六法
(六法全書 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/22 15:03 UTC 版)
六法(ろっぽう)とは、
- 日本における6つの主要な法典。すなわち、形式的意義の憲法ならびに民法、商法、刑法、民事訴訟法および刑事訴訟法。
- 転じて、当該6法典に対応する6つの法分野。すなわち、実質的意義の憲法ならびに民法、商法、刑法、民事訴訟法および刑事訴訟法。
- 当該6法典を含む様々な法令を収録している書籍である「六法全書」の略称、または、一般に法令集のこと。
日本法の強い影響を受けている中華民国(台湾)および大韓民国においても同様の意味で用いられているが、台湾では民商統一主義が採用されており、商法に相当する内容が民法に組み込まれていることもあり、商法ではなく行政法が含まれる。
語の由来
「六法」という語は、箕作麟祥が、フランス法を邦訳した書籍である『仏蘭西法律書』(1874年)の中で、ナポレオン五法典(民法典、商法典、刑法典、民事訴訟法典および治罪法典)と呼ばれるナポレオン諸法典 (Codes napoléoniens) に憲法を加えた用語として使用したことに由来すると考えられている。本来、これらの中に行政法典が加わるはずだったが、当時は完成しておらず、これらは六法にとどまった。
6つの法典
六法は、6つの法典という意味において、次に掲げる6つの法典のことで、これを形式的意義という。
- 日本国憲法(昭和21年憲法)(旧大日本帝国憲法〈明治22年憲法〉)
- 民法(明治29年法律第89号)
- 商法(明治32年法律第48号)
- 刑法(明治40年法律第45号)(旧刑法〈明治13年太政官布告第36号〉)
- 民事訴訟法(平成8年法律第109号)(旧民事訴訟法〈明治23年法律第29号〉)
- 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)(旧治罪法〈明治13年太政官布告第37号〉、旧々刑事訴訟法〈明治23年法律第96号〉、旧刑事訴訟法〈大正11年法律第75号〉)
なお、日本国憲法以外の5つの法典の所管官庁は法務省である[1]。
6つの法分野
六法は、6つの法典に対応する6つの法分野という意味において、次に掲げる6つの法分野のことで、これを実質的意義という。
- 憲法(国会法および内閣法などを含む)
- 民法(不動産登記法および借地借家法などを含む)
- 商法(会社法、保険法、保険業法、手形法および小切手法などを含む)
- 刑法(特別刑法などを含む)
- 民事訴訟法(民事手続法)(民事調停法、仲裁法、民事執行法、民事保全法および倒産法などを含む)
- 刑事訴訟法(刑事手続法)
2021年現在の司法試験においては、当該6分野に加えて行政法が必須科目となっており、これらを併せて「七法」と呼ぶことがある。
法令集
6つの法典との意味から転じて、これらの6つの法典を中心として主要な法令を収録した書籍を「六法全書」と呼び、さらにこれを略して「六法」と呼ぶ。なお、現在では有斐閣のみが『六法全書』と題する法令集を毎年発行している[いつ?]ため、単に「六法全書」と呼ぶときは、これを指すことも多い。
また、本来の意味から離れて、特定分野の範疇内において主要な法令を収録した書籍もその分野に合わせた六法の名称で呼ばれる場合がある(『金融六法』や『福祉六法』など)。この場合には、6という数に特に意味があるわけではなく、主要法令集という意味でこの語が使われているに過ぎない。
6つの法律
なお、「○○六法」という複合語の一部として、郵政民営化関連六法[注 1]や社会福祉六法[注 2]のように、関連する法律を6つ数え上げて、「六法」と呼ぶ場合もある。
同様に、二法[注 3]、三法[注 4]、四法[注 5]、五法[注 6]などと称する例もある。
脚注
注釈
- ^ 郵政民営化法、日本郵政株式会社法、郵便事業株式会社法、郵便局株式会社法、独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構法、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
- ^ 児童福祉法、身体障害者福祉法、生活保護法、知的障害者福祉法、老人福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法
- ^ 例えば教育二法など。
- ^ 例えば電源三法、工場三法、電波三法、景観緑三法、メディア規制三法、海上交通三法、武力攻撃事態対処関連三法、労働三法、歯科三法(歯科医師法、歯科衛生士法。歯科技工士法)、救済三法(国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法)、福祉三法(生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法)、組織的犯罪対策三法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律(通信傍受法)、刑事訴訟法の一部を改正する法律)など。
- ^ 例えば薬物四法(麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、覚醒剤取締法、あへん法)、工業所有権四法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)など。
- ^ 例えば個人情報保護法関連五法、麻薬五法(麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(麻薬特例法))など。
出典
関連項目
外部リンク
六法全書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 09:58 UTC 版)
末川の極めて大きな社会的業績としては現在の六法全書の形を作り上げたことが挙げられる。末川が六法全書を刊行する以前にも六法全書という名の付いた法規集が有斐閣などから刊行されていたが、それらは非常に高価で、さらに民法、商法などに分冊された形式であった。 1927年(昭和2年)、末川は旧来の不便な六法を改善するため、事項索引および参照条文付きの法文集の発行を考え、岩波茂雄にその考えを打ち明けた。岩波茂雄はその六法を岩波文庫の中に収録することを考えていたが、当時岩波宅に寄宿していた東京地裁判事・安倍恕(貴族院議員、学習院長、文部大臣を務めた安倍能成の弟)の実務家としての助言を受けて、六法全書としての刊行を応諾した。 現在と異なり、参考とするべき六法がなかったため、事項索引および参照条文の作成作業には2年を費やした。この作成作業には末川本人のほか末川研究室より門下生の谷口知平、亀井秀夫、石本雅夫が、実務家(いずれも裁判官)からは山口友吉、山崎一郎、大江保直、安倍恕が従事した。 末川の創意工夫を凝らした六法全書は一世を風靡し、岩波茂雄がこのような六法が売れるかと不安であったにも関わらず取次店から当時としては異例の7000部の注文があり、末川と岩波は驚愕した、と言われている。岩波版六法全書の発刊により旧来の不便な六法は淘汰され、有斐閣の社長であった江草四郎は六法の発行を取りやめることを決定した。
※この「六法全書」の解説は、「末川博」の解説の一部です。
「六法全書」を含む「末川博」の記事については、「末川博」の概要を参照ください。
「六法全書」の例文・使い方・用例・文例
六法全書と同じ種類の言葉
- 六法全書のページへのリンク