電源・制御方式
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2両を1単位として機器を集約分散搭載するMM'ユニットを採用し、原則としてM車には主制御器と抵抗器が、M'車には主変圧器・整流装置・補助電源装置・空気圧縮機・集電装置・空気遮断器(ABB)・避雷器が搭載されるが、例外もある。 架線からの交流25 kV を変圧器で降圧した上で、二次巻線側にタップを設けて巻数を変化させ、その後にシリコン整流器で整流して直流電源とし、直流電動機を制御する低圧タップ制御としている。車載用のシリコン整流器は、既に1960年代初頭に交流電気機関車や交直流電車で用いられて実績があった。 主変圧器(TM200)は、1,650 kVA の定格容量を備える。車両床下に搭載する関係から極力高さを抑えて設計され、絶縁油タンクに高張力鋼を使うことで板厚を薄くしている。主回路用の二次巻線は1,500 kVA、補助電源回路用の三次巻線は150 kVA の定格容量を備え、三次巻線に関しては電圧変動が極力小さくなるように考慮されている。 主電動機を制御するのは、2両毎に1基搭載された主制御器(CS21)である。主変圧器二次巻線側のタップを電動カムスイッチで切り替えて2両分8個の主電動機に掛かる電圧を25段階(348 - 2,435 V)で調整している。タップを立てる位置によって変圧器から任意の電圧が得られるため、起動・力行用の抵抗器は持っておらず、不要な損失は発生しない。また、主電動機への印加電圧を上げることで容易に回転上限の拡大が可能となるため、弱界磁制御は行なわない。また主回路は4個直列2並列回路となっており、電動機の直並列制御は行わないが、変圧器の二次側の結線を和動と差動に切り替えることで制御段数を増やしている。また主平滑リアクトル・遮断器・逆転器・力行とブレーキの主回路切替用接触器を搭載する。電圧制御最終段における定格速度は167 km/h である。 さらに、発電ブレーキを付加しており、200 km/h 以上の高速域から機械的な車輪ディスクブレーキのみに頼って制動をかけるのでは、発熱や磨耗などの難点があるため、主電動機を発電機として作動させることで走行(運動)エネルギーを変換し、抵抗器で熱エネルギーとして発散させる方式である。特に高速域からのブレーキ時には効果的な手法で、在来線や私鉄向けなどで多くの実績がある。そのための抵抗器を搭載し発電ブレーキの際は主回路が主回路切替用接触器により切替られて2群の主電動機4個直列接続による独立した発電ブレーキ回路が形成され、ブレーキ用の主制御器により17段階で調整できるようになっており、また補助電源回路からの交流電源を専用の変圧器により降圧させ整流器で直流電源に変換し主電動機の主界磁を励磁させることによりブレーキ電流の立上がりを早めている。また発電ブレーキは50 km/h まで作動しそれ以下の速度になると空気ブレーキに自動的に切替わる。 補助電源系、つまり列車の走行や営業運転に必要となる電動送風機・電動圧縮機・空調装置・電動発電機の電源は、主変圧器の大容量三次巻線(単相交流60 Hz、220 V)から取られている。電動発電機(MH1040-DM74)は単相誘導電動機と二相交流発電機を組み合わせた構造で20 kVA の容量を備える。瞬間停電や電圧変動を嫌う機器のために設けられ、単相交流220 V を交流100 V に変換して車内の蛍光灯などの交流電源となる。さらに、二相交流100 V は整流器によって直流100 V となり、蓄電池や制御回路などの電源となる。ATCや列車無線は無停電電源が必要なことから、蓄電池(直流100 V)を電源とした回転式インバータ(単相交流60 Hz、100 V)が先頭車両に搭載されている。通常は進行方向側1機使用とし、不具合が生じた際には反対側のインバータに切り替わるようになっている。ただし、食堂車である36形に搭載する電動発電機は、電子レンジなどの調理器具が他よりも格段に大きな電力を消費することから厨房用の電源として容量を増大したMH1063-DM84(容量35 kVA)が搭載されている。 また@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}主変圧器・主整流器・発電ブレーキ用抵抗器には冷却のための電動送風機を取付け、変圧器の冷却は外鉄形送油風冷式で冷却のための不燃油を電動送風機で冷却してそれを循環させることにより冷却され[要出典]、電動空気圧縮機の電動機は電動送風機と同じ物を使用しており圧縮機は水平対向4気筒となっている。 集電装置 集電装置には、小型化して空気抵抗を小さくするため、1959年(昭和34年)にクモヤ93000で現車による175 km/h 運転を含む実用試験を実施した上で、下枠交差型パンタグラフが初めて採用された。これも PS200形と、200が付番されている。在来線用のパンタグラフと比べて1/2の小型軽量化を実現しており、押上げばねに並列してオイルダンパを装備して、上下動共振時における振れ幅の増加を抑制している。集電舟は揚力の発生を抑えるため、舟体の断面を長方形として、210 km/h 運転時において押上力が増加する設計となっている。3次車新造以降の碍子は、絶縁性強化のため大型化された。この変更は1、2次車にも施された。 新幹線用車両の中で本系列のみが特高圧引通線を持たず、各ユニットに1基(16両編成では8基)のパンタグラフを装備する。以下にその理由を記す。 開業当時は送電方式にBT (Booster Transformer) き電方式が採用されていたため、特高圧引通線を装備した場合、ブースターセクションを特高圧引通線で短絡して帰線電流が吸い上げ不能となるばかりか、架線のほとんどの電流がパンタグラフと特高圧引通線を流れ、通過時に大きなアークが発生し、パンタグラフを損傷する危険があるため特高圧引通線を装備できなかった。 同じく開業当初は異相(切替)セクションの数を削減するため在来線で採用した方面別饋電(上下線は同相)を採用せず、上下線別に饋電することを採用した。三相交流を2つの単相交流にするスコット結線の制約から90度ずれた2系統の交流が上下線に饋電され、それゆえに駅構内も含め、上下線の渡り線のすべてに絶縁セクションを必要とした(上下線の電圧差は位相差のため約35.4 kVにもなる)。もし特高圧引通線を装備した列車(1両に2つのパンタグラフを電気的に接続した場合も同様)が渡り線をパンタグラフを上げて通過すると上下線2系統の交流線路を短絡してしまうため採用不可であった。 その後送電方式を現在のAT(Automatic Transformer)き電方式に変更する際に方面別饋電に改めたため、上下線とも同相の交流が供給されるようになった。駅構内はもちろん、上下線をまたぐすべての渡り線の絶縁セクション(異相セクション)が不要になった。これにより設備側については特高圧引通線の装備が可能になったが、本系列については屋根上にヒートポンプ式の空調装置が並べられており、絶縁と空調機のメンテナンスの問題から装備することができなかった。ちなみに、屋根のように見えるのは空調装置のアルミ製のキセ(カバー)であり、構体としての屋根はキセの内部、空調装置の下側にある。 ただし、JR西日本所属のNH82編成には例外的に特高圧引通し準備工事が施されており、0系では唯一屋根上にケーブルヘッドカバーを装着した車両が連結されるなど、外観に特徴があった。しかし、準備だけで結局特高圧引通しが行われることはなかった。 0系16両編成時は、8台ものパンタグラフを上げて走行していたが、風切りとスパーク(英語版)により、それらは非常に大きな騒音源となり、名古屋新幹線訴訟でも訴えられた。また、6両編成に短縮されてからもなお3台のパンタグラフを有しており、東海道・山陽新幹線の中では、1編成あたりの実使用パンタグラフが最も多い系列となっていた。100系は当初6台からパンタ半減工事にともなって3台(16両編成)もしくは2台(4・6両編成)に、300系は試作車が当初5台を装備して後に3台となり、更に量産車では途中から3台から2台に、それ以降の系列は、組成両数にかかわらず全て2台使用である。
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電源・制御方式
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「JR東日本719系電車」の記事における「電源・制御方式」の解説
713系電車で実績のあるサイリスタ連続位相制御を採用し、4基の直流主電動機を直列で制御する。 本方式は直流電気車に見られる抵抗制御とは異なり、衝動のない滑らかな加速が可能で電力の損失も小さい利点がある。また、電圧の制御幅が広いことから、電動機の端子電圧を高く取ることができ、1個あたり130キロワットの定格出力を得ている。 本系列では主回路電機子の2分割サイリスタブリッジと界磁制御用サイリスタブリッジを個別に配置する他励方式(分巻方式)を採用した。 通常の電車に用いられる直流電動機は、電機子と界磁を直列に配置する直巻整流子電動機が用いられるが、本系列では電機子と分巻界磁を個別に連続制御し、回生ブレーキの使用を可能とする構成である。ただし、起動から力行に至る特性では直巻方式が有利であるため直巻電動機と同様の特性を持つように界磁側を制御する(直巻制御)。 制御用に16ビットマイクロコンピュータを搭載しており、力行時は直巻制御するほか界磁独立制御により35%弱め界磁 ・回生ブレーキ・抑速ブレーキの制御を行う。 主回路の整流装置はダイオードを併用しない全サイリスタとしており、回生ブレーキ使用時にはモーターが発する直流を交流に変換するインバータとして動作する。
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