でんげん‐さんぽう〔‐サンパフ〕【電源三法】
電源三法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/19 13:56 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動電源三法(でんげんさんぽう)とは、電力に関する法の総称のこと。
概要
以下の三法のことである。
- 電源開発促進税法
- 特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法)
- 発電用施設周辺地域整備法
これらの法律の主な目的は、電源開発が行われる地域に対して補助金を交付し、これによって電源の開発(発電所建設等)の建設を促進し、運転を円滑にしようとするものである。
1960年代以降の日本の電力は、火力発電所に比重を強めていたが、1973年に起こった第1次石油危機が発生して、火力発電所に依存する日本経済が大きく混乱した。それを受けて、1974年に火力発電以外の電源を開発することによって電力リスク分散をし、火力発電への過度の依存を脱却することを目的として制定された。
電源三法による地方自治体への交付金は、電源三法交付金(でんげんさんぽうこうふきん)と呼ばれる。
解説
電気は溜めることが出来ず、そのため電力会社は需要の伸びにより発電所の建設を強いられる。しかし、電力の需要が大きい都市部には発電所を建設する余地がほとんど無い場合が多いため、しばしば発電所は電力の大量需要地とは全く関係のない場所に建設される。
発電所には様々なデメリットがある。一番わかりやすいのは放射能汚染の危険がある原子力発電所であるが、火力発電所や水力発電所や地熱発電所にもデメリットは存在する。発電所の建設により、建設される地域にとってはメリットはほとんどなくデメリットだけが存在するという状態におかれるため、発電所を建設される地域には当然反対運動が発生する(いわゆるNIMBY問題)。その反対運動に対してメリットを提示するのが、この電源三法に基づく交付金(電源三法交付金)である。
電源三法交付金の実情
電源三法交付金は水力発電や地熱発電も対象となっているが、発電の大きさから原子力発電に対するものが最も注目されている。
朝日新聞の調べ[1]によると、2004年度(予算ベース)での電源三法交付金は約824億円に上るとされている。うち、福島第一、第二原発を抱える福島県では約130億円、柏崎刈羽原発を抱える新潟県では約121億円、敦賀、美浜、大飯、高浜原発を抱える福井県では約113億円、玄海を抱える佐賀県では約100億円、六ヶ所村核燃料再処理施設や放射性廃棄物管理施設を抱える青森県では約89億円となっている。
使用状況の実例は、(財)電源地域振興センターの「電源三法活用事例集」[2]に詳しく記載されている。2002年までは交付金の使用用途が一部の公共用施設に制限されていたが、2003年以降は交付金の使途を地場産業振興、福祉サービス提供事業、人材育成等のソフト事業へも拡充された。
尚、原子力発電の発電量は年間約3000億kwhであり、電源三法交付金約824億円は0.27円/kwhとなり、これはバックエンド費用積立て不足約1円/kwhとともに、経済産業省が発表する原子力発電表面原価5.9円/kwhには含まれていない。
注釈・出典
- ^ 『核燃マネー』 朝日新聞青森総局著 岩波書店 2005年 ISBN 4000224530
- ^ (財)電源地域振興センター「電源三法活用事例集(平成12年3月発行)」 個別の詳しい事業事例がまとめてある。
電源三法
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「福島の原子力発電所と地域社会」の記事における「電源三法」の解説
本発電所2号機が運転開始した時点までは、いわゆる電源三法による立地町への交付金は制度化されておらず、原子力発電所建設による経済的なメリットは当初雇用、消費財の売り上げ、法人、固定資産税収など別の面からの指摘であった。従って交付金の対象となったのは3〜6号機であり、1988年度までで双葉町23億5000万円、大熊町13億8600万円、楢葉町7800万円、富岡町3億7000万円などとなっており、総額では62億600万円であった。佐藤康幸は第二原子力発電所の交付金と比較しており、これらは大幅に増額を受けた後の交付であるため、1988年度までで各町合計322億4700万円と、運転開始から数年で本発電所の5倍以上に達していた。 1985年3月、福島県は初めて原子力行政について『原子力行政の現状』(459頁)を公表した。岡上哲夫はこれを批判的に読み解き、同書191ページで電源三法による「地域の長期的、総合的、広域的観点からの計画振興を目ざすものではない」と否定的な断定をしている点を、推進派の従来の主張である「雇用の安定」、「地域の発展」、「社会資本の整備」と矛盾するものとして指摘している。 なお、福島県は『原子力行政の現状』にて上述の「長期的、総合的、広域的観点からの計画振興」のため、「電源地域振興特別措置法(仮称)」の制定を求めていた。岡上哲夫は、従来の推進派の思考から言えば、「ポスト原発」は原子力発電所の増設という形でも良かったが、電力需要の鈍化により新設計画自体が縮小されている当時の事情の下ではその論理が通りにくくなっていたため、上記の法制化要求に至った旨を解説している。そして「これはいささか虫のよい、筋の通らない話ではないだろうか。もとはといえば、電源三法交付金やもろもろのうまい金で、豪華で立派な屋敷を建てたのはそちらである。今になって電気、ガス、水道代が払えないが、俺はこの屋敷が気に入ってるから出たくない、維持費はお前たち(国民の税収)が払ってくれ、と言われても困るのはこちら側である」と批判している。 『政経東北』1997年4月号は「大規模財政を運営する経験のない町が、経路の異なった交付金を受け取ったとき、これらの自治体の行政能力を超えるカネは、小さな町を生かすことよりも、殺してしまう影響力を発揮する」「その場の思いつきで体育館、野球場、住民センターと建てていく。(中略)ついには住民の真のニーズとは縁のない次元で、ただ金を遣うためだけの出費が繰り返される」などと批判し、更に交付金が実質的な迷惑料であるにも関わらず直接住民の懐に入らないことを問題とした。その解消策として「調整すべき法令、どこで線引きすべきか、範囲の規定はあるが(中略)住民の子弟の教育費に使えるような配慮が必要だ」と提言している。
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