しているオリカ・グリーンエッジが大会直前にスポンサーを獲得しジャージが替わったのにもかかわらず、ナショナルチャンピオンジャージの発注を忘れたが故に、ユニフォーム違反で罰金を受けるという珍トラブルが発生した。
ステージレースのリーダージャージには胸部にA4サイズの白い枠が設けられている場合がある。これは、ジャージ該当選手のチーム名・チームロゴを入れるためのものである。一つのステージが終了しジャージ該当選手が確定した後、白い枠の部分に昇華インクでチーム名・チームロゴを鏡像印刷したシートを乗せ、プレス機で熱転写を行うことでジャージにチーム名・チームロゴをプリントする(場合によってはステッカーで済ませる場合もある)。
注釈
- ^ 例えばAは山岳賞を獲りにいく。そのためにチームメイトのBとCが中心となってサポートする。またDは普段はAのサポートを務めるが、別チームのエースでAのライバルと見られているEが抜け出した場合は、それについて行き、余計なポイントを与えないようにする、など。
- ^ 世界選手権優勝者はアルカンシエルを、各国選手権優勝者にはその国のナショナルカラーをあしらったジャージを各レース優勝後1年間、下記に挙げるチャンピオンシップレース以外のレースに着用して出場できるという特典があるため。
- ^ 欧州以外の地域の国籍選手は、各大陸選手権で優勝しないと世界選手権に参加できないケースがあるため。
- ^ アマチュア選手だけしか参加できなかった1992年のバルセロナオリンピックまでは、傾向的に見て、『オリンピックの自転車ロードレース金メダリストは、プロになってから大成しない。』というジンクスがあった。
- ^ 2015年昇格。
- ^ ツール・ド・フランスでも、1982年までは、一部のステージにおいて、ハーフステージの形式を取っていた。
- ^ たとえば総合4位、ポイント賞15位、山岳賞2位なら21ポイント。またポイント賞か山岳賞どちらかがノーポイントの場合コンビネーション賞を得る権利が無くなる。
- ^ 特にスプリンターと総合優勝争いの選手を同時に起用しているチームでは顕著。平地ではスプリンターのために他がアシストになり、総合勢は集団ゴールするだけで何も行わない。山岳ではスプリンターは序盤で総合勢をアシストし山岳に入るまでが仕事で残りはグルペットに入り一日を終えるが、総合勢は勝負を仕掛けタイムを稼いでいく。
- ^ ふじいのりあき 2008: 115の計算によると、ランス・アームストロングの巡航時の平均出力370ワットをエネルギー効率25%と仮定するならば、4時間の競技で基礎代謝を含め7490カロリーを消費するとされる。
- ^ 1日で勝負が決まるワンデーレース、特に路面状況と道幅の面で特徴を持つパリ〜ルーベやツール・デ・フランドルでは、ステージレースとは全く異なるレース展開となることが多い。
- ^ 2008年のジロ・デ・イタリア第2ステージでは、2人の逃げ集団の片方の選手が強引にポイントを独り占めしてしまった為、もう片方の選手が先頭交替を拒否し、逃げは早い段階で崩壊した。
- ^ ブエルタ・ア・エスパーニャ2009の第19ステージ、上位12人による2位狙いスプリントで総合リーダーだったアレハンドロ・バルベルデが頭を取り、ボーナスタイム12秒を入手して他を突き放している。
- ^ 過去には、2004年のツール・ド・フランスにおいて、第12ステージでランス・アームストロングがイヴァン・バッソに優勝を譲ったものの、翌日の第13ステージではアームストロングがバッソにスプリント勝負を仕掛けて自らステージ優勝した(ただし後年にドーピングが発覚してステージ優勝は取消、詳しくはランス・アームストロングのドーピング問題を参照)例などがある。
- ^ 2000年のツール・ド・フランス第12ステージで、ランス・アームストロングに優勝を譲られたマルコ・パンターニが激怒した例などが有名。
- ^ 2006年のジロ・デ・イタリア第19ステージで、チームCSCのエースであるイヴァン・バッソのために逃げ集団に着き位置していたイェンス・フォイクトが、最後まで逃げ続けたフアン・マヌエル・ガラテにステージ優勝を譲った例などがある。
- ^ ゴールまでの残り距離が遠い場合は、逆に新たな逃げ集団を発生させてしまうことが多いため。通常の平坦ステージでは「ゴールまで残り数kmのところで逃げ集団を吸収してゴールスプリントへの準備に移る」のが理想とされる。
- ^ 2009年のツール・ド・フランス第9ステージでは、残り3km地点で逃げ集団を猛追撃していたメイン集団内でチーム・サクソバンクのエースアンディ・シュレクにパンクのトラブルが発生し、これが原因でメイン集団が減速したため結果的に逃げが決まった。反対に2007年のツール・ド・フランス第5ステージでは、残り25km地点でアスタナのエースアレクサンドル・ヴィノクロフが落車したが、既に逃げ集団を吸収する態勢に入っていたメイン集団はヴィノクロフを待つことなく加速してしまった。このためヴィノクロフはこのステージだけで1分20秒も失ってしまい、落車のダメージもあって、その後マイヨ・ジョーヌ争いからは脱落していった(最終的にドーピング陽性で失格)。
- ^ ジロ・デ・イタリアではミラノが最終ステージの通例とされてきたが、2009年にジロ100周年記念としてローマで個人タイムトライアルが行われたのを皮切りに、「ミラノ固定」ではなくなりつつある。
- ^ 例えば、フランス・ベルギー・オランダ・イタリア・スペインは国旗の色をそのままジャージにあしらっている。白地にストライプをあしらっているものでは、イギリス(赤・白・紺)、ドイツ(黒・赤・金)、オーストラリア(緑・黄・緑)が挙げられる。日本は日の丸、アメリカは星条旗を模したデザイン。ニュージーランドは黒地にシダである。ただしこれらのデザインは、所属チームやスポンサーの意向により変更される場合も多く、必ずしも固定されていない。
出典
- ^ UCI Cycling Regulations 2.7.016
- ^ UCI permits criteriums in UCI 2.2 stage races - cyclingnews・2011年9月9日
- ^ a b 2009 - 2010 UCI Road Calendar: Men Elite, World
- ^ “Road Calendar”. 国際自転車競技連合. 2015年3月28日閲覧。
- ^ “Road Calendar”. 国際自転車競技連合. 2015年3月28日閲覧。
- ^ サイクルロードレース入門 用語集2010年度版 - J SPORTS[リンク切れ]
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