タップ制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 17:01 UTC 版)
主変圧器のタップ(出力端子)を切り替えることによって速度制御をする交流専用の制御方式である。交流電源ではもっともシンプルかつ古典的な制御方式であるが、タップの切り替え回路とは別にインバータ回路を組み、主変圧器に戻すことができれば回生ブレーキは可能である。回路が大がかりになるため、運用線区に長い下り勾配があり、電気ブレーキを長時間連続で使用しなければならないなど、特殊な条件下で使用される車両(国鉄ED79形電気機関車等)などにしか回生ブレーキは採用されていない。
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タップ制御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 14:44 UTC 版)
高圧タップ制御の回路図。 低圧タップ制御の回路図。 交流の直流(脈流)への整流と、波形の平滑化を描いた説明図。 変圧器は入力側の1次巻線と出力側の2次巻線から構成され、1次巻線に交流を流すと電磁誘導により2次巻線に電流が流れる仕組みである。2次巻線の出力電圧は1次巻線と2次巻線の巻数比率に比例することから、数万ボルトに及ぶ架線電圧を巻線比率を調整することによって、電動機に適した電圧(千数百 - 数百ボルト)に下げることができる。 ここで、巻線にタップを設けて巻数を可変とすれば、タップの切り換えによって異なる出力電圧が得られる。これを電動機の電圧制御に応用したのがタップ制御である。高圧側に前置した単巻変圧器のタップで切り替えを行なってから降圧変圧器で降圧するものを高圧タップ制御、2次巻線に対して行なうものを低圧タップ制御と呼ぶ。高圧タップ制御はタップで扱う電流が小さく、切り替え段数が多く取れる利点を有しているが、前置の単巻変圧器でタップ切換を行うため、変圧器が大型となり重量も増加する。このため、単巻変圧器と降圧変圧器の鉄心の一部(帰線磁路)を共用にして軽量化を図ったが、一見トランスの一次側をタップ切換するように見えて一部の技能者や鉄道ファンに誤解が拡がった。高圧タップ式では水銀整流器による整流をセンタータップ式回路にして、運転管理の必要な陰極を共通電位にして簡素化を図っても電圧切換は一組で済んだことで初期には主流だったが、大容量シリコン整流器の出現で、電圧切り替え機構が一組で済むブリッジ整流回路の採用が整備面においては利便性が高く、以降は低圧側での制御が主流となった。右図中段は低圧タップ制御の事例である。電動機の回転速度に合わせタップを切り替え、電動機の印加電圧を制御する。 一方、変圧器のタップ制御で得られるのは交流であり、直巻電動機を駆動するためには、整流器を用いて直流に変換する必要がある。初期の交流電気車では水銀整流器が用いられた。水銀整流器は位相制御が可能であったが、振動対策や取り扱いが難しく、後に開発された半導体素子によるシリコン整流器へ移行した。また、元々の交流は正弦波であり、整流器で得られる電流は周期的に波を持った脈流となることから、平滑回路を挿入してなだらかな直流とする(右図下段)。変圧器のタップ制御は、抵抗制御とは異なり電流の損失がほとんどなく、電圧の制御幅も自由度が高いことが特長である。 ところで、"タップ制御車は空転に強い"という俗説がある。タップ制御では”電動機が並列に接続され抵抗がないため空転が収束しやすく再粘着性に優れる”などという解説が巷にあふれているが、これは全面的に正しいとは言い難い(少なくとも上記の「理由」は明確に間違いである)。空転が発生した場合、当然にモーターによる逆起電力が急増し、回路電流が減る。自動進段制御の場合はこれを補う制御が行われ(抵抗制御・直並列組合せ制御の場合は抵抗が抜かれ)トルクが戻り、ますます空転するという状態を繰り返す。進段をしなければ回路電流は減り続けやがて空転が収まるはずであるが、再粘着時に回転が減ることで逆起電力も減少するためモーターにかかる電圧を減じない限り再度空転するはずである。よって空転を起こさない程度まで回路電流を減らして(ノッチを戻して)維持しなければ空転は収まらず運転を継続できないが、抵抗制御の場合は抵抗がすべて抜けた直列、直並列、あるいは並列の最終段以外において抵抗器の熱容量による制限で連続運転ができない。これに対し、印加電圧を直接制御するタップ制御では、どのノッチでも連続運転可能であるため、空転しない最大の出力をかけて運転することが容易である。この点はタップ制御(サイリスタ位相制御でも同様ではある)の利点であるが、空転検知能力がなく自動進段を備えたタップ制御車を仮定すると、上述の通り空転が始まった場合には自動進段の抵抗制御車同様収まる見込みはない。しかしながら、国鉄の製造した交流専用機関車は全車手動進段であるから、空転時に勝手に進段してしまうこともない。すなわち、空転に強いという理由の半分は手動進段であることに依っている訳である。
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